第64話

ー/ー



ここはウエス国の森の中、ではなく精霊の国。

独りで試練の門をくぐったリリィは、迷路のような森の中をいつに無く慎重に進んでいた。
「試練って何だろう?この森の迷路が試練なのかな?」
リリィは、迷路を前に前に進んでいく。森の空気が少しだけ重くなった気がした。

ガルルルッ

獣の威嚇するこえが聞こえる。
リリィは、その声に聞き覚えがあった。脚がすくむ。身体は震え、恐怖が蘇る。
「野犬...!?」
リリィが母を失った直後、独りで森に逃げ込んだ時に襲われた野犬だ。
リリィの額からは冷や汗が滴り落ちる。
リリィが身構えていると、森の中から凶暴な野犬が飛び出してきた。
野犬は涎を垂らし、目を血走らせ、リリィ目掛けて飛び掛かってきた。

「炎よ出でよ!インフェルノ!」
リリィは冷静に呪文を唱える。
リリィの手の平から炎が飛び出し、野犬に命中した。

ギャンギャン!

野犬は、あっという間に炎に包まれ、燃え上がった。
そして、動かなくなった。

「私は強くなった。もう逃げないわ。」
リリィは、ふうっと大きく息を吐いた。
気持ちを落ち着かせて、先へ進む。

しばらく森を進むと広い場所に出た。

リリィがまわりを見回すと、森の中から大きな黒い影が現れた。
その姿にリリィは見覚えがあった。

「ゲンブ!何故生きてるの?」

「リリィ、お前を殺す為に甦ったんだ。」

「私は、あの時の私じゃない。負けないよ。」

「正々堂々、勝負だ。」

ゲンブはそう言うと、両手から土の蛇を繰り出した。リリィ目掛けて襲って来る。
リリィは間一髪、それをかわした。
そして、呪文を唱える。
「水よ出でよ!ウォーター!」
リリィの両手から放たれた水流は、土の蛇を砕いていく。
土の蛇は、次から次へと現れるが、リリィの魔法が全て退けた。

「やるじゃないか、小娘。」
「もう、あなたには負けない。」
リリィは、ゲンブを睨みつける。

「そんなに怖い顔をしないでくれよ。」
「もう、あなたは怖くない。」
「なら、肉弾戦ならどうだ!」
ゲンブが体を低くして、リリィ目掛けて突進してきた。
リリィは素早くかわす。

「流石に素早いな。」
ゲンブは、更に速度を上げて突進してくる。
それも、リリィはかわした。

「光よ、出でよ!ライトニングソード!」
リリィの両手から光の剣が現れた。

「俺の体に刃は効かないぞ!」
ゲンブが突進して来る。
リリィは、かわしながら光の剣でゲンブの体を切り付ける、が、効いていないようだ。

「体が堅い!!」
「俺に刃は効かないといっただろう?」
リリィは一瞬考えたが、何かを思いついたようだ。

「リリィ!これで最後だ!」
ゲンブが突進して来る。
リリィはゲンブをかわしながら、足首を狙って斬りつけた。

「グワーッ!」
ゲンブは体勢を崩して倒れ込んだ。
「私の勝ちね。」
リリィは、光の剣を収め、ゲンブに言った。
「クソッ!もう動けない!トドメを刺せ!」
「もう私たちの前に現れないで。じゃあ。」
ゲンブに背を向けて、リリィは歩き出す。
ゲンブがニヤリと笑った。
「リリィ!甘いな!マウンテンフォール!!」
リリィ目掛けて、巨大な山のような岩の塊が落ちて来る。避ける間もなくリリィは潰されてしまった。

「ハハハハッ!油断したな!俺の逆転勝ちだ!!」

その時。岩の塊から数本の青白い光が出てきて、岩にヒビが入り、粉々に砕けた。その中から無傷のリリィが現れた。

「ゲンブ、惜しかったわね。トドメよ。」
リリィは、冷たく言い放つ。
「待て!やめてくれ!」
ゲンブは命乞いをするが、もう遅い。
「ライトニングソード!」
リリィは光の剣をゲンブの首目掛けて振り下ろした。

勝負はついた。

リリィは、森の中を更に奥に進んでいく。

しばらく進むと、今度は遺跡のような建物が現れた。
入り口を中に入っていく。
「この遺跡は、何なのかしら?」
通路を進んでいくと、広い場所に出た。

壁には様々な彫刻がある。妖精やエルフ、魔物の姿もある。そして人間も。

リリィは、文字のようなものが彫られている場所を見つけた。
近づいてみる。

古代文字で書かれているようだ。
エルフの赤ん坊...エルフの里...魔物に襲われて逃げる女の子...森の中の丸太小屋...紅茶...人間の女の子...
「これは、フィーネのことだ!何でここに彫ってあるの?」

その横の壁に目を移す。
赤ん坊を抱く女性とそれを見守る男性。赤ん坊は順調に成長するが、学校に通い始めると、友達が出来ず孤立する。
「学校...」
リリィは、先へと読み進める。
少女は、学校でいじめを受ける。それは、小学校、中学校、高校と続く。
少女の心は壊れかけていた。
親にも周りの大人にも相談出来ない。
信頼出来る友達もいない。
孤独だった。

リリィは読み進めるうちに、胸の奥が締め付けられるのを感じていた。

最後に。ある文字が書いてあった。

それは、日本語の、漢字。



「百合、私の名前...」

どす黒い記憶の渦がリリィを襲う。

リリィは頭を抱えてうずくまってしまった。

「頭が痛い...あそこには戻りたくない!!」

リリィの全身が黒い渦に包まれる。



そして、リリィは気を失った......




次のエピソードへ進む 第65話


みんなのリアクション

ここはウエス国の森の中、ではなく精霊の国。
独りで試練の門をくぐったリリィは、迷路のような森の中をいつに無く慎重に進んでいた。
「試練って何だろう?この森の迷路が試練なのかな?」
リリィは、迷路を前に前に進んでいく。森の空気が少しだけ重くなった気がした。
ガルルルッ
獣の威嚇するこえが聞こえる。
リリィは、その声に聞き覚えがあった。脚がすくむ。身体は震え、恐怖が蘇る。
「野犬...!?」
リリィが母を失った直後、独りで森に逃げ込んだ時に襲われた野犬だ。
リリィの額からは冷や汗が滴り落ちる。
リリィが身構えていると、森の中から凶暴な野犬が飛び出してきた。
野犬は涎を垂らし、目を血走らせ、リリィ目掛けて飛び掛かってきた。
「炎よ出でよ!インフェルノ!」
リリィは冷静に呪文を唱える。
リリィの手の平から炎が飛び出し、野犬に命中した。
ギャンギャン!
野犬は、あっという間に炎に包まれ、燃え上がった。
そして、動かなくなった。
「私は強くなった。もう逃げないわ。」
リリィは、ふうっと大きく息を吐いた。
気持ちを落ち着かせて、先へ進む。
しばらく森を進むと広い場所に出た。
リリィがまわりを見回すと、森の中から大きな黒い影が現れた。
その姿にリリィは見覚えがあった。
「ゲンブ!何故生きてるの?」
「リリィ、お前を殺す為に甦ったんだ。」
「私は、あの時の私じゃない。負けないよ。」
「正々堂々、勝負だ。」
ゲンブはそう言うと、両手から土の蛇を繰り出した。リリィ目掛けて襲って来る。
リリィは間一髪、それをかわした。
そして、呪文を唱える。
「水よ出でよ!ウォーター!」
リリィの両手から放たれた水流は、土の蛇を砕いていく。
土の蛇は、次から次へと現れるが、リリィの魔法が全て退けた。
「やるじゃないか、小娘。」
「もう、あなたには負けない。」
リリィは、ゲンブを睨みつける。
「そんなに怖い顔をしないでくれよ。」
「もう、あなたは怖くない。」
「なら、肉弾戦ならどうだ!」
ゲンブが体を低くして、リリィ目掛けて突進してきた。
リリィは素早くかわす。
「流石に素早いな。」
ゲンブは、更に速度を上げて突進してくる。
それも、リリィはかわした。
「光よ、出でよ!ライトニングソード!」
リリィの両手から光の剣が現れた。
「俺の体に刃は効かないぞ!」
ゲンブが突進して来る。
リリィは、かわしながら光の剣でゲンブの体を切り付ける、が、効いていないようだ。
「体が堅い!!」
「俺に刃は効かないといっただろう?」
リリィは一瞬考えたが、何かを思いついたようだ。
「リリィ!これで最後だ!」
ゲンブが突進して来る。
リリィはゲンブをかわしながら、足首を狙って斬りつけた。
「グワーッ!」
ゲンブは体勢を崩して倒れ込んだ。
「私の勝ちね。」
リリィは、光の剣を収め、ゲンブに言った。
「クソッ!もう動けない!トドメを刺せ!」
「もう私たちの前に現れないで。じゃあ。」
ゲンブに背を向けて、リリィは歩き出す。
ゲンブがニヤリと笑った。
「リリィ!甘いな!マウンテンフォール!!」
リリィ目掛けて、巨大な山のような岩の塊が落ちて来る。避ける間もなくリリィは潰されてしまった。
「ハハハハッ!油断したな!俺の逆転勝ちだ!!」
その時。岩の塊から数本の青白い光が出てきて、岩にヒビが入り、粉々に砕けた。その中から無傷のリリィが現れた。
「ゲンブ、惜しかったわね。トドメよ。」
リリィは、冷たく言い放つ。
「待て!やめてくれ!」
ゲンブは命乞いをするが、もう遅い。
「ライトニングソード!」
リリィは光の剣をゲンブの首目掛けて振り下ろした。
勝負はついた。
リリィは、森の中を更に奥に進んでいく。
しばらく進むと、今度は遺跡のような建物が現れた。
入り口を中に入っていく。
「この遺跡は、何なのかしら?」
通路を進んでいくと、広い場所に出た。
壁には様々な彫刻がある。妖精やエルフ、魔物の姿もある。そして人間も。
リリィは、文字のようなものが彫られている場所を見つけた。
近づいてみる。
古代文字で書かれているようだ。
エルフの赤ん坊...エルフの里...魔物に襲われて逃げる女の子...森の中の丸太小屋...紅茶...人間の女の子...
「これは、フィーネのことだ!何でここに彫ってあるの?」
その横の壁に目を移す。
赤ん坊を抱く女性とそれを見守る男性。赤ん坊は順調に成長するが、学校に通い始めると、友達が出来ず孤立する。
「学校...」
リリィは、先へと読み進める。
少女は、学校でいじめを受ける。それは、小学校、中学校、高校と続く。
少女の心は壊れかけていた。
親にも周りの大人にも相談出来ない。
信頼出来る友達もいない。
孤独だった。
リリィは読み進めるうちに、胸の奥が締め付けられるのを感じていた。
最後に。ある文字が書いてあった。
それは、日本語の、漢字。
「百合、私の名前...」
どす黒い記憶の渦がリリィを襲う。
リリィは頭を抱えてうずくまってしまった。
「頭が痛い...あそこには戻りたくない!!」
リリィの全身が黒い渦に包まれる。
そして、リリィは気を失った......