ep52 クローとフリーダム
ー/ー
「あの、クローさん」
「なんだシヒロ?」
「そういえばクローさんは、なぜ〔フリーダム〕の出没箇所を特定できるんですか?」
「それは……」
俺がなぜ神出鬼没のヤツらと積極的に遭遇できるのか?
〔謎の声〕だ。コイツが〔スピリトゥス〕の乱れを感知することで、ヤツらと遭遇することに成功している。つまり俺は〔謎の声〕を、いわばGPS代わりに利用している。だが、百発百中ではない。謎の声が感知するのはあくまで『スピリトゥスの乱れ』であって〔フリーダム〕ではないからだ。
〔スピリトゥス〕とは、いわゆる〔気〕のようなもので〔魔力〕の上位概念とされている。
魔力は特に〔気〕への影響が強い。したがって、魔術師も擁する〔フリーダム〕の活動は、スピリトゥスが大きく乱れやすい。くわえて終戦後の平和な現在の世の中では、大きなスピリトゥスの乱れはそう生じるものではない。
以上の結果として、謎の声が感知した先に赴けば、俺はおのずと高確率でヤツらに接触できた。
「……というわけだ」
俺はシヒロに〔謎の声〕のことは伏せた上で、ひと通りを説明した。
「す、すごいですね! 感知魔法や索敵魔法は高度技術と聞きます。なのでそのような魔術を使える者は戦争でも重宝されたと」
「シヒロは本当に色々詳しいな。さすが読書家だな」
素直に感心した。彼女はただのオタクとは違うようだ。
「い、いえ、そんな! で、でも、クローさん。こんな場所であんまり魔法の話は……」
「知らず、語らず、使わず。だろ? わかっているよ」
「す、すいません」
「いや、俺が悪かった。魔法の話をする時はできるだけ二人きりでしよう。そうだな、寝室でするのがいいかもな」
「そうですね。えっ、えええ??」
「ん? どうしたんだ?」
「な、ななななんでもありません……けど」
「どうした? 顔が赤いぞ?」
「いえ……」
どういうわけかシヒロは赤面して目を伏せてしまった。
「シヒロ? 大丈夫か?」
「だだ大丈夫です! きき気にしないでください!」
「そうか? ならいいが」
晩飯を済ませると、俺とシヒロは二階のそれぞれの部屋に戻った。俺としてはもう少し魔法について詳しく話をしたかったが、
「ま、ままままた今度にしましょう!し、失礼します!おおおやすみなさい!」
どうしてかシヒロはあわてて部屋に駆け込んでいってしまった。
「まっ、いいか」
俺は寝支度を整えてベッドに横になる。仰向けになって質素な宿屋の天井をボンヤリ見つめていると、アイツが囁きかけてきた。
『クロー様。スピリトゥスの乱れが感じられました。ここから北西に数十キロ先といったところでしょうか。スピリトゥスの流れからすると……近日には西に数キロの街へ向かうかと』
『わかった。明朝にさっそく出発する』
『ところで』
『なんだ?』
『あの娘を本当に連れていくのですね?』
『シヒロのことだよな。連れていく…というかあいつの付いて来たいという意志を尊重しただけだよ』
『情婦にでもするつもりですか?』
『なに言ってんだ! するわけあるか!』
『あれだけお盛んでしたのに?』
『それは前の話だろ? 今は違うんだ! それに、あの頃の俺にはもう戻りたくない……』
『たかだか一ヶ月間で随分と変わられましたね』
『そう…かな』
『〔魔導剣〕とその力も相当程度使いこなせるようになりましたし、今ではすっかり唯一無二の魔導剣士といった様相です』
『お前にもさんざん指導されたしな。パトリスが充分な旅の資金を工面してくれてたから修行に集中できた。おかげで力はついたけど、まさか髪の色まで変わっちゃうとはな』
『なんなら小娘を拐かすぐらい立派になりましたからね』
『かどわかすって、語弊ありすぎる言い方やめろ! てゆーか事実を捻じ曲げるな!』
『冗談ですよ冗談。しかし意外でしたもので。貴方があっさり他人を受け入れたことが』
『それは……』
確かにコイツの言うとおりだ。
正直、自分でも意外だった。遊び狂っていた時だって、情欲に身を任せていただけであって相手を受け入れていたわけじゃない。ましてや危険な旅を敢行している今の俺が、シヒロからの旅の同行願いをあっさりと許可してしまったのは……。
『夢の足しになれば……いや、この話はもういい。寝るぞ俺は』
『わかりました。まあ、これもまたひとつの〔結果〕であり、未来の結果のための〔原因〕』
『また哲学めいたことを……』
『それではおやすみなさい』
『ああ、おやすみ』
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「なんだシヒロ?」
「そういえばクローさんは、なぜ〔フリーダム〕の出没箇所を特定できるんですか?」
「それは……」
俺がなぜ神出鬼没のヤツらと積極的に遭遇できるのか?
〔謎の声〕だ。コイツが〔スピリトゥス〕の乱れを感知することで、ヤツらと遭遇することに成功している。つまり俺は〔謎の声〕を、いわばGPS代わりに利用している。だが、百発百中ではない。謎の声が感知するのはあくまで『スピリトゥスの乱れ』であって〔フリーダム〕ではないからだ。
〔スピリトゥス〕とは、いわゆる〔気〕のようなもので〔魔力〕の上位概念とされている。
魔力は特に〔気〕への影響が強い。したがって、魔術師も擁する〔フリーダム〕の活動は、スピリトゥスが大きく乱れやすい。くわえて終戦後の平和な現在の世の中では、大きなスピリトゥスの乱れはそう生じるものではない。
以上の結果として、謎の声が感知した先に赴けば、俺はおのずと高確率でヤツらに接触できた。
「……というわけだ」
俺はシヒロに〔謎の声〕のことは伏せた上で、ひと通りを説明した。
「す、すごいですね! 感知魔法や索敵魔法は高度技術と聞きます。なのでそのような魔術を使える者は戦争でも重宝されたと」
「シヒロは本当に色々詳しいな。さすが読書家だな」
素直に感心した。彼女はただのオタクとは違うようだ。
「い、いえ、そんな! で、でも、クローさん。こんな場所であんまり魔法の話は……」
「知らず、語らず、使わず。だろ? わかっているよ」
「す、すいません」
「いや、俺が悪かった。魔法の話をする時はできるだけ二人きりでしよう。そうだな、寝室でするのがいいかもな」
「そうですね。えっ、えええ??」
「ん? どうしたんだ?」
「な、ななななんでもありません……けど」
「どうした? 顔が赤いぞ?」
「いえ……」
どういうわけかシヒロは赤面して目を伏せてしまった。
「シヒロ? 大丈夫か?」
「だだ大丈夫です! きき気にしないでください!」
「そうか? ならいいが」
晩飯を済ませると、俺とシヒロは二階のそれぞれの部屋に戻った。俺としてはもう少し魔法について詳しく話をしたかったが、
「ま、ままままた今度にしましょう!し、失礼します!おおおやすみなさい!」
どうしてかシヒロはあわてて部屋に駆け込んでいってしまった。
「まっ、いいか」
俺は寝支度を整えてベッドに横になる。仰向けになって質素な宿屋の天井をボンヤリ見つめていると、アイツが囁きかけてきた。
『クロー様。スピリトゥスの乱れが感じられました。ここから北西に数十キロ先といったところでしょうか。スピリトゥスの流れからすると……近日には西に数キロの街へ向かうかと』
『わかった。明朝にさっそく出発する』
『ところで』
『なんだ?』
『あの娘を本当に連れていくのですね?』
『シヒロのことだよな。連れていく…というかあいつの付いて来たいという意志を尊重しただけだよ』
『情婦にでもするつもりですか?』
『なに言ってんだ! するわけあるか!』
『あれだけお盛んでしたのに?』
『それは前の話だろ? 今は違うんだ! それに、あの頃の俺にはもう戻りたくない……』
『たかだか一ヶ月間で随分と変わられましたね』
『そう…かな』
『〔魔導剣〕とその力も相当程度使いこなせるようになりましたし、今ではすっかり唯一無二の魔導剣士といった様相です』
『お前にもさんざん指導されたしな。パトリスが充分な旅の資金を工面してくれてたから修行に集中できた。おかげで力はついたけど、まさか髪の色まで変わっちゃうとはな』
『なんなら小娘を|拐《かどわ》かすぐらい立派になりましたからね』
『かどわかすって、語弊ありすぎる言い方やめろ! てゆーか事実を捻じ曲げるな!』
『冗談ですよ冗談。しかし意外でしたもので。貴方があっさり他人を受け入れたことが』
『それは……』
確かにコイツの言うとおりだ。
正直、自分でも意外だった。遊び狂っていた時だって、情欲に身を任せていただけであって相手を受け入れていたわけじゃない。ましてや危険な旅を敢行している今の俺が、シヒロからの旅の同行願いをあっさりと許可してしまったのは……。
『夢の足しになれば……いや、この話はもういい。寝るぞ俺は』
『わかりました。まあ、これもまたひとつの〔結果〕であり、未来の結果のための〔原因〕』
『また哲学めいたことを……』
『それではおやすみなさい』
『ああ、おやすみ』