ep51 シヒロと魔法
ー/ー
「あの、ええと……」
シヒロは肩をすぼめてモジモジし始める。魔法について話すのは社会的に憚るからだろう。しかし俺の興味を抑えられない。
「シヒロはまだ若いし元魔導師ってことでもないだろ。親が魔導師だったとか? あるいはシヒロの家にも魔導書があったとか……」
「こ、これは絶対に内緒ですよ?」
「俺が魔導書を持っていることもな」
「それはもちろんわかってます。実は……」
シヒロは再びチラリとまわりを確認してから、声量に細心の注意を払いつつ述懐し始めた。
「クローさんの言うとおりなんです。ぼくの家にも魔導書があったんです。昔、お父さんが旅先から持って帰ってきたらしくて。ぼくのお父さんは少し変わった人で、もともと世界中を旅しながら行商人をやっていたんですけど、すごく考え方が自由で、魔法についても自由に話して教えてくれたんです。本当はいけないことだったはずなのに、お父さんはそう考えてはいなかったようで」
「シヒロのお父さんも魔法が使えたのか?」
「はい。なので魔導書を手にしながら実際に教えてもらいました」
「かなり珍しいことなんだよな? それって」
「だと思います。今では魔法は一部の限られた人たちにしか認められない特別な技術ですから。でも……」
「?」
「クローさんも特別ですよね? 魔剣使いなんて、戦場の伝説としてしか聞いたことがなかったのに」
「戦場の伝説?」
「知りませんか? その昔、戦場であらゆる魔法を切り裂く最強の魔剣使いがいたという伝説です。あっ、でも今は、魔剣使いよりも魔法剣士さまの方が有名ですけどね」
「魔法剣士さま?」
「知らないんですか?」
「あ、ああ」
「あの、クローさんて……」
「なんだよ」
「意外と世間知らず? あ、いや、なんでもありません!」
「悪かったな。世間に疎くて」
「いえ! ミステリアスで良いと思います!」
「それってミステリアスの枠に入るのか?」
「アハハハ……あっ、そうそう! 魔法剣士さまの話ですよね! 魔法剣士さまはなんと……魔王を倒して世界を救った、あの勇者様の妹君なんです!」
「勇者の妹!?」
勇者と魔王。以前の俺ならぶったまげるワードだろう。しかし今の俺.……魔導剣士となった俺には決して遠くないもののように思える。これも俺が〔同期〕した魔導剣と、魔導剣の一部と〔並列化〕された魔導書によるものなのだろうか。
「戦場に激烈に咲く一輪の華の如し華麗なる戦いぶりは、大戦の勝利にも大きく貢献したそうです」
シヒロは力説する。どうやら女剣士の話は作家の卵の彼女にとって関心深い事柄のようだ。
「戦争が終わって、今は何をしているんだろう?」
なにげなく質問してみた。
「今は国際平和維持軍の活動で世界をまわっているらしいですね」
「国際平和維持軍……」
「あっ!」
はたとしてシヒロは口を押さえた。
そう。俺が魔剣使いとして国際平和維持軍に目をつけられているからだ。具体的に彼らが俺をどうしたいのかまではわからないが。ただ、魔導書が焚書になるような世界の現状から考えれば悪い想像しか働かない。
「勇者の妹の魔法剣士、か……」
今から一年半より少し前、勇者が魔王を倒し、人間達の連合軍が魔王軍に勝利し、終戦。ついに大戦が終わり世界に平和が訪れる……とここまではいいが、勇者とやらに妹がいて、その妹までもが世界に名を轟かすような存在だとは。
しかも彼女は国際平和維持軍の活動で世界をまわっているという。ということは、この先その魔法剣士様とやらに出くわすこともあるのだろうか……。
「……」
俺は一抹の不安を覚えてしばし沈黙するが、すぐに切り替えた。魔法剣士がどうであろうと俺の行動は変わらない。俺にはもう残された時間が少ないのだから。
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
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「あの、ええと……」
シヒロは肩をすぼめてモジモジし始める。魔法について話すのは社会的に憚るからだろう。しかし俺の興味を抑えられない。
「シヒロはまだ若いし元魔導師ってことでもないだろ。親が魔導師だったとか? あるいはシヒロの家にも魔導書があったとか……」
「こ、これは絶対に内緒ですよ?」
「俺が魔導書を持っていることもな」
「それはもちろんわかってます。実は……」
シヒロは再びチラリとまわりを確認してから、声量に細心の注意を払いつつ述懐し始めた。
「クローさんの言うとおりなんです。ぼくの家にも魔導書があったんです。昔、お父さんが旅先から持って帰ってきたらしくて。ぼくのお父さんは少し変わった人で、もともと世界中を旅しながら行商人をやっていたんですけど、すごく考え方が自由で、魔法についても自由に話して教えてくれたんです。本当はいけないことだったはずなのに、お父さんはそう考えてはいなかったようで」
「シヒロのお父さんも魔法が使えたのか?」
「はい。なので魔導書を手にしながら実際に教えてもらいました」
「かなり珍しいことなんだよな? それって」
「だと思います。今では魔法は一部の限られた人たちにしか認められない特別な技術ですから。でも……」
「?」
「クローさんも特別ですよね? 魔剣使いなんて、戦場の伝説としてしか聞いたことがなかったのに」
「戦場の伝説?」
「知りませんか? その昔、戦場であらゆる魔法を切り裂く最強の魔剣使いがいたという伝説です。あっ、でも今は、魔剣使いよりも魔法剣士さまの方が有名ですけどね」
「魔法剣士さま?」
「知らないんですか?」
「あ、ああ」
「あの、クローさんて……」
「なんだよ」
「意外と世間知らず? あ、いや、なんでもありません!」
「悪かったな。世間に疎くて」
「いえ! ミステリアスで良いと思います!」
「それってミステリアスの枠に入るのか?」
「アハハハ……あっ、そうそう! 魔法剣士さまの話ですよね! 魔法剣士さまはなんと……魔王を倒して世界を救った、あの勇者様の妹君なんです!」
「勇者の妹!?」
勇者と魔王。以前の俺ならぶったまげるワードだろう。しかし今の俺.……魔導剣士となった俺には決して遠くないもののように思える。これも俺が〔同期〕した魔導剣と、魔導剣の一部と〔並列化〕された魔導書によるものなのだろうか。
「戦場に激烈に咲く一輪の華の如し華麗なる戦いぶりは、大戦の勝利にも大きく貢献したそうです」
シヒロは力説する。どうやら女剣士の話は作家の卵の彼女にとって関心深い事柄のようだ。
「戦争が終わって、今は何をしているんだろう?」
なにげなく質問してみた。
「今は国際平和維持軍の活動で世界をまわっているらしいですね」
「国際平和維持軍……」
「あっ!」
はたとしてシヒロは口を押さえた。
そう。俺が魔剣使いとして国際平和維持軍に目をつけられているからだ。具体的に彼らが俺をどうしたいのかまではわからないが。ただ、魔導書が焚書になるような世界の現状から考えれば悪い想像しか働かない。
「勇者の妹の魔法剣士、か……」
今から一年半より少し前、勇者が魔王を倒し、人間達の連合軍が魔王軍に勝利し、終戦。ついに大戦が終わり世界に平和が訪れる……とここまではいいが、勇者とやらに妹がいて、その妹までもが世界に名を轟かすような存在だとは。
しかも彼女は国際平和維持軍の活動で世界をまわっているという。ということは、この先その魔法剣士様とやらに出くわすこともあるのだろうか……。
「……」
俺は一抹の不安を覚えてしばし沈黙するが、すぐに切り替えた。魔法剣士がどうであろうと俺の行動は変わらない。俺にはもう残された時間が少ないのだから。