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鏡の中の私 ③

ー/ー



 その日は突然訪れた。

「おはよう」

 いつものように、私は鏡に向かって声をかける。
 その日は違った。鏡に映るはずの私の姿が、そこにはなかった。

 ──何も映らない。

 私は呆然と立ち尽くした。
 翌日も、その翌日も、私は鏡の前に立ち、何度も呼びかけた。

「おはよう」
「こんにちは」
「おやすみなさい」

 時間帯も変え、光の角度を調整し、鏡の曇りも拭ってみた。
 夜更けに囁き、朝焼けに問いかけ、それでも、鏡の中の私は帰ってこなかった。


 虚ろな鏡に向かいながら、胸の奥に空洞が広がるのを感じた。
 自分が自分でないような、不完全な感覚。
 失われたものは単なる鏡像ではなく、最高の友、最高の理解者、そして、私そのものであった。




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 その日は突然訪れた。
「おはよう」
 いつものように、私は鏡に向かって声をかける。
 その日は違った。鏡に映るはずの私の姿が、そこにはなかった。
 ──何も映らない。
 私は呆然と立ち尽くした。
 翌日も、その翌日も、私は鏡の前に立ち、何度も呼びかけた。
「おはよう」
「こんにちは」
「おやすみなさい」
 時間帯も変え、光の角度を調整し、鏡の曇りも拭ってみた。
 夜更けに囁き、朝焼けに問いかけ、それでも、鏡の中の私は帰ってこなかった。
 虚ろな鏡に向かいながら、胸の奥に空洞が広がるのを感じた。
 自分が自分でないような、不完全な感覚。
 失われたものは単なる鏡像ではなく、最高の友、最高の理解者、そして、私そのものであった。