ようやく魔王城の前まできた。
ここまで長かった。
仲間たちと頷きあうと、共に駆け抜ける。
門を開いて、大量にいる魔物の群の中を突き進んでいく。
今までの経験が思考より速く身体を操った。
魔王城に控えているだけあって、庭園をうろついている魔物ですら強力だ。
特に、デウスエクスマキナ、鬼岩王、ワールドエンドは人類史に名を残す存在だろう。
それぞれが長い歴史で大陸を海に沈めた経歴をもつ。
しかし奥へ進むと、それどころではない魔物の部屋がある。
四天王の護る、四季の部屋。
春、四天王最弱だがやたらしゃべるヤツの部屋だ。語尾はにゃん。
夏、昆虫系を多く操作する多芸なヤツの部屋だ。語尾はナツ。
秋、魔王城までやってきた冒険者はだいたいコイツの腹に収まる。どのタイミングで朽ちたとしても……
冬、1対1なら魔王の次に強い魔神の巫女だ。
各部屋を仲間に任せ、俺は振り返らず奥へ進んだ。
仲間のことは信じている。
厳しい戦いになるだろうが、何も心配はしていない。
俺の目指すところは最奥、魔王の間。
この城で最も豪奢な封印扉に両手を押しあてる。
魔力認証でスムーズに開いた。
こまごまとした作業を担う魔物たちが一斉にかしずく。
そのあいだを俺は足早に進むと、玉座へ腰を下ろす。
セーフ!
肩で呼吸を落ち着かせ、足を組み、もうすぐ到着するであろう勇者の姿を思い描く。
危なかった。
勇者は数いるが、魔王城まで到達することは稀だ。
だから昨夜は四天王のみんなとここまで生き残った勇者を称え打ち上げをした。
しかしあまりにも楽しい呑み会になってしまい、予定時刻になっても朝は誰も起きられなかった。
「朝がきたらお前がちゃんと春を告げろよ」に「わかったにゃん」とかいってたヤツが一番起きなかった……
そこから地獄だった。
全員が二日酔いなのに、暴力で進む勇者の進撃はペースを落とさない。
偵察兵から念話で情報が届いていたから間違いない。
我々の二日酔いで本来ありえた対峙の未来を台無しにするわけにはいかない。
くっ、ズキズキ痛む額を押さえる。
四天王のみんなも同じ苦しみを抱いているはずだ。
これは厳しい戦いになる……
果たして勇者が辿り着くまで、威厳を保てるのか。
いや、大丈夫だ。
俺は信じているぞ、みんな!
俺の顔もさぞ蒼白なことだろう。
あ、あ、手も震えている。
まだ大丈夫だよな。
俺は新鮮な純水を創造し、直接口へ運んで癒しを得る。
やってやる。
やってやるぞ。
この苦しみを耐え抜き、栄光を手にしてみせる。
くくく、よくぞ魔王をここまで追い詰めた。
早く来い勇者よ。
余は心から愉しみだ。