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第21話_初めてのお出かけ

ー/ー



白兎亭を後にして、二人はゆっくりと路地裏を抜けていった。
ひんやりした空気が肌に触れたかと思うと――
視界は一気に開けた。

――まるで朝のニュースでよく見る、巨大なスクランブル交差点そのものだった。

高層ビルのネオンが青白く揺らぎ、交差点で停車している車は古いセダンや現代のSUV、軽トラックやバイク……
そのどれもが少しだけ透けて見える。

(ほんと、不思議な世界……)

車道の信号が青に変わった瞬間――
魂の車たちが一斉にエンジン音を響かせ、風のように駆け抜けていく。

燈は思わず一歩下がり、肩をすくめた。

(速い……でも、不思議と怖くない)

どこか現実に似ていて、でも決定的に違う。
そんな曖昧な感覚が胸に残る。

スキップでもしそうな様子で胸を張っているイナバへ尋ねる。

「それでイナバちゃん、どこに行くの?」

待ってましたと言わんばかりに鼻を鳴らす。

「ふっふっふ……聞いて驚け……今日はなんと!あの道具屋『ツクヨミホーム』に行くのだ!!」

ドヤ顔で天を指差す。
あまりのテンションに、信号待ち中の魂たちがちらりと目を向けたほどだ。

燈は思わず苦笑しながら、その店名に微かな既視感を覚えた。

(ツクヨミホーム……なんか、そんな名前の店を聞いたことあるような気が……)

〇〇ホーム……
――現世にいるとき、何度も耳にしてきた響き。

工具を買いに行ったり、日用品を買ったり、
とにかく日常に役立つ品々が並んでいる……恐らくそういったお店なのだろう。

「もしかして……ホームセンターみたいなところかな?」

燈がぽつりとつぶやくと、イナバの顔が一瞬で曇った。

「な……っ!?なにその『ほーむせんたー』って!?まさかあかりん、知ってたの!?」

「い、いや……知ってるというか……」

「ま、まぁいいや!とにかくトップクラスで品ぞろえがすごいんだから!!」

少し拗ねたようにそっぽを向き、でもすぐに胸を張って歩き出す。
跳ねるような足取りは、怒っているというより浮かれている子供のようだった。

燈は慌ててその背中を追いかける。
信号はいつの間にか青に変わっていたようで、流れる魂の群れに紛れて二人は進む。

やがて、目的地が見えてきた。

横長に広がる巨大な建物。
緑色の背景に、真っ白な文字で堂々と掲げられた看板。

『TSUKUYOMI』

そのフォント、配色、レイアウト。
まさに現世のホームセンターそのもの。

燈は思わず目をこする。

「あれ……やっぱり見たことあるような……」

そんな燈の戸惑いなどお構いなしに――
イナバは両腕を高く掲げ、声を弾ませる。

「きたーここだよここ!!早速れっつらゴーだよ!!」

勢い余って転びそうになるほどの前のめりで、猪のごとく一直線で入口へ突撃していく。

その無邪気さに、燈はふっと笑い、胸の奥の重たいものが少し軽くなるのを感じた。

(……ちょっとだけ、元気出たかも)

燈は未知の世界に胸を高鳴らせながら、イナバのあとを追った。


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白兎亭を後にして、二人はゆっくりと路地裏を抜けていった。
ひんやりした空気が肌に触れたかと思うと――
視界は一気に開けた。
――まるで朝のニュースでよく見る、巨大なスクランブル交差点そのものだった。
高層ビルのネオンが青白く揺らぎ、交差点で停車している車は古いセダンや現代のSUV、軽トラックやバイク……
そのどれもが少しだけ透けて見える。
(ほんと、不思議な世界……)
車道の信号が青に変わった瞬間――
魂の車たちが一斉にエンジン音を響かせ、風のように駆け抜けていく。
燈は思わず一歩下がり、肩をすくめた。
(速い……でも、不思議と怖くない)
どこか現実に似ていて、でも決定的に違う。
そんな曖昧な感覚が胸に残る。
スキップでもしそうな様子で胸を張っているイナバへ尋ねる。
「それでイナバちゃん、どこに行くの?」
待ってましたと言わんばかりに鼻を鳴らす。
「ふっふっふ……聞いて驚け……今日はなんと!あの道具屋『ツクヨミホーム』に行くのだ!!」
ドヤ顔で天を指差す。
あまりのテンションに、信号待ち中の魂たちがちらりと目を向けたほどだ。
燈は思わず苦笑しながら、その店名に微かな既視感を覚えた。
(ツクヨミホーム……なんか、そんな名前の店を聞いたことあるような気が……)
〇〇ホーム……
――現世にいるとき、何度も耳にしてきた響き。
工具を買いに行ったり、日用品を買ったり、
とにかく日常に役立つ品々が並んでいる……恐らくそういったお店なのだろう。
「もしかして……ホームセンターみたいなところかな?」
燈がぽつりとつぶやくと、イナバの顔が一瞬で曇った。
「な……っ!?なにその『ほーむせんたー』って!?まさかあかりん、知ってたの!?」
「い、いや……知ってるというか……」
「ま、まぁいいや!とにかくトップクラスで品ぞろえがすごいんだから!!」
少し拗ねたようにそっぽを向き、でもすぐに胸を張って歩き出す。
跳ねるような足取りは、怒っているというより浮かれている子供のようだった。
燈は慌ててその背中を追いかける。
信号はいつの間にか青に変わっていたようで、流れる魂の群れに紛れて二人は進む。
やがて、目的地が見えてきた。
横長に広がる巨大な建物。
緑色の背景に、真っ白な文字で堂々と掲げられた看板。
『TSUKUYOMI』
そのフォント、配色、レイアウト。
まさに現世のホームセンターそのもの。
燈は思わず目をこする。
「あれ……やっぱり見たことあるような……」
そんな燈の戸惑いなどお構いなしに――
イナバは両腕を高く掲げ、声を弾ませる。
「きたーここだよここ!!早速れっつらゴーだよ!!」
勢い余って転びそうになるほどの前のめりで、猪のごとく一直線で入口へ突撃していく。
その無邪気さに、燈はふっと笑い、胸の奥の重たいものが少し軽くなるのを感じた。
(……ちょっとだけ、元気出たかも)
燈は未知の世界に胸を高鳴らせながら、イナバのあとを追った。