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第22話_ツクヨミホーム

ー/ー



自動ドアが「ウィーン」と控えめな音を立てて開いた瞬間、
燈の目の前に広がったのは――まるで果ての見えない巨大倉庫だった。

天井は驚くほど高く、むき出しの鉄骨が複雑に組まれている。
整然と並ぶ棚はどこまでも続いているように見え、照明の白い光が床を均一に照らしていた。

燈は思わず足を止める。

(……広っ……)

天井スピーカーから流れる、どこか脱力感のあるテーマソングが耳に届く。

 今日は待ちに待ったこの日~♪
 楽しみすぎて睡眠不足~♪
 でもきっと大丈夫~♪
 さぁみんなで行こう~♪
 いつでもあなたの傍に~♪
 ツクヨミ♪
 ツクヨミ♪
 ツクヨミホーム~~♪

(うわぁ……変な歌詞だけど、なんか……癖になる……)

妙に耳に残るメロディに、燈は軽く眉をひそめながらも頬を緩めた。

横でイナバが鼻歌交じりにその歌を完璧にハモっている。

「ふっふっふ、ここが冥府最大の道具屋!なんでも揃っちゃうんだよ~!」

しかし燈はその誇らしげな解説を軽く受け流し、問いかける。

「それで……イナバちゃんは何が欲しいの?」

イナバは待ってましたと言わんばかりに、胸をさらに張る。

「ほら、僕ってラーメンいっぱい作るじゃん?実は昨日ね、ついに相棒の金網ざるが壊れちゃったんだよ~~」

語る声には本気の悲しみが滲んでいた。

「麺を全力で湯切りしてたらボキッといっちゃってさぁ、あの日の夜は流石に枕を濡らしたよ」

(濡らしたんだ……そんなに大事だったんだね)

圧の強さに少し押されながらも、燈は苦笑して応える。

「そ、そっか……じゃあ、今日は新たな相棒を探しに来たって感じ?」

「そうでぇええす!さぁ行くぞぉおお!」

その叫びとともに、イナバはまさに脱兎のごとく前方へ飛び出す。

「あぁちょっとぉイナバちゃん!」

燈も慌てて後ろを追う。
広い通路を走ると、棚の向こうから工具や鍋、謎の機械の列が視界をかすめる。

(ほんとに何でもあるんだ……)

ようやくイナバの姿を見つける。

(あ、いた……)

金網ざるを二本抱え、湯切りの動作を真剣に繰り返しているイナバの姿に、燈は立ち止まった。

イナバは眉間にしわを寄せて唸る。

「う~~ん……見た目はこっちがいいけど、これも軽くて使いやすそうだなぁ……迷う」

そして不意にくるりと振り返る。

「ねぇあかりんはどっちがいいと思う!?決めて!!」

金網ざるがぐいっと押し付けられ、燈は思わずのけぞる。

「わ、私が!?えぇーっと……」

重さもほぼ同じ。大きさも同じ。
正直言って、違いなんて全くわからない。

(え……何が違うの、これ……?)

よく見ると、片方がほんのり黄金色に輝いていることに気づく。

(あ、色は違うのかな……?)

燈は首をかしげながらも、黄金色のほうをそっと持ち上げた。

「じゃあ……こっちかな」

するとイナバは期待通りと言わんばかりの表情で、

「やっぱりそっちだよね!!あぁ今日から君が僕の相棒だよ。よぉーし、いい子いい子」

選ばれたざるをまるで本物のペットのように愛情をこめて撫で回す。

燈は思わず笑ってしまう。

(ほんと、楽しそう……)

そのとき、イナバが振り返りニヤリと笑った。

「そうだあかりん!折角だし、つきちゃんに何かプレゼントでも買っていかない?」

「えっ……つきちゃんに……?」

胸が、少しだけ跳ねる。

イナバはいたずらっぽく目を細めた。

「絶対喜ぶって~~。仕事で役立つものとか好きそうじゃない?」

燈はしばらく考え込む。

(何がいいんだろ……喜んでくれるのかな)

人にプレゼントを渡すという経験がほとんどなかったため、なかなかアイデアが浮かばない。

ふと、管理室での姿が思い出される。
長時間座り続け、立ち上がるときにわずかに腰を押さえていた仕草。

「……そういえばこの前、椅子から立ち上がった時……腰、ちょっと痛そうだったかも」

「お、観察してるじゃん!」

「じゃ、じゃあ……クッションとか、どうかな……?」

それを聞いたイナバが手を叩く。

「いいじゃんいいじゃん!腰痛に効くクッションとか!」

方針が決まると、二人は並んで棚の奥へ歩き出した。

広い通路の向こうに、色とりどりのクッションが山積みになっているのが見える。

燈はそっと息を吸う。

(……ちゃんと渡せるかな)

ほんの少しの不安と、
それ以上の小さな期待を胸に抱えながら、
ツクヨミホームの奥へと足を進めた。


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自動ドアが「ウィーン」と控えめな音を立てて開いた瞬間、
燈の目の前に広がったのは――まるで果ての見えない巨大倉庫だった。
天井は驚くほど高く、むき出しの鉄骨が複雑に組まれている。
整然と並ぶ棚はどこまでも続いているように見え、照明の白い光が床を均一に照らしていた。
燈は思わず足を止める。
(……広っ……)
天井スピーカーから流れる、どこか脱力感のあるテーマソングが耳に届く。
 今日は待ちに待ったこの日~♪
 楽しみすぎて睡眠不足~♪
 でもきっと大丈夫~♪
 さぁみんなで行こう~♪
 いつでもあなたの傍に~♪
 ツクヨミ♪
 ツクヨミ♪
 ツクヨミホーム~~♪
(うわぁ……変な歌詞だけど、なんか……癖になる……)
妙に耳に残るメロディに、燈は軽く眉をひそめながらも頬を緩めた。
横でイナバが鼻歌交じりにその歌を完璧にハモっている。
「ふっふっふ、ここが冥府最大の道具屋!なんでも揃っちゃうんだよ~!」
しかし燈はその誇らしげな解説を軽く受け流し、問いかける。
「それで……イナバちゃんは何が欲しいの?」
イナバは待ってましたと言わんばかりに、胸をさらに張る。
「ほら、僕ってラーメンいっぱい作るじゃん?実は昨日ね、ついに相棒の金網ざるが壊れちゃったんだよ~~」
語る声には本気の悲しみが滲んでいた。
「麺を全力で湯切りしてたらボキッといっちゃってさぁ、あの日の夜は流石に枕を濡らしたよ」
(濡らしたんだ……そんなに大事だったんだね)
圧の強さに少し押されながらも、燈は苦笑して応える。
「そ、そっか……じゃあ、今日は新たな相棒を探しに来たって感じ?」
「そうでぇええす!さぁ行くぞぉおお!」
その叫びとともに、イナバはまさに脱兎のごとく前方へ飛び出す。
「あぁちょっとぉイナバちゃん!」
燈も慌てて後ろを追う。
広い通路を走ると、棚の向こうから工具や鍋、謎の機械の列が視界をかすめる。
(ほんとに何でもあるんだ……)
ようやくイナバの姿を見つける。
(あ、いた……)
金網ざるを二本抱え、湯切りの動作を真剣に繰り返しているイナバの姿に、燈は立ち止まった。
イナバは眉間にしわを寄せて唸る。
「う~~ん……見た目はこっちがいいけど、これも軽くて使いやすそうだなぁ……迷う」
そして不意にくるりと振り返る。
「ねぇあかりんはどっちがいいと思う!?決めて!!」
金網ざるがぐいっと押し付けられ、燈は思わずのけぞる。
「わ、私が!?えぇーっと……」
重さもほぼ同じ。大きさも同じ。
正直言って、違いなんて全くわからない。
(え……何が違うの、これ……?)
よく見ると、片方がほんのり黄金色に輝いていることに気づく。
(あ、色は違うのかな……?)
燈は首をかしげながらも、黄金色のほうをそっと持ち上げた。
「じゃあ……こっちかな」
するとイナバは期待通りと言わんばかりの表情で、
「やっぱりそっちだよね!!あぁ今日から君が僕の相棒だよ。よぉーし、いい子いい子」
選ばれたざるをまるで本物のペットのように愛情をこめて撫で回す。
燈は思わず笑ってしまう。
(ほんと、楽しそう……)
そのとき、イナバが振り返りニヤリと笑った。
「そうだあかりん!折角だし、つきちゃんに何かプレゼントでも買っていかない?」
「えっ……つきちゃんに……?」
胸が、少しだけ跳ねる。
イナバはいたずらっぽく目を細めた。
「絶対喜ぶって~~。仕事で役立つものとか好きそうじゃない?」
燈はしばらく考え込む。
(何がいいんだろ……喜んでくれるのかな)
人にプレゼントを渡すという経験がほとんどなかったため、なかなかアイデアが浮かばない。
ふと、管理室での姿が思い出される。
長時間座り続け、立ち上がるときにわずかに腰を押さえていた仕草。
「……そういえばこの前、椅子から立ち上がった時……腰、ちょっと痛そうだったかも」
「お、観察してるじゃん!」
「じゃ、じゃあ……クッションとか、どうかな……?」
それを聞いたイナバが手を叩く。
「いいじゃんいいじゃん!腰痛に効くクッションとか!」
方針が決まると、二人は並んで棚の奥へ歩き出した。
広い通路の向こうに、色とりどりのクッションが山積みになっているのが見える。
燈はそっと息を吸う。
(……ちゃんと渡せるかな)
ほんの少しの不安と、
それ以上の小さな期待を胸に抱えながら、
ツクヨミホームの奥へと足を進めた。