ep45 魔術師
ー/ー
「か、勘弁してくれ!」
仮面の人は手に鈍器を持っていて、髭面のオジサンを脅しているようです。髭面のオジサンは後ずさりながら尻もちをつき、ひどく怯えています。
「た、たのむ! 命だけは……」
「死ぬかどうかは、オマエしだい」
仮面の人は鈍器を振り上げました。
「や、やめろぉ!」
ぼくは思わず声を張り上げてしまいました。やってしまったと思い、すぐさま手で口を塞ぎます。しかしもう遅い。
仮面の人は鈍器を振り上げたまま、ぬらりとぼくの方へ首を曲げました。
「なにオマエ?」
「あ、あなたこそ、なな何者なんですか?」
「どうも。おれたち〔フリーダム〕です」
「!」
ぼくはガタガタと恐怖に震えていました。なのに、どうしてわざわざ声を上げてしまったのでしょう。
「ひ、ひいぃぃぃ!」
仮面の人がぼくに気を取られている隙に、オジサンは転がるようにドタドタと逃げていきました。ぼくは仮面の人と一対一になってしまいます。
「この街の少年……でもないな? オマエ」
仮面の人はゆっくりとぼくへ近づいてきました。
「に、逃げないと!」
ぼくはきびすを返して反対方向へと駆け出そうとします。ところがです。
「!」
ちょうどそちら側からも別の仮面の人たちがこちらへと接近してくるのです。
「こ、こっちにも! ひいぃぃぃ!」
逃げたはずのオジサンが逃げるように元の地点へと戻ってきました。どうやらオジサンが逃げた方向にも仮面の人たちがいたようです。
「ど、どうしよう……!」
何か手立てはないのでしょうか。一秒でも早く〔フリーダム〕から逃れないと。ぼくは恐怖の汗を滲ませながら、退路を探して眼をキョロキョロさせました。するとぼくの視線は、ひとりの仮面の人へ止まりました。
「あ、あのひと……」
その仮面の人は、ぼくが逃げようとした方向から歩いて来ていました。ぼくが注目したのは、彼の手に握られていた物です。それは武器ではありません。先端部分が奇妙に捻れ曲がった木製の杖です。
「あれは……」
ぼくは理解しました。その杖がどんな物で、彼が何者であるかを。すなわち、それも武器だと。
「魔術師だ!」
なぜか仮面の魔術師は、ぼくから十メートルぐらいの位置でピタリと立ち止まりました。それに合わせて彼の背後左右にいる仮面の人たちも足を止めました。
「魔術師、と言ったか? そこのキミ」
仮面の魔術師がぼくへ話しかけてきました。その返答次第で命運を左右される気がしたぼくは、言葉が出なくなってしまいます。
「そうか、沈黙か。ならこうしようか」
仮面の魔術師は、おもむろに杖をぼくに向けて構えると、なにかを呟きはじめます。
「深淵なる万物万象の源泉よ。我が劤と為り、彼の者を燃やし尽くし給へ。〔アルカーナ・フランマ〕」
それがなにかをぼくは知っています。これは魔法の詠唱。したがって有言魔術です!
「!」
仮面の魔術師の杖の先にです。ボォォォッと炎の塊が発生したかと思うと、
ゴオォォォッ!
それはぼくに向かって非情に放射されました。
「あっ…」
術者の仮面を炎の光が赤く照らしました。
ぼくの瞳に、迫る炎が眩しく光りました。
「うわぁぁ!」
このままだとぼくは炎に焼かれて死ぬ。だが逃れられない。もう間に合わない。ぼくは死を覚悟して、まぶたをぐっと閉じました。まさにその時です。
ブワァァッ!
ぼくの目前で、一陣の凄まじい旋風が巻き起こったかのような、不思議で力強い風を感じたのです。
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
おすすめ作品を読み込み中です…
この作品と似た作品
似た傾向の作品は見つかりませんでした。
この作品を読んだ人が読んでいる作品
読者の傾向からおすすめできる作品がありませんでした。
おすすめ作品は現在準備中です。
おすすめ作品の取得に失敗しました。時間をおいて再度お試しください。
「か、勘弁してくれ!」
仮面の人は手に鈍器を持っていて、髭面のオジサンを脅しているようです。髭面のオジサンは後ずさりながら尻もちをつき、ひどく怯えています。
「た、たのむ! 命だけは……」
「死ぬかどうかは、オマエしだい」
仮面の人は鈍器を振り上げました。
「や、やめろぉ!」
ぼくは思わず声を張り上げてしまいました。やってしまったと思い、すぐさま手で口を塞ぎます。しかしもう遅い。
仮面の人は鈍器を振り上げたまま、ぬらりとぼくの方へ首を曲げました。
「なにオマエ?」
「あ、あなたこそ、なな何者なんですか?」
「どうも。おれたち〔フリーダム〕です」
「!」
ぼくはガタガタと恐怖に震えていました。なのに、どうしてわざわざ声を上げてしまったのでしょう。
「ひ、ひいぃぃぃ!」
仮面の人がぼくに気を取られている隙に、オジサンは転がるようにドタドタと逃げていきました。ぼくは仮面の人と一対一になってしまいます。
「この街の少年……でもないな? オマエ」
仮面の人はゆっくりとぼくへ近づいてきました。
「に、逃げないと!」
ぼくはきびすを返して反対方向へと駆け出そうとします。ところがです。
「!」
ちょうどそちら側からも別の仮面の人たちがこちらへと接近してくるのです。
「こ、こっちにも! ひいぃぃぃ!」
逃げたはずのオジサンが逃げるように元の地点へと戻ってきました。どうやらオジサンが逃げた方向にも仮面の人たちがいたようです。
「ど、どうしよう……!」
何か手立てはないのでしょうか。一秒でも早く〔フリーダム〕から逃れないと。ぼくは恐怖の汗を滲ませながら、退路を探して眼をキョロキョロさせました。するとぼくの視線は、ひとりの仮面の人へ止まりました。
「あ、あのひと……」
その仮面の人は、ぼくが逃げようとした方向から歩いて来ていました。ぼくが注目したのは、彼の手に握られていた物です。それは武器ではありません。先端部分が奇妙に捻れ曲がった木製の杖です。
「あれは……」
ぼくは理解しました。その杖がどんな物で、彼が何者であるかを。すなわち、それも武器だと。
「魔術師だ!」
なぜか仮面の魔術師は、ぼくから十メートルぐらいの位置でピタリと立ち止まりました。それに合わせて彼の背後左右にいる仮面の人たちも足を止めました。
「魔術師、と言ったか? そこのキミ」
仮面の魔術師がぼくへ話しかけてきました。その返答次第で命運を左右される気がしたぼくは、言葉が出なくなってしまいます。
「そうか、沈黙か。ならこうしようか」
仮面の魔術師は、おもむろに杖をぼくに向けて構えると、なにかを呟きはじめます。
「深淵なる万物万象の源泉よ。我が劤と為り、彼の者を燃やし尽くし給へ。〔アルカーナ・フランマ〕」
それがなにかをぼくは知っています。これは魔法の詠唱。したがって有言魔術です!
「!」
仮面の魔術師の杖の先にです。ボォォォッと炎の塊が発生したかと思うと、
ゴオォォォッ!
それはぼくに向かって非情に放射されました。
「あっ…」
術者の仮面を炎の光が赤く照らしました。
ぼくの瞳に、迫る炎が眩しく光りました。
「うわぁぁ!」
このままだとぼくは炎に焼かれて死ぬ。だが逃れられない。もう間に合わない。ぼくは死を覚悟して、まぶたをぐっと閉じました。まさにその時です。
ブワァァッ!
ぼくの目前で、一陣の凄まじい旋風が巻き起こったかのような、不思議で力強い風を感じたのです。