ep44 危機

ー/ー



 すっかり街も寝静まった夜中の頃でした。
 それは突然でした。ドーンという爆撃音が、外からけたたましく鳴り響いたのです。

「!?」

 ぼくはビクッとして目を覚まし、毛布を引っぺがして飛び起きました。

「な、なに?」

 窓に駆け寄ると、カーテンの隅をそっと開け、外をのぞきます。

「な、なにが起きたんだろ……あ、あれ、あっちの方から火と煙があがっている? 火事が起きたのか……でも、さっきの音はいったい……」

 その時です。ぼくはピクッと目に見えない何かを感知するように、深い何かを感じ取りました。

「この感じ……知っている。たぶん……魔法だ!」

 次の瞬間です。窓の外に閃光が瞬いたかと思うと、ドーンという爆撃音がまたしても大きく鳴り響きました。先ほどよりも明らかに近い距離です。

「こ、ここもヤバいかも!」

 あわてて着替えて荷物をまとめていると、部屋のドアがドンドンと激しく叩かれました。

「早く逃げろ!」

 避難を叫ぶ怒声です。

「は、はい!」

 ぼくはバンと部屋を飛び出して、他の宿泊客と共に転がるように表に出ていきました。
 表に出ると、夜中にも関わらずやけに街が騒々しく明るい。当然です。そこかしこで火が上がっているからです。

「ここは危ない! 街の外へ逃げろ!」
「死にたくねぇ!」
「なんなんだよいったい!」
「きゃあー!」

 恐怖に逃げまどう人々。まるで一年前の戦争が再現されたかのようです。

「ぼ、ぼくも逃げなきゃ!」

 他の人たちと同様に、ぼくも街を脱出しようと走り出します。しかし、途上でぼくはピタッと足を止めます。なぜなら、ぼくはこの混乱の元凶に気づいていたからです。

「これは〔フリーダム〕によるものだ! しかも、ヤツらの中にはおそらく、魔術師もいる!」

 つまりぼくは〔フリーダム〕をこの目で見たいと思ってしまったのです。絶対に小説の糧になると、そう思ってしまったのです。これは作家の本能でしょうか。

「たしか、あっちのほうから〔魔力〕を感じた……!」

 ぼくはまわりの人達とは反対の方向へ進んでいきました。完全に度が過ぎた行動。お母さんが知ったら、死ぬほどぼくを叱るでしょう。

「こ、このへんだったような……あそこは」

 目指す方向の先、ぼくの視界に入ったのは、つい数時間前にも訪れていた酒場です。
 パッと見たところ、お店には被害もなく、まだ営業していたらしい灯りもついています。けど、なにか様子がおかしい。

「な、なんだろ……あ、あれは……」

 酒場前からやや退いた所まで行き、佇んでいると、それは現れました。
 入口のドアが開き、中からふたりの人が出てきます。ひとりは、髭面の太ったオジサンです。
 
「あの人は、ぼくに絡んできたオジサン!」

 思わぬ再会に驚きを隠せないぼくでしたが、ぼくが本当に驚いたのはもうひとりの方でした。

「か、仮面?」

 無機質な人面をかたどった奇妙な仮面を顔面にへばりつけ、白い服を着た人です。


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 すっかり街も寝静まった夜中の頃でした。
 それは突然でした。ドーンという爆撃音が、外からけたたましく鳴り響いたのです。
「!?」
 ぼくはビクッとして目を覚まし、毛布を引っぺがして飛び起きました。
「な、なに?」
 窓に駆け寄ると、カーテンの隅をそっと開け、外をのぞきます。
「な、なにが起きたんだろ……あ、あれ、あっちの方から火と煙があがっている? 火事が起きたのか……でも、さっきの音はいったい……」
 その時です。ぼくはピクッと目に見えない何かを感知するように、深い何かを感じ取りました。
「この感じ……知っている。たぶん……魔法だ!」
 次の瞬間です。窓の外に閃光が瞬いたかと思うと、ドーンという爆撃音がまたしても大きく鳴り響きました。先ほどよりも明らかに近い距離です。
「こ、ここもヤバいかも!」
 あわてて着替えて荷物をまとめていると、部屋のドアがドンドンと激しく叩かれました。
「早く逃げろ!」
 避難を叫ぶ怒声です。
「は、はい!」
 ぼくはバンと部屋を飛び出して、他の宿泊客と共に転がるように表に出ていきました。
 表に出ると、夜中にも関わらずやけに街が騒々しく明るい。当然です。そこかしこで火が上がっているからです。
「ここは危ない! 街の外へ逃げろ!」
「死にたくねぇ!」
「なんなんだよいったい!」
「きゃあー!」
 恐怖に逃げまどう人々。まるで一年前の戦争が再現されたかのようです。
「ぼ、ぼくも逃げなきゃ!」
 他の人たちと同様に、ぼくも街を脱出しようと走り出します。しかし、途上でぼくはピタッと足を止めます。なぜなら、ぼくはこの混乱の元凶に気づいていたからです。
「これは〔フリーダム〕によるものだ! しかも、ヤツらの中にはおそらく、魔術師もいる!」
 つまりぼくは〔フリーダム〕をこの目で見たいと思ってしまったのです。絶対に小説の糧になると、そう思ってしまったのです。これは作家の本能でしょうか。
「たしか、あっちのほうから〔魔力〕を感じた……!」
 ぼくはまわりの人達とは反対の方向へ進んでいきました。完全に度が過ぎた行動。お母さんが知ったら、死ぬほどぼくを叱るでしょう。
「こ、このへんだったような……あそこは」
 目指す方向の先、ぼくの視界に入ったのは、つい数時間前にも訪れていた酒場です。
 パッと見たところ、お店には被害もなく、まだ営業していたらしい灯りもついています。けど、なにか様子がおかしい。
「な、なんだろ……あ、あれは……」
 酒場前からやや退いた所まで行き、佇んでいると、それは現れました。
 入口のドアが開き、中からふたりの人が出てきます。ひとりは、髭面の太ったオジサンです。
「あの人は、ぼくに絡んできたオジサン!」
 思わぬ再会に驚きを隠せないぼくでしたが、ぼくが本当に驚いたのはもうひとりの方でした。
「か、仮面?」
 無機質な人面をかたどった奇妙な仮面を顔面にへばりつけ、白い服を着た人です。