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第3楽章〜メヌエット〜⑦

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 同日 正午〜

 壮馬とたちとの打ち合わせが終わり、桃華たちが制作した高校野球の取材記録の確認を終えると、昼食の時間になった。
 この日の昼食も、これまでと同じく、部員全員で施設内の大食堂での会食で、ランチのメニューは、チキンライスだった。

 コンソメスープが添えられたケチャップベースの炒め飯は、ボリューム満点だったが、朝食がパン食だったため、空腹気味だったオレは、あっと言う間にそれを平らげてしまった。
 先生やOB・OGの先輩たちと雑談混じりの取材をしていたこれまでと違い、今日は、午前中に打ち合わせを行っていたので、その広報部のメンバーと語らい合いながら、このあと、桃華が昼食を食べ終わったら彼女を連れて、桜井先生たちに午後の取材のあいさつに行こう、と考えていたのだが――――――。

 これまでの合宿取材や桃華たちが制作した動画などをネタに談笑していたオレたちに、吹奏楽部の早見部長が声をかけてきた。

「黒田くん、あなたにお客さんが来てるって。事務所のところに誰か来てるみたいよ」

 合宿利用者の代表として連絡を受け取ったのだろうか? オレは、訪問者の来訪を伝えてくれた早見先輩に、

「ありがとうございます」

と礼を言ったあと、オレに来客なんて誰だろう―――? と、不思議に思いながら、大食堂の隣にある事務所に向かう。

 そして、食堂の入口を出たところで、訪問者の正体に気づいた。

「えっ、シロ――――――!? それに、宮野まで……なんで、ここに居るんだ?」

 宿泊施設の事務所の前には、オレのよく知るクラスメート(という関係性でしかない……いまのところは)と、広報部の後輩が立っていた。

「クロ! 昨日、この近くでお仕事があったから、ペンションに一泊して、クロたちのようすを見に来たんだ」

「そ、そうか……」

「ね、ね? 驚いた?」

「そ、そりゃ、もちろん驚くよ。わざわざ、合宿所まで……なにしに来たんだ?」

「え〜? いま言ったじゃない。どうしてるかな? って、クロたちのようすを見に来たの! でも……もしかして……お邪魔だった?」

 これまで快活に話していたシロは、一転して、伏し目がちになり、上目遣いでたずねてくる。
 その一見、しおらしい態度に困惑しつつ、言葉を返す。

「い、いや……いまは、昼飯の時間帯だし、迷惑ってことは無いけど……」

「ホントに? 良かった! やっぱり、クロはわたしに会いたかったんだね!?」

 満面の笑みを浮かべた彼女は、そう言って、両手でオレの手を握ってきたのだが――――――。

 その瞬間、背後で「あ〜〜〜〜っ!」と大きな声が上がった。

「どうして、あなたがここに居るんですか!?」

 事務所と食堂に隣接する宿泊所の広い玄関ルームに響き渡る声で問い詰める声の主は、2時間ほど前に合宿取材に合流した下級生だった。

 桃華の声に、またも一瞬にして表情を切り替えたシロが、淡々と答える。

「佐倉さん、あなたには関係ないことだけど……わたしは、()()()()()()()()()()から、黒田クンがどんな風に活動してるのかな? って見に来ただけ。それより、昨日まで広報部の取材活動をしていたあなたが、どうしてここに居るの? わたしには、その方が疑問なんだけど?」

 声に抑揚が無いものの、そのことで、かえってトゲがあるように聞こえるような口調で返答した同級生に、下級生も負けずに言い返す。

「ワタシは、昨日までの作業を終えて、朝早く自宅を出てこの合宿取材に合流したんです! これも、広報部の正式な活動ですから。()()()()()()()には関係ありませんよね?」

「クッ……相変わらず、口が減らないわね……」

 キッ―――と自分を睨みつけるシロに対して、桃華も不服そうな表情で睨み返す。
 そして、二人はほぼ同時に口を開いた。

「雪乃!」
「宮野さん!」

 名指しされた下級生は、身体をビクリと振る合わせて返事をする。
 
「は、はい!」

「どうして、この子がここに来るって言わなかったの?」
「どうして、この人がここに来るって教えてくれなかったの?」

 シロと桃華は、互いに互いを指差しながら、宮野に問い詰めるように語りかける。

「申し訳ないべ……だども、わたすは佐倉さんが合宿に来るなんて知らなかったし、佐倉さんにも、わたすの旅行先を聞かれなかったから……」

 殺気立った表情で詰問する二人に対して、弁明するように返答する下級生の姿が、あまりにも不憫で思わず宮野をフォローする。

「そ、そう言うことなら仕方ないよな。実際、オレも壮馬も桃華がここに来るなんて、昨日の夜まで知らなかったし、まして、シロが合宿所に訪ねてくるなんて思ってもみなかったからさ」

 しどろもどろになりながらも、それだけ伝えると、シロと桃華は、

「まあ、クロがそう言うなら……」
「そうですね、くろセンパイの言うとおりかもです」

と、なんとか怒りの鉾を収め、

「ゴメンね、雪乃。取り乱しちゃって……」
「ごめんなさい、宮野さん。ワタシも、ちゃんと話を聞いておくべきだったね」

と言って、ばっちりを受けるかたちになった宮野に謝罪した。

「大丈夫だべ。気にしてないから」

 苦笑しながら、二人に返答する下級生だが、ちょっとした騒ぎになった玄関ホールには、野次馬のように吹奏楽部のメンバーが集まってくる。
 その中には、当然、いわゆる「いっちょ噛み」な性格の生徒会長兼吹奏楽部副部長である、あの人の姿もあった。


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 同日 正午〜
 壮馬とたちとの打ち合わせが終わり、桃華たちが制作した高校野球の取材記録の確認を終えると、昼食の時間になった。
 この日の昼食も、これまでと同じく、部員全員で施設内の大食堂での会食で、ランチのメニューは、チキンライスだった。
 コンソメスープが添えられたケチャップベースの炒め飯は、ボリューム満点だったが、朝食がパン食だったため、空腹気味だったオレは、あっと言う間にそれを平らげてしまった。
 先生やOB・OGの先輩たちと雑談混じりの取材をしていたこれまでと違い、今日は、午前中に打ち合わせを行っていたので、その広報部のメンバーと語らい合いながら、このあと、桃華が昼食を食べ終わったら彼女を連れて、桜井先生たちに午後の取材のあいさつに行こう、と考えていたのだが――――――。
 これまでの合宿取材や桃華たちが制作した動画などをネタに談笑していたオレたちに、吹奏楽部の早見部長が声をかけてきた。
「黒田くん、あなたにお客さんが来てるって。事務所のところに誰か来てるみたいよ」
 合宿利用者の代表として連絡を受け取ったのだろうか? オレは、訪問者の来訪を伝えてくれた早見先輩に、
「ありがとうございます」
と礼を言ったあと、オレに来客なんて誰だろう―――? と、不思議に思いながら、大食堂の隣にある事務所に向かう。
 そして、食堂の入口を出たところで、訪問者の正体に気づいた。
「えっ、シロ――――――!? それに、宮野まで……なんで、ここに居るんだ?」
 宿泊施設の事務所の前には、オレのよく知るクラスメート(という関係性でしかない……いまのところは)と、広報部の後輩が立っていた。
「クロ! 昨日、この近くでお仕事があったから、ペンションに一泊して、クロたちのようすを見に来たんだ」
「そ、そうか……」
「ね、ね? 驚いた?」
「そ、そりゃ、もちろん驚くよ。わざわざ、合宿所まで……なにしに来たんだ?」
「え〜? いま言ったじゃない。どうしてるかな? って、クロたちのようすを見に来たの! でも……もしかして……お邪魔だった?」
 これまで快活に話していたシロは、一転して、伏し目がちになり、上目遣いでたずねてくる。
 その一見、しおらしい態度に困惑しつつ、言葉を返す。
「い、いや……いまは、昼飯の時間帯だし、迷惑ってことは無いけど……」
「ホントに? 良かった! やっぱり、クロはわたしに会いたかったんだね!?」
 満面の笑みを浮かべた彼女は、そう言って、両手でオレの手を握ってきたのだが――――――。
 その瞬間、背後で「あ〜〜〜〜っ!」と大きな声が上がった。
「どうして、あなたがここに居るんですか!?」
 事務所と食堂に隣接する宿泊所の広い玄関ルームに響き渡る声で問い詰める声の主は、2時間ほど前に合宿取材に合流した下級生だった。
 桃華の声に、またも一瞬にして表情を切り替えたシロが、淡々と答える。
「佐倉さん、あなたには関係ないことだけど……わたしは、|た《・》|ま《・》|た《・》|ま《・》|近《・》|く《・》|に《・》|寄《・》|っ《・》|た《・》から、黒田クンがどんな風に活動してるのかな? って見に来ただけ。それより、昨日まで広報部の取材活動をしていたあなたが、どうしてここに居るの? わたしには、その方が疑問なんだけど?」
 声に抑揚が無いものの、そのことで、かえってトゲがあるように聞こえるような口調で返答した同級生に、下級生も負けずに言い返す。
「ワタシは、昨日までの作業を終えて、朝早く自宅を出てこの合宿取材に合流したんです! これも、広報部の正式な活動ですから。|部《・》|外《・》|者《・》|の《・》|あ《・》|な《・》|た《・》には関係ありませんよね?」
「クッ……相変わらず、口が減らないわね……」
 キッ―――と自分を睨みつけるシロに対して、桃華も不服そうな表情で睨み返す。
 そして、二人はほぼ同時に口を開いた。
「雪乃!」
「宮野さん!」
 名指しされた下級生は、身体をビクリと振る合わせて返事をする。
「は、はい!」
「どうして、この子がここに来るって言わなかったの?」
「どうして、この人がここに来るって教えてくれなかったの?」
 シロと桃華は、互いに互いを指差しながら、宮野に問い詰めるように語りかける。
「申し訳ないべ……だども、わたすは佐倉さんが合宿に来るなんて知らなかったし、佐倉さんにも、わたすの旅行先を聞かれなかったから……」
 殺気立った表情で詰問する二人に対して、弁明するように返答する下級生の姿が、あまりにも不憫で思わず宮野をフォローする。
「そ、そう言うことなら仕方ないよな。実際、オレも壮馬も桃華がここに来るなんて、昨日の夜まで知らなかったし、まして、シロが合宿所に訪ねてくるなんて思ってもみなかったからさ」
 しどろもどろになりながらも、それだけ伝えると、シロと桃華は、
「まあ、クロがそう言うなら……」
「そうですね、くろセンパイの言うとおりかもです」
と、なんとか怒りの鉾を収め、
「ゴメンね、雪乃。取り乱しちゃって……」
「ごめんなさい、宮野さん。ワタシも、ちゃんと話を聞いておくべきだったね」
と言って、ばっちりを受けるかたちになった宮野に謝罪した。
「大丈夫だべ。気にしてないから」
 苦笑しながら、二人に返答する下級生だが、ちょっとした騒ぎになった玄関ホールには、野次馬のように吹奏楽部のメンバーが集まってくる。
 その中には、当然、いわゆる「いっちょ噛み」な性格の生徒会長兼吹奏楽部副部長である、あの人の姿もあった。