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第19話_図星

ー/ー



すりガラス越しの灯りが、手招きするようにゆらゆらと揺れていた。
その温もりを求めて、燈は引き戸へそっと手をかける。

ガラリ――

入店の合図の鈴が、控えめに、けれど優しく鳴った。
胸の奥が少しだけ軽くなる。
この音は、不思議と心を落ち着かせてくれる。

店内では、イナバがテーブルの拭き取りをしていた。
普段は昼寝していることが多いだけに、彼女の仕事風景は実に珍しい。

「いらっしゃっせー!……って、あかり~~ん!!」

燈の姿を認識した瞬間、イナバの瞳は星のように輝き、タオルは空中へ放り投げられた。

次の瞬間――
燈の身体がぐわっと後方へ引かれた。

「ぐぇっ!?ひ、久しぶりイナバちゃん……!」

イナバは全力の抱きつきで燈を包み込み、その首筋へ鼻先を寄せ、すーーー、と深く息を吸う。

「んん~~たまらん!!相変わらずいいにおい……」

「ちょ、ちょっとイナバちゃん!?」

燈は顔を赤くしながらも、どうにかイナバを引きはがそうとする。

「いやぁ~~癒やされるぅ~~!」

ようやく体勢を立て直した燈は、軽く息を整えた。

「相変わらずだね……」

「当然!あかりん補給は大事だからね!」

もうお手上げ、といった様子で燈は肩を落とす。

「あぁもう、ちょっと落ち着いて?まずは座って話そう?」

事態はようやく収束し、カウンター席へと落ち着いた。

イナバはコップの水を一息に飲み干し、テーブルにドンッと置く。

「それで?今日は何しに来たのさ?」

燈は少し視線を落とす。

「あぁ……いや、ちょっと顔見に来ただけ」

その声は、わずかに沈んでいた。

イナバはその変化を見逃さない。
ほんの少しだけ口角を上げ、いたずらっぽい目で覗き込む。

「『つきちゃんに怒られたから、イナバちゃんに慰めてもらいたくて来ましたー』……ってところ?」

図星だった。

「うっ……」

お手本のような反応をしてしまう燈。

イナバは肩をすくめ、今度は優しく燈の背中へ手を添えた。
さっきまでの騒がしさとは違う、静かなタッチ。

「素直じゃないなぁもう。愚痴なんていくらでも聞いてあげるのに~~」

燈の胸がぎゅっと締まる。

「うん……ごめんね」

思わずこぼれた謝罪に、イナバはすぐに燈の肩を抱き寄せる。

「ほらそうやってすぐ謝らないの!僕たち友達じゃないかぁ~~!ほら、話してごらん?」

(『友達』……)

その言葉が、じんわりと胸に沁みる。

現世で誰にも頼れず、ひとりで抱え込んできた癖が、
少しだけ軋んで、剝がれ落ちた感触がした。

燈はゆっくりと息を吸う。

(大丈夫……ここなら、話せる)

そして、気持ちをぶつける準備を始めた。


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すりガラス越しの灯りが、手招きするようにゆらゆらと揺れていた。
その温もりを求めて、燈は引き戸へそっと手をかける。
ガラリ――
入店の合図の鈴が、控えめに、けれど優しく鳴った。
胸の奥が少しだけ軽くなる。
この音は、不思議と心を落ち着かせてくれる。
店内では、イナバがテーブルの拭き取りをしていた。
普段は昼寝していることが多いだけに、彼女の仕事風景は実に珍しい。
「いらっしゃっせー!……って、あかり~~ん!!」
燈の姿を認識した瞬間、イナバの瞳は星のように輝き、タオルは空中へ放り投げられた。
次の瞬間――
燈の身体がぐわっと後方へ引かれた。
「ぐぇっ!?ひ、久しぶりイナバちゃん……!」
イナバは全力の抱きつきで燈を包み込み、その首筋へ鼻先を寄せ、すーーー、と深く息を吸う。
「んん~~たまらん!!相変わらずいいにおい……」
「ちょ、ちょっとイナバちゃん!?」
燈は顔を赤くしながらも、どうにかイナバを引きはがそうとする。
「いやぁ~~癒やされるぅ~~!」
ようやく体勢を立て直した燈は、軽く息を整えた。
「相変わらずだね……」
「当然!あかりん補給は大事だからね!」
もうお手上げ、といった様子で燈は肩を落とす。
「あぁもう、ちょっと落ち着いて?まずは座って話そう?」
事態はようやく収束し、カウンター席へと落ち着いた。
イナバはコップの水を一息に飲み干し、テーブルにドンッと置く。
「それで?今日は何しに来たのさ?」
燈は少し視線を落とす。
「あぁ……いや、ちょっと顔見に来ただけ」
その声は、わずかに沈んでいた。
イナバはその変化を見逃さない。
ほんの少しだけ口角を上げ、いたずらっぽい目で覗き込む。
「『つきちゃんに怒られたから、イナバちゃんに慰めてもらいたくて来ましたー』……ってところ?」
図星だった。
「うっ……」
お手本のような反応をしてしまう燈。
イナバは肩をすくめ、今度は優しく燈の背中へ手を添えた。
さっきまでの騒がしさとは違う、静かなタッチ。
「素直じゃないなぁもう。愚痴なんていくらでも聞いてあげるのに~~」
燈の胸がぎゅっと締まる。
「うん……ごめんね」
思わずこぼれた謝罪に、イナバはすぐに燈の肩を抱き寄せる。
「ほらそうやってすぐ謝らないの!僕たち友達じゃないかぁ~~!ほら、話してごらん?」
(『友達』……)
その言葉が、じんわりと胸に沁みる。
現世で誰にも頼れず、ひとりで抱え込んできた癖が、
少しだけ軋んで、剝がれ落ちた感触がした。
燈はゆっくりと息を吸う。
(大丈夫……ここなら、話せる)
そして、気持ちをぶつける準備を始めた。