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02

ー/ー



 ヒビキは人形を置き、二、三歩後ずさった。
「疲れてるのかな……」
 自分に言い聞かせるように呟く。
 公演の準備に追われ、毎晩遅くまで稽古場に残っていた。
 幻覚を見てもおかしくない。
 けれども、コハルの表情は明らかに、さっきまでとは違って見えた。
 何かを訴えているような、助けを求めているような、そんな切実さが顔に宿っていた。

 その夜、稽古場には他には誰もいなかった。
 窓の外は完全に暗くなり、街灯の光だけが頼りだった。
 ヒビキはコハルを抱えて舞台の端に座り、セリフの確認をしていた。
 人形を膝の上に置き、台本を片手に、小声で言葉を紡いでいく。
「君は一人じゃない。僕がいるから」
 台本の中の少年のセリフ。
 ヒビキはそれを何度も繰り返す。
 このセリフを言うたびに、胸の奥が温かくなるような気がした。
 人形は応えない。
 けれども、セリフを聞いてくれているように思えた。



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みんなのリアクション

 ヒビキは人形を置き、二、三歩後ずさった。
「疲れてるのかな……」
 自分に言い聞かせるように呟く。
 公演の準備に追われ、毎晩遅くまで稽古場に残っていた。
 幻覚を見てもおかしくない。
 けれども、コハルの表情は明らかに、さっきまでとは違って見えた。
 何かを訴えているような、助けを求めているような、そんな切実さが顔に宿っていた。
 その夜、稽古場には他には誰もいなかった。
 窓の外は完全に暗くなり、街灯の光だけが頼りだった。
 ヒビキはコハルを抱えて舞台の端に座り、セリフの確認をしていた。
 人形を膝の上に置き、台本を片手に、小声で言葉を紡いでいく。
「君は一人じゃない。僕がいるから」
 台本の中の少年のセリフ。
 ヒビキはそれを何度も繰り返す。
 このセリフを言うたびに、胸の奥が温かくなるような気がした。
 人形は応えない。
 けれども、セリフを聞いてくれているように思えた。