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03

ー/ー



 稽古は深夜に差しかかった。
 壁の時計が午前二時を指している。
 ヒビキは稽古を終えようと、コハルを元の位置、舞台中央の椅子に戻そうとした。
 人形を両手で抱え、慎重に歩を進める。
 そして、人形を椅子に座らせ、姿勢を整えたその瞬間だった。
 突然、コハルの瞳が光った。
 いや、光ったというより、輝いた。
 そして、こう聞こえた。
「……ヒビキ」
 それは、風の音でも、木の軋む音でもない。
 確かに、名前を呼ぶ声だった。
 透明で、どこか儚げで、けれども確かな意思を持った声。
「コハル……?」
 ヒビキは混乱した。
 頭の中が真っ白になり、同時に無数の疑問が渦巻く。
 手にしていたのは、ただの木製人形のはず。
 この劇場で何年も使われてきた古い人形。
 何度も修繕を重ね、何人もの人形遣いの手を経て、今ここにある人形。
 しかし、目の前にいるのは、生きている少女のようだった。
 目は、まっすぐヒビキを見ている。
「コハルは……人間なのか?」
 震える声で、ヒビキは尋ねた。
 そうだとしたら、何かの呪いなのか、魔法なのか、それとも……
「そうよ。ヒビキには、私が人間だってわかるのね」
「……そうか……コハルは人間だったのか……僕と同じ、人間だったのか……」
「いいえ、それは違います」

 “人間”であるコハルは、ヒビキにこう言った。

「ヒビキ、あなたは“人形”なの」



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 稽古は深夜に差しかかった。
 壁の時計が午前二時を指している。
 ヒビキは稽古を終えようと、コハルを元の位置、舞台中央の椅子に戻そうとした。
 人形を両手で抱え、慎重に歩を進める。
 そして、人形を椅子に座らせ、姿勢を整えたその瞬間だった。
 突然、コハルの瞳が光った。
 いや、光ったというより、輝いた。
 そして、こう聞こえた。
「……ヒビキ」
 それは、風の音でも、木の軋む音でもない。
 確かに、名前を呼ぶ声だった。
 透明で、どこか儚げで、けれども確かな意思を持った声。
「コハル……?」
 ヒビキは混乱した。
 頭の中が真っ白になり、同時に無数の疑問が渦巻く。
 手にしていたのは、ただの木製人形のはず。
 この劇場で何年も使われてきた古い人形。
 何度も修繕を重ね、何人もの人形遣いの手を経て、今ここにある人形。
 しかし、目の前にいるのは、生きている少女のようだった。
 目は、まっすぐヒビキを見ている。
「コハルは……人間なのか?」
 震える声で、ヒビキは尋ねた。
 そうだとしたら、何かの呪いなのか、魔法なのか、それとも……
「そうよ。ヒビキには、私が人間だってわかるのね」
「……そうか……コハルは人間だったのか……僕と同じ、人間だったのか……」
「いいえ、それは違います」
 “人間”であるコハルは、ヒビキにこう言った。
「ヒビキ、あなたは“人形”なの」