第3楽章〜メヌエット〜⑤
ー/ー 同日 ほぼ同時刻
〜白草四葉の想い〜
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clover_field 今朝の朝ごはん!
後輩のYちゃんと朝食バイキング!
サラダもパンもどれも美味しくて
食べ過ぎちゃいそうだったよ〜
#ストロベリーファーム白咲
#可愛らしいペンション
#朝食バイキング
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毎日のルーティーンのようになっている、朝の《ミンスタグラム》の投稿を終えると、わたしは、ペンションのベッドに腰掛けながら、の投稿で一緒に写真を撮った雪乃に語りかける。
「ありがとう、雪乃。あなたのおかげで、今日も良い写真が投稿できたわ」
「そんな……自分の方こそ、ヨツバちゃんと一緒に朝ごはんを食べて嬉しかったべ」
「フフ……ありがとう。やっぱり、雪乃に来てもらって良かった」
相変わらず可愛いらしいことを言ってくれる下級生の言葉に目を細めつつ、腰掛けていたベッドに背中を預けて、わたしは大きく伸びをした。
「あ〜、気持ちの良い朝だね〜」
「んだ……こんなキレイなお宿に泊めてもらえて、ホントに幸せだべ。だども、ヨツバちゃん、今日は何をするだか?」
はにかんだ表情のあと、少しだけ不安そうにたずねてくる彼女に返答する。
「今日は、この丘の向こう側にある白咲青少年の家ってところに行ってみようと思うんだ」
「白咲青少年の家? どこかで聞いたことが―――あっ、もしかして、吹奏楽部が合宿してる宿泊だか?」
「そう! さすが、広報部の部員ね。そこで、黒田クンたちが吹奏楽部に同行取材をしているみたいだから、陣中見舞いに行ってみようかって思ってるの!」
「そ、そうなんだすな……けど、吹奏楽部の練習中に勝手にお邪魔して大丈夫だか?」
「大丈夫でしょ? お昼休みに、ちょっとクロたちのようすを見に行くだけだから。お昼にクロに会ったら、夜に会う約束を取り付けて、それですぐに退散するつもりだからね」
「それだけで良いだか? それに、黒田先輩は、夜も撮影した映像の確認とかで忙しいかも知れないべ……」
「フフ……雪乃は心配性ね。わたしがサプライズ訪問するんだもん。クロは嬉しくて、すぐに夜に会う約束をしてくれると思うの。それに、心理学でツァイガルニク効果っていうのがあってね。人間は、中途半端な状態にある方が、そのことが印象や記憶に残りやすいの。恋愛に応用すると、あえて話の途中で切り上げる、LANEの返信を一旦止める、といった手法が有効ね。相手に『続きを知りたい』と思わせることで、自分の存在が頭の中に残りやすくさせることができるんだ」
「ヨ、ヨツバちゃんのナマ恋愛指南、キタ――(゚∀゚)――!!」
そう叫んだ雪乃は、目を輝かせたあと、そのままツインベッドの彼女の寝床に背中から倒れ込んだ。
そのまましばらく、彼女は白いシーツの上に身体を預けていたけど、ふと我に返ったのか、姿勢を正して、たずねてくる。
「こうして、ヨツバちゃんの恋愛指南を直に聞けるのは嬉しいけんども……確実に、黒田先輩は約束してくれるべか?」
「だ、大丈夫よ! このシチュエーションなら、『カリギュラ効果』や『希少性の原理』ということも含めて、より補強できる材料は揃ってるから」
「なんだべ、その『カリギュラ効果』や『希少性の原理』って?」
「カリギュラ効果は、禁止されるほど気になってしまう心理のこと。『これは言っちゃいけないんだけど…』って言われると、その内容が気になるでしょ。こんな風に、人間は禁止・制限されることで関心が高まるの。恋愛でも、『いつでも会える』『なんでも話す』状態だと、興味が薄れやすくなるでしょ? 少し情報や行動を制限することで、相手の想像力と関心を引き出せるんだ」
「そうなんだすか」
「 希少性の原理は、簡単に手に入らないものほど価値があると感じる心理のこと。人間は本能的に、『数が少ない』『なかなか手に入らない』と感じるものにより価値を感じる心理を持っているの。恋愛においても、『すぐに会える』『すぐに返信する』相手よりも、ちょっとだけ距離がある相手の方が魅力的に映るんだ。もちろん『興味がなさそうに見せる』わけじゃなく、他にも充実した時間がある人としての印象を与えることが大切なんだけどね」
「な、なるほど……勉強になるだす。ヨツバちゃんフォロワーとして、あとでスマホにメモっておくべ」
「そう? 雪乃は勉強熱心で偉いね。恋愛には駆け引きが重要だし、相手を追うだけじゃなくて、相手に追わせることもしないとね。追わせる恋愛を成功させるには、近すぎず、遠すぎずの絶妙な距離を保つことがポイント! その距離感は、ちょっとした習慣や態度の中で自然に演出できるの」
「さすが、ヨツバちゃん! 理論は完璧だべ! だども―――ヨツバちゃんを疑う訳じゃないけんども……ホントに実践できるべか?」
動画を配信しているときのように勢い余って語りすぎたので、これはちょっとマズい状況になった……と思いつつ――――――わたしは、自分を慕ってくれる下級生に思い切って断言する。
「そ、そうね! たしかに、実践できなきゃ意味がないもんね! 雪乃、みんなのヨツバちゃんが、理屈だけのオンナじゃないってことをそばで見ていて! 絶対にクロをわたしに夢中にさせて見せるから!」
自分自身にプレッシャーをかけるように宣言したわたしに後悔はなかった。
そう……いつだって白草四葉は、こういう大きなプレッシャーに打ち勝ってきたんだから――――――。
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