ep38 翌日

ー/ー



  【10】


 屋敷のベッドの上で目を覚ました。

「……あれ? いつ、ここまで戻ってきたんだ?」

 覚えていない。昨日、仮面のヤツらが去っていってから、俺はどうしたんだろう?

「……」

 むくりと上体を起こすと、ふと横の方に目をやる。

「剣……」

 ベッドの横の壁に〔魔導剣〕が立てかけられていた。剣は、昨日の激しい戦いの後とは到底思えない、相変わらずの綺麗な銀色の姿のままだ。
 なにげなくアイツへ話しかけてみる。
 
『おい』

『おはようございます』

〔謎の声〕は、俺が目覚めてすぐに声をかけてくるのを見透かしていたように、寸分の間を置かずに応えてきた。

『……俺は、あの後、どうなったんだ?』

『エールハウスの屋根から下へ降りるやいなや、貴方は気を失って倒れてしまいました。そこへ、貴方のお知り合いが駆けつけ、貴方はここまで運ばれて来たのです』

『ミックとナオミが馬車かなんかで運んできたのか? あいつらに礼を言わないと……あっ、そういえば俺が倒した仮面のヤツらは? 屋敷に転がっているはずだよな』

『消えました』

『消えた?』

『屋敷だけではありません。街で倒したヤツらもすべて、煙のように跡形もなく消えてしまいました』

『どういうことだ? まさか……あのドレッド頭のヤツの魔法か?』

『わかりません。少なくとも、あの者は、なにか特殊な能力を保持しているのは間違いありませんね』

『俺は……勝ったのか?』

『それは勝利の定義によるでしょう』

『また難しいことを』

『間もなく人が来ますよ』

『!』

〔謎の声〕の言葉どおり、部屋のドアがガチャッと開き、執事のパトリスがやって来る。

「ぼっちゃま! 目覚めたのですね! 良かった!」
「クローさま!」

 パトリスの後ろからメイドのロバータもついて来ていた。
 ふたりはベッドまで駆け寄ってくると、感極まった表情を浮かべる。

「とにかく……無事で本当に良かった! そして我々が無事なのも、ぼっちゃまのおかげです!」
「ああ! クローさま! 貴方は我々の救世主です!」

 気恥ずかしい。彼らを助けたのは事実だけども、面と向かって言われるとどうにも落ち着かない。

「べ、べつに俺はそんな……」

「ぼっちゃまは命の恩人です!」

「クローさま! しかも貴方はあの後、街の人々もその手で守ったのですよね? ミック様やナオミ様、他の方々も皆、感謝をしておりました! 我々だけではないんです! 貴方は街の救世主です!」

 俺はひたすら遠慮しながらも、胸の底から湧き上がる嬉しい気持ちは隠せなかった。
 この時、俺は残りの人生で、自分が為すべきことがわかったような気がした。それは、俺が探し求めていた『生きる意味』の答えとなるかもしれない。

「この力があれば、人を……」

 だが、人生とは皮肉なもの。
 ロバータの言葉どおり街の救世主のような存在となったことにより、俺はある組織から目をつけられることとなる。それは俺の旅立ちへの大きなきっかけとなる。


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  【10】
 屋敷のベッドの上で目を覚ました。
「……あれ? いつ、ここまで戻ってきたんだ?」
 覚えていない。昨日、仮面のヤツらが去っていってから、俺はどうしたんだろう?
「……」
 むくりと上体を起こすと、ふと横の方に目をやる。
「剣……」
 ベッドの横の壁に〔魔導剣〕が立てかけられていた。剣は、昨日の激しい戦いの後とは到底思えない、相変わらずの綺麗な銀色の姿のままだ。
 なにげなくアイツへ話しかけてみる。
『おい』
『おはようございます』
〔謎の声〕は、俺が目覚めてすぐに声をかけてくるのを見透かしていたように、寸分の間を置かずに応えてきた。
『……俺は、あの後、どうなったんだ?』
『エールハウスの屋根から下へ降りるやいなや、貴方は気を失って倒れてしまいました。そこへ、貴方のお知り合いが駆けつけ、貴方はここまで運ばれて来たのです』
『ミックとナオミが馬車かなんかで運んできたのか? あいつらに礼を言わないと……あっ、そういえば俺が倒した仮面のヤツらは? 屋敷に転がっているはずだよな』
『消えました』
『消えた?』
『屋敷だけではありません。街で倒したヤツらもすべて、煙のように跡形もなく消えてしまいました』
『どういうことだ? まさか……あのドレッド頭のヤツの魔法か?』
『わかりません。少なくとも、あの者は、なにか特殊な能力を保持しているのは間違いありませんね』
『俺は……勝ったのか?』
『それは勝利の定義によるでしょう』
『また難しいことを』
『間もなく人が来ますよ』
『!』
〔謎の声〕の言葉どおり、部屋のドアがガチャッと開き、執事のパトリスがやって来る。
「ぼっちゃま! 目覚めたのですね! 良かった!」
「クローさま!」
 パトリスの後ろからメイドのロバータもついて来ていた。
 ふたりはベッドまで駆け寄ってくると、感極まった表情を浮かべる。
「とにかく……無事で本当に良かった! そして我々が無事なのも、ぼっちゃまのおかげです!」
「ああ! クローさま! 貴方は我々の救世主です!」
 気恥ずかしい。彼らを助けたのは事実だけども、面と向かって言われるとどうにも落ち着かない。
「べ、べつに俺はそんな……」
「ぼっちゃまは命の恩人です!」
「クローさま! しかも貴方はあの後、街の人々もその手で守ったのですよね? ミック様やナオミ様、他の方々も皆、感謝をしておりました! 我々だけではないんです! 貴方は街の救世主です!」
 俺はひたすら遠慮しながらも、胸の底から湧き上がる嬉しい気持ちは隠せなかった。
 この時、俺は残りの人生で、自分が為すべきことがわかったような気がした。それは、俺が探し求めていた『生きる意味』の答えとなるかもしれない。
「この力があれば、人を……」
 だが、人生とは皮肉なもの。
 ロバータの言葉どおり街の救世主のような存在となったことにより、俺はある組織から目をつけられることとなる。それは俺の旅立ちへの大きなきっかけとなる。