(舞羽。私も行ってくるよ)
舞香が舞台に立つ。あのときは思ってもいなかった舞羽と同じ舞台。舞香は空を見上げた。雲が速い。上空は馬場よりも風が強いのかな……なんて考えたりした。
「あっ……」
思わず舞羽は声を出した。声を上げてしまったことに、思わず周囲を見回す。すると同じような顔をした一華と視線が合わさる。二人が見つめ合ったまま数秒過ぎたかに思われる。
「あなたも……感じましたの?!」
「……うん」
「……仕方ないわね……今回は、負けのようね。何だか分からないけれど、あの子の堂々としたゆとり……これから演技が始まるっていうのに……」
「あたしも……負けね……舞香を見たらこれからする演技……あの風と同じように高い上空とこの地上での穏やかさ……きっとこの風と同じような人馬非対称の演技を見せてくれるのが分かった」
それは双子のシンパシーとでもいうのか、舞羽には舞香の見た景色と胸懐が伝わった。
そしてその王者の気品を感じ取った一華もまた機微に聡いと言えよう。
舞香の演技が終わる。舞香が『よくやった』ってレミリアの首を思いっきり撫でてあげている。そしてレミリアもとっても喜んでいるのが分かる。舞香とレミリア、二人は共に成長してきた。
人馬の絆、気持ちが伝わってくる名シーンであった。
全日本馬術ジュニア選手権大会の馬場馬術、ジュニアライダーの部。優勝、月皇舞香、68.280%。2位、六道一華、66.984。3位、月皇舞羽、66.022。
騎乗者資格を持ちながら日馬連の公認競技での出場資格を得ていなかった天沢遊馬と『山吹号』は、全日本ジュニア選手権大会初参戦。障害馬術ジュニアライダーの部を圧勝していた。
そして風吹は『チルドレンライダー』で初めて大会を制したのはいうまでもない。