時刻は17:30を回った。夜光が『今日はここまでにしましょう』と壁掛けの時計を見て言った。音色がその言葉を聞いて席を立ったときだった。
「春原さん……」
「……はい?」
「あの……この後、御一緒に……しょ、食事でもいかがでしょう?」
「あ、ごめんなさい。今日はもう、早く帰ってシャワーしてベッドにダイブかな?!」
お腹は確かに空いていた。……雰囲気の問題なのだろうか? 夜光と居ると仕事感が強い。マナーと言った形式ばった業務と教育係という性質上、瑞稀らと画してしまう。
時に『拒否』は男の箍を外してしまう。
突然、夜光が音色の手首辺りを掴んだ。危険を察知した音色は距離を取ろうと後退るも、夜光が掴んだその手がそれを許さない。
「な、なな、何ですか?」
夜光は音色の動揺につけこむように、音色を自分の方へと引き寄せる。嫌がる音色をもう一方の手が腰に回されて身体を密着させる。
「い、いやっ! やめてっ!」
身の危険を感じる。これは性的な暴力を予見させる男の興奮に他ならない。身をよじり拒否を示す。身体の触れている部分が嫌悪感で泡立つ。
デスクの上のペン立てや書類が、払いのけようとする音色の腕と、押さえつけようとする夜光の腕とが当たり、大きな音を立てて床に散らばる。
「春原さん、あなた、前の会社を解雇されていますよね」
その一言に反応して音色は抵抗を弱めた。