@59話
ー/ー
まだ現段階では日本女性の脚を最も美しく見せると言われる『7cmヒール』であること、レセプションに合わせて『秋冬もの』であること、それしか決まっていない。
靴を生産してくれるメーカーは確保した。メーカーは各ブランドと提携していることがほとんどだ。そして各ブランドは自前のデザイナーを囲っている。しかし今回は既存のブランド名を使用する気はない。
新ブランドを立ち上げるつもりでもない、ノーブランドでいい。その分価格を下げたい。
デザインを担当してくれる人材を探さなければならない、よって形が決まらないでいた。
ドレスも靴に合ったドレスにしなければならない。この靴の企画が遅れれば遅れる程パーティーの準備も遅れてしまう。一颯たちは焦っていた。いつものゆとりが失われることは、良いことなんて一つもないはずだ。
なるべく音色は生活が乱れないよう、夕ご飯をなるべく一緒に食べたり、帰宅時に湯船を沸かせたり、勝手に布団を干したりしてみる。
すれ違った翌日に一颯から『ありがとう』のメモが置かれたりしたが、オフタイムの終わり、一人の朝を迎えたのなら、寂しさと共にメモからの温もりに活力を得る。
もちろん『一人の朝』とは心理的な感覚だけであって、この大きな屋敷の密度が減った空白感、エンプティ感がそう思わせる淋しさだ。
時折、社内で顔を合せることもあったが、すれ違うだけの社交的な挨拶だったり、ほんの二言三言だけの言葉の交換……隙間時間のrecessでしかない。
仕事として音色にも『昔の伝手で誰か何かないか?』と二人に聞かれたりもした。しかし音色はそのことに触れたくない。察しの良い瑞稀ですら音色の不快を感じ取れない程、余裕がなくなってきているのが読み取れる。
音色の気のせいだろうか? 音色の前職の話になったとき、夜光の反応に普段見せない違和感が……。最近一緒に行動することの多い夜光が、一番敏感に音色の反応を感じ取ったのだろうか? そんなことさえも一颯も、瑞稀も、気に止まることはなかった。
音色のパーティーでの成功は、一颯には会社としての成長と成功が、瑞稀としても一颯と賭けた音色の成長が、それらは音色の人生を左右しかねない。そして彼ら二人の『想い』が込められていて、それが逆に彼らの目を曇らせていた。
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新ブランドを立ち上げるつもりでもない、ノーブランドでいい。その分価格を下げたい。
デザインを担当してくれる人材を探さなければならない、よって形が決まらないでいた。
ドレスも靴に合ったドレスにしなければならない。この靴の企画が遅れれば遅れる程パーティーの準備も遅れてしまう。一颯たちは焦っていた。いつものゆとりが失われることは、良いことなんて一つもないはずだ。
なるべく音色は生活が乱れないよう、夕ご飯をなるべく一緒に食べたり、帰宅時に湯船を沸かせたり、勝手に布団を干したりしてみる。
すれ違った翌日に一颯から『ありがとう』のメモが置かれたりしたが、オフタイムの終わり、一人の朝を迎えたのなら、寂しさと共にメモからの温もりに活力を得る。
もちろん『一人の朝』とは心理的な感覚だけであって、この大きな屋敷の密度が減った空白感、エンプティ感がそう思わせる淋しさだ。
時折、社内で顔を合せることもあったが、すれ違うだけの社交的な挨拶だったり、ほんの二言三言だけの言葉の交換……|隙間時間のrecess《小休止》でしかない。
仕事として音色にも『昔の伝手で誰か何かないか?』と二人に聞かれたりもした。しかし音色は|そのこと《前職》に触れたくない。察しの良い瑞稀ですら音色の不快を感じ取れない程、余裕がなくなってきているのが読み取れる。
音色の気のせいだろうか? 音色の前職の話になったとき、夜光の反応に普段見せない違和感が……。最近一緒に行動することの多い夜光が、一番敏感に音色の反応を感じ取ったのだろうか? そんなことさえも一颯も、瑞稀も、気に止まることはなかった。
音色のパーティーでの成功は、一颯には会社としての成長と成功が、瑞稀としても一颯と賭けた音色の成長が、それらは音色の人生を左右しかねない。そして彼ら二人の『想い』が込められていて、それが逆に彼らの目を曇らせていた。