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@56話

ー/ー





 大分飲んで食べた。次々に入れ替わっていく客の中に小春のおじさんに似た人を見た。


 


(小春おじさん、どうしているかな……)


 


 そう思って日本酒を注文した。あのときと違って御猪口だったせいか、あの日の日本酒よりも匂いが鼻を付いてむせ返ってしまう。


 今日は色々思い出してしまった『あの日』。音色は『あの日』を今の気持ちで除(割り算)してみる。思ったより割り切れて、多少の『悔い』が余ったものの、それは今、目の前に瑞稀がいる。家に帰れば一颯もいる。その二人がいる場で働けている。それらが帳消しにしてくれた。


 再び涙が音色を襲う。しかし今度のは悲しみの涙ではない。一颯への、瑞稀への感謝が募ったのだ。


 


 訳の分からない瑞稀は日本酒(安酒)が良くなかったと勘違いして、水を頼む。


 


「もう今日は止めよう。帰ろう」


「ごめんね、瑞稀さん。こんな酔っ払いと居ても楽しくないよね。私泣いてばっかりで……全てが失くなったあの日を思い出しちゃって」


 


 音色の目は潤んでいる。瑞稀は会計を済ませると、音色を外へと促す。


 


「音色、今日のデート楽しかったよ」


「本当? 嬉しい。お財布もありがとう、大事にするね」


 


 まだ音色の目には涙が残っている……それを確認した瑞稀は何かを決意したようにグッと目に力を込める。




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 大分飲んで食べた。次々に入れ替わっていく客の中に小春のおじさんに似た人を見た。
(小春おじさん、どうしているかな……)
 そう思って日本酒を注文した。あのときと違って御猪口だったせいか、あの日の日本酒よりも匂いが鼻を付いてむせ返ってしまう。
 今日は色々思い出してしまった『あの日』。音色は『あの日』を今の気持ちで除(割り算)してみる。思ったより割り切れて、多少の『悔い』が余ったものの、それは今、目の前に瑞稀がいる。家に帰れば一颯もいる。その二人がいる場で働けている。それらが帳消しにしてくれた。
 再び涙が音色を襲う。しかし今度のは悲しみの涙ではない。一颯への、瑞稀への感謝が募ったのだ。
 訳の分からない瑞稀は|日本酒《安酒》が良くなかったと勘違いして、水を頼む。
「もう今日は止めよう。帰ろう」
「ごめんね、瑞稀さん。こんな酔っ払いと居ても楽しくないよね。私泣いてばっかりで……全てが失くなったあの日を思い出しちゃって」
 音色の目は潤んでいる。瑞稀は会計を済ませると、音色を外へと促す。
「音色、今日のデート楽しかったよ」
「本当? 嬉しい。お財布もありがとう、大事にするね」
 まだ音色の目には涙が残っている……それを確認した瑞稀は何かを決意したようにグッと目に力を込める。