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第37話:メイの帰還と愛のトリガー

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 1.メゾン・ド・バレット 地下メンテナンスルーム・メイの療養室にて

 最終決戦プランの会議を終えた深夜。志藤悠真は、ルナの許可を得て、地下メンテナンスルームの一角にある、メイの療養室を訪れた。

 室内の照明は落とされ、生命維持装置の微かな駆動音と、メイ自身の駆動系の「チッ、チッ、チッ」という規則正しい音が響いている。そこは、生命の境界線のように静謐な空間だった。

 悠真はベッドサイドに椅子を引き、眠るメイの顔を見つめた。小柄な体躯がベッドに沈み、華奢な手足は、以前ジーナの結界弾で負った傷の修復痕が痛々しく残る。

「メイ……」

 悠真は、自分の手の甲をメイの小さな手のそばにそっと置いた。触れることはためらわれた。彼女の重傷は、自分の優柔不断な優しさが招いた結果だと、今でも深く後悔している。

「ごめんな。俺のせいで、お前はこんなことになった」

 悠真は、喉の奥から絞り出すように告白した。

「マヤの裏切りを許したのも、俺の優しさだ。その優しさが、結局、お前たちを危険に晒す『毒』になっていた。俺は、みんなを護るために覚悟を決めたつもりだったけど……結局、俺の優しさが、みんなを傷つける弱点にしかならないんじゃないかって、今でも怖いんだ」

 悠真は俯き、自らの優しさの重さに耐えかねていた。

 その時、規則正しかったメイの駆動音に、微かな「ノイズ」が走った。

 チッ、チッ、チッ……(規則的な音)――カチッ――プルルル……(ノイズ)

 メイのまぶたが、ゆっくりと持ち上がった。潤んだ瞳が、暗闇の中で微かに光を捉え、悠真の姿を認識する。

「……せんぱ、い……?」

 その声は掠れていたが、以前のような、魂が抜けたような空虚さは消えていた。そこには、いつものデレ多めのツンデレが宿る、メイの意識があった。

 悠真は驚き、体を乗り出した。

「メイ! 気がついたのか! 身体は大丈夫なのか!?」

 メイは、意識を回復したばかりだというのに、自らの覚悟を伝えるように、力なく笑った。

「ばか……りょ、療養中のメイドに、大声出すなんて……ルナせんぱいに、怒られます……っ」

 その言葉には、いつものツンデレな強がりが混ざっていたが、彼女の視線は真っ直ぐに、悠真の瞳を射抜いていた。

 メイは、自身の小さな体から搾り出すように、最後の、そして最も重要な真実を告げる。

「せんぱい……貴方の優しさは……毒なんかじゃ、ありません」

 メイの意識が再び朦朧とし始めるが、彼女は使命を全うしようと、その言葉を続ける。

「貴方の優しさは、私たち……サイボーグメイドに、『愛』を……教え、て、くれた。アリスせんぱいも、ルナせんぱいも……みんな、貴方を護りたい……その愛(感情)こそが、抑止力の……」

 メイは、微かに微笑んだ。その笑顔は、普通の女の子の、純粋な愛に満ちていた。

「抑止力の……『愛のトリガー』、です……」

 その言葉を最後に、メイの意識は再び眠りについた。駆動音は、以前よりも力強く、規則正しいものに戻っていた。まるで、彼女の「魂」が、サイボーグの駆動系に再接続されたかのように。

(メイの言葉は……俺の優しさが、みんなの愛の力の源だってことか?)

 悠真は、メイの言葉の意味を噛み締めた。自分の優しさを否定する必要はない。その優しさこそが、ルナが追い求める「最強のセンサー」、メイドたちの「愛」を暴走させ、世界を護るための鍵なのだと。

(俺の優しさは、弱点なんかじゃない。この愛するみんなを護るための、最強の力だ!)

 悠真は、メイの小さな手をそっと握った。彼女の駆動音は、静かに、そして力強く響いている。

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 2.愛の独占欲を胸に、7人体制の覚悟

 メイの言葉は、悠真に「自分の優しさではない」という揺るぎない覚悟を与えた。彼は療養室を出て、司令室へと戻った。

 司令室では、ルナが狙撃ライフルを構え、最終チェックを行っていた。その銀髪とモノクルの冷たさの奥には、孤独な使命を背負う愛の決意が隠されている。

 悠真は、ルナの正面に立ち、力強く宣言した。

「ルナ。作戦は、予定通り遂行する。俺が、みんなの愛の独占欲を最大限に引き出す『囮』になる。それが、俺の使命だ」

 ルナは、モノクルの奥で静かに悠真を見つめ、頷いた。

「承知しました、志藤様。これで、バレット隊の最終戦力――7人体制が整いました」

 ルナは、メインモニターに映し出された7人のメイドたちの姿を静かに見つめた。その場にいた全員の瞳が、ルナと悠真に集中する。

 ルナは、自身の愛を「孤独な使命」として昇華させる決意を、静かな声に込めた。

「私の使命は、志藤様の命を護り、理性の限界で勝利を掴むこと。愛を貫き、最後まで司令塔として戦場に立つ。それが、私に与えられた唯一の特権です」

 アリスは、双剣の柄を握りしめ、情熱的な愛を爆発させた。

「私は、悠真くんの本物の大切な人として、誰にも彼を渡さない! 私の双剣が、愛の独占欲を証明する最強の武器になる!」

 ソフィアは、グラマラスな体躯に宿る母性的な愛を、穏やかな眼差しで表明した。

「私は、アベルさんと連携し、揺るぎない防御で悠真さんを包み込みます。母性的な愛のバリアは、ミストの狂気には決して屈しません」

 防御特化のアベルは、理知的な忠誠心を、静かに、だが明確に宣言する。

「ソフィア隊員を師とし、私は絶対防御を誓います。理知的な愛と物理的な堅牢さをもって、志藤様の命を護り抜きます」

 アベルの言葉に、ソフィアは目元を緩ませ、心からの喜びを滲ませた。

「あらま、アベルさんがそんなにハッキリ言ってくれるなんて、嬉しいわ!」

 アベルは銀色の短髪の下で顔を赤らめ、微かに口角を上げて笑った。

「最高の相棒ね、アベルさん!」

 回復と支援のララは、理知的な愛を効率性の追求として位置づけた。

「わたくしの役割は、回復と効率的な魔力チャージです。論理的な愛をもって、戦線維持を最大化し、勝利へと導きます」

 情報分析のクロエは、黒縁メガネの奥で静かな決意を固めた。

「私は、この最終決戦を、愛のデータとして解析し尽くします。知的な愛の優位性を証明し、志藤様を勝利へと導く。それが私の独占欲です」

 メイは、療養室のベッドの上で、静かに駆動音を響かせた。その影の愛は、悠真の覚悟を心の中で受け止め、影の友達(ファントム)を介した支援という形で、チームに無言の参加を果たしていた。

 七人それぞれの愛の独占欲が、今、抑止力の最終兵器として完成したのだ。

(メイの駆動音は、今、バレット隊全員の心に響いている。志藤様の抑止力は、もう誰にも止められない)

 ルナは、深く息を吸い、最後の指令を下した。

「全バレット隊。愛の独占欲を胸に、戦場へ。ミストの狂気に、私たちの愛の力が打ち勝つことを証明しなさい」

 最終決戦への準備は、ここに完了した。




次のエピソードへ進む 第38話:ジーナの襲撃と巨大魔人


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 1.メゾン・ド・バレット 地下メンテナンスルーム・メイの療養室にて
 最終決戦プランの会議を終えた深夜。志藤悠真は、ルナの許可を得て、地下メンテナンスルームの一角にある、メイの療養室を訪れた。
 室内の照明は落とされ、生命維持装置の微かな駆動音と、メイ自身の駆動系の「チッ、チッ、チッ」という規則正しい音が響いている。そこは、生命の境界線のように静謐な空間だった。
 悠真はベッドサイドに椅子を引き、眠るメイの顔を見つめた。小柄な体躯がベッドに沈み、華奢な手足は、以前ジーナの結界弾で負った傷の修復痕が痛々しく残る。
「メイ……」
 悠真は、自分の手の甲をメイの小さな手のそばにそっと置いた。触れることはためらわれた。彼女の重傷は、自分の優柔不断な優しさが招いた結果だと、今でも深く後悔している。
「ごめんな。俺のせいで、お前はこんなことになった」
 悠真は、喉の奥から絞り出すように告白した。
「マヤの裏切りを許したのも、俺の優しさだ。その優しさが、結局、お前たちを危険に晒す『毒』になっていた。俺は、みんなを護るために覚悟を決めたつもりだったけど……結局、俺の優しさが、みんなを傷つける弱点にしかならないんじゃないかって、今でも怖いんだ」
 悠真は俯き、自らの優しさの重さに耐えかねていた。
 その時、規則正しかったメイの駆動音に、微かな「ノイズ」が走った。
 チッ、チッ、チッ……(規則的な音)――カチッ――プルルル……(ノイズ)
 メイのまぶたが、ゆっくりと持ち上がった。潤んだ瞳が、暗闇の中で微かに光を捉え、悠真の姿を認識する。
「……せんぱ、い……?」
 その声は掠れていたが、以前のような、魂が抜けたような空虚さは消えていた。そこには、いつものデレ多めのツンデレが宿る、メイの意識があった。
 悠真は驚き、体を乗り出した。
「メイ! 気がついたのか! 身体は大丈夫なのか!?」
 メイは、意識を回復したばかりだというのに、自らの覚悟を伝えるように、力なく笑った。
「ばか……りょ、療養中のメイドに、大声出すなんて……ルナせんぱいに、怒られます……っ」
 その言葉には、いつものツンデレな強がりが混ざっていたが、彼女の視線は真っ直ぐに、悠真の瞳を射抜いていた。
 メイは、自身の小さな体から搾り出すように、最後の、そして最も重要な真実を告げる。
「せんぱい……貴方の優しさは……毒なんかじゃ、ありません」
 メイの意識が再び朦朧とし始めるが、彼女は使命を全うしようと、その言葉を続ける。
「貴方の優しさは、私たち……サイボーグメイドに、『愛』を……教え、て、くれた。アリスせんぱいも、ルナせんぱいも……みんな、貴方を護りたい……その愛(感情)こそが、抑止力の……」
 メイは、微かに微笑んだ。その笑顔は、普通の女の子の、純粋な愛に満ちていた。
「抑止力の……『愛のトリガー』、です……」
 その言葉を最後に、メイの意識は再び眠りについた。駆動音は、以前よりも力強く、規則正しいものに戻っていた。まるで、彼女の「魂」が、サイボーグの駆動系に再接続されたかのように。
(メイの言葉は……俺の優しさが、みんなの愛の力の源だってことか?)
 悠真は、メイの言葉の意味を噛み締めた。自分の優しさを否定する必要はない。その優しさこそが、ルナが追い求める「最強のセンサー」、メイドたちの「愛」を暴走させ、世界を護るための鍵なのだと。
(俺の優しさは、弱点なんかじゃない。この愛するみんなを護るための、最強の力だ!)
 悠真は、メイの小さな手をそっと握った。彼女の駆動音は、静かに、そして力強く響いている。
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 2.愛の独占欲を胸に、7人体制の覚悟
 メイの言葉は、悠真に「自分の優しさではない」という揺るぎない覚悟を与えた。彼は療養室を出て、司令室へと戻った。
 司令室では、ルナが狙撃ライフルを構え、最終チェックを行っていた。その銀髪とモノクルの冷たさの奥には、孤独な使命を背負う愛の決意が隠されている。
 悠真は、ルナの正面に立ち、力強く宣言した。
「ルナ。作戦は、予定通り遂行する。俺が、みんなの愛の独占欲を最大限に引き出す『囮』になる。それが、俺の使命だ」
 ルナは、モノクルの奥で静かに悠真を見つめ、頷いた。
「承知しました、志藤様。これで、バレット隊の最終戦力――7人体制が整いました」
 ルナは、メインモニターに映し出された7人のメイドたちの姿を静かに見つめた。その場にいた全員の瞳が、ルナと悠真に集中する。
 ルナは、自身の愛を「孤独な使命」として昇華させる決意を、静かな声に込めた。
「私の使命は、志藤様の命を護り、理性の限界で勝利を掴むこと。愛を貫き、最後まで司令塔として戦場に立つ。それが、私に与えられた唯一の特権です」
 アリスは、双剣の柄を握りしめ、情熱的な愛を爆発させた。
「私は、悠真くんの本物の大切な人として、誰にも彼を渡さない! 私の双剣が、愛の独占欲を証明する最強の武器になる!」
 ソフィアは、グラマラスな体躯に宿る母性的な愛を、穏やかな眼差しで表明した。
「私は、アベルさんと連携し、揺るぎない防御で悠真さんを包み込みます。母性的な愛のバリアは、ミストの狂気には決して屈しません」
 防御特化のアベルは、理知的な忠誠心を、静かに、だが明確に宣言する。
「ソフィア隊員を師とし、私は絶対防御を誓います。理知的な愛と物理的な堅牢さをもって、志藤様の命を護り抜きます」
 アベルの言葉に、ソフィアは目元を緩ませ、心からの喜びを滲ませた。
「あらま、アベルさんがそんなにハッキリ言ってくれるなんて、嬉しいわ!」
 アベルは銀色の短髪の下で顔を赤らめ、微かに口角を上げて笑った。
「最高の相棒ね、アベルさん!」
 回復と支援のララは、理知的な愛を効率性の追求として位置づけた。
「わたくしの役割は、回復と効率的な魔力チャージです。論理的な愛をもって、戦線維持を最大化し、勝利へと導きます」
 情報分析のクロエは、黒縁メガネの奥で静かな決意を固めた。
「私は、この最終決戦を、愛のデータとして解析し尽くします。知的な愛の優位性を証明し、志藤様を勝利へと導く。それが私の独占欲です」
 メイは、療養室のベッドの上で、静かに駆動音を響かせた。その影の愛は、悠真の覚悟を心の中で受け止め、影の友達(ファントム)を介した支援という形で、チームに無言の参加を果たしていた。
 七人それぞれの愛の独占欲が、今、抑止力の最終兵器として完成したのだ。
(メイの駆動音は、今、バレット隊全員の心に響いている。志藤様の抑止力は、もう誰にも止められない)
 ルナは、深く息を吸い、最後の指令を下した。
「全バレット隊。愛の独占欲を胸に、戦場へ。ミストの狂気に、私たちの愛の力が打ち勝つことを証明しなさい」
 最終決戦への準備は、ここに完了した。