第26話:ジーナの結界と某国特殊部隊
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1. 映画研究会の撮影と途絶えた支援
セーフハウスから大学へ。志藤悠真は、ルナの指令に従い、映画研究会の撮影準備という日常を装っていた。マヤの裏切りを知った心はまだ癒えていない。
講堂の舞台袖で機材チェックをしていたサークルメンバーの先輩が、悠真に声をかけてきた。
「よう、志藤。相変わらず、その可愛い後輩たちに囲まれてて、お前は本当にタラシだな」
別の男子学生が茶化すように口を挟んだ。
「そうだよな。マヤが急にサークル辞めたのも、お前がアリスに乗り換えたせいじゃねーの? 俺、マヤのこと狙ってたのにさー」
「はは、お前には無理だろ。志藤は顔が地味なくせに、ああいう積極的な子に好かれるのが得意なんだよ。一種の才能だよな」
悠真は苦笑いを浮かべ、心の中で弁明した。
(マヤが辞めたのは俺のせいじゃないし、俺はアリスに乗り換えてもない。それに、俺はタラシなんかじゃない!)
今日の護衛はアリスとメイ。そして、新たなサポート役のシェンだ。悠真とアリスはサークル活動の場である大学の講堂で、機材のセッティングをしていた。メイとシェンは、講堂の隅で警戒任務についている。
ルナの冷静な声が、悠真のインカムに響いた。
「志藤様。シェンの動きに警戒を。クロエの情報によれば、彼女は既に大学構内のM.A.回線を掌握し、通信妨害を開始しているわ。ただし、シェンはサポート要員として扱い、その正体は公言しないように」
クロエの声は微かにノイズが混じっていた。
「ルナ隊長、妨害が強すぎる。シェンのハッキング能力は、ドクター・ヴァイスを上回っている。遠隔サポートが、まもなく途絶えます」
悠真は、アリスの隣で楽しそうに撮影機材を覗き込むシェンをちらりと見た。アリスはシェンに嫉妬し、笑顔で牽制する。
「シェンちゃん、機材に触るならちゃんと手袋してね。繊細なんだから。あと、言っておくけど、私は恋人役として、悠真くんの機材も全部独占して管理してるんだから」
メイはシェンを警戒し、ツインテールを揺らしながら悠真とアリスの間に割って入ろうとする。
「アリスせんぱい! メイもいるから大丈夫です! あの小悪魔ハッカーに、悠真せんぱいの独占権は渡しません!」
シェンがドローンを起動させた、その瞬間だった。悠真の耳元のインカムから、プツン、と音が途切れた。
ルナとクロエからの情報支援が完全に途絶えた。悠真は一瞬で血の気が引くのを感じた。
「通信が……切れた?」
シェンは悠真にだけ聞こえる声で囁いた。
「お兄ちゃんの『感情的なノイズ』を、シェンが完全に消してあげました。これで、邪魔は誰も入らないよ」
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2. 魔力吸収結界と学生たちの悲鳴
その時、講堂の裏口が破られ、黒い戦闘服を纏った数名の影が飛び込んできた。彼らはミストと連携する某国特殊部隊の傭兵たちだ。
「あなたたちは何者!?」
「威勢がいいな、さすが戦闘隊長の、アリスだったかな? 私は、ジーナ。ミスト、アジア支部の戦闘隊長さ」
彼らを率いて現れたのは、金髪ポニーテールでグラマラスな体型を持つ女性、ジーナだった。彼女は戦闘服の上に、インド風の装飾的なマントを纏い、その瞳は一切の感情を宿していない。資料の通り、「仏頂面の戦闘狂」の雰囲気を纏っていた。
ジーナは、悠真を一瞥すると、冷徹に言い放った。
「さて、貴様が志藤悠真か。噂の『抑止力』の覚醒者。だが、私には関係ない。私は、貴様を排除するという任務を遂行する」
某国特殊部隊が講堂全体を包囲する。悠真の周囲には、映画研究会のサークルメンバーや、講堂で自習していた一般学生たちが十数名いた。
ジーナが両手を掲げた瞬間、悠真の全身に異変が起こった。
「ぐっ……! な、なんだこの感じは……」
悠真の体から湧き上がるはずの支配力が、体内の奥底へと強制的に押し戻されていく。
ジーナが冷たい声で宣言した。
「無駄だ。これは魔力吸収結界。貴様の持つ古代の血統の力、そしてその支配力を、全てこの結界が吸収する。お前は今、ただの無力な人間だ」
悠真は絶望した。ゾルゲ戦で手に入れたはずの「戦場を支配する力」が、完全に封じられたのだ。膝の上で震えていたスライミーは、力なく地面に落ちる。ファントムは影の中に潜み、スパイクも動かない。
「支配力が……使えない」
「きゃああああ!」
「なんだ!? 化け物だ!」
「逃げろ! 誰か警察を呼んで!」
学生たちがパニックに陥り、一斉に出口へと殺到した。彼らは、黒い戦闘服の集団と、異様な結界の力に恐怖し、日常の崩壊を目の当たりにしていた。
アリスとメイは瞬時に戦闘服へとナノ換装を完了させた。漆黒と純白のメイド服、ライトニング・ケインと二丁SMG。
アリスは絶叫した。
「メイ! 優先順位は一般学生の避難誘導! その後、悠真くんの安全確保よ!」
メイはツインテールを激しく揺らした。
「了解です! みなさん、全力で逃げてください! 悠真せんぱいの平和な日常を護るんです!」
アリスとメイは、傭兵たちを牽制しつつ、学生たちの避難経路を確保しようと動く。
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3. テイム魔物の連携とメイの重傷
メイは超高速体術で銃弾を回避するが、ジーナの結界術は傭兵たちと連携し、メイの動きを封じ始めた。
ジーナは仏頂面のまま、淡々と命じる。 「学生など、放っておけ。狙いは抑止力のみ。速いな……。しかし、単純。結界を圧縮し、奴の駆動部に負荷をかけろ」
メイのサイボーグボディが軋みを上げ始めた。
「くっ……体が重い! ルナ先輩の指示も、クロエ先輩のデータもないなんて……!」
その時、逃げ遅れた映画研究会の友人が、ジーナの視界に入った。
ジーナは、その友人に視線を向けた。
「無関係な民間人か。ミストの邪魔だ。排除しろ」
傭兵の一人が、友人に銃口を向けた。
「やめろ!」
悠真は思わず、手を伸ばした。
が、その友人を護ろうとしたのは、悠真ではなくメイだった。メイは自身の任務と、悠真の「友人を護りたい」という優しさに突き動かされ、超高速体術で友人の前に飛び出した。
「悠真せんぱいの……大切な友人に、指一本触れさせません!」
メイの決死の行動に、ジーナは驚きもせず、冷徹に追撃した。
「馬鹿な女だ。結界弾を打ち込め」
ジーナの指先から放たれた強化結界弾が、メイの華奢な体に直撃した。
「きゃあッ!」
メイは血を吐き、壁に叩きつけられた。戦闘服が破れ、内部の精密な駆動部から火花とオイルが噴き出す。致命的な重傷だが、駆動音は微かに残っている。
悠真は絶叫した。
「メイ!!!」
絶望が悠真の心を覆い尽くしたが、その時、悠真の支配力が、結界の内側で僅かに震えた。
「俺のメイドを……傷つけたな」
悠真は、封じられた支配力を、テイム魔物の物理的な力へと変換した。
「スライミー、ファントム、スパイク! 結界の一点を集中攻撃しろ!」
悠真の命令と共に、スライミーがゼリー状の体を高速で膨張させ、結界にぶつかる。ファントムが黒い煙を伸ばし、結界の魔力制御点を混乱させる。スパイクが全身の針を硬質の礫弾に変え、結界の表面に集中連射した。
物理的な力と魔力の混乱により、ジーナの結界が僅かに亀裂を走らせた。
「なっ……魔物の力で、結界を破るだと!?」
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4. アリスの超人的な愛の盾
ジーナは、悠真のテイム魔物の連携を見て、一瞬で状況を理解した。
「やはり、抑止力は危険だ。排除を優先」
ジーナは、メイと悠真に向け、トドメとなる最大出力の追撃の結界弾を放った。結界弾は、光速で悠真と倒れたメイに向かって飛ぶ。
「これで終わりだ」
悠真は、重傷を負ったメイを抱きかかえ、抵抗することもできず、目を閉じた。
その瞬間、講堂の裏手から、黒い煙を上げてバイクが突っ込んできた。漆黒のフリルと純白のラインを持つ戦闘服を纏ったアリスが、光の残像となって講堂内部に飛び込んできた。
「誰にも、悠真くんとメイを傷つけさせない!」
アリスは咆哮と共に、自分の超スピードを限界まで引き出した。彼女は光速の残像となり、結界弾が直撃する直前に悠真とメイの間に割って入る。
アリスの身体に、結界弾が直撃した。
「ぐっ……!!!」
アリスの身体から、凄まじい火花が散る。彼女の超硬度アーマーが、防御の限界を超え、駆動部からオイルとパーツが飛び散る。
しかし、アリスは屈しない。その瞳には、任務を越えた本気の独占欲と愛の狂気が燃え上がっていた。
「『Code: My Only Love (私の愛のテリトリー)』、ブースト!! 私の愛のテリトリーに、指一本触れるんじゃない!!」
その時、講堂の裏口から、M.A.の正規メイド隊が戦闘服を纏い、怒涛の勢いで突入してきた。
ルナの声が、悠真の壊れたインカムから微かに漏れた。
「アリス! 正規メイド隊の突入と同時に離脱しなさい! 志藤様の命が最優先よ!」
ジーナと傭兵たちの視線が、新たな敵である正規メイド隊に集中した、その一瞬の隙。
アリスは、結界弾のエネルギーをシールドで受け止めると、負傷したメイを片腕に、悠真を抱きかかえ、再び光速の残像となった。
ジーナの結界を突き破り、二人の負傷者を抱えたまま、セーフハウスへ向かって光速で脱出したのだ。
「バカな! あのスピードは、M.A.のデータにはない! 制御不能の暴走だ!」
ジーナは驚愕した。
アリスは光速で移動しながら、インカムを通じて、後方で待機しているルナに断続的に連絡を入れた。
「ルナ! 記憶消去プロトコルを最優先で! 講堂に残った一般学生の記憶を全て消去して! 傭兵の排除はM.A.に任せる!」
ルナの冷徹な声が、悠真の耳元の壊れたインカムから微かに漏れた。
「アリス……! 駆動部がオーバーヒートを警告! 直ちにメンテナンスルームへ向かいなさい! 正規メイド隊は既に現場へ向かっている!」
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5. 絶望のデータと孤独な司令塔
悠真は、セーフハウスの地下にあるメンテナンスルームで目を覚ました。アリスの超人的なカバーにより、彼はかすり傷一つ負っていなかった。しかし、メイは瀕死の重傷。そして、アリスもまた、駆動部に深刻な負荷を負っていた。
ルナは、悠真の傍らで、静かに頭を下げた。
「志藤様。今回の襲撃は、私たちの予測を上回りました。シェンの妨害、ジーナの結界術、そして……メイ隊員が、あなたを護るために、自らの命を顧みなかった」
悠真は、自らの無力さに絶望していた。
「俺は……また、誰も護れなかった。支配力は封じられ、みんなは傷ついた……」
悠真が絶望に沈む、その時。セーフハウスの屋上。シェンは小悪魔的な笑顔を浮かべ、自身がハッキングした悠真の精神的なデータをミストへ送信していた。
「お兄ちゃん、ごめんね。でも、お兄ちゃんの『絶望のデータ』が、アジア本部にとって最高の餌になるんだから」
そのデータを受け取ったミストは、悠真の「絶望」こそが、支配力の暴走を誘発する鍵だと確信する。
一方、司令室。ルナは、アリスの超人的な暴走と、メイの命がけの献身という「感情的なノイズ」が、ミストの戦略を打ち破ったという事実に、改めて自分の理性と、メイドたちの愛の葛藤に苦悩するのだった。
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1. 映画研究会の撮影と途絶えた支援
セーフハウスから大学へ。志藤悠真は、ルナの指令に従い、映画研究会の撮影準備という日常を装っていた。マヤの裏切りを知った心はまだ癒えていない。
講堂の舞台袖で機材チェックをしていたサークルメンバーの先輩が、悠真に声をかけてきた。
「よう、志藤。相変わらず、その可愛い後輩たちに囲まれてて、お前は本当にタラシだな」
別の男子学生が茶化すように口を挟んだ。
「そうだよな。マヤが急にサークル辞めたのも、お前がアリスに乗り換えたせいじゃねーの? 俺、マヤのこと狙ってたのにさー」
「はは、お前には無理だろ。志藤は顔が地味なくせに、ああいう積極的な子に好かれるのが得意なんだよ。一種の才能だよな」
悠真は苦笑いを浮かべ、心の中で弁明した。
(マヤが辞めたのは俺のせいじゃないし、俺はアリスに乗り換えてもない。それに、俺はタラシなんかじゃない!)
今日の護衛はアリスとメイ。そして、新たなサポート役のシェンだ。悠真とアリスはサークル活動の場である大学の講堂で、機材のセッティングをしていた。メイとシェンは、講堂の隅で警戒任務についている。
ルナの冷静な声が、悠真のインカムに響いた。
「志藤様。シェンの動きに警戒を。クロエの情報によれば、彼女は既に大学構内のM.A.回線を掌握し、通信妨害を開始しているわ。ただし、シェンはサポート要員として扱い、その正体は公言しないように」
クロエの声は微かにノイズが混じっていた。
「ルナ隊長、妨害が強すぎる。シェンのハッキング能力は、ドクター・ヴァイスを上回っている。遠隔サポートが、まもなく途絶えます」
悠真は、アリスの隣で楽しそうに撮影機材を覗き込むシェンをちらりと見た。アリスはシェンに嫉妬し、笑顔で牽制する。
「シェンちゃん、機材に触るならちゃんと手袋してね。繊細なんだから。あと、言っておくけど、私は恋人役として、悠真くんの機材も全部独占して管理してるんだから」
メイはシェンを警戒し、ツインテールを揺らしながら悠真とアリスの間に割って入ろうとする。
「アリスせんぱい! メイもいるから大丈夫です! あの小悪魔ハッカーに、悠真せんぱいの独占権は渡しません!」
シェンがドローンを起動させた、その瞬間だった。悠真の耳元のインカムから、プツン、と音が途切れた。
ルナとクロエからの情報支援が完全に途絶えた。悠真は一瞬で血の気が引くのを感じた。
「通信が……切れた?」
シェンは悠真にだけ聞こえる声で囁いた。
「お兄ちゃんの『感情的なノイズ』を、シェンが完全に消してあげました。これで、邪魔は誰も入らないよ」
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2. 魔力吸収結界と学生たちの悲鳴
その時、講堂の裏口が破られ、黒い戦闘服を纏った数名の影が飛び込んできた。彼らはミストと連携する某国特殊部隊の傭兵たちだ。
「あなたたちは何者!?」
「威勢がいいな、さすが戦闘隊長の、アリスだったかな? 私は、ジーナ。ミスト、アジア支部の戦闘隊長さ」
彼らを率いて現れたのは、金髪ポニーテールでグラマラスな体型を持つ女性、ジーナだった。彼女は戦闘服の上に、インド風の装飾的なマントを纏い、その瞳は一切の感情を宿していない。資料の通り、「仏頂面の戦闘狂」の雰囲気を纏っていた。
ジーナは、悠真を一瞥すると、冷徹に言い放った。
「さて、貴様が志藤悠真か。噂の『抑止力』の覚醒者。だが、私には関係ない。私は、貴様を排除するという任務を遂行する」
某国特殊部隊が講堂全体を包囲する。悠真の周囲には、映画研究会のサークルメンバーや、講堂で自習していた一般学生たちが十数名いた。
ジーナが両手を掲げた瞬間、悠真の全身に異変が起こった。
「ぐっ……! な、なんだこの感じは……」
悠真の体から湧き上がるはずの支配力が、体内の奥底へと強制的に押し戻されていく。
ジーナが冷たい声で宣言した。
「無駄だ。これは魔力吸収結界。貴様の持つ古代の血統の力、そしてその支配力を、全てこの結界が吸収する。お前は今、ただの無力な人間だ」
悠真は絶望した。ゾルゲ戦で手に入れたはずの「戦場を支配する力」が、完全に封じられたのだ。膝の上で震えていたスライミーは、力なく地面に落ちる。ファントムは影の中に潜み、スパイクも動かない。
「支配力が……使えない」
「きゃああああ!」
「なんだ!? 化け物だ!」
「逃げろ! 誰か警察を呼んで!」
学生たちがパニックに陥り、一斉に出口へと殺到した。彼らは、黒い戦闘服の集団と、異様な結界の力に恐怖し、日常の崩壊を目の当たりにしていた。
アリスとメイは瞬時に戦闘服へとナノ換装を完了させた。漆黒と純白のメイド服、ライトニング・ケインと二丁SMG。
アリスは絶叫した。
「メイ! 優先順位は一般学生の避難誘導! その後、悠真くんの安全確保よ!」
メイはツインテールを激しく揺らした。
「了解です! みなさん、全力で逃げてください! 悠真せんぱいの平和な日常を護るんです!」
アリスとメイは、傭兵たちを牽制しつつ、学生たちの避難経路を確保しようと動く。
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3. テイム魔物の連携とメイの重傷
メイは超高速体術で銃弾を回避するが、ジーナの結界術は傭兵たちと連携し、メイの動きを封じ始めた。
ジーナは仏頂面のまま、淡々と命じる。 「学生など、放っておけ。狙いは抑止力のみ。速いな……。しかし、単純。結界を圧縮し、奴の駆動部に負荷をかけろ」
メイのサイボーグボディが軋みを上げ始めた。
「くっ……体が重い! ルナ先輩の指示も、クロエ先輩のデータもないなんて……!」
その時、逃げ遅れた映画研究会の友人が、ジーナの視界に入った。
ジーナは、その友人に視線を向けた。
「無関係な民間人か。ミストの邪魔だ。排除しろ」
傭兵の一人が、友人に銃口を向けた。
「やめろ!」
悠真は思わず、手を伸ばした。
が、その友人を護ろうとしたのは、悠真ではなくメイだった。メイは自身の任務と、悠真の「友人を護りたい」という優しさに突き動かされ、超高速体術で友人の前に飛び出した。
「悠真せんぱいの……大切な友人に、指一本触れさせません!」
メイの決死の行動に、ジーナは驚きもせず、冷徹に追撃した。
「馬鹿な女だ。結界弾を打ち込め」
ジーナの指先から放たれた強化結界弾が、メイの華奢な体に直撃した。
「きゃあッ!」
メイは血を吐き、壁に叩きつけられた。戦闘服が破れ、内部の精密な駆動部から火花とオイルが噴き出す。致命的な重傷だが、駆動音は微かに残っている。
悠真は絶叫した。
「メイ!!!」
絶望が悠真の心を覆い尽くしたが、その時、悠真の支配力が、結界の内側で僅かに震えた。
「俺のメイドを……傷つけたな」
悠真は、封じられた支配力を、テイム魔物の物理的な力へと変換した。
「スライミー、ファントム、スパイク! 結界の一点を集中攻撃しろ!」
悠真の命令と共に、スライミーがゼリー状の体を高速で膨張させ、結界にぶつかる。ファントムが黒い煙を伸ばし、結界の魔力制御点を混乱させる。スパイクが全身の針を硬質の礫弾に変え、結界の表面に集中連射した。
物理的な力と魔力の混乱により、ジーナの結界が僅かに亀裂を走らせた。
「なっ……魔物の力で、結界を破るだと!?」
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4. アリスの超人的な愛の盾
ジーナは、悠真のテイム魔物の連携を見て、一瞬で状況を理解した。
「やはり、抑止力は危険だ。排除を優先」
ジーナは、メイと悠真に向け、トドメとなる最大出力の追撃の結界弾を放った。結界弾は、光速で悠真と倒れたメイに向かって飛ぶ。
「これで終わりだ」
悠真は、重傷を負ったメイを抱きかかえ、抵抗することもできず、目を閉じた。
その瞬間、講堂の裏手から、黒い煙を上げてバイクが突っ込んできた。漆黒のフリルと純白のラインを持つ戦闘服を纏ったアリスが、光の残像となって講堂内部に飛び込んできた。
「誰にも、悠真くんとメイを傷つけさせない!」
アリスは咆哮と共に、自分の超スピードを限界まで引き出した。彼女は光速の残像となり、結界弾が直撃する直前に悠真とメイの間に割って入る。
アリスの身体に、結界弾が直撃した。
「ぐっ……!!!」
アリスの身体から、凄まじい火花が散る。彼女の超硬度アーマーが、防御の限界を超え、駆動部からオイルとパーツが飛び散る。
しかし、アリスは屈しない。その瞳には、任務を越えた本気の独占欲と愛の狂気が燃え上がっていた。
「『Code: My Only Love (私の愛のテリトリー)』、ブースト!! 私の愛のテリトリーに、指一本触れるんじゃない!!」
その時、講堂の裏口から、M.A.の正規メイド隊が戦闘服を纏い、怒涛の勢いで突入してきた。
ルナの声が、悠真の壊れたインカムから微かに漏れた。
「アリス! 正規メイド隊の突入と同時に離脱しなさい! 志藤様の命が最優先よ!」
ジーナと傭兵たちの視線が、新たな敵である正規メイド隊に集中した、その一瞬の隙。
アリスは、結界弾のエネルギーをシールドで受け止めると、負傷したメイを片腕に、悠真を抱きかかえ、再び光速の残像となった。
ジーナの結界を突き破り、二人の負傷者を抱えたまま、セーフハウスへ向かって光速で脱出したのだ。
「バカな! あのスピードは、M.A.のデータにはない! 制御不能の暴走だ!」
ジーナは驚愕した。
アリスは光速で移動しながら、インカムを通じて、後方で待機しているルナに断続的に連絡を入れた。
「ルナ! 記憶消去プロトコルを最優先で! 講堂に残った一般学生の記憶を全て消去して! 傭兵の排除はM.A.に任せる!」
ルナの冷徹な声が、悠真の耳元の壊れたインカムから微かに漏れた。
「アリス……! 駆動部がオーバーヒートを警告! 直ちにメンテナンスルームへ向かいなさい! 正規メイド隊は既に現場へ向かっている!」
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5. 絶望のデータと孤独な司令塔
悠真は、セーフハウスの地下にあるメンテナンスルームで目を覚ました。アリスの超人的なカバーにより、彼はかすり傷一つ負っていなかった。しかし、メイは瀕死の重傷。そして、アリスもまた、駆動部に深刻な負荷を負っていた。
ルナは、悠真の傍らで、静かに頭を下げた。
「志藤様。今回の襲撃は、私たちの予測を上回りました。シェンの妨害、ジーナの結界術、そして……メイ隊員が、あなたを護るために、自らの命を顧みなかった」
悠真は、自らの無力さに絶望していた。
「俺は……また、誰も護れなかった。支配力は封じられ、みんなは傷ついた……」
悠真が絶望に沈む、その時。セーフハウスの屋上。シェンは小悪魔的な笑顔を浮かべ、自身がハッキングした悠真の精神的なデータをミストへ送信していた。
「お兄ちゃん、ごめんね。でも、お兄ちゃんの『絶望のデータ』が、アジア本部にとって最高の餌になるんだから」
そのデータを受け取ったミストは、悠真の「絶望」こそが、支配力の暴走を誘発する鍵だと確信する。
一方、司令室。ルナは、アリスの超人的な暴走と、メイの命がけの献身という「感情的なノイズ」が、ミストの戦略を打ち破ったという事実に、改めて自分の理性と、メイドたちの愛の葛藤に苦悩するのだった。