ep27 魔導剣

ー/ー



『ただの剣ではありません。〔魔導剣〕です』

 それは紛れもない〔剣〕だった。
 刃があり、柄のある、真っ直ぐな銀色の剣。映画で見たことはあっても、実際に本物の剣なんて見たことがない。俺は思わず状況も忘れて見入ってしまう。

『見た目はすごくシンプルだけど……〔魔導剣〕ていうのか?』

『この世界にひとつしかない…否、この次元にひとつしか存在ない、唯一無二の魔導剣です』

『この次元?』

『さあ早く、その剣を手に取ってください』

『あ、ああ、そうだよな』

 剣の柄をぎゅっと握り、スーッと持ち上げる。どうしてかはわからないが、やけに動作がスムーズに行われた気がする。

『どうですか? クロー様』

『どう、と言われても……』

 なにげなく剣を正眼に構えてみると、妙な感覚が身体全体、いや、神経全体に染み渡って広がるような心地を覚える。この感覚はなんて言えばいいのだろう。端的に一言で言うなら、馴染む……。
 そう。馴染むんだ。まるで俺の手にあることが当たり前のように、ごく自然に。太陽が赤く燃えさかるように、海が青く波打つように、俺の手にこの剣があることが、まるで疑いようのない必然のように。

『ではクロー様。準備はよろしいですか?』

『え?』

『さて、貴方は今、再び選択を迫られています』

『!』

『その剣で戦って生き残るか、戦わないで殺されるか。さあどうします?』

 二択を迫られ、どういうわけか俺は「そもそも俺に戦うことができるのか?」とはならなかった。それは、この剣を持った瞬間から、すでに戦える気がしていたから。

『俺は、戦える……と思う。よくわからないが』

『承知しました。すぐに戻しますね。それでは……』

『あっ、お、オイ!』

 戻った。元の二階の部屋に。
 
「ん、おかえり」

「ぼ、ぼっちゃま……? いったい……」

 状況に変化はない。相変わらずパトリスは倒れたままで、ドレッドヘアーの仮面男はハンマーを持って机に腰掛けている。

「キミ、空間転移なんかできんの? やるねぇ。てかなにそれ? 剣? ぶっそーなモン持って戻ってきたねぇ」

 俺はそいつを目の前にし、先ほどに比べて遥かに沈着な自分に気づいた。剣が、そうさせているのだろうか?

「……お前らは何者だ?」

「ん? それ最初に言ったよね? どうも、ぼくたち〔フリーダム〕です」

 俺はスッと剣を構える。

「ぼ、ぼっちゃま? おやめください!」

「え? やるの? マジで?」

「他の仲間は?」

「別んとこ探してるよ。ほら、キミがいきなりどっかに消えちゃったから」

「なぜお前はここに残った?」

「すぐ戻ってくると思ったからね。で、魔導書はどこ?」

「知らない」

「あっそ。じゃあ、痛い目にあってもらおう……かっ」 

 言い終わるが先、そいつはハンマーを振り上げ、一足飛びで間合いを詰めてきた。俺の頭上から鉄の塊の一撃が降ってくる。俺は剣で払って攻撃を弾こうとする。が……

「えっ!?」

 ハンマーの勢いを抑えきれずに剣の方が弾かれて、俺の頭部には鉄の塊が重くガツンとめり込んだ。眼玉が飛び出んばかりの衝撃。

「あっ、加減したんだけど、死んじゃったかなコレ」

 そいつの言葉が耳に入ってきた時、俺は頭から血を垂れ流して床に沈んでいた。


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『ただの剣ではありません。〔魔導剣〕です』
 それは紛れもない〔剣〕だった。
 刃があり、柄のある、真っ直ぐな銀色の剣。映画で見たことはあっても、実際に本物の剣なんて見たことがない。俺は思わず状況も忘れて見入ってしまう。
『見た目はすごくシンプルだけど……〔魔導剣〕ていうのか?』
『この世界にひとつしかない…否、この次元にひとつしか存在ない、唯一無二の魔導剣です』
『この次元?』
『さあ早く、その剣を手に取ってください』
『あ、ああ、そうだよな』
 剣の柄をぎゅっと握り、スーッと持ち上げる。どうしてかはわからないが、やけに動作がスムーズに行われた気がする。
『どうですか? クロー様』
『どう、と言われても……』
 なにげなく剣を正眼に構えてみると、妙な感覚が身体全体、いや、神経全体に染み渡って広がるような心地を覚える。この感覚はなんて言えばいいのだろう。端的に一言で言うなら、馴染む……。
 そう。馴染むんだ。まるで俺の手にあることが当たり前のように、ごく自然に。太陽が赤く燃えさかるように、海が青く波打つように、俺の手にこの剣があることが、まるで疑いようのない必然のように。
『ではクロー様。準備はよろしいですか?』
『え?』
『さて、貴方は今、再び選択を迫られています』
『!』
『その剣で戦って生き残るか、戦わないで殺されるか。さあどうします?』
 二択を迫られ、どういうわけか俺は「そもそも俺に戦うことができるのか?」とはならなかった。それは、この剣を持った瞬間から、すでに戦える気がしていたから。
『俺は、戦える……と思う。よくわからないが』
『承知しました。すぐに戻しますね。それでは……』
『あっ、お、オイ!』
 戻った。元の二階の部屋に。
「ん、おかえり」
「ぼ、ぼっちゃま……? いったい……」
 状況に変化はない。相変わらずパトリスは倒れたままで、ドレッドヘアーの仮面男はハンマーを持って机に腰掛けている。
「キミ、空間転移なんかできんの? やるねぇ。てかなにそれ? 剣? ぶっそーなモン持って戻ってきたねぇ」
 俺はそいつを目の前にし、先ほどに比べて遥かに沈着な自分に気づいた。剣が、そうさせているのだろうか?
「……お前らは何者だ?」
「ん? それ最初に言ったよね? どうも、ぼくたち〔フリーダム〕です」
 俺はスッと剣を構える。
「ぼ、ぼっちゃま? おやめください!」
「え? やるの? マジで?」
「他の仲間は?」
「別んとこ探してるよ。ほら、キミがいきなりどっかに消えちゃったから」
「なぜお前はここに残った?」
「すぐ戻ってくると思ったからね。で、魔導書はどこ?」
「知らない」
「あっそ。じゃあ、痛い目にあってもらおう……かっ」 
 言い終わるが先、そいつはハンマーを振り上げ、一足飛びで間合いを詰めてきた。俺の頭上から鉄の塊の一撃が降ってくる。俺は剣で払って攻撃を弾こうとする。が……
「えっ!?」
 ハンマーの勢いを抑えきれずに剣の方が弾かれて、俺の頭部には鉄の塊が重くガツンとめり込んだ。眼玉が飛び出んばかりの衝撃。
「あっ、加減したんだけど、死んじゃったかなコレ」
 そいつの言葉が耳に入ってきた時、俺は頭から血を垂れ流して床に沈んでいた。