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第11話 誕生日

ー/ー



 瞳と悠木は列車に乗っていた。

「私とお出かけするの、そんなに嫌なの?」と瞳。

「どこへ行くの?」と悠木。

「内緒よ」と瞳。

 悠木はそっぽを向いた。

「今日が何の日か知ってる?」と瞳。「あなたの十歳の誕生日よ」

「ろくでもない日だよ。ぼくの災難が始まった日だ」と悠木。

()ねないで」と瞳。「パーティーを準備をしているの」

「どんな?」と悠木。

「とっても盛大なのよ」と瞳。「あなた、絶対に驚くわ」

「嫌な予感がする」と悠木。

「おいしいものを好きなだけ食べさせてあげるわ」と瞳。「あなたの好物をたくさん用意しているのよ」

「食べ物なら、家にもってきてよ」と悠木。

「だめよ。サプライズパーティーなんだから」と瞳。「桐子が先に行ってあなたを待っているわ」

「白猫を家に置いてこなくてもよかったのに」と悠木。

「彼女は賑やかな場所が苦手だから、連れてきたら可哀そうよ」と瞳。「今日は私が添い寝してあげるから、寂しくないわよ」

 悠木は瞳の胸にもたれかかった。


「もうじき駅に着くわ。用意をして」と瞳。

「宇宙港なんて聞いてないよ」と悠木。

「あなたは何も心配しなくていいのよ」と瞳。

「どこに行くの?」と悠木。

「さっきも言ったでしょ。パーティーよ。私が開会のスピーチをするから、あなたは横で座っててちょうだい。簡単でしょ」と瞳。

「うん」と悠木。

「着いたわ」と瞳。

 列車のドアが開いて、瞳と悠木が列車を降りた。

 降りたドアのすぐそばに、制服を着た若い女が立っていた。女が敬礼して「お待ちしていました、天野様」と言った。

「ありがとう、サキ」と瞳。

「こちらが弟さんですか?」と女。

「そうよ、よろしくね」と瞳。「悠木、私は準備があるから先に行くわ。あなたはこの川本サキさんに面倒を見てもらって」

「え?」と悠木。

「よろしくね、悠木君」と言って、サキはリスのように俊敏そうな目で悠木を見た。

「姉さん、ちょっと……」と悠木。

「悠木、いい子にしてるのよ」と瞳。

「悠木君、行きましょう」とサキ。「こちらよ、乗船前にここで着替えてもらうわ」

「乗船だって? パーティーじゃないの?」と悠木。

「ステーション行きのシャトルに乗るから、着替えるのよ。その恰好では危険でしょ」とサヤ。

「聞いてないよ」と悠木。

「私が手伝ってあげるから大丈夫よ。心配ないから」とサキ。

「そういうことじゃなくて……」と悠木。

「こちらよ。このラウンジに入って」とサキがドアを開けて悠木を中に入れた。

「ラウンジ?」と悠木。

「関係者しかいないから、人目を気にしなくていいわよ」と言いながら、サキは悠木の手を引いて奥のテーブル席に案内した。「早くこっちに来て服を脱いで」

 サキが奥のカウンターテーブルに手を振って合図をすると、すばやく二人の女が駆け寄ってきた。そのうち一人が悠木の服を脱がし、もう一人は持ってきたスーツケースを開けて中身の確認を始めた。

「え? パンツまで換えるの」と悠木。

「すべて用意してあるのよ」とサキ。

「恥ずかしいよ」と悠木。

「かわいいわね」とサキ。

 悠木を裸にすると、二人の女は手際よくスーツケースから衣類を取り出して、悠木に着せ始めた。

「悠木君、もう少しだけ我慢してね。すぐ終わるから」とサキ。

「これって士官服だよね。コスプレパーティーなの?」と悠木。

「そうよ。ぴったりだわ。よく似合ってる!」とサキ。

「子供用の士官服なんて初めて見たよ。靴まであるんだね」と悠木。

「悠木君のためにあつらえたのよ。りりしいわ」とサキ。

「ぼくは軍が嫌いなんだけど」と悠木。

「急いで! シャトルが出る時間よ」とサキ。

「搭乗ゲートは遠いよ」と悠木。

「ここから乗るの。今日は特別だから」とサキ。

「え、チャーターしたの?」と悠木。

「十人乗りの特別便よ」とサキ。

「冗談でしょ?」と悠木。

 二人はラウンジのドアに接続されたボーディングブリッジを通ってシャトルに乗り込んだ。

「伊沢悠木および川本サヤ、搭乗いたします」とサキ。

「確認した」と乗組員。

「悠木君、こちらよ」とサキが最前列のシートに悠木を座らせた。

「本当に小型シャトルだ。贅沢だな」と悠木。

「シートベルトをしてあげる」とサキ。

「なんだか誘拐されてる気分だよ」と悠木。

「着いたらすぐにパーティーだから、今はいい子にしてて」とサキ。

 シャトルが小刻みな振動をはじめた。

「もう離陸なの? まるでぼく専用の空港みたいだね」と悠木。



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 瞳と悠木は列車に乗っていた。
「私とお出かけするの、そんなに嫌なの?」と瞳。
「どこへ行くの?」と悠木。
「内緒よ」と瞳。
 悠木はそっぽを向いた。
「今日が何の日か知ってる?」と瞳。「あなたの十歳の誕生日よ」
「ろくでもない日だよ。ぼくの災難が始まった日だ」と悠木。
「|拗《す》ねないで」と瞳。「パーティーを準備をしているの」
「どんな?」と悠木。
「とっても盛大なのよ」と瞳。「あなた、絶対に驚くわ」
「嫌な予感がする」と悠木。
「おいしいものを好きなだけ食べさせてあげるわ」と瞳。「あなたの好物をたくさん用意しているのよ」
「食べ物なら、家にもってきてよ」と悠木。
「だめよ。サプライズパーティーなんだから」と瞳。「桐子が先に行ってあなたを待っているわ」
「白猫を家に置いてこなくてもよかったのに」と悠木。
「彼女は賑やかな場所が苦手だから、連れてきたら可哀そうよ」と瞳。「今日は私が添い寝してあげるから、寂しくないわよ」
 悠木は瞳の胸にもたれかかった。
「もうじき駅に着くわ。用意をして」と瞳。
「宇宙港なんて聞いてないよ」と悠木。
「あなたは何も心配しなくていいのよ」と瞳。
「どこに行くの?」と悠木。
「さっきも言ったでしょ。パーティーよ。私が開会のスピーチをするから、あなたは横で座っててちょうだい。簡単でしょ」と瞳。
「うん」と悠木。
「着いたわ」と瞳。
 列車のドアが開いて、瞳と悠木が列車を降りた。
 降りたドアのすぐそばに、制服を着た若い女が立っていた。女が敬礼して「お待ちしていました、天野様」と言った。
「ありがとう、サキ」と瞳。
「こちらが弟さんですか?」と女。
「そうよ、よろしくね」と瞳。「悠木、私は準備があるから先に行くわ。あなたはこの川本サキさんに面倒を見てもらって」
「え?」と悠木。
「よろしくね、悠木君」と言って、サキはリスのように俊敏そうな目で悠木を見た。
「姉さん、ちょっと……」と悠木。
「悠木、いい子にしてるのよ」と瞳。
「悠木君、行きましょう」とサキ。「こちらよ、乗船前にここで着替えてもらうわ」
「乗船だって? パーティーじゃないの?」と悠木。
「ステーション行きのシャトルに乗るから、着替えるのよ。その恰好では危険でしょ」とサヤ。
「聞いてないよ」と悠木。
「私が手伝ってあげるから大丈夫よ。心配ないから」とサキ。
「そういうことじゃなくて……」と悠木。
「こちらよ。このラウンジに入って」とサキがドアを開けて悠木を中に入れた。
「ラウンジ?」と悠木。
「関係者しかいないから、人目を気にしなくていいわよ」と言いながら、サキは悠木の手を引いて奥のテーブル席に案内した。「早くこっちに来て服を脱いで」
 サキが奥のカウンターテーブルに手を振って合図をすると、すばやく二人の女が駆け寄ってきた。そのうち一人が悠木の服を脱がし、もう一人は持ってきたスーツケースを開けて中身の確認を始めた。
「え? パンツまで換えるの」と悠木。
「すべて用意してあるのよ」とサキ。
「恥ずかしいよ」と悠木。
「かわいいわね」とサキ。
 悠木を裸にすると、二人の女は手際よくスーツケースから衣類を取り出して、悠木に着せ始めた。
「悠木君、もう少しだけ我慢してね。すぐ終わるから」とサキ。
「これって士官服だよね。コスプレパーティーなの?」と悠木。
「そうよ。ぴったりだわ。よく似合ってる!」とサキ。
「子供用の士官服なんて初めて見たよ。靴まであるんだね」と悠木。
「悠木君のためにあつらえたのよ。りりしいわ」とサキ。
「ぼくは軍が嫌いなんだけど」と悠木。
「急いで! シャトルが出る時間よ」とサキ。
「搭乗ゲートは遠いよ」と悠木。
「ここから乗るの。今日は特別だから」とサキ。
「え、チャーターしたの?」と悠木。
「十人乗りの特別便よ」とサキ。
「冗談でしょ?」と悠木。
 二人はラウンジのドアに接続されたボーディングブリッジを通ってシャトルに乗り込んだ。
「伊沢悠木および川本サヤ、搭乗いたします」とサキ。
「確認した」と乗組員。
「悠木君、こちらよ」とサキが最前列のシートに悠木を座らせた。
「本当に小型シャトルだ。贅沢だな」と悠木。
「シートベルトをしてあげる」とサキ。
「なんだか誘拐されてる気分だよ」と悠木。
「着いたらすぐにパーティーだから、今はいい子にしてて」とサキ。
 シャトルが小刻みな振動をはじめた。
「もう離陸なの? まるでぼく専用の空港みたいだね」と悠木。