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第12話 乗艦

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 小型シャトルは軌道ステーションにドッキングした。軍専用の港だった。到着ゲートでのチェックがない。

「悠木君、こちらよ」と言ったサキの表情が硬くなった。

 高級将校用の空港ラウンジだった。サキが先導して悠木を奥のテーブル席に案内した。席には三人の女性将校が座っていた。そのうちの一人が瞳だった。

「ようこそ、悠木君」と将官らしき階級章を付けた女が言った。

「待ってたわよ」と瞳。

「姉さん、ここは?」と悠木。

「少しだけこの人の言うことを聞いてちょうだい。そうしたら事情を話してあげるから」と瞳。

「ちょっと待って……」と悠木が言うより早く、将官の女が言った。「伊沢悠木、あなたを防空隊大尉に任命します。伊沢悠木大尉を本日付で朝風型一番艦朝風の艦長に任命します」

 将官の女が腰をかがめて、うやうやしく悠木の胸に階級章のバッチを付け、艦長帽をかぶせた。

「階級章? コスプレじゃないの?」と悠木。

「あなたにはこれから艦長をしてもらうわ。何か質問あるかしら」と瞳。

「パーティーじゃなかったの?」と悠木。

「パーティーは艦に乗ってからよ」と瞳。

「私は瑠璃子准将よ。艦隊司令なの。あなたの上官になるから、よろしくね、悠木大尉」

「内親王様よ。あなたも知ってるでしょ」と瞳。

「何でお姫様がこんなところに?」と悠木。

「もう時間がないわ、急ぎましょう」と瑠璃子。

「どこへ?」と悠木。

「決まってるわ、埠頭よ。あなたの朝風がいる第七埠頭よ」と瞳。

 悠木は絶句した。


 一行はラウンジを出て、エレベーターで移動した。エレベーターの壁は透明な強化ガラス製だった。

「見えてきたわ」と瑠璃子。

「本当に艦なのか。第一次防衛戦争時のドラゴン級に似ている」と悠木。

「そうよ。あなたのために建造したの」と瑠璃子。

「冗談だろ」と悠木。

 エレベーターを降りると目の前に乗艦用のタラップがあった。

「乗艦するわ」と瞳。「悠木、機嫌を直して。拗ねてる場合じゃないのよ」

「どうしろと?」と悠木。

「この艦を指揮するのよ」と瞳。

「これが誕生日プレゼント? 冗談でしょ?」と悠木。

「受け取ってもらうわ。乗組員付で」と瑠璃子。

「ぼくは軍が好きじゃないんだ」と悠木。

「防空隊は軍じゃないのよ」と瑠璃子。

「そんなの屁理屈ですよ、艦隊指令殿」と悠木。

「あなたが軍を嫌っている理由を知っているわ。私は艦隊司令官としてこの船に乗るけれど、実際にはあなたの人質よ。内親王の私がいる限り、誰もこの船を傷つけたりはしない」と瑠璃子。

「でも、もしあなたが戦闘で負傷したら、ぼくが恨まれますよ」と悠木。

「優秀な艦長のあなたがいれば、私が怪我をすることはないわ。そして私が誰にも後ろから撃たせない。これで朝風は無敵よ」と瑠璃子。

「そんな、楽観的すぎる……」と弘樹。

「ちなみに二番艦、夕霧の艦長は桐子よ。だから戦術的にも背中の心配はないわ」と瞳。

「至れり尽くせりだね」と悠木。

「だから引き受けてちょうだい」と瞳。

「もう逃げられないってことか。わかったよ」と悠木。

「ありがとう、よかった。頼りにしているわ、悠木大尉」と瑠璃子。

「ご期待に沿えるよう努力します、艦隊司令殿」と悠木。

「瞳さんには艦隊司令部の参謀長を務めてもらってるわ。それから川本サキ少尉はあなたの副官よ」と瑠璃子。「とても優秀なの」

「知ってますよ。ここに来るまで手玉に取られました」と悠木。

「ごめんなさい」とサキ。

「その調子でこれからも頼むわ」と瞳。



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 小型シャトルは軌道ステーションにドッキングした。軍専用の港だった。到着ゲートでのチェックがない。
「悠木君、こちらよ」と言ったサキの表情が硬くなった。
 高級将校用の空港ラウンジだった。サキが先導して悠木を奥のテーブル席に案内した。席には三人の女性将校が座っていた。そのうちの一人が瞳だった。
「ようこそ、悠木君」と将官らしき階級章を付けた女が言った。
「待ってたわよ」と瞳。
「姉さん、ここは?」と悠木。
「少しだけこの人の言うことを聞いてちょうだい。そうしたら事情を話してあげるから」と瞳。
「ちょっと待って……」と悠木が言うより早く、将官の女が言った。「伊沢悠木、あなたを防空隊大尉に任命します。伊沢悠木大尉を本日付で朝風型一番艦朝風の艦長に任命します」
 将官の女が腰をかがめて、うやうやしく悠木の胸に階級章のバッチを付け、艦長帽をかぶせた。
「階級章? コスプレじゃないの?」と悠木。
「あなたにはこれから艦長をしてもらうわ。何か質問あるかしら」と瞳。
「パーティーじゃなかったの?」と悠木。
「パーティーは艦に乗ってからよ」と瞳。
「私は瑠璃子准将よ。艦隊司令なの。あなたの上官になるから、よろしくね、悠木大尉」
「内親王様よ。あなたも知ってるでしょ」と瞳。
「何でお姫様がこんなところに?」と悠木。
「もう時間がないわ、急ぎましょう」と瑠璃子。
「どこへ?」と悠木。
「決まってるわ、埠頭よ。あなたの朝風がいる第七埠頭よ」と瞳。
 悠木は絶句した。
 一行はラウンジを出て、エレベーターで移動した。エレベーターの壁は透明な強化ガラス製だった。
「見えてきたわ」と瑠璃子。
「本当に艦なのか。第一次防衛戦争時のドラゴン級に似ている」と悠木。
「そうよ。あなたのために建造したの」と瑠璃子。
「冗談だろ」と悠木。
 エレベーターを降りると目の前に乗艦用のタラップがあった。
「乗艦するわ」と瞳。「悠木、機嫌を直して。拗ねてる場合じゃないのよ」
「どうしろと?」と悠木。
「この艦を指揮するのよ」と瞳。
「これが誕生日プレゼント? 冗談でしょ?」と悠木。
「受け取ってもらうわ。乗組員付で」と瑠璃子。
「ぼくは軍が好きじゃないんだ」と悠木。
「防空隊は軍じゃないのよ」と瑠璃子。
「そんなの屁理屈ですよ、艦隊指令殿」と悠木。
「あなたが軍を嫌っている理由を知っているわ。私は艦隊司令官としてこの船に乗るけれど、実際にはあなたの人質よ。内親王の私がいる限り、誰もこの船を傷つけたりはしない」と瑠璃子。
「でも、もしあなたが戦闘で負傷したら、ぼくが恨まれますよ」と悠木。
「優秀な艦長のあなたがいれば、私が怪我をすることはないわ。そして私が誰にも後ろから撃たせない。これで朝風は無敵よ」と瑠璃子。
「そんな、楽観的すぎる……」と弘樹。
「ちなみに二番艦、夕霧の艦長は桐子よ。だから戦術的にも背中の心配はないわ」と瞳。
「至れり尽くせりだね」と悠木。
「だから引き受けてちょうだい」と瞳。
「もう逃げられないってことか。わかったよ」と悠木。
「ありがとう、よかった。頼りにしているわ、悠木大尉」と瑠璃子。
「ご期待に沿えるよう努力します、艦隊司令殿」と悠木。
「瞳さんには艦隊司令部の参謀長を務めてもらってるわ。それから川本サキ少尉はあなたの副官よ」と瑠璃子。「とても優秀なの」
「知ってますよ。ここに来るまで手玉に取られました」と悠木。
「ごめんなさい」とサキ。
「その調子でこれからも頼むわ」と瞳。