ep16 パーティー①

ー/ー



  【6】


 ラキアード家の屋敷一階の広間で、そのパーティーは開催された。
 人数は、ざっと百人ぐらいは集まっているだろうか。男女比は、女性の方がやや多い。そのせいか華やかに賑わっている。点在する料理の置かれたテーブルのまわりを、酒のグラスを持ちながら談笑する人々。椅子はあるが、ほとんどの人間が着席することなく興じている。皆、とても楽しそうだ。

「こんなの、はじめてだな……」

 今までの自分では想像もできなかったようなリア充空間。その主催者のひとりが俺。否が応でも次々と声をかけられる。

「クローさん! はじめまして! お会いできて光栄です」

「あ、うん! こちらこそ」

「お若いのに、こんな立派な屋敷の主なんですね!」

「は、はい!」

「クローさん。ミックに聞いていたより、実物はもっとステキですね!」

「そ、そうですか?」

 悪くない気分だ。しかし外見と財産と家柄が変わればこうも一変するものなのか。手のひら返しとはまさにこのこと。そう思うと一瞬フテくされた気分にもなったが、すぐに心地良くなった。所詮人間なんてそんなものなんだろう。

「そんなことよりも……」

 今の俺には他の何よりも優先すべき重要事項がある。

「ナオミ……」

 会場のどこにも、彼女の姿はない。ミックはこう言っていた。
「クロー、良かったな。ナオミの参加も取りつけることができたぞ! おれとナオミには共通の知り合いがいたんだよ。そいつがナオミを連れてきてくれるってさ」「当日は遅れてくるんだと。そんで時間になったらおれがいったん出てって、そいつとナオミを迎えに行くことになっている。まっ、クローは安心して待っていてくれよ」
 なんでミックが迎えに行くんだ、直接来ればいいんじゃね、と思ったが、そんなことはもういい。ナオミが来てくれさえすれば、それでいいんだから。

「はやく、会いたいなぁ……」

 ミックがナオミを迎えに出ていったのはつい先刻のこと。わかってはいても、はやる気持ちは抑えられない。俺は俺のお姫様の到着をまだかまだかと待ちきれないでいる。今なら七月七日まで織姫を待つ彦星の気持ちも手に取るようにわかる。

「ナオミ……」

 まわりには今、可愛い女の子がたくさんいる。だが、目に入らない。ナオミのことで頭がいっぱいだから。
 俺はそわそわしながらミックが戻ってくるのを今か今かと待った。

「まだかな……」

 しかし来ない。もう二十分ぐらい経ったか? そろそろ来てもいい頃だろう。

「おそい……」

 俺はイラ立ちはじめている。話半分でまわりと会話をしながら気分を紛らわせていたが、もう限界だ。

「ちょっと、席外すね」

 テーブルにグラスを置くと、なにか用事でも思い出したようにそそくさと退室した。
 玄関に向かう途中、廊下ですれ違った使用人に「クローさま? どちらに?」と声をかけられた。
 俺は顔も向けずに「ちょっと」とだけ言って、さっさと表に出ていった。


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  【6】
 ラキアード家の屋敷一階の広間で、そのパーティーは開催された。
 人数は、ざっと百人ぐらいは集まっているだろうか。男女比は、女性の方がやや多い。そのせいか華やかに賑わっている。点在する料理の置かれたテーブルのまわりを、酒のグラスを持ちながら談笑する人々。椅子はあるが、ほとんどの人間が着席することなく興じている。皆、とても楽しそうだ。
「こんなの、はじめてだな……」
 今までの自分では想像もできなかったようなリア充空間。その主催者のひとりが俺。否が応でも次々と声をかけられる。
「クローさん! はじめまして! お会いできて光栄です」
「あ、うん! こちらこそ」
「お若いのに、こんな立派な屋敷の主なんですね!」
「は、はい!」
「クローさん。ミックに聞いていたより、実物はもっとステキですね!」
「そ、そうですか?」
 悪くない気分だ。しかし外見と財産と家柄が変わればこうも一変するものなのか。手のひら返しとはまさにこのこと。そう思うと一瞬フテくされた気分にもなったが、すぐに心地良くなった。所詮人間なんてそんなものなんだろう。
「そんなことよりも……」
 今の俺には他の何よりも優先すべき重要事項がある。
「ナオミ……」
 会場のどこにも、彼女の姿はない。ミックはこう言っていた。
「クロー、良かったな。ナオミの参加も取りつけることができたぞ! おれとナオミには共通の知り合いがいたんだよ。そいつがナオミを連れてきてくれるってさ」「当日は遅れてくるんだと。そんで時間になったらおれがいったん出てって、そいつとナオミを迎えに行くことになっている。まっ、クローは安心して待っていてくれよ」
 なんでミックが迎えに行くんだ、直接来ればいいんじゃね、と思ったが、そんなことはもういい。ナオミが来てくれさえすれば、それでいいんだから。
「はやく、会いたいなぁ……」
 ミックがナオミを迎えに出ていったのはつい先刻のこと。わかってはいても、はやる気持ちは抑えられない。俺は俺のお姫様の到着をまだかまだかと待ちきれないでいる。今なら七月七日まで織姫を待つ彦星の気持ちも手に取るようにわかる。
「ナオミ……」
 まわりには今、可愛い女の子がたくさんいる。だが、目に入らない。ナオミのことで頭がいっぱいだから。
 俺はそわそわしながらミックが戻ってくるのを今か今かと待った。
「まだかな……」
 しかし来ない。もう二十分ぐらい経ったか? そろそろ来てもいい頃だろう。
「おそい……」
 俺はイラ立ちはじめている。話半分でまわりと会話をしながら気分を紛らわせていたが、もう限界だ。
「ちょっと、席外すね」
 テーブルにグラスを置くと、なにか用事でも思い出したようにそそくさと退室した。
 玄関に向かう途中、廊下ですれ違った使用人に「クローさま? どちらに?」と声をかけられた。
 俺は顔も向けずに「ちょっと」とだけ言って、さっさと表に出ていった。