ep15 友達

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 また来てしまった。二日連続だ。
 一度帰宅してから馬車で来ようとも思ったが、街で夜まで時間を潰してからそのまま来た。いったん家に帰るようなテンションじゃなかったからだ。上がったボルテージそのままで行きたかったからだ!

「ビールお待ち」
「どうも」

 とりあえず頼んだ酒のグラスを手に持つと、店内をグルッとひと回りする。昨日来たときよりも時間が早いせいか、客の入りはまばらだ。

「そこまで盛り上がってもいないな……」

 おかげで人探しはしやすい。が、どうやらナオミはいないようだ。
 いささかガッカリすると、俺はカウンター席のはしっこに腰かけた。昨夜、ナオミとピッタリくっついて座ったカウンター席。

「ハァー」

 深くため息をつき、今さらなことを考える。

「てゆーか、今日もまたここに来るなんて確証、どこにもないじゃん……」

 なんだか急に、自分がみじめに思えてきた。自分がみじめなのは今に始まったことではないけれど。元の世界にいたときからずっと……。

「あーっ! また悪いクセだ! もう昔のことは考えるな!」

 自らを奮い立たせるように、グラスの酒をグーッと一気に飲み干した。
 一時間経ち……。
 俺は四杯目の酒を口にしながら、すでに諦めかけていた。もうナオミとは一生会えないのかもしれない。そこへ……

「よう? クローじゃねえか!」

「ん? あ……ミック!」

 俺とナオミの恋のキューピッドとも言うべきチャラ男のミックが、昨晩につづいて再び俺の前へ現れた。沈んでいた心が途端に躍り上がる。

「会いたかったぜ! 兄弟!」

「あ、ああ! 俺も会いたかったよミック!」

 俺とミックは再会を祝福してカンパイした。

「今日もここにいるなんてなぁ……お前に会いにいく手間がはぶけて良かったぜ」

「ミックが俺に会いに? どこへ?」

「そんなのお前ん家に決まってるだろ?」

「え? 俺、ミックに住所おしえたっけ?」

「あっ……そうだよな! お前ん家がどこかなんて聞いてなかったよな! ハハハ!」

「テキトーだなぁ」

「ジョーダンだよジョーダン!」

「あ、あのさ、ミック」

「ん? どうした?」

 俺はワラにもすがる思いで切りだした。このチャラ男なら、ムダに顔も広そうだし、ナオミの手がかりとなる何かに繋がっていけるかもしれない。

「昨日の、ナオミのことなんだけどさ」

「ナオミがどーした?」

「なにか知らないかな? どこに住んでるとか、そういう情報というか……」

「ほう? そうか。なるほどね……」

「?」

「つまりアレか。ナオミのことが気に入ったってわけか」

「いや! そうじゃ……うん。そ、そうなんだ」

「どうやらマジだったようだな……」

「えっ?」

「わかった。なら予定とは少し変わるが……」 

「さ、さっきからなに?」

「クロー! いい方法があるぞ!」

「はい?」

「お前ん家でパーティーをやるんだ!」

「は? 急になんなの?」

「いいか? 人はおれが集める。お前は酒食と会場を提供してくれればいい。そこでだ。おれのツテを使ってなんとかナオミを参加させてやる!」

「そ、そんなことできるの!?」

「ああ! まかせろ! なんせクローとおれはダチだからな!」

「あ、ありがとうミック! でも……」

「なんだ?」

「なんでまたウチでパーティーなの?」

「そんなの、楽しーからに決まってんだろ?」

「は、はあ」

「おまえばっかりひとりで楽しもうったってそうはいかねーぞ? ダチのおれにも楽しみをわけれくれよ!」

「そ、そうだよね」

「まっ、おれたちがこうして出会ったのもなにかの縁だ! ダチ同士、楽しくやろうぜ!」

「あ、ああ!」

 俺はミックに、感謝の気持ちでいっぱいだった。だから俺ん家でパーティーを開いて、ミックが楽しんでくれるなら何よりだ。
 ミックのおかげで、俺はナオミと知り合うことができた。今度も、ミックのおかげでナオミと再会できる。 
 なんだか、してもらってばかりで悪いよな。せめて、こいつの希望はできるだけ聞いてあげたい。
 それからというもの……。
 俺は何度もミックと会い、ミックの希望通りに事を進めた。ミックひとりで屋敷に遊びに来たこともあった。まだ出会って間もない俺たちだったけど、ふたりはすっかり友達になっていた。


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 また来てしまった。二日連続だ。
 一度帰宅してから馬車で来ようとも思ったが、街で夜まで時間を潰してからそのまま来た。いったん家に帰るようなテンションじゃなかったからだ。上がったボルテージそのままで行きたかったからだ!
「ビールお待ち」
「どうも」
 とりあえず頼んだ酒のグラスを手に持つと、店内をグルッとひと回りする。昨日来たときよりも時間が早いせいか、客の入りはまばらだ。
「そこまで盛り上がってもいないな……」
 おかげで人探しはしやすい。が、どうやらナオミはいないようだ。
 いささかガッカリすると、俺はカウンター席のはしっこに腰かけた。昨夜、ナオミとピッタリくっついて座ったカウンター席。
「ハァー」
 深くため息をつき、今さらなことを考える。
「てゆーか、今日もまたここに来るなんて確証、どこにもないじゃん……」
 なんだか急に、自分がみじめに思えてきた。自分がみじめなのは今に始まったことではないけれど。元の世界にいたときからずっと……。
「あーっ! また悪いクセだ! もう昔のことは考えるな!」
 自らを奮い立たせるように、グラスの酒をグーッと一気に飲み干した。
 一時間経ち……。
 俺は四杯目の酒を口にしながら、すでに諦めかけていた。もうナオミとは一生会えないのかもしれない。そこへ……
「よう? クローじゃねえか!」
「ん? あ……ミック!」
 俺とナオミの恋のキューピッドとも言うべきチャラ男のミックが、昨晩につづいて再び俺の前へ現れた。沈んでいた心が途端に躍り上がる。
「会いたかったぜ! 兄弟!」
「あ、ああ! 俺も会いたかったよミック!」
 俺とミックは再会を祝福してカンパイした。
「今日もここにいるなんてなぁ……お前に会いにいく手間がはぶけて良かったぜ」
「ミックが俺に会いに? どこへ?」
「そんなのお前ん家に決まってるだろ?」
「え? 俺、ミックに住所おしえたっけ?」
「あっ……そうだよな! お前ん家がどこかなんて聞いてなかったよな! ハハハ!」
「テキトーだなぁ」
「ジョーダンだよジョーダン!」
「あ、あのさ、ミック」
「ん? どうした?」
 俺はワラにもすがる思いで切りだした。このチャラ男なら、ムダに顔も広そうだし、ナオミの手がかりとなる何かに繋がっていけるかもしれない。
「昨日の、ナオミのことなんだけどさ」
「ナオミがどーした?」
「なにか知らないかな? どこに住んでるとか、そういう情報というか……」
「ほう? そうか。なるほどね……」
「?」
「つまりアレか。ナオミのことが気に入ったってわけか」
「いや! そうじゃ……うん。そ、そうなんだ」
「どうやらマジだったようだな……」
「えっ?」
「わかった。なら予定とは少し変わるが……」 
「さ、さっきからなに?」
「クロー! いい方法があるぞ!」
「はい?」
「お前ん家でパーティーをやるんだ!」
「は? 急になんなの?」
「いいか? 人はおれが集める。お前は酒食と会場を提供してくれればいい。そこでだ。おれのツテを使ってなんとかナオミを参加させてやる!」
「そ、そんなことできるの!?」
「ああ! まかせろ! なんせクローとおれはダチだからな!」
「あ、ありがとうミック! でも……」
「なんだ?」
「なんでまたウチでパーティーなの?」
「そんなの、楽しーからに決まってんだろ?」
「は、はあ」
「おまえばっかりひとりで楽しもうったってそうはいかねーぞ? ダチのおれにも楽しみをわけれくれよ!」
「そ、そうだよね」
「まっ、おれたちがこうして出会ったのもなにかの縁だ! ダチ同士、楽しくやろうぜ!」
「あ、ああ!」
 俺はミックに、感謝の気持ちでいっぱいだった。だから俺ん家でパーティーを開いて、ミックが楽しんでくれるなら何よりだ。
 ミックのおかげで、俺はナオミと知り合うことができた。今度も、ミックのおかげでナオミと再会できる。 
 なんだか、してもらってばかりで悪いよな。せめて、こいつの希望はできるだけ聞いてあげたい。
 それからというもの……。
 俺は何度もミックと会い、ミックの希望通りに事を進めた。ミックひとりで屋敷に遊びに来たこともあった。まだ出会って間もない俺たちだったけど、ふたりはすっかり友達になっていた。