タイムカプセル
ー/ー タイムカプセル
『こうして五人が集まるのは、一年ぶりだった。
高校の卒業式の後、太一、美雪、俊太、映見、そして俺の五人でタイムカプセルを埋め、一年後に集まろうと約束をして俺達は旅立った。
と言えば格好がいいが、実際は卒業後も連絡を取り合っているので、特別な懐かしさはない。
違う大学に進んだ俺達は、高校の時と比べ会う機会は減ったけれど、疎遠にはなっていない。顔を見るのは久し振りだが近況などは把握している。
「たった一年じゃ、こうして集まってもあまり変わらないな」
そう屈託なく俊太は笑うが、対照的に太一の表情は緊張で強張っていた。
大人しめの性格で、女性陣からはカッコいいと言われるより可愛いと言われることが多い太一だったが、顔付きがいくらか大人びたように見える。
その変化は、今日にかけている決意の表れからだろう。
「どうだ太一? いけそうか?」
「ごめん、研。もう少し時間をくれ」
全てを知っている俺に、太一が時間を欲しいと懇願する。
「タイムカプセルを開ける前に、もう少し雑談しようぜ。ネタが尽きたらタイムカプセルを開けよう」
そう提案すると皆が賛同してくれたので、俺が仕切り雑談を盛り上げる。
場を盛り上げながら、緊張している太一の表情を見て、俺は卒業前の出来事を思い出していた。
太一に連れ出され、打ち明けられた話。
「俺、美雪が好きなんだ」
そんな告白をされてもまったく驚かず、やっぱりなと言う気持ちしか沸かなかった。
「卒業前に告白するのか?」
「いや、五年後にタイムカプセルを開けるだろ。その時に告白しようと思う。だから、俺はタイムカプセルにラブレターを入れるよ」
「はぁ? 五年だぞ? そんなに待ってたら他に彼氏ができる可能性の方が高いだろ」
「それで美雪が幸せになれるなら、それでいいと思ってる」
本当は五年も待たず、今すぐ告白をしに行けと言いたかったが、告白に行けない太一の気持ちも分からなくもなかった。
二週間前に、美雪は最愛の母を病気で亡くした。
太一が俺に告白してくれた時には、美雪もいくらか明るさを取り戻していたが、太一的には弱っている美雪の心に付け込む形になるのを嫌ったのだろう。
それに、俺は愛する人が幸せになるのなら、その相手が自分でなくてもいいという気持ちが分からなくもなかった。
「分かった、一年後にタイムカプセルを開ける時、ちゃんと告白しろよ」
「ちょっと、一年後って」
「どうせ、美雪の気持ちを考えて告白を躊躇ってるんだろ。なら、五年は長すぎる。一年後にしなかったら俺がこの告白を美雪に伝えに行くぜ」
「強引なんだから……相談するんじゃなかった」
太一はそう言って、嬉しそうに笑った。
その後、俺が強引に話を進めてタイムカプセルの開封を五年後から一年後に変更し、今に至る。
太一が、軽く俺の腰の辺りを突くので視線を向けると、決心がついたとアイコンタクトを送る。
俺は、それに応じるように肯いて、タイムカプセルを掘り返そうと号令をかける。
待ってましたと俊太がスコップで土を掘り返し、そんなに深く埋めていない安物の宝箱の形をしたタイムカプセルを取り出す。
俊太が埋めたものは、好きなバンドのCDだった。
忍耐力がない自分を鍛えるために埋めたらしいが、一ヶ月後には全曲ダウンロードしてしまったらしい。
映見が埋めたものは、五人で写った沢山の学校行事の写真。
掘り返した時に全員で見たいから埋めたんだと笑いながら、写真を眺めている。
俺が埋めたものは、一所懸命に貯めた現金三万円。
一年後に掘り返しても特別な思い入れが生まれそうになかったので、これでこの後食事に行こうと誘えば盛り上がるだろうと、かなり変化急な物を入れた。
次は、太一の番になった。
太一は最後にしたかったみたいだが、美雪が太一の後の方が良いと主張したので、太一が折れた。
太一が、自分が入れた封筒の中から紙を取り出し、美雪に対してのラブレターを恥ずかしがらず、胸を張って読み上げる。
その告白は太一らしく、真っ直ぐな想いがこもったとても心温まる告白。
美雪は瞳に涙を浮かべながら視線を逸らさず、太一を見つめながら聞いている。
短くも長くも感じられる告白が終わると、皆の視線が美雪に集中する。
美雪は、自分が埋めた封筒から太一と同じように紙を取り出し、その紙を太一に渡す。
「えっ?」
太一は驚きの表情を浮かべる。
驚く太一に、美雪は声をかける。
「太一、ゴメンね。太一が告白してくれるのを知ってたんだ」
美雪が渡した紙には、一年間待っていました。こんな私で良ければ付き合ってくださいと書かれていた。
タイムカプセルを一年後に開けるよう変更すると皆に伝えに行ったとき、太一には悪いけれど俺は太一の告白を全員に伝えていた。
そして、皆が知らない演技をしてくれた。
映見は、弱っている美雪に付け込む形になってでもすぐに告白をして支えてあげてほしいと言ったが、少し説得すると、この一年間は私が美雪を支えていくとまで言ってくれた。
「一年間、ずっとこの日が来るのを待ってた」
「待たせてごめん。俺も、ずっと告白をしたくてたまらなかった」
二人は、俺達の視線を気にせずに抱き合う。
嫉妬する心もあるけれど、これで良かったんだ。
俺も、太一と同じ。
愛する人が幸せになるならその相手は俺ではなくてもいい。
でも、出来れば俺以外が美雪を幸せにするのなら、それは太一が良いと心の底から思ったんだ。
だから、五年後ではなく一年後にした。
だから、太一の想いを皆に伝えた。
俺は長い間美雪を幸せに出来ないし、愛する美雪を置いて先に行ってしまうだろうから。
美雪を頼んだよ、太一!』
私は、涙ながらに読み上げ天を仰いだ。
太一が私に告白をしてくれた後、次は十年後に掘り返そうとタイムカプセルを埋めたけれど、現在は四年後。
研が病気で亡くなったと聞き、私達は十年を待たずにタイムカプセルを開封した。
今回研がタイムカプセルの中に入れたのは、研の想いの積もったメッセージ。
あの時、既に自分の命が長くないと知り、私への想いを太一に託した。
「かっこつけやがって」
太一は小声で呟いた後、研に向かって叫ぶように空に顔を向け、大声で叫ぶ。
「美雪は、前よりももっともっと素敵になったぞ! そんな美雪を俺はもっともっと好きになってる! 一生幸せにするから、天国でずっと見てろよ!」
そう叫ぶと、映見と俊太は私達をハイテンションで冷やかす。
前回、一年ぶりに再会した時、俊太はあまり変わらないなと感想を述べた。
それは四年ぶりの再会でも変わらず、私と太一が付き合い始めても、映見が職場の先輩に片想い中でも、俊太がいち早く結婚しても、顔を合わせた時の関係性や距離感は変わらなかった。
そんな中、研の存在がないのが嘘のようで、まだ実感が湧かない。
「あれ? おぉ、すげー!」
俊太が驚き大声を上げる。
「どうしたの?」
皆が駆け寄ると、俊太はタイムカプセルが上げ底になっており、もう一つ研が残したものがあったと報告する。
それは、十万円だった。
また、現金。
食事にどーぞと、研からのメッセージ付き。
なんだ、やっぱり研も変わらないな。
常に自分の事より相手のことを考えてくれる、初恋の人。
太一がタイムカプセルにラブレターを入れるから、開封を五年後から一年後に変えてほしいと頼まれたとき、私の初恋は終わった。
私の初恋が終わり卒業までの間、太一は告白はしないけれど私をいつも気遣ってくれた。
ズルいけれど、私は太一が私に気があると知っていた。
だからか、太一のとる行動の一つ一つが健気で愛しくなり、卒業前に私の方から告白をしようか本気で考えたほどだ。
研への初恋が散って、太一が愛しくなった。
その気持ちが一年間持続するか試すように私は告白を踏みとどまり、卒業して太一から告白されるまでの間、太一への想いは日々強まっていき、それは今も変わらず毎日好きが強くなっている。
「研! 私は太一に愛されて凄く幸せだよ! あと、お金ありがとうね! 皆で食事をして帰る!」
大空に向かい、天国の研に向かい感謝の言葉を告げ私達は歩き出した。
また、皆で集まろうね。
その想いを込めて、私達はまたタイムカプセルを埋めた。
『こうして五人が集まるのは、一年ぶりだった。
高校の卒業式の後、太一、美雪、俊太、映見、そして俺の五人でタイムカプセルを埋め、一年後に集まろうと約束をして俺達は旅立った。
と言えば格好がいいが、実際は卒業後も連絡を取り合っているので、特別な懐かしさはない。
違う大学に進んだ俺達は、高校の時と比べ会う機会は減ったけれど、疎遠にはなっていない。顔を見るのは久し振りだが近況などは把握している。
「たった一年じゃ、こうして集まってもあまり変わらないな」
そう屈託なく俊太は笑うが、対照的に太一の表情は緊張で強張っていた。
大人しめの性格で、女性陣からはカッコいいと言われるより可愛いと言われることが多い太一だったが、顔付きがいくらか大人びたように見える。
その変化は、今日にかけている決意の表れからだろう。
「どうだ太一? いけそうか?」
「ごめん、研。もう少し時間をくれ」
全てを知っている俺に、太一が時間を欲しいと懇願する。
「タイムカプセルを開ける前に、もう少し雑談しようぜ。ネタが尽きたらタイムカプセルを開けよう」
そう提案すると皆が賛同してくれたので、俺が仕切り雑談を盛り上げる。
場を盛り上げながら、緊張している太一の表情を見て、俺は卒業前の出来事を思い出していた。
太一に連れ出され、打ち明けられた話。
「俺、美雪が好きなんだ」
そんな告白をされてもまったく驚かず、やっぱりなと言う気持ちしか沸かなかった。
「卒業前に告白するのか?」
「いや、五年後にタイムカプセルを開けるだろ。その時に告白しようと思う。だから、俺はタイムカプセルにラブレターを入れるよ」
「はぁ? 五年だぞ? そんなに待ってたら他に彼氏ができる可能性の方が高いだろ」
「それで美雪が幸せになれるなら、それでいいと思ってる」
本当は五年も待たず、今すぐ告白をしに行けと言いたかったが、告白に行けない太一の気持ちも分からなくもなかった。
二週間前に、美雪は最愛の母を病気で亡くした。
太一が俺に告白してくれた時には、美雪もいくらか明るさを取り戻していたが、太一的には弱っている美雪の心に付け込む形になるのを嫌ったのだろう。
それに、俺は愛する人が幸せになるのなら、その相手が自分でなくてもいいという気持ちが分からなくもなかった。
「分かった、一年後にタイムカプセルを開ける時、ちゃんと告白しろよ」
「ちょっと、一年後って」
「どうせ、美雪の気持ちを考えて告白を躊躇ってるんだろ。なら、五年は長すぎる。一年後にしなかったら俺がこの告白を美雪に伝えに行くぜ」
「強引なんだから……相談するんじゃなかった」
太一はそう言って、嬉しそうに笑った。
その後、俺が強引に話を進めてタイムカプセルの開封を五年後から一年後に変更し、今に至る。
太一が、軽く俺の腰の辺りを突くので視線を向けると、決心がついたとアイコンタクトを送る。
俺は、それに応じるように肯いて、タイムカプセルを掘り返そうと号令をかける。
待ってましたと俊太がスコップで土を掘り返し、そんなに深く埋めていない安物の宝箱の形をしたタイムカプセルを取り出す。
俊太が埋めたものは、好きなバンドのCDだった。
忍耐力がない自分を鍛えるために埋めたらしいが、一ヶ月後には全曲ダウンロードしてしまったらしい。
映見が埋めたものは、五人で写った沢山の学校行事の写真。
掘り返した時に全員で見たいから埋めたんだと笑いながら、写真を眺めている。
俺が埋めたものは、一所懸命に貯めた現金三万円。
一年後に掘り返しても特別な思い入れが生まれそうになかったので、これでこの後食事に行こうと誘えば盛り上がるだろうと、かなり変化急な物を入れた。
次は、太一の番になった。
太一は最後にしたかったみたいだが、美雪が太一の後の方が良いと主張したので、太一が折れた。
太一が、自分が入れた封筒の中から紙を取り出し、美雪に対してのラブレターを恥ずかしがらず、胸を張って読み上げる。
その告白は太一らしく、真っ直ぐな想いがこもったとても心温まる告白。
美雪は瞳に涙を浮かべながら視線を逸らさず、太一を見つめながら聞いている。
短くも長くも感じられる告白が終わると、皆の視線が美雪に集中する。
美雪は、自分が埋めた封筒から太一と同じように紙を取り出し、その紙を太一に渡す。
「えっ?」
太一は驚きの表情を浮かべる。
驚く太一に、美雪は声をかける。
「太一、ゴメンね。太一が告白してくれるのを知ってたんだ」
美雪が渡した紙には、一年間待っていました。こんな私で良ければ付き合ってくださいと書かれていた。
タイムカプセルを一年後に開けるよう変更すると皆に伝えに行ったとき、太一には悪いけれど俺は太一の告白を全員に伝えていた。
そして、皆が知らない演技をしてくれた。
映見は、弱っている美雪に付け込む形になってでもすぐに告白をして支えてあげてほしいと言ったが、少し説得すると、この一年間は私が美雪を支えていくとまで言ってくれた。
「一年間、ずっとこの日が来るのを待ってた」
「待たせてごめん。俺も、ずっと告白をしたくてたまらなかった」
二人は、俺達の視線を気にせずに抱き合う。
嫉妬する心もあるけれど、これで良かったんだ。
俺も、太一と同じ。
愛する人が幸せになるならその相手は俺ではなくてもいい。
でも、出来れば俺以外が美雪を幸せにするのなら、それは太一が良いと心の底から思ったんだ。
だから、五年後ではなく一年後にした。
だから、太一の想いを皆に伝えた。
俺は長い間美雪を幸せに出来ないし、愛する美雪を置いて先に行ってしまうだろうから。
美雪を頼んだよ、太一!』
私は、涙ながらに読み上げ天を仰いだ。
太一が私に告白をしてくれた後、次は十年後に掘り返そうとタイムカプセルを埋めたけれど、現在は四年後。
研が病気で亡くなったと聞き、私達は十年を待たずにタイムカプセルを開封した。
今回研がタイムカプセルの中に入れたのは、研の想いの積もったメッセージ。
あの時、既に自分の命が長くないと知り、私への想いを太一に託した。
「かっこつけやがって」
太一は小声で呟いた後、研に向かって叫ぶように空に顔を向け、大声で叫ぶ。
「美雪は、前よりももっともっと素敵になったぞ! そんな美雪を俺はもっともっと好きになってる! 一生幸せにするから、天国でずっと見てろよ!」
そう叫ぶと、映見と俊太は私達をハイテンションで冷やかす。
前回、一年ぶりに再会した時、俊太はあまり変わらないなと感想を述べた。
それは四年ぶりの再会でも変わらず、私と太一が付き合い始めても、映見が職場の先輩に片想い中でも、俊太がいち早く結婚しても、顔を合わせた時の関係性や距離感は変わらなかった。
そんな中、研の存在がないのが嘘のようで、まだ実感が湧かない。
「あれ? おぉ、すげー!」
俊太が驚き大声を上げる。
「どうしたの?」
皆が駆け寄ると、俊太はタイムカプセルが上げ底になっており、もう一つ研が残したものがあったと報告する。
それは、十万円だった。
また、現金。
食事にどーぞと、研からのメッセージ付き。
なんだ、やっぱり研も変わらないな。
常に自分の事より相手のことを考えてくれる、初恋の人。
太一がタイムカプセルにラブレターを入れるから、開封を五年後から一年後に変えてほしいと頼まれたとき、私の初恋は終わった。
私の初恋が終わり卒業までの間、太一は告白はしないけれど私をいつも気遣ってくれた。
ズルいけれど、私は太一が私に気があると知っていた。
だからか、太一のとる行動の一つ一つが健気で愛しくなり、卒業前に私の方から告白をしようか本気で考えたほどだ。
研への初恋が散って、太一が愛しくなった。
その気持ちが一年間持続するか試すように私は告白を踏みとどまり、卒業して太一から告白されるまでの間、太一への想いは日々強まっていき、それは今も変わらず毎日好きが強くなっている。
「研! 私は太一に愛されて凄く幸せだよ! あと、お金ありがとうね! 皆で食事をして帰る!」
大空に向かい、天国の研に向かい感謝の言葉を告げ私達は歩き出した。
また、皆で集まろうね。
その想いを込めて、私達はまたタイムカプセルを埋めた。
了
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
タイムカプセル
『こうして五人が集まるのは、一年ぶりだった。
高校の卒業式の後、太一、美雪、俊太、映見、そして俺の五人でタイムカプセルを埋め、一年後に集まろうと約束をして俺達は旅立った。
と言えば格好がいいが、実際は卒業後も連絡を取り合っているので、特別な懐かしさはない。
違う大学に進んだ俺達は、高校の時と比べ会う機会は減ったけれど、疎遠にはなっていない。顔を見るのは久し振りだが近況などは把握している。
「たった一年じゃ、こうして集まってもあまり変わらないな」
そう屈託なく俊太は笑うが、対照的に太一の表情は緊張で強張っていた。
大人しめの性格で、女性陣からはカッコいいと言われるより可愛いと言われることが多い太一だったが、顔付きがいくらか大人びたように見える。
その変化は、今日にかけている決意の表れからだろう。
「どうだ太一? いけそうか?」
「ごめん、研。もう少し時間をくれ」
「ごめん、研。もう少し時間をくれ」
全てを知っている俺に、太一が時間を欲しいと懇願する。
「タイムカプセルを開ける前に、もう少し雑談しようぜ。ネタが尽きたらタイムカプセルを開けよう」
そう提案すると皆が賛同してくれたので、俺が仕切り雑談を盛り上げる。
場を盛り上げながら、緊張している太一の表情を見て、俺は卒業前の出来事を思い出していた。
太一に連れ出され、打ち明けられた話。
「俺、美雪が好きなんだ」
そんな告白をされてもまったく驚かず、やっぱりなと言う気持ちしか沸かなかった。
「卒業前に告白するのか?」
「いや、五年後にタイムカプセルを開けるだろ。その時に告白しようと思う。だから、俺はタイムカプセルにラブレターを入れるよ」
「はぁ? 五年だぞ? そんなに待ってたら他に彼氏ができる可能性の方が高いだろ」
「それで美雪が幸せになれるなら、それでいいと思ってる」
「いや、五年後にタイムカプセルを開けるだろ。その時に告白しようと思う。だから、俺はタイムカプセルにラブレターを入れるよ」
「はぁ? 五年だぞ? そんなに待ってたら他に彼氏ができる可能性の方が高いだろ」
「それで美雪が幸せになれるなら、それでいいと思ってる」
本当は五年も待たず、今すぐ告白をしに行けと言いたかったが、告白に行けない太一の気持ちも分からなくもなかった。
二週間前に、美雪は最愛の母を病気で亡くした。
太一が俺に告白してくれた時には、美雪もいくらか明るさを取り戻していたが、太一的には弱っている美雪の心に付け込む形になるのを嫌ったのだろう。
それに、俺は愛する人が幸せになるのなら、その相手が自分でなくてもいいという気持ちが分からなくもなかった。
「分かった、一年後にタイムカプセルを開ける時、ちゃんと告白しろよ」
「ちょっと、一年後って」
「どうせ、美雪の気持ちを考えて告白を躊躇ってるんだろ。なら、五年は長すぎる。一年後にしなかったら俺がこの告白を美雪に伝えに行くぜ」
「強引なんだから……相談するんじゃなかった」
「ちょっと、一年後って」
「どうせ、美雪の気持ちを考えて告白を躊躇ってるんだろ。なら、五年は長すぎる。一年後にしなかったら俺がこの告白を美雪に伝えに行くぜ」
「強引なんだから……相談するんじゃなかった」
太一はそう言って、嬉しそうに笑った。
その後、俺が強引に話を進めてタイムカプセルの開封を五年後から一年後に変更し、今に至る。
太一が、軽く俺の腰の辺りを突くので視線を向けると、決心がついたとアイコンタクトを送る。
俺は、それに応じるように肯いて、タイムカプセルを掘り返そうと号令をかける。
待ってましたと俊太がスコップで土を掘り返し、そんなに深く埋めていない安物の宝箱の形をしたタイムカプセルを取り出す。
俊太が埋めたものは、好きなバンドのCDだった。
忍耐力がない自分を鍛えるために埋めたらしいが、一ヶ月後には全曲ダウンロードしてしまったらしい。
映見が埋めたものは、五人で写った沢山の学校行事の写真。
掘り返した時に全員で見たいから埋めたんだと笑いながら、写真を眺めている。
俺が埋めたものは、一所懸命に貯めた現金三万円。
一年後に掘り返しても特別な思い入れが生まれそうになかったので、これでこの後食事に行こうと誘えば盛り上がるだろうと、かなり変化急な物を入れた。
次は、太一の番になった。
太一は最後にしたかったみたいだが、美雪が太一の後の方が良いと主張したので、太一が折れた。
太一が、自分が入れた封筒の中から紙を取り出し、美雪に対してのラブレターを恥ずかしがらず、胸を張って読み上げる。
その告白は太一らしく、真っ直ぐな想いがこもったとても心温まる告白。
美雪は瞳に涙を浮かべながら視線を逸らさず、太一を見つめながら聞いている。
短くも長くも感じられる告白が終わると、皆の視線が美雪に集中する。
美雪は、自分が埋めた封筒から太一と同じように紙を取り出し、その紙を太一に渡す。
「えっ?」
太一は驚きの表情を浮かべる。
驚く太一に、美雪は声をかける。
「太一、ゴメンね。太一が告白してくれるのを知ってたんだ」
美雪が渡した紙には、一年間待っていました。こんな私で良ければ付き合ってくださいと書かれていた。
タイムカプセルを一年後に開けるよう変更すると皆に伝えに行ったとき、太一には悪いけれど俺は太一の告白を全員に伝えていた。
そして、皆が知らない演技をしてくれた。
映見は、弱っている美雪に付け込む形になってでもすぐに告白をして支えてあげてほしいと言ったが、少し説得すると、この一年間は私が美雪を支えていくとまで言ってくれた。
「一年間、ずっとこの日が来るのを待ってた」
「待たせてごめん。俺も、ずっと告白をしたくてたまらなかった」
「待たせてごめん。俺も、ずっと告白をしたくてたまらなかった」
二人は、俺達の視線を気にせずに抱き合う。
嫉妬する心もあるけれど、これで良かったんだ。
俺も、太一と同じ。
愛する人が幸せになるならその相手は俺ではなくてもいい。
でも、出来れば俺以外が美雪を幸せにするのなら、それは太一が良いと心の底から思ったんだ。
だから、五年後ではなく一年後にした。
だから、太一の想いを皆に伝えた。
俺は長い間美雪を幸せに出来ないし、愛する美雪を置いて先に行ってしまうだろうから。
美雪を頼んだよ、太一!』
私は、涙ながらに読み上げ天を仰いだ。
太一が私に告白をしてくれた後、次は十年後に掘り返そうとタイムカプセルを埋めたけれど、現在は四年後。
研が病気で亡くなったと聞き、私達は十年を待たずにタイムカプセルを開封した。
今回研がタイムカプセルの中に入れたのは、研の想いの積もったメッセージ。
あの時、既に自分の命が長くないと知り、私への想いを太一に託した。
「かっこつけやがって」
太一は小声で呟いた後、研に向かって叫ぶように空に顔を向け、大声で叫ぶ。
「美雪は、前よりももっともっと素敵になったぞ! そんな美雪を俺はもっともっと好きになってる! 一生幸せにするから、天国でずっと見てろよ!」
そう叫ぶと、映見と俊太は私達をハイテンションで冷やかす。
前回、一年ぶりに再会した時、俊太はあまり変わらないなと感想を述べた。
それは四年ぶりの再会でも変わらず、私と太一が付き合い始めても、映見が職場の先輩に片想い中でも、俊太がいち早く結婚しても、顔を合わせた時の関係性や距離感は変わらなかった。
そんな中、研の存在がないのが嘘のようで、まだ実感が湧かない。
「あれ? おぉ、すげー!」
俊太が驚き大声を上げる。
「どうしたの?」
皆が駆け寄ると、俊太はタイムカプセルが上げ底になっており、もう一つ研が残したものがあったと報告する。
それは、十万円だった。
また、現金。
食事にどーぞと、研からのメッセージ付き。
なんだ、やっぱり研も変わらないな。
常に自分の事より相手のことを考えてくれる、初恋の人。
太一がタイムカプセルにラブレターを入れるから、開封を五年後から一年後に変えてほしいと頼まれたとき、私の初恋は終わった。
私の初恋が終わり卒業までの間、太一は告白はしないけれど私をいつも気遣ってくれた。
ズルいけれど、私は太一が私に気があると知っていた。
だからか、太一のとる行動の一つ一つが健気で愛しくなり、卒業前に私の方から告白をしようか本気で考えたほどだ。
研への初恋が散って、太一が愛しくなった。
その気持ちが一年間持続するか試すように私は告白を踏みとどまり、卒業して太一から告白されるまでの間、太一への想いは日々強まっていき、それは今も変わらず毎日好きが強くなっている。
「研! 私は太一に愛されて凄く幸せだよ! あと、お金ありがとうね! 皆で食事をして帰る!」
大空に向かい、天国の研に向かい感謝の言葉を告げ私達は歩き出した。
また、皆で集まろうね。
その想いを込めて、私達はまたタイムカプセルを埋めた。
了