表示設定
表示設定
目次 目次




第七十八話:炎水ユニゾンとカインの狂気の終焉

ー/ー



 四龍ユニゾンによる「四極拡散浄化」が成功し、要塞都市『アイアン・フォート』の主要なDSW群が機能を停止した。盟約軍は勢いづき、フレア率いる炎龍部隊が先陣を切って内部へと突入を開始する。

 しかし、カインは最後の最後まで諦めていなかった。盟約軍の突入を見計らい、彼は通信魔力を通じてヒカルへと狂気のメッセージを送る。

「ヒカル! 貴様らは論理的な勝利に酔いすぎた! DSWは、ただの兵器ではない! 人類の憎悪の結晶だ! 貴様の優しさの戦略など、所詮は甘い幻想に過ぎん!」

 その言葉と共に、要塞の影に隠されていたDSWの残存部隊が、猛烈な砲火を盟約軍の後方、兵站ルートへと集中させ始めた。ここは、リヒター率いる辺境連合軍が突入のために集結していた地点でもあり、盟約軍の継続戦闘能力(兵站)を破壊するための、カインの最後の悪あがきだった。

「王よ! 兵站ルートに敵の残存DSWがいます! このままでは、人類連合軍に甚大な被害が出ます!」

 司令部で状況を視覚化していたシエルが、焦燥と共に報告する。

 同時に、カインは最後の切り札として、皇帝直属の親衛隊(狂信的な闇の魔導師団)を、フレアやレヴィアたちが率いる盟約軍の主力へと特攻させた。

「DSWの防御構造は、憎悪と光に偏重している! 王の愛の力で、この硬直した論理を打ち破るには……!」

 学術顧問のエルダー・ソフスが、最後のDSWの弱点情報を提供するために、緊急で声を張り上げた。

「王よ! DSWの防御結界は、熱と水の超高圧混相ブレスにも極めて脆弱! 炎の激情、水の理性、そして風の機動力という、最も非合理な三属性の組み合わせが、DSWの硬直した防御論理を破壊できます!」
「炎と水と風だと!? 激情と理性と自由のユニゾン……!」

 ヒカルは、エルダー・ソフスとシエルの助言を受け、三人の竜姫を指名した。

「レヴィア! アクア! そしてセフィラ! ユニゾン発動! 三元超高圧突風だ!」

「待っていたわ! やっと私の出番ね! ここまで我慢した私の力、見せつけてやるわ!」
「レヴィア、力任せにならないでよね。合わせてあげるこちらの身にもなってほしいわ」
「わ、分かってるわよ。私だってここで失敗するわけにはいかないくらい肝に銘じてるわよ、アクア」
「あっはっは。レヴィア姉は前科あるからねー」
「セフィラまで! 大丈夫よ、絶対成功させてやるわ。ヒカルへの愛の証明なんだから!」

 ◇◆◇◆◇

 紅蓮の激情竜姫レヴィア、蒼玉の理性竜姫アクア、そして疾風の遊撃竜姫セフィラが、ヒカルの愛の指揮棒の下、愛の和音を響かせる。

 ヒカルは「絆の共感者」が感知する三龍の感情値を瞬時に読み取った。レヴィアの激情は95%、アクアの理性は88%、セフィラの自由は92%。わずかに動揺しつつも高水準で安定したこの感情こそが、ユニゾンの核となる。

 ヒカルが定めた和音は、DSWの論理構造を破壊するための【知恵の破壊的増幅(ワイズ・ディストラクション)】。論理的であるアクアの「理性」に、レヴィアの「激情」を敢えてぶつけるという、極めて非合理な戦略だった。

 レヴィアの激情的な炎に、アクアの冷徹な水流が混ざり、超高圧の蒸気へと変貌する。そこへ、セフィラの自由な風の魔力が、蒸気の勢いを極限まで加速させた。

 このユニゾンの中枢で、アクアの「理性」はDSWを破壊するという王の目的を前に「論理的な自己を破壊する決断」を下す。これにより彼女の感情値(理性)は瞬間的に100%まで急上昇した。ヒカルは、アクアの「論理の破壊的転換」こそがユニゾン成功の鍵だと確信した。

『三元超高圧突風(トライアド・ハイプレッシャー・ストーム)(三龍ユニゾン)』!

 ヒカルは、この三龍ユニゾンに『論理破壊の三全音(トライトーン・ディストラクター)』という愛の和音を割り当てた。

 レヴィア(炎/激情)が、和音の根幹となる主音(C/ド)を、トランペットの強烈な音色でぶつける。

 アクア(水/理性)が、DSWの論理を最も破壊する減五度(F#/ファ#)を、クラリネットの冷徹な音色で正確に重ねる。

 そして、セフィラ(風/自由)が、その破壊的な不協和音を極限まで増幅する長七度(B/シ)を、ヴァイオリンの自由な音色で、戦場全体へと拡散させた。

 その愛の和音は、DSWが想定する論理の領域を遥かに超越していた。

 激情の炎、理性の水、自由の風が愛の調律によって「超高圧・超高温の蒸気突風」となって噴射される。

 この破壊的なブレスは、DSWの防御結界を一瞬で蒸発させながら貫通し、風の加速力によって広範囲の兵站ルートを狙っていた残存DSW部隊を、論理的なバグと共に完全に破壊した。

 皇帝親衛隊も、この非合理な超火力の前には為す術もなく、戦場から消滅したのだった。

 DSWという対抗手段を完全に失った帝国軍は、指揮系統が崩壊し、総崩れとなった。

 その光景を、要塞都市の最奥部で見ていたカインの狂気が限界に達する。彼の緻密な論理と憎悪の全てが、ヒカルの優しさと愛の和音という非論理的な力の前に、完全に敗北したのだ。

「ヒカル……ヒカル! 貴様らの優しさは、この世界の最大の毒だ! 私は、貴様が築く愛の王国を、必ず憎悪で染めてやる!」

 カインは、敗北の絶叫を上げ、皇帝と皇太子レオナルドを置き去りにして、たった一人で要塞の地下通路から逃亡した。彼の狂気は、己の生存本能を最優先させ、忠誠心すらも捨てさせた。

 カインの逃亡を確認した皇太子レオナルドは、兵力の全滅を悟り、苦渋の表情で皇帝に深々と頭を下げた。

「父上。もはや、抗う術はありません。DSWも親衛隊も全て失いました。これ以上、国民の命を無駄にするのは、帝室の義務と名誉に反します。盟約の王ヒカル殿は、慈悲深い統治者だと聞いています。どうか、白旗を上げることをご決断ください」

 皇帝は、愛する息子であるレオナルドの理知的な進言を受け入れ、帝国軍の最後の残存部隊は、盟約軍の突入部隊に対し、静かに白旗を掲げた。

 ◇◆◇◆◇

 勝利の興奮が冷めやらぬ戦場の上空。三龍ユニゾンを成功させたアクア、レヴィア、セフィラが、ヒカルの元へと戻ってきた。

 レヴィアは、最高の火力を発揮できたことに満足し、誇らしげに胸を張る。

「どうだ、夫よ! 我の激情と、あの冷たいアクアの理性、そしてセフィラの子供じみた自由が手を組めば、DSWの論理など一瞬で焼き尽くすことができるわ! やはり、愛の火力が最強の力だわ!」

 その横で、蒼玉の理性竜姫アクアは、いつもの冷静な表情ながらも、どこか熱を帯びた瞳でヒカルを見つめていた。

「王よ。私の論理的な計算によると、今回のユニゾンは、レヴィアの激情という非合理な力が、私の理性という硬直した論理を破壊的に増幅させた結果です」

 アクアは、自己の内面で起きた論理の崩壊と、そこから生まれた新たな愛の形を、冷静な言葉で表現した。

「この勝利により、王の統治の正当性(BPI)は最高潮に達しました。この高揚感を維持し、次なる魔王軍との戦いへ向けて愛の調律の最終段階へ移行するためには、愛の契約の儀式が必要です」

 アクアは、ヒカルの胸元に近づき、その理知的な瞳で真剣に、そして情熱的に見つめる。

「王よ。私の論理的な計算に基づき、私に、戦略的なキスを与えてください」
「待った待った! ちょっと待った!」

 アクアの論理的な要求に、疾風の遊撃竜姫セフィラが軽やかな風と共に、二人の間に割って入った。セフィラは無邪気な笑顔で両手を広げる。

「ねぇねぇ、私(風)の功績はどこ!? DSWの論理の破壊を極限まで加速させたのは、私の自由な風の力だよ! ユニゾンに参加した姫には、王の愛の報酬の権利があるって、団長自身が定めた王国の鉄則でしょう!」

 セフィラの無邪気な権利の主張は、アクアの論理的デレを、子供じみた正論で一蹴した。

「ずるいぞ、アクア姉! 貴女のキスは論理的かもしれないけど、王の安寧には、最高の自由とリフレッシュも不可欠なの! ね、団長! 私の報酬は、誰にも邪魔されない最高の冒険(空中デート)の独占権だよ!」

 セフィラはそう叫ぶと、アクアとレヴィアの間に猛然と割り込み、レヴィアの炎の魔力とアクアの水の魔力が衝突し火花を散らすのを尻目に、ヒカルの頬に、勝利の歓喜に満ちたキスを音を立てて落とした。

「ヤッター!これで私の勝利!」

 セフィラの無邪気な実力行使に、アクアとレヴィアの激情と理性が同時に爆発した。

「セフィラァアアア! 貴様という無邪気な泥棒猫! 論理的優位を無視して、王の愛の儀式を実力行使で奪うなど、絶対に許さないわよ!」

 レヴィアの激情的な炎が、セフィラの周囲で爆発的に燃え上がる。

「セフィラ! 貴女の行動は、王国の軍規に対する最大の反逆です! 無責任な自由が、王の安寧という戦略的資産を汚した! 王よ、この非合理なキスは、無効と裁定してください!」

 アクアの理性的な怒りが、レヴィアの激情に負けないほどの冷徹な魔力となってセフィラを追及する。

 炎と水の王妃の座を巡る争奪戦は、今や「激情的な愛」と「理性的な愛」、そして「自由な愛」という、愛の形そのものを懸けた三つ巴の知的バトルへと発展した。

 ヒカルは、アクアの統率力と論理的な愛の進化を評価しつつ、レヴィアの激情を考慮し、公正な裁定を下す。

「静粛に。今回の三龍ユニゾンの勝利は、アクアの理性の論理が、レヴィアの激情の非合理と、セフィラの自由な機動力を、戦略的に最も有効な火力へと昇華させた結果だ。故に、今回の愛の報酬の独占権は、アクアとセフィラのジョイントMVPとする」

 ヒカルの裁定に、アクアの瞳に微かな熱が宿り、セフィラは歓喜の声を上げる。レヴィアは、知的敗北という最大の屈辱に、地団駄を踏んで激しく嫉妬する。

 ◇◆◇◆◇

 上空で繰り広げられる王と三龍姫のやり取りを、地上に待機していた六天将や顧問団は、いつものことだとばかりに観察していた。

 辺境連合軍を率いるリヒターは、目の前の凄惨な戦場の後に、愛の報酬を巡って大魔力をぶつけ合う竜姫たちの光景を初めて目の当たりにし、「これが、この軍団の常態なのか…」と、その常識の遥か上を行く光景に顔面蒼白となり愕然としていた。

 一方、元・古王軍の最強剣士ギルティアや、敏腕な放浪の運び屋であるウィンド・ランナーは、慣れた様子で苦笑を交わす。

 ギルティアは、「この喧騒があってこそ、王の優しさが際立つものだ」と内心で呟き、ウィンド・ランナーは、「愛の市場は、戦場よりも激しい値動きだな」と、商人的な視点でその非合理的な光景を楽しんでいた。

 司令部でこのやり取りを記録していたシエルは、カインの謀略と戦略的協力が完全に終了したことを冷静に確認し、報告した。

「王よ。カインの逃亡により、帝国側の戦略は完全に崩壊しました。カインの持つ人類側の謀略知識は、これで全て我々の支配下に入ります。これより、魔王軍との最終決戦への準備を本格化させます」

 帝国との戦いは、カインの逃亡と皇帝の降伏勧告により、竜の王ヒカルの統一的な勝利として幕を閉じた。

【第79話へ続く】



スタンプを贈って作者を応援しよう!



みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



 四龍ユニゾンによる「四極拡散浄化」が成功し、要塞都市『アイアン・フォート』の主要なDSW群が機能を停止した。盟約軍は勢いづき、フレア率いる炎龍部隊が先陣を切って内部へと突入を開始する。
 しかし、カインは最後の最後まで諦めていなかった。盟約軍の突入を見計らい、彼は通信魔力を通じてヒカルへと狂気のメッセージを送る。
「ヒカル! 貴様らは論理的な勝利に酔いすぎた! DSWは、ただの兵器ではない! 人類の憎悪の結晶だ! 貴様の優しさの戦略など、所詮は甘い幻想に過ぎん!」
 その言葉と共に、要塞の影に隠されていたDSWの残存部隊が、猛烈な砲火を盟約軍の後方、兵站ルートへと集中させ始めた。ここは、リヒター率いる辺境連合軍が突入のために集結していた地点でもあり、盟約軍の継続戦闘能力(兵站)を破壊するための、カインの最後の悪あがきだった。
「王よ! 兵站ルートに敵の残存DSWがいます! このままでは、人類連合軍に甚大な被害が出ます!」
 司令部で状況を視覚化していたシエルが、焦燥と共に報告する。
 同時に、カインは最後の切り札として、皇帝直属の親衛隊(狂信的な闇の魔導師団)を、フレアやレヴィアたちが率いる盟約軍の主力へと特攻させた。
「DSWの防御構造は、憎悪と光に偏重している! 王の愛の力で、この硬直した論理を打ち破るには……!」
 学術顧問のエルダー・ソフスが、最後のDSWの弱点情報を提供するために、緊急で声を張り上げた。
「王よ! DSWの防御結界は、熱と水の超高圧混相ブレスにも極めて脆弱! 炎の激情、水の理性、そして風の機動力という、最も非合理な三属性の組み合わせが、DSWの硬直した防御論理を破壊できます!」
「炎と水と風だと!? 激情と理性と自由のユニゾン……!」
 ヒカルは、エルダー・ソフスとシエルの助言を受け、三人の竜姫を指名した。
「レヴィア! アクア! そしてセフィラ! ユニゾン発動! 三元超高圧突風だ!」
「待っていたわ! やっと私の出番ね! ここまで我慢した私の力、見せつけてやるわ!」
「レヴィア、力任せにならないでよね。合わせてあげるこちらの身にもなってほしいわ」
「わ、分かってるわよ。私だってここで失敗するわけにはいかないくらい肝に銘じてるわよ、アクア」
「あっはっは。レヴィア姉は前科あるからねー」
「セフィラまで! 大丈夫よ、絶対成功させてやるわ。ヒカルへの愛の証明なんだから!」
 ◇◆◇◆◇
 紅蓮の激情竜姫レヴィア、蒼玉の理性竜姫アクア、そして疾風の遊撃竜姫セフィラが、ヒカルの愛の指揮棒の下、愛の和音を響かせる。
 ヒカルは「絆の共感者」が感知する三龍の感情値を瞬時に読み取った。レヴィアの激情は95%、アクアの理性は88%、セフィラの自由は92%。わずかに動揺しつつも高水準で安定したこの感情こそが、ユニゾンの核となる。
 ヒカルが定めた和音は、DSWの論理構造を破壊するための【知恵の破壊的増幅(ワイズ・ディストラクション)】。論理的であるアクアの「理性」に、レヴィアの「激情」を敢えてぶつけるという、極めて非合理な戦略だった。
 レヴィアの激情的な炎に、アクアの冷徹な水流が混ざり、超高圧の蒸気へと変貌する。そこへ、セフィラの自由な風の魔力が、蒸気の勢いを極限まで加速させた。
 このユニゾンの中枢で、アクアの「理性」はDSWを破壊するという王の目的を前に「論理的な自己を破壊する決断」を下す。これにより彼女の感情値(理性)は瞬間的に100%まで急上昇した。ヒカルは、アクアの「論理の破壊的転換」こそがユニゾン成功の鍵だと確信した。
『三元超高圧突風《トライアド・ハイプレッシャー・ストーム》(三龍ユニゾン)』!
 ヒカルは、この三龍ユニゾンに『論理破壊の三全音《トライトーン・ディストラクター》』という愛の和音を割り当てた。
 レヴィア(炎/激情)が、和音の根幹となる主音(C/ド)を、トランペットの強烈な音色でぶつける。
 アクア(水/理性)が、DSWの論理を最も破壊する減五度(F#/ファ#)を、クラリネットの冷徹な音色で正確に重ねる。
 そして、セフィラ(風/自由)が、その破壊的な不協和音を極限まで増幅する長七度(B/シ)を、ヴァイオリンの自由な音色で、戦場全体へと拡散させた。
 その愛の和音は、DSWが想定する論理の領域を遥かに超越していた。
 激情の炎、理性の水、自由の風が愛の調律によって「超高圧・超高温の蒸気突風」となって噴射される。
 この破壊的なブレスは、DSWの防御結界を一瞬で蒸発させながら貫通し、風の加速力によって広範囲の兵站ルートを狙っていた残存DSW部隊を、論理的なバグと共に完全に破壊した。
 皇帝親衛隊も、この非合理な超火力の前には為す術もなく、戦場から消滅したのだった。
 DSWという対抗手段を完全に失った帝国軍は、指揮系統が崩壊し、総崩れとなった。
 その光景を、要塞都市の最奥部で見ていたカインの狂気が限界に達する。彼の緻密な論理と憎悪の全てが、ヒカルの優しさと愛の和音という非論理的な力の前に、完全に敗北したのだ。
「ヒカル……ヒカル! 貴様らの優しさは、この世界の最大の毒だ! 私は、貴様が築く愛の王国を、必ず憎悪で染めてやる!」
 カインは、敗北の絶叫を上げ、皇帝と皇太子レオナルドを置き去りにして、たった一人で要塞の地下通路から逃亡した。彼の狂気は、己の生存本能を最優先させ、忠誠心すらも捨てさせた。
 カインの逃亡を確認した皇太子レオナルドは、兵力の全滅を悟り、苦渋の表情で皇帝に深々と頭を下げた。
「父上。もはや、抗う術はありません。DSWも親衛隊も全て失いました。これ以上、国民の命を無駄にするのは、帝室の義務と名誉に反します。盟約の王ヒカル殿は、慈悲深い統治者だと聞いています。どうか、白旗を上げることをご決断ください」
 皇帝は、愛する息子であるレオナルドの理知的な進言を受け入れ、帝国軍の最後の残存部隊は、盟約軍の突入部隊に対し、静かに白旗を掲げた。
 ◇◆◇◆◇
 勝利の興奮が冷めやらぬ戦場の上空。三龍ユニゾンを成功させたアクア、レヴィア、セフィラが、ヒカルの元へと戻ってきた。
 レヴィアは、最高の火力を発揮できたことに満足し、誇らしげに胸を張る。
「どうだ、夫よ! 我の激情と、あの冷たいアクアの理性、そしてセフィラの子供じみた自由が手を組めば、DSWの論理など一瞬で焼き尽くすことができるわ! やはり、愛の火力が最強の力だわ!」
 その横で、蒼玉の理性竜姫アクアは、いつもの冷静な表情ながらも、どこか熱を帯びた瞳でヒカルを見つめていた。
「王よ。私の論理的な計算によると、今回のユニゾンは、レヴィアの激情という非合理な力が、私の理性という硬直した論理を破壊的に増幅させた結果です」
 アクアは、自己の内面で起きた論理の崩壊と、そこから生まれた新たな愛の形を、冷静な言葉で表現した。
「この勝利により、王の統治の正当性(BPI)は最高潮に達しました。この高揚感を維持し、次なる魔王軍との戦いへ向けて愛の調律の最終段階へ移行するためには、愛の契約の儀式が必要です」
 アクアは、ヒカルの胸元に近づき、その理知的な瞳で真剣に、そして情熱的に見つめる。
「王よ。私の論理的な計算に基づき、私に、戦略的なキスを与えてください」
「待った待った! ちょっと待った!」
 アクアの論理的な要求に、疾風の遊撃竜姫セフィラが軽やかな風と共に、二人の間に割って入った。セフィラは無邪気な笑顔で両手を広げる。
「ねぇねぇ、私(風)の功績はどこ!? DSWの論理の破壊を極限まで加速させたのは、私の自由な風の力だよ! ユニゾンに参加した姫には、王の愛の報酬の権利があるって、団長自身が定めた王国の鉄則でしょう!」
 セフィラの無邪気な権利の主張は、アクアの論理的デレを、子供じみた正論で一蹴した。
「ずるいぞ、アクア姉! 貴女のキスは論理的かもしれないけど、王の安寧には、最高の自由とリフレッシュも不可欠なの! ね、団長! 私の報酬は、誰にも邪魔されない最高の冒険(空中デート)の独占権だよ!」
 セフィラはそう叫ぶと、アクアとレヴィアの間に猛然と割り込み、レヴィアの炎の魔力とアクアの水の魔力が衝突し火花を散らすのを尻目に、ヒカルの頬に、勝利の歓喜に満ちたキスを音を立てて落とした。
「ヤッター!これで私の勝利!」
 セフィラの無邪気な実力行使に、アクアとレヴィアの激情と理性が同時に爆発した。
「セフィラァアアア! 貴様という無邪気な泥棒猫! 論理的優位を無視して、王の愛の儀式を実力行使で奪うなど、絶対に許さないわよ!」
 レヴィアの激情的な炎が、セフィラの周囲で爆発的に燃え上がる。
「セフィラ! 貴女の行動は、王国の軍規に対する最大の反逆です! 無責任な自由が、王の安寧という戦略的資産を汚した! 王よ、この非合理なキスは、無効と裁定してください!」
 アクアの理性的な怒りが、レヴィアの激情に負けないほどの冷徹な魔力となってセフィラを追及する。
 炎と水の王妃の座を巡る争奪戦は、今や「激情的な愛」と「理性的な愛」、そして「自由な愛」という、愛の形そのものを懸けた三つ巴の知的バトルへと発展した。
 ヒカルは、アクアの統率力と論理的な愛の進化を評価しつつ、レヴィアの激情を考慮し、公正な裁定を下す。
「静粛に。今回の三龍ユニゾンの勝利は、アクアの理性の論理が、レヴィアの激情の非合理と、セフィラの自由な機動力を、戦略的に最も有効な火力へと昇華させた結果だ。故に、今回の愛の報酬の独占権は、アクアとセフィラのジョイントMVPとする」
 ヒカルの裁定に、アクアの瞳に微かな熱が宿り、セフィラは歓喜の声を上げる。レヴィアは、知的敗北という最大の屈辱に、地団駄を踏んで激しく嫉妬する。
 ◇◆◇◆◇
 上空で繰り広げられる王と三龍姫のやり取りを、地上に待機していた六天将や顧問団は、いつものことだとばかりに観察していた。
 辺境連合軍を率いるリヒターは、目の前の凄惨な戦場の後に、愛の報酬を巡って大魔力をぶつけ合う竜姫たちの光景を初めて目の当たりにし、「これが、この軍団の常態なのか…」と、その常識の遥か上を行く光景に顔面蒼白となり愕然としていた。
 一方、元・古王軍の最強剣士ギルティアや、敏腕な放浪の運び屋であるウィンド・ランナーは、慣れた様子で苦笑を交わす。
 ギルティアは、「この喧騒があってこそ、王の優しさが際立つものだ」と内心で呟き、ウィンド・ランナーは、「愛の市場は、戦場よりも激しい値動きだな」と、商人的な視点でその非合理的な光景を楽しんでいた。
 司令部でこのやり取りを記録していたシエルは、カインの謀略と戦略的協力が完全に終了したことを冷静に確認し、報告した。
「王よ。カインの逃亡により、帝国側の戦略は完全に崩壊しました。カインの持つ人類側の謀略知識は、これで全て我々の支配下に入ります。これより、魔王軍との最終決戦への準備を本格化させます」
 帝国との戦いは、カインの逃亡と皇帝の降伏勧告により、竜の王ヒカルの統一的な勝利として幕を閉じた。
【第79話へ続く】