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第四十二話:王の命懸けの愛と、絶望の調律

ー/ー



 夜明け前の荒野は、裏切りの炎と闇の呪いに包まれた地獄と化していた。

 爆炎龍将軍フレアの裏切りの炎は、紅蓮の激情竜姫レヴィアとヒカルの間に楔を打ち込み、盟約軍の中央を分断した。ヒカルの「絆の共感者」は、レヴィアの暴走、全軍の動揺、そしてフレアの冷たい憎悪という、全ての負の感情を「王の死」を告げる黒い警鐘として感知していた。

 戦場では、ユニゾン以外の全ての部隊が絶望的な状況に抗っていた。

 磐石の守護龍テラはフレアの憎悪の炎が盟約軍の中央を分断した瞬間、

「ガイア!内部熱の遮断を最優先!結界が溶ける!生命線を守り抜け!」

 と叫び、不動の防衛将ガイアと共に大地の魔力を集中。土龍主戦力による物理防御で、内部からの裏切りによる熱量を外部へ逃がし、全軍の崩壊を防いでいた。

 司令部では、蒼玉の理性竜姫アクアが、古王軍の闇の六征竜の魔力パターンを解析する空虚の斥候王ゼファーに鋭く命じた。

「ゼファー!執行者の魔力ベクトルを再計算!古代魔術の発動予測に全集中よ!王の命が最優先!論理を武器に戦いなさい!」

 ゼファーは冷静に魔力演算を続け、「御意、アクア様!情報戦は風の勝利です!」と応じた。

 純白の調和聖女ルーナの光はヴァルキリアの呪いによって消滅していたが、補佐竜の無垢なる浄化使アウラが、

「ルーナ様の光は消えていない! 兵士たちよ、調律の光を信じよ! 我らの使命は、王の精神的資産を守ることだ!」

 と叫び、ルーナから託された調律の光の魔石を兵士たちの間に拡散。全軍の戦意喪失だけは寸前で食い止めていた。

 そして、疾風の遊撃竜姫セフィラと遊撃部隊は、この混乱の瞬間、古王軍の光の六征竜(宣教師)の後方へと回り込んでいた。

「団長(ヒカル)の危機だ! 最高の冒険の始まりだよ! 宣教師の後衛をブッ飛ばす! 団員たち!風の刃を集中させろ!」

 セフィラは、レヴィアの炎の暴走とは対極の、自由奔放な奇襲を仕掛け、敵の魔術師部隊を集中攻撃することで、古王軍の魔術支援を寸断する任務を遂行。風龍部隊の咆哮が敵の後方から響き渡る。

「王の自由は我々が護る!」







「フン…………所詮、愛など脆弱な幻想よ」

 ヴァルキリアの闇の精神攻撃が、その絶望を増幅させる。闇の王女の孤高の嘲笑が、ヒカルの魂に直接叩きつけられる。ヒカルは、フレアの憎悪とヴァルキリアの孤立という二つの闇を正面から見据え、最後の力を振り絞り、自身の命を賭けた「愛の調律」を叫んだ。

「フレア! ヴァルキリア! 俺はお前たちの憎悪と孤独を否定しない! 俺もまた、人間社会に裏切られ、愛する者を失った絶望の淵に立たされた、裏切り者だ!」

 ヒカルの叫びは、戦場全体を覆う憎悪の炎と闇の魔力を一時的に静止させた。

「だが、憎悪は、お前たちが愛するものを守れない! フレア! お前がその憎悪を王にぶつけることは、お前が裏切りと罵りながらも、心から愛し、その献身を証明しようとしたシエルの命と愛を、二度と癒やせない絶望の淵に突き落とすことと同じだぞ!」

 ヒカルは、フレアの瞳に、シエルという名の「理性的な愛」の重要性を叩きつけた。

 その瞬間、テラの防御結界の奥、後方司令部で療養中だった深海の戦術師シエルの身体から、一筋の冷たく澄んだ魔力の光が放たれた。シエルの魔力は、フレアの憎悪の炎と衝突することなく、愛と裏切りの悲しみという、純粋な感情の音色となって、フレアの魂に直接響き渡った。

「フレア…………!」

 シエルの声は、弱々しく、しかし理性的な愛と献身に満ちていた。

「お願い、フレア。貴方の憎悪は、論理的な判断を超えた、私にとって最も美しい激情でした。でも、その憎悪は今、王を傷つけるだけでなく、私を論理的に許せない絶望に陥れている…………。貴方の愛は、私を裏切らないと、誓ったでしょう!」

(な、なんだと…………!? フレアとシエルが、そういう関係だったのか!?)

 ヒカルは、自分の「絆の共感者」の異能が、六天将の「真の愛」を見抜けなかったという事実と、その愛が裏切りの核心であったというドラマティックな展開に、戦場であることを忘れて動揺した。

 フレアの魔力は、憎悪の炎から、深い自責の念と後悔という冷たい炎へと一瞬で転化した。彼は、レヴィアとシエルの愛を裏切ったという事実に打ちのめされた。

「あぁ……シエル…………レヴィア様…………」

 フレアは憎悪の炎を収め、その場に膝をついた。彼は、裏切り者という汚名を返上するため、自身の炎を、ヒカルの命を守る守護の炎へと切り替える。フレアの炎は、ヴァルキリアの闇の呪いと、闇の六征竜が放つ闇の波動を、静かに燃やし尽くし始めた。

「ぐ、うう…………! 呪いの根が、剥がれる…………まさか、愛が憎悪を上回るだと!?」

 ヴァルキリアの口元を覆っていた手が緩み、その闇の魔力は、愛への絶対的な拒絶という呪いの仮面の下で、悲しみと苦痛という、本来の感情を露呈させ始めた。

 光の六征竜(宣教師)は、この目前で起こった非合理な奇跡に絶叫した。

「ありえない! フレアの裏切りを核とした我々の計画が、なぜこの場で崩壊する!? 人間ごときの愛が、古王の闇を打ち破るなど、論理的に許せん!」

 宣教師の背後からは、「団長(ヒカル)は最高の指揮者だ!」というセフィラの歓声が響き、古王軍の魔術支援は完全に崩壊した。

 敵兵たちは動揺し、

「宣教師殿の魔術が…………使えないだと!?」
「フレア将軍が、王の護りに回ったぞ!」

 と叫び合った。

 ヒカルは、フレアの裏切りへの沙汰を一旦保留し、王としての威厳を持って指示を下した。

「フレア。お前の裏切りへの沙汰は、戦いが終わってからだ。今は、お前の真の忠誠心を、敵の核にぶつけてみせろ! 目の前の敵を撃て!」

「御意! 王!」

 フレアは、守護の炎をレヴィアの炎と共鳴させ、ヴァルキリアの闇を静かに燃やし尽くし始めた。

 司令部で状況を解析していた蒼玉の理性竜姫アクアは、シエルの理性的な仮面が剥がれた瞬間に驚愕しつつも、すぐに理性を回復させた。

「王よ。シエルとフレアの愛の成立は、論理的に見て、軍団の内部亀裂を修復する最高のイベントです。この王妃戦争が、六天将にも影響を及ぼしていたとは…………しかし、これでフレアの忠誠心は揺るがない。ヒカル。彼らを祝福しましょう。その愛を、戦術に変えるのです。ヴァルキリアの呪いは解けかけているわ、急いで!王の理性は、戦場を離れない!」

 レヴィアの激情が守護の炎へと調律され、ユニゾン安定度が急速に回復した瞬間、ヒカルは間髪入れずに五龍ユニゾンではない、二龍ユニゾンの応酬を命じた。

 ◇◆◇◆◇

 古王軍の闇の六征竜(執行者)と光の六征竜(宣教師)が、態勢を立て直すべく、闇と光の複合攻撃を盟約軍中央に集中させた。
 2体ともすでに完全竜化を済ませており、万全の体制でヒカルたちを迎え撃った。

 偽光の宣教師(フォールス・プリーチャー)は、体長20メートル級の濁った白金の光を放つ偽りの光竜。ルーナの純粋な光とは対照的に、民衆の憎悪を増幅させる幻影をまき散らしていた。

 一方、無感情の執行者 《エモーションレス・エグゼキューター》は、同じく体長20メートル級の無機質な金属竜であり、感情を一切感じさせない、機械そのものの不気味な黒いオーラをまとっていた。

 ヒカルは即座に防御ユニゾンを指示した。

「テラ! セフィラ! 大地シールド加速(ユニゾン)だ! テラの献身の土にセフィラの自由な風を乗せろ! 防御と機動力を両立させろ!」

 磐石の守護龍テラが叫んだ。

「わらわの愛は、主の命を守る礎です!」

 テラの献身(B♭音(シ♭)/チェロ)に、セフィラの自由(G音(ソ)/ヴァイオリン)が加わる。和音は長三和音(メジャー・トライアド)となり、感情ステータスは『安寧と躍動』へと変化(戦闘能力数値Battle Power Index:BPI安定度:98%)。揺るぎない土の盾が、風の力で加速し、古王軍の複合攻撃を弾き返した。


 ◇◆◇◆◇

 防御が成功した直後、ヒカルは攻撃に転じた。

「レヴィア! アクア! 超高圧ブレス(ユニゾン)だ! レヴィアの激情をアクアの理性で制御しろ! 執行者の魔力核を狙え!」

 紅蓮の激情竜姫レヴィアの激情(D音(レ)/トランペット)に、蒼玉の理性竜姫アクアの理性(F音(ファ)/クラリネット)が重なる。

 和音は短三和音(マイナー・トライアド)となり、感情ステータスは『戦略的嫉妬と攻撃』へと変化(BPI安定度:95%)。レヴィアはアクアへの嫉妬を、ヒカルの命令通り「最も効率的な破壊」へと昇華させ、高密度の炎と水のブレスが闇の執行者を精密に狙った。

 闇の執行者が超高圧ブレスを防御し、再び魔術を準備する隙を与えなかった。

「セフィラ! レヴィア! アクア! 高速追尾熱波(ユニゾン)だ! 宣教師の後衛を徹底的に叩け! 連続攻撃で呼吸を奪え!」

 セフィラの自由(G音)、レヴィアの激情(D音)、アクアの理性(F音)が重なる。和音はテンションコードを形成し、感情ステータスは『遊び心のある破壊』へと変化(BPI安定度:90%)。遊撃部隊の高速機動に乗った炎と風の熱波が、光の宣教師の後衛魔術師たちを次々と打ち倒し、宣教師の魔術支援を完全に崩壊させた。

 さらに、戦闘の応酬で兵士たちに疲労の色が見え始めた瞬間、ヒカルは五龍ユニゾンへの準備を兼ねて、ルーナとテラに指示した。

 テラの防御結界が安定域に戻ったことを確認したルーナは、即座にテラと光土ユニゾンの準備を開始。「テラ姉上!再生の力を集中!この光景こそ、王の愛の証明です!」と叫び、傷ついた兵士たちの物理的・精神的再生に集中する。

「純白の調和聖女ルーナ! 疾風の遊撃女王セフィラ! 加速治癒(ユニゾン)だ! 全軍の消耗を即時回復させろ!」

 ルーナの調和(C音(レ)/ホルン)に、セフィラの機動(D音(レ)/ヴァイオリン)が重なる。和音は明るく透明な完全五度(ドソ)となり、感情ステータスは『希望と迅速』へと変化(BPI安定度:95%)。

 ルーナの純粋な光の力が、セフィラの身体を通して爆発的な治癒のエネルギーへと昇華される。その光が白金の風となって戦場全体に吹き荒れ、負傷した兵士たちの憎悪や裏切りの記憶、そして肉体的な消耗を瞬時に癒やしていく。ヒカルの「絆の共感者」の異能には、全軍の士気が異常なほど高揚する喜びの和音が響き渡った。

 この癒やしの響きが戦場全体を包み込み、盟約軍の消耗を打ち消した。

「ヴァルキリア! 貴様の闇は、古王の呪いによって生み出された孤立の闇だ! 貴様の愛は、まだ死んでいない! 俺の愛が、貴様の呪いを包み込み、六龍の盟約を完成させる!」

 盟約軍は、この「愛と裏切り」による劇的な内部亀裂の修復によって、崩壊の危機を脱した。蒼玉の理性竜姫アクアと空虚の斥候王ゼファーは、この愛の調律による奇跡的なユニゾン安定度の上昇を冷静に分析し、古王軍の闇の六征竜の核を狙う五龍ユニゾンの準備を整え始めた。

「王の皆様。五龍ユニゾンの安定度は、一時的に最高値に達しました。愛の指揮棒を、古王の残る呪いの核に向けましょう!」

 フレアの裏切りと和解は、盟約軍に「優しさが最強の力」であることを改めて証明し、古王との最終決戦へ向けた最高の戦力増強となった。



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 夜明け前の荒野は、裏切りの炎と闇の呪いに包まれた地獄と化していた。
 爆炎龍将軍フレアの裏切りの炎は、紅蓮の激情竜姫レヴィアとヒカルの間に楔を打ち込み、盟約軍の中央を分断した。ヒカルの「絆の共感者」は、レヴィアの暴走、全軍の動揺、そしてフレアの冷たい憎悪という、全ての負の感情を「王の死」を告げる黒い警鐘として感知していた。
 戦場では、ユニゾン以外の全ての部隊が絶望的な状況に抗っていた。
 磐石の守護龍テラはフレアの憎悪の炎が盟約軍の中央を分断した瞬間、
「ガイア!内部熱の遮断を最優先!結界が溶ける!生命線を守り抜け!」
 と叫び、不動の防衛将ガイアと共に大地の魔力を集中。土龍主戦力による物理防御で、内部からの裏切りによる熱量を外部へ逃がし、全軍の崩壊を防いでいた。
 司令部では、蒼玉の理性竜姫アクアが、古王軍の闇の六征竜の魔力パターンを解析する空虚の斥候王ゼファーに鋭く命じた。
「ゼファー!執行者の魔力ベクトルを再計算!古代魔術の発動予測に全集中よ!王の命が最優先!論理を武器に戦いなさい!」
 ゼファーは冷静に魔力演算を続け、「御意、アクア様!情報戦は風の勝利です!」と応じた。
 純白の調和聖女ルーナの光はヴァルキリアの呪いによって消滅していたが、補佐竜の無垢なる浄化使アウラが、
「ルーナ様の光は消えていない! 兵士たちよ、調律の光を信じよ! 我らの使命は、王の精神的資産を守ることだ!」
 と叫び、ルーナから託された調律の光の魔石を兵士たちの間に拡散。全軍の戦意喪失だけは寸前で食い止めていた。
 そして、疾風の遊撃竜姫セフィラと遊撃部隊は、この混乱の瞬間、古王軍の光の六征竜(宣教師)の後方へと回り込んでいた。
「団長(ヒカル)の危機だ! 最高の冒険の始まりだよ! 宣教師の後衛をブッ飛ばす! 団員たち!風の刃を集中させろ!」
 セフィラは、レヴィアの炎の暴走とは対極の、自由奔放な奇襲を仕掛け、敵の魔術師部隊を集中攻撃することで、古王軍の魔術支援を寸断する任務を遂行。風龍部隊の咆哮が敵の後方から響き渡る。
「王の自由は我々が護る!」
「フン…………所詮、愛など脆弱な幻想よ」
 ヴァルキリアの闇の精神攻撃が、その絶望を増幅させる。闇の王女の孤高の嘲笑が、ヒカルの魂に直接叩きつけられる。ヒカルは、フレアの憎悪とヴァルキリアの孤立という二つの闇を正面から見据え、最後の力を振り絞り、自身の命を賭けた「愛の調律」を叫んだ。
「フレア! ヴァルキリア! 俺はお前たちの憎悪と孤独を否定しない! 俺もまた、人間社会に裏切られ、愛する者を失った絶望の淵に立たされた、裏切り者だ!」
 ヒカルの叫びは、戦場全体を覆う憎悪の炎と闇の魔力を一時的に静止させた。
「だが、憎悪は、お前たちが愛するものを守れない! フレア! お前がその憎悪を王にぶつけることは、お前が裏切りと罵りながらも、心から愛し、その献身を証明しようとしたシエルの命と愛を、二度と癒やせない絶望の淵に突き落とすことと同じだぞ!」
 ヒカルは、フレアの瞳に、シエルという名の「理性的な愛」の重要性を叩きつけた。
 その瞬間、テラの防御結界の奥、後方司令部で療養中だった深海の戦術師シエルの身体から、一筋の冷たく澄んだ魔力の光が放たれた。シエルの魔力は、フレアの憎悪の炎と衝突することなく、愛と裏切りの悲しみという、純粋な感情の音色となって、フレアの魂に直接響き渡った。
「フレア…………!」
 シエルの声は、弱々しく、しかし理性的な愛と献身に満ちていた。
「お願い、フレア。貴方の憎悪は、論理的な判断を超えた、私にとって最も美しい激情でした。でも、その憎悪は今、王を傷つけるだけでなく、私を論理的に許せない絶望に陥れている…………。貴方の愛は、私を裏切らないと、誓ったでしょう!」
(な、なんだと…………!? フレアとシエルが、そういう関係だったのか!?)
 ヒカルは、自分の「絆の共感者」の異能が、六天将の「真の愛」を見抜けなかったという事実と、その愛が裏切りの核心であったというドラマティックな展開に、戦場であることを忘れて動揺した。
 フレアの魔力は、憎悪の炎から、深い自責の念と後悔という冷たい炎へと一瞬で転化した。彼は、レヴィアとシエルの愛を裏切ったという事実に打ちのめされた。
「あぁ……シエル…………レヴィア様…………」
 フレアは憎悪の炎を収め、その場に膝をついた。彼は、裏切り者という汚名を返上するため、自身の炎を、ヒカルの命を守る守護の炎へと切り替える。フレアの炎は、ヴァルキリアの闇の呪いと、闇の六征竜が放つ闇の波動を、静かに燃やし尽くし始めた。
「ぐ、うう…………! 呪いの根が、剥がれる…………まさか、愛が憎悪を上回るだと!?」
 ヴァルキリアの口元を覆っていた手が緩み、その闇の魔力は、愛への絶対的な拒絶という呪いの仮面の下で、悲しみと苦痛という、本来の感情を露呈させ始めた。
 光の六征竜(宣教師)は、この目前で起こった非合理な奇跡に絶叫した。
「ありえない! フレアの裏切りを核とした我々の計画が、なぜこの場で崩壊する!? 人間ごときの愛が、古王の闇を打ち破るなど、論理的に許せん!」
 宣教師の背後からは、「団長(ヒカル)は最高の指揮者だ!」というセフィラの歓声が響き、古王軍の魔術支援は完全に崩壊した。
 敵兵たちは動揺し、
「宣教師殿の魔術が…………使えないだと!?」
「フレア将軍が、王の護りに回ったぞ!」
 と叫び合った。
 ヒカルは、フレアの裏切りへの沙汰を一旦保留し、王としての威厳を持って指示を下した。
「フレア。お前の裏切りへの沙汰は、戦いが終わってからだ。今は、お前の真の忠誠心を、敵の核にぶつけてみせろ! 目の前の敵を撃て!」
「御意! 王!」
 フレアは、守護の炎をレヴィアの炎と共鳴させ、ヴァルキリアの闇を静かに燃やし尽くし始めた。
 司令部で状況を解析していた蒼玉の理性竜姫アクアは、シエルの理性的な仮面が剥がれた瞬間に驚愕しつつも、すぐに理性を回復させた。
「王よ。シエルとフレアの愛の成立は、論理的に見て、軍団の内部亀裂を修復する最高のイベントです。この王妃戦争が、六天将にも影響を及ぼしていたとは…………しかし、これでフレアの忠誠心は揺るがない。ヒカル。彼らを祝福しましょう。その愛を、戦術に変えるのです。ヴァルキリアの呪いは解けかけているわ、急いで!王の理性は、戦場を離れない!」
 レヴィアの激情が守護の炎へと調律され、ユニゾン安定度が急速に回復した瞬間、ヒカルは間髪入れずに五龍ユニゾンではない、二龍ユニゾンの応酬を命じた。
 ◇◆◇◆◇
 古王軍の闇の六征竜(執行者)と光の六征竜(宣教師)が、態勢を立て直すべく、闇と光の複合攻撃を盟約軍中央に集中させた。
 2体ともすでに完全竜化を済ませており、万全の体制でヒカルたちを迎え撃った。
 |偽光の宣教師《フォールス・プリーチャー》は、体長20メートル級の濁った白金の光を放つ偽りの光竜。ルーナの純粋な光とは対照的に、民衆の憎悪を増幅させる幻影をまき散らしていた。
 一方、無感情の執行者 《エモーションレス・エグゼキューター》は、同じく体長20メートル級の無機質な金属竜であり、感情を一切感じさせない、機械そのものの不気味な黒いオーラをまとっていた。
 ヒカルは即座に防御ユニゾンを指示した。
「テラ! セフィラ! 大地シールド加速(ユニゾン)だ! テラの献身の土にセフィラの自由な風を乗せろ! 防御と機動力を両立させろ!」
 磐石の守護龍テラが叫んだ。
「わらわの愛は、主の命を守る礎です!」
 テラの献身(B♭音(シ♭)/チェロ)に、セフィラの自由(G音(ソ)/ヴァイオリン)が加わる。和音は長三和音(メジャー・トライアド)となり、感情ステータスは『安寧と躍動』へと変化(戦闘能力数値Battle Power Index:BPI安定度:98%)。揺るぎない土の盾が、風の力で加速し、古王軍の複合攻撃を弾き返した。
 ◇◆◇◆◇
 防御が成功した直後、ヒカルは攻撃に転じた。
「レヴィア! アクア! 超高圧ブレス(ユニゾン)だ! レヴィアの激情をアクアの理性で制御しろ! 執行者の魔力核を狙え!」
 紅蓮の激情竜姫レヴィアの激情(D音(レ)/トランペット)に、蒼玉の理性竜姫アクアの理性(F音(ファ)/クラリネット)が重なる。
 和音は短三和音(マイナー・トライアド)となり、感情ステータスは『戦略的嫉妬と攻撃』へと変化(BPI安定度:95%)。レヴィアはアクアへの嫉妬を、ヒカルの命令通り「最も効率的な破壊」へと昇華させ、高密度の炎と水のブレスが闇の執行者を精密に狙った。
 闇の執行者が超高圧ブレスを防御し、再び魔術を準備する隙を与えなかった。
「セフィラ! レヴィア! アクア! 高速追尾熱波(ユニゾン)だ! 宣教師の後衛を徹底的に叩け! 連続攻撃で呼吸を奪え!」
 セフィラの自由(G音)、レヴィアの激情(D音)、アクアの理性(F音)が重なる。和音はテンションコードを形成し、感情ステータスは『遊び心のある破壊』へと変化(BPI安定度:90%)。遊撃部隊の高速機動に乗った炎と風の熱波が、光の宣教師の後衛魔術師たちを次々と打ち倒し、宣教師の魔術支援を完全に崩壊させた。
 さらに、戦闘の応酬で兵士たちに疲労の色が見え始めた瞬間、ヒカルは五龍ユニゾンへの準備を兼ねて、ルーナとテラに指示した。
 テラの防御結界が安定域に戻ったことを確認したルーナは、即座にテラと光土ユニゾンの準備を開始。「テラ姉上!再生の力を集中!この光景こそ、王の愛の証明です!」と叫び、傷ついた兵士たちの物理的・精神的再生に集中する。
「純白の調和聖女ルーナ! 疾風の遊撃女王セフィラ! 加速治癒(ユニゾン)だ! 全軍の消耗を即時回復させろ!」
 ルーナの調和(C音(レ)/ホルン)に、セフィラの機動(D音(レ)/ヴァイオリン)が重なる。和音は明るく透明な完全五度(ドソ)となり、感情ステータスは『希望と迅速』へと変化(BPI安定度:95%)。
 ルーナの純粋な光の力が、セフィラの身体を通して爆発的な治癒のエネルギーへと昇華される。その光が白金の風となって戦場全体に吹き荒れ、負傷した兵士たちの憎悪や裏切りの記憶、そして肉体的な消耗を瞬時に癒やしていく。ヒカルの「絆の共感者」の異能には、全軍の士気が異常なほど高揚する喜びの和音が響き渡った。
 この癒やしの響きが戦場全体を包み込み、盟約軍の消耗を打ち消した。
「ヴァルキリア! 貴様の闇は、古王の呪いによって生み出された孤立の闇だ! 貴様の愛は、まだ死んでいない! 俺の愛が、貴様の呪いを包み込み、六龍の盟約を完成させる!」
 盟約軍は、この「愛と裏切り」による劇的な内部亀裂の修復によって、崩壊の危機を脱した。蒼玉の理性竜姫アクアと空虚の斥候王ゼファーは、この愛の調律による奇跡的なユニゾン安定度の上昇を冷静に分析し、古王軍の闇の六征竜の核を狙う五龍ユニゾンの準備を整え始めた。
「王の皆様。五龍ユニゾンの安定度は、一時的に最高値に達しました。愛の指揮棒を、古王の残る呪いの核に向けましょう!」
 フレアの裏切りと和解は、盟約軍に「優しさが最強の力」であることを改めて証明し、古王との最終決戦へ向けた最高の戦力増強となった。