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第四十一話:最終決戦:五龍盟約軍、出撃のファンファーレ

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 夜明け前、古王の城の周囲に広がる荒野が、竜族の歴史を賭けた最終決戦の舞台となった。

 盟約軍はこれまでの激戦で約1割の損耗を出しながらも、中立派の合流により約3,160体という最大戦力を擁していた。士気は最高潮だが、ヒカルは対する古王軍の陣営に釘付けになっていた。

 古王軍は総兵力の4割が戦死・離反しつつも、無理やり徴兵した部隊を加え、約3,680体という数で盟約軍を上回っていた。その核となるのは、古王の絶対忠誠派と、古代魔術という最後の切り札だった。

 ヒカルは、五龍姫を従え、自ら最前線に立つ。古王の玉座の傍らには、闇の王女ヴァルキリアが無感情の執行者(闇)と共に立ち、その孤高の闇で戦場を威圧していた。

 古王フォールン・キングは、玉座から立ち上がり、盟約軍を見下ろした。彼の姿は、黒い魔力で覆われた漆黒の重厚な全身鎧に身を包んだ、威圧と腐敗を併せ持つ王だった。

 彼の顔は深い影に隠れ、その頭部には鋭く尖った角を持つ王冠が戴かれている。その手には、巨大な黒い大剣が握られ、その存在自体が力と恐怖による絶対的な秩序を体現していた。

 古王の咆哮が大地を揺らす。

「古王軍総大将、古王(フォールン・キング)より告ぐ! 竜族の血を引かぬ人間が、我ら竜族の絆を語るな! 貴様は、その愛と共に、ここで灰燼と化すのだ!」

 ヒカルは、その威圧を正面から受け止め、最後の命令を下した。

「全軍に布陣を指示する。五龍盟約軍、出撃のファンファーレだ!」

 ヒカルはまず、最前線の矛となる二人に視線を向けた。

「紅蓮の激情竜姫レヴィア、そして爆炎龍将軍フレア! 貴様たちは、主旋律を担え。フレアは、レヴィアを護衛し、敵陣の最硬部を切り開く切り込み隊長だ。ヴァルキリアと古王の間に、激情のトランペットを叩き込め!」

 レヴィアの激情の炎は、フレアの近接する憎悪によって魔力構成に著しい乱れを生じさせ、戦場全体に不穏な不協和音を響かせる。ヒカルの「絆の共感者」が捉えるのは、レヴィアのユニゾン安定度が制御不能なほどゼロ近傍で揺れ動くという最悪の警告。

 ヒカルは、そのノイズの源がフレアの冷たい殺意であると戦場の視覚化で確信していた。ヒカルは、フレアの裏切りを織り込み済みとし、レヴィアへの愛と忠誠という名の枷を与えることで、その殺意を最高の矛に変えようとしていた。

 ◇◆◇◆◇

 ヒカルは、フレアの裏切りを誘発しつつ、五龍盟約軍の核を護るための、孤独な指令を下した。

「磐石の守護龍テラ、磐石の防衛将ガイア! 貴様たちは、防御基盤を固め、全軍を護る揺るぎないリズムとなれ。ルーナとテラの光土ユニゾンがいつでも発動できるよう、魔力回路を常時開放せよ!」
「蒼玉の理性竜姫アクア、空虚の斥候王ゼファー! 貴様たちは、情報戦と敵の魔術の発動予測に専念せよ。古王が温存する古代の魔術の発動を感知した瞬間、即座に報告せよ!」
「純白の調和聖女ルーナ! お前の調律の光は、全軍の精神的な盾だ。激しい戦闘で姫たちの感情が乱れた瞬間、愛の調和を奏で、ユニゾンの暴走を防げ。お前の献身的な愛こそ、この軍団の生命線だ!」

 ルーナは、ヒカルの孤独な決意を理解し、静かに頷いた。

 古王軍の陣営では、ヴァルキリアがヒカルの布陣を見て、冷笑を浮かべた。

「フン。フレアを最前線に置くなど、愚かな王ね。裏切りを誘発するとは、自滅を急いでいるわ。光と闇の六征竜よ、フレアの憎悪と共鳴し、あの小僧の絆の核を内部から破壊しなさい!」

 光の六征竜(偽光の宣教師(フォールス・プリーチャー))と闇の六征竜(無感情の執行者(エモーションレス・エグゼキューター))が、ヴァルキリアの闇の精神攻撃と共鳴し、盟約軍へ猛攻を開始した。

 竜族の歴史を変える壮絶な最終決戦の火蓋は、今、切って落とされた。

 ◇◆◇◆◇

 古王軍の猛攻に対し、盟約軍はテラの強固な防御基盤と、ルーナの調律の光で耐えきっていた。しかし、戦場中央で、フレアの憎悪が遂に臨界点に達した。

「レヴィア様の愛を、この人間ごときに独占させるものか!」

 フレアは、紅蓮の激情竜姫レヴィアへの狂信的な忠誠心を、ヒカルへの裏切りの炎へと変貌させた。彼は、レヴィアの背後から、ヒカルのいる司令部とレヴィアを巻き込む形で、最大出力の憎悪の炎を放った。

「馬鹿な…………! フレア!」

 レヴィアは、愛する部下の裏切りと、夫の危機という二重の絶望に苛まれ、その激情の魔力が制御不能な不協和音を奏で始める。ヒカルのユニゾン安定度は、警告の赤を振り切り、崩壊の黒へと変じた。

 爆炎の業火が盟約軍の中央を分断し、磐石の守護龍テラの防御結界が激しく点滅する。テラの揺るぎないリズムが狂い始め、ガイアが苦悶の声を上げる。

「テラ様! 防御基盤が、内側からの熱量で溶かされます!」

 この瞬間、闇の王女ヴァルキリアが、闇の精神攻撃をヒカルに直接叩き込んだ。

「フン。所詮、愛など脆弱な幻想よ。貴様が築き上げた絆は、この孤高の闇と、裏切りの憎悪の前には無力だ、契約者」

 ヴァルキリアの呪いは、フレアの裏切りと共鳴し、ヒカルの「優しさが最強の力」という信念を根底から揺さぶる。盟約軍の絆は、内部からの裏切りと外部からの絶望という、史上最大の危機に陥った。

 純白の調和聖女ルーナの調律の光が、憎悪と絶望の二重奏によって瞬時に押し潰され、光が完全に消える。蒼玉の理性竜姫アクアは、崩壊した情報盤の前で、論理を超えた事態に絶望の表情を浮かべる。

 この絶望的な不協和音が、五龍盟約軍の崩壊を予感させる中、物語は次話へと続く。



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 夜明け前、古王の城の周囲に広がる荒野が、竜族の歴史を賭けた最終決戦の舞台となった。
 盟約軍はこれまでの激戦で約1割の損耗を出しながらも、中立派の合流により約3,160体という最大戦力を擁していた。士気は最高潮だが、ヒカルは対する古王軍の陣営に釘付けになっていた。
 古王軍は総兵力の4割が戦死・離反しつつも、無理やり徴兵した部隊を加え、約3,680体という数で盟約軍を上回っていた。その核となるのは、古王の絶対忠誠派と、古代魔術という最後の切り札だった。
 ヒカルは、五龍姫を従え、自ら最前線に立つ。古王の玉座の傍らには、闇の王女ヴァルキリアが無感情の執行者(闇)と共に立ち、その孤高の闇で戦場を威圧していた。
 古王フォールン・キングは、玉座から立ち上がり、盟約軍を見下ろした。彼の姿は、黒い魔力で覆われた漆黒の重厚な全身鎧に身を包んだ、威圧と腐敗を併せ持つ王だった。
 彼の顔は深い影に隠れ、その頭部には鋭く尖った角を持つ王冠が戴かれている。その手には、巨大な黒い大剣が握られ、その存在自体が力と恐怖による絶対的な秩序を体現していた。
 古王の咆哮が大地を揺らす。
「古王軍総大将、古王《フォールン・キング》より告ぐ! 竜族の血を引かぬ人間が、我ら竜族の絆を語るな! 貴様は、その愛と共に、ここで灰燼と化すのだ!」
 ヒカルは、その威圧を正面から受け止め、最後の命令を下した。
「全軍に布陣を指示する。五龍盟約軍、出撃のファンファーレだ!」
 ヒカルはまず、最前線の矛となる二人に視線を向けた。
「紅蓮の激情竜姫レヴィア、そして爆炎龍将軍フレア! 貴様たちは、主旋律を担え。フレアは、レヴィアを護衛し、敵陣の最硬部を切り開く切り込み隊長だ。ヴァルキリアと古王の間に、激情のトランペットを叩き込め!」
 レヴィアの激情の炎は、フレアの近接する憎悪によって魔力構成に著しい乱れを生じさせ、戦場全体に不穏な不協和音を響かせる。ヒカルの「絆の共感者」が捉えるのは、レヴィアのユニゾン安定度が制御不能なほどゼロ近傍で揺れ動くという最悪の警告。
 ヒカルは、そのノイズの源がフレアの冷たい殺意であると戦場の視覚化で確信していた。ヒカルは、フレアの裏切りを織り込み済みとし、レヴィアへの愛と忠誠という名の枷を与えることで、その殺意を最高の矛に変えようとしていた。
 ◇◆◇◆◇
 ヒカルは、フレアの裏切りを誘発しつつ、五龍盟約軍の核を護るための、孤独な指令を下した。
「磐石の守護龍テラ、磐石の防衛将ガイア! 貴様たちは、防御基盤を固め、全軍を護る揺るぎないリズムとなれ。ルーナとテラの光土ユニゾンがいつでも発動できるよう、魔力回路を常時開放せよ!」
「蒼玉の理性竜姫アクア、空虚の斥候王ゼファー! 貴様たちは、情報戦と敵の魔術の発動予測に専念せよ。古王が温存する古代の魔術の発動を感知した瞬間、即座に報告せよ!」
「純白の調和聖女ルーナ! お前の調律の光は、全軍の精神的な盾だ。激しい戦闘で姫たちの感情が乱れた瞬間、愛の調和を奏で、ユニゾンの暴走を防げ。お前の献身的な愛こそ、この軍団の生命線だ!」
 ルーナは、ヒカルの孤独な決意を理解し、静かに頷いた。
 古王軍の陣営では、ヴァルキリアがヒカルの布陣を見て、冷笑を浮かべた。
「フン。フレアを最前線に置くなど、愚かな王ね。裏切りを誘発するとは、自滅を急いでいるわ。光と闇の六征竜よ、フレアの憎悪と共鳴し、あの小僧の絆の核を内部から破壊しなさい!」
 光の六征竜(|偽光の宣教師《フォールス・プリーチャー》)と闇の六征竜(無感情の執行者《エモーションレス・エグゼキューター》)が、ヴァルキリアの闇の精神攻撃と共鳴し、盟約軍へ猛攻を開始した。
 竜族の歴史を変える壮絶な最終決戦の火蓋は、今、切って落とされた。
 ◇◆◇◆◇
 古王軍の猛攻に対し、盟約軍はテラの強固な防御基盤と、ルーナの調律の光で耐えきっていた。しかし、戦場中央で、フレアの憎悪が遂に臨界点に達した。
「レヴィア様の愛を、この人間ごときに独占させるものか!」
 フレアは、紅蓮の激情竜姫レヴィアへの狂信的な忠誠心を、ヒカルへの裏切りの炎へと変貌させた。彼は、レヴィアの背後から、ヒカルのいる司令部とレヴィアを巻き込む形で、最大出力の憎悪の炎を放った。
「馬鹿な…………! フレア!」
 レヴィアは、愛する部下の裏切りと、夫の危機という二重の絶望に苛まれ、その激情の魔力が制御不能な不協和音を奏で始める。ヒカルのユニゾン安定度は、警告の赤を振り切り、崩壊の黒へと変じた。
 爆炎の業火が盟約軍の中央を分断し、磐石の守護龍テラの防御結界が激しく点滅する。テラの揺るぎないリズムが狂い始め、ガイアが苦悶の声を上げる。
「テラ様! 防御基盤が、内側からの熱量で溶かされます!」
 この瞬間、闇の王女ヴァルキリアが、闇の精神攻撃をヒカルに直接叩き込んだ。
「フン。所詮、愛など脆弱な幻想よ。貴様が築き上げた絆は、この孤高の闇と、裏切りの憎悪の前には無力だ、契約者」
 ヴァルキリアの呪いは、フレアの裏切りと共鳴し、ヒカルの「優しさが最強の力」という信念を根底から揺さぶる。盟約軍の絆は、内部からの裏切りと外部からの絶望という、史上最大の危機に陥った。
 純白の調和聖女ルーナの調律の光が、憎悪と絶望の二重奏によって瞬時に押し潰され、光が完全に消える。蒼玉の理性竜姫アクアは、崩壊した情報盤の前で、論理を超えた事態に絶望の表情を浮かべる。
 この絶望的な不協和音が、五龍盟約軍の崩壊を予感させる中、物語は次話へと続く。