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「いおちゃんの将来の夢って、なあに?」
 ある日庵は、リンくんにそう訊かれました。
 庵には将来のことはまだよくわかりません。庵は相変わらず、おとなになった自分をうまく想像できないのでした。
「リンくんの将来の夢は?」
 困った庵はリンくんにそう訊き返しました。
「ぼくの将来の夢は、いおちゃんと結婚すること」
 リンくんは言いました。言った後のリンくんは顔を真っ赤にしています。
「けっこんて、なあに?」
 庵には、結婚がわかりませんでした。好きな人とずっと一緒にいることだよ。リンくんは答えます。
「それじゃあリンくんは、いおのことが好きなの?」
「うん、好きだよ」
 庵は飛び上がりたいほど嬉しくなりました。それもそのはず。リンくんが自分のことを好きでいてくれたらいいなというのは、庵自身がずっとそう願っていたことでもあったのですから。
「いお、リンくんとけっこんする! 今すぐしよう!」
「今すぐはだめだよ。結婚はおとなになってからじゃないとできないんだって」
「なにそれ。つまんないの」
 庵は少しむくれて言います。おとなになったら結婚しようね。リンくんは言い、二人はまた指切りをしました。
 すぐに結婚ができないのは残念でしたが、それでも庵は幸せな気持ちでいっぱいでした。以前にも増して、庵はおとなになるのが楽しみで仕方ありません。
 家に帰った庵は、とうとうお姉さまにリンくんのことを話してしまいました。言ったらお姉さまにリンくんをとられてしまうような気がして、リンくんのことをずっと内緒にしていた庵でしたが、この日のことがあまりに嬉しくて誰かに聞いてほしくなったのでした。
 庵の話を聞いたお姉さまは、なぜかくすくすと笑い出しました。そして、
「そんなお友だち、いないわ」
 と庵に言うのです。
 お姉さまはなぜそんなことを言うのだろう。そしてなぜ、そんなにおかしそうに笑っているのだろう。庵には不思議でした。
 庵はお姉さまに、リンくんから聞いた海のお話を聞かせてあげました。リンくんはわたしの知らないこともたくさん知ってるんだよ、とお姉さまに教えてあげたかったのです。
「あら。海のお話なら、前にお母さまから聞いて、庵も知っているはずでしょう」
「そんなことないよ。いお、リンくんに教えてもらうまで、海のことなんて知らなかったもん」
 あらそう。お姉さまはまた意地悪そうに笑います。そして庵にこう言うのでした。
「そのお友だちはきっと、庵がもう少し大きくなったらいなくなるんじゃないかしら」
「どうして? リンくんはいなくなったりしないよ。ずっと一緒にいようねって、約束したもん」
「そうなの。それはよかったわねえ」
 お姉さまはまた、くすくすと笑います。お友だち、消えないといいわね。そう言い残し、自分の部屋に帰っていきました。

 その次の日も、リンくんは庵の前に現れました。
 昨日お姉さまに言われたことがまだ少し気になる庵でしたが、リンくんの顔を見ると、そんな不安はいっぺんに吹き飛んでしまいます。
「いおね、今日、リンくんと一緒にやりたいことがあるの」
「やりたいこと?」
「うん。いお、結婚指輪を作りたい」
 庵は昨日、お母さまに結婚のことを教えてもらったのでした。結婚をするには結婚指輪がいるのだとお母さまは言っていたのです。
「指輪って、どうやって作るの?」
「うーんとね、そうだ」
 庵は森に生えている草のつるを使って指輪を作ることにしました。ですが、なかなか上手にできません。大きすぎたり小さすぎたり、形が上手くできても途中で切れてしまったりするのです。庵がするのをまねて、リンくんも作ってみようとするのですが、やはり満足のいくものはなかなかできません。
 そのうち庵は疲れてしまいました。
「指輪を作るのって、難しいんだね」
 そう言いながら、リンくんはまだ熱心に作業を続けています。
「指輪はもういいよ。リンくん、おいかけっこして遊ぼう」
 そう言って、庵はリンくんの手をとって立ち上がらせました。庵ちゃんが言い出したのに、とリンくんは困ったように笑いながら言います。
「いいの。指輪はまた今度作ろう。いお、お母さまに作り方を訊いておくね」
 庵はリンくんの手を引いて走り出しました。そうして手を繋いだまま、森の中を駆け回ります。
 二人で手を繋いでいると、リンくんが確かにそこにいることを庵ははっきりと感じることができるのでした。


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「いおちゃんの将来の夢って、なあに?」
 ある日庵は、リンくんにそう訊かれました。
 庵には将来のことはまだよくわかりません。庵は相変わらず、おとなになった自分をうまく想像できないのでした。
「リンくんの将来の夢は?」
 困った庵はリンくんにそう訊き返しました。
「ぼくの将来の夢は、いおちゃんと結婚すること」
 リンくんは言いました。言った後のリンくんは顔を真っ赤にしています。
「けっこんて、なあに?」
 庵には、結婚がわかりませんでした。好きな人とずっと一緒にいることだよ。リンくんは答えます。
「それじゃあリンくんは、いおのことが好きなの?」
「うん、好きだよ」
 庵は飛び上がりたいほど嬉しくなりました。それもそのはず。リンくんが自分のことを好きでいてくれたらいいなというのは、庵自身がずっとそう願っていたことでもあったのですから。
「いお、リンくんとけっこんする! 今すぐしよう!」
「今すぐはだめだよ。結婚はおとなになってからじゃないとできないんだって」
「なにそれ。つまんないの」
 庵は少しむくれて言います。おとなになったら結婚しようね。リンくんは言い、二人はまた指切りをしました。
 すぐに結婚ができないのは残念でしたが、それでも庵は幸せな気持ちでいっぱいでした。以前にも増して、庵はおとなになるのが楽しみで仕方ありません。
 家に帰った庵は、とうとうお姉さまにリンくんのことを話してしまいました。言ったらお姉さまにリンくんをとられてしまうような気がして、リンくんのことをずっと内緒にしていた庵でしたが、この日のことがあまりに嬉しくて誰かに聞いてほしくなったのでした。
 庵の話を聞いたお姉さまは、なぜかくすくすと笑い出しました。そして、
「そんなお友だち、いないわ」
 と庵に言うのです。
 お姉さまはなぜそんなことを言うのだろう。そしてなぜ、そんなにおかしそうに笑っているのだろう。庵には不思議でした。
 庵はお姉さまに、リンくんから聞いた海のお話を聞かせてあげました。リンくんはわたしの知らないこともたくさん知ってるんだよ、とお姉さまに教えてあげたかったのです。
「あら。海のお話なら、前にお母さまから聞いて、庵も知っているはずでしょう」
「そんなことないよ。いお、リンくんに教えてもらうまで、海のことなんて知らなかったもん」
 あらそう。お姉さまはまた意地悪そうに笑います。そして庵にこう言うのでした。
「そのお友だちはきっと、庵がもう少し大きくなったらいなくなるんじゃないかしら」
「どうして? リンくんはいなくなったりしないよ。ずっと一緒にいようねって、約束したもん」
「そうなの。それはよかったわねえ」
 お姉さまはまた、くすくすと笑います。お友だち、消えないといいわね。そう言い残し、自分の部屋に帰っていきました。
 その次の日も、リンくんは庵の前に現れました。
 昨日お姉さまに言われたことがまだ少し気になる庵でしたが、リンくんの顔を見ると、そんな不安はいっぺんに吹き飛んでしまいます。
「いおね、今日、リンくんと一緒にやりたいことがあるの」
「やりたいこと?」
「うん。いお、結婚指輪を作りたい」
 庵は昨日、お母さまに結婚のことを教えてもらったのでした。結婚をするには結婚指輪がいるのだとお母さまは言っていたのです。
「指輪って、どうやって作るの?」
「うーんとね、そうだ」
 庵は森に生えている草のつるを使って指輪を作ることにしました。ですが、なかなか上手にできません。大きすぎたり小さすぎたり、形が上手くできても途中で切れてしまったりするのです。庵がするのをまねて、リンくんも作ってみようとするのですが、やはり満足のいくものはなかなかできません。
 そのうち庵は疲れてしまいました。
「指輪を作るのって、難しいんだね」
 そう言いながら、リンくんはまだ熱心に作業を続けています。
「指輪はもういいよ。リンくん、おいかけっこして遊ぼう」
 そう言って、庵はリンくんの手をとって立ち上がらせました。庵ちゃんが言い出したのに、とリンくんは困ったように笑いながら言います。
「いいの。指輪はまた今度作ろう。いお、お母さまに作り方を訊いておくね」
 庵はリンくんの手を引いて走り出しました。そうして手を繋いだまま、森の中を駆け回ります。
 二人で手を繋いでいると、リンくんが確かにそこにいることを庵ははっきりと感じることができるのでした。