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第1章 捨てる神あれば拾う神あり-4

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 私の住むマンションの最寄り駅は快速も止まる便利なJRの駅だ。しかも乗換駅にもなっている。駅の周辺にそこそこ商業施設はあるが、基本住宅街で人口が多いため行きかう人や自転車の数は多く、どちらかというとごみごみした街だった。
 私の住処であるファミリータイプのマンションは駅から徒歩五分くらいのところにある。そんなに世帯数は多くなくこじんまりとした静かなマンションである。両親が購入し――今は私が所有する部屋は、南東向き最上階にありルーフバルコニー付きという事がちょっとした売りの物件である。そこには物干しざおと私が育てている観葉植物がちょっとだけ並べられ、残念ながら広さを全然生かせないでいた。室内は昨日駆が来ると分かってから全力で掃除をしたので辛うじて散らかってはいないが、一人暮らしの割に物が多いせいでやたら生活感に溢れているのが気恥ずかしい。

 駆を家に招き入れると、部屋を一つ一つ説明していく。玄関に一番近い六畳の和室は両親の思い出の品――大量の本やゲーム、衣類が入れられた収納ケースが山積みになっている。廊下を挟んで反対側にある約八畳の部屋が駆に使ってもらう予定の洋室だ。父が使っていた重厚な書斎机、シンプルなシングルベッドとクローゼットがそれぞれ一つだけ置いてある。今までは友達が泊りに来た時に客間として使ってもらっていた。
 その先の廊下の両脇に洗面所・風呂とトイレがあり、さらに奥にはキッチン、リビングダイニング、私の寝室という間取りである。私の寝室が一番奥まっているので、駆とはあまり動線が重ならずに済むだろう。それぞれの部屋には元々鍵も付いているので幸いプライバシーはしっかり確保されている。
 同居をするにあたって問題になるとしたら風呂と洗濯だが、そこは大家の私のスケジュールを優先させてもらうことになった。異論もあるだろうが私は元々朝風呂派なのだ。駆には私の不在時か夜に入浴してもらうことにする。洗濯は大型のドラム式洗濯乾燥機があるので、曜日を決めて交代で使用することになった。掃除は私の部屋以外は、駆がやってくれる事が決まる。

 説明が終わった後、駆をダイニングテーブルの椅子に腰掛けさせると、私は対面キッチンに立ち、コーヒーメーカーの準備をする。キッチンには母が愛用していた大量の鍋や用具がそのまま残してあったが、駆が食事を作ってくれるなら整理しないでおいて正解だったと思う。
 コポコポとコーヒーメーカーが音を立て、徐々にコーヒーの香りが部屋中に広がっていく中、駆が42型テレビを置いているローボードの横に移動し、そこにそっと置いてあった私の両親の小さな遺影の前で正座をし手を合わせ挨拶している。本当に心根の優しい青年なのだとしみじみと見つめてしまった。

 コーヒーが出来上がったので、それをFQⅢのデフォルメキャラ達がプリントされたマグカップに入れて、ダイニングテーブルに戻っていた駆に差し出した。それを見た駆が大喜びする。
「あ、これコラボカフェの限定商品でしょ。欲しかったんだけど行き損なってたんだ! いいなあ」
「今日からいくらでも使って宜しくってよ」
私はおーほほほと高飛車に笑ってみせた。FQⅢに全く興味のない友達に、頼み込んでようやく予約できたカフェで買う事ができた限定品なのだ。
「あー、オレのキャラの真似してるし」
文句を言う駆。駆のFQⅢのキャラ・ランはいつもこんな喋り方をしているのだ。リアルな駆を知ってしまうと、そういうキャラを演じていたのも駆なりのストレス発散だったのかもしれないと感じてしまう。

 明日駆の荷物が届くことになっているがそれまでは実質何もできないので、コーヒーを飲みながらしばらく雑談をしていたのだが、ゲーム仲間たちに合流できたことを報告していなかったことを今更ながらに思い出した。
「ああ、LIMEでみんなに無事ランちゃんを回収できたこと伝えておかないと」
スマホをかばんから取り出したところ、駆も慌てて自分のスマホを胸ポケットから取り出しLIMEに書き込み始める。

ラン 『お陰様で無事アルファさんの御宅に身を寄せることができました。お騒がせして本当にすみませんでした!』
私  『ランちゃんは今日からうちの専属シェフです♪』
すると直後から皆からメッセージが入り始めた。良かったねというスタンプと共に
むーむー『ランちゃん、アルファちゃんに迷惑かけちゃダメだよ』
タッキー『今日から二人は同棲か、羨ましいぞ』
ひゅーひゅーというスタンプ付けてきた。
事務猫『タッキーさん、同棲じゃないですよ』
タッキー『似たようなもんじゃね?』
ラン 『オレ、ただの居候ですし』
私  『ランちゃんのパソコン届いたらFQⅢ再開すると思うけど、約束で私達一緒にログインすることになったので皆さんもその旨よろしくお願いします!』
むーむー・タッキー・事務猫『『『りょーかい』』』
 皆も駆がレイドバトルに参加した事がきっかけで単位を落としたことを気にしていたはずだ。節度を持ってプレイすると決めた方が、安心して楽しくプレイできるというものだ。


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みんなのリアクション

 私の住むマンションの最寄り駅は快速も止まる便利なJRの駅だ。しかも乗換駅にもなっている。駅の周辺にそこそこ商業施設はあるが、基本住宅街で人口が多いため行きかう人や自転車の数は多く、どちらかというとごみごみした街だった。
 私の住処であるファミリータイプのマンションは駅から徒歩五分くらいのところにある。そんなに世帯数は多くなくこじんまりとした静かなマンションである。両親が購入し――今は私が所有する部屋は、南東向き最上階にありルーフバルコニー付きという事がちょっとした売りの物件である。そこには物干しざおと私が育てている観葉植物がちょっとだけ並べられ、残念ながら広さを全然生かせないでいた。室内は昨日駆が来ると分かってから全力で掃除をしたので辛うじて散らかってはいないが、一人暮らしの割に物が多いせいでやたら生活感に溢れているのが気恥ずかしい。
 駆を家に招き入れると、部屋を一つ一つ説明していく。玄関に一番近い六畳の和室は両親の思い出の品――大量の本やゲーム、衣類が入れられた収納ケースが山積みになっている。廊下を挟んで反対側にある約八畳の部屋が駆に使ってもらう予定の洋室だ。父が使っていた重厚な書斎机、シンプルなシングルベッドとクローゼットがそれぞれ一つだけ置いてある。今までは友達が泊りに来た時に客間として使ってもらっていた。
 その先の廊下の両脇に洗面所・風呂とトイレがあり、さらに奥にはキッチン、リビングダイニング、私の寝室という間取りである。私の寝室が一番奥まっているので、駆とはあまり動線が重ならずに済むだろう。それぞれの部屋には元々鍵も付いているので幸いプライバシーはしっかり確保されている。
 同居をするにあたって問題になるとしたら風呂と洗濯だが、そこは大家の私のスケジュールを優先させてもらうことになった。異論もあるだろうが私は元々朝風呂派なのだ。駆には私の不在時か夜に入浴してもらうことにする。洗濯は大型のドラム式洗濯乾燥機があるので、曜日を決めて交代で使用することになった。掃除は私の部屋以外は、駆がやってくれる事が決まる。
 説明が終わった後、駆をダイニングテーブルの椅子に腰掛けさせると、私は対面キッチンに立ち、コーヒーメーカーの準備をする。キッチンには母が愛用していた大量の鍋や用具がそのまま残してあったが、駆が食事を作ってくれるなら整理しないでおいて正解だったと思う。
 コポコポとコーヒーメーカーが音を立て、徐々にコーヒーの香りが部屋中に広がっていく中、駆が42型テレビを置いているローボードの横に移動し、そこにそっと置いてあった私の両親の小さな遺影の前で正座をし手を合わせ挨拶している。本当に心根の優しい青年なのだとしみじみと見つめてしまった。
 コーヒーが出来上がったので、それをFQⅢのデフォルメキャラ達がプリントされたマグカップに入れて、ダイニングテーブルに戻っていた駆に差し出した。それを見た駆が大喜びする。
「あ、これコラボカフェの限定商品でしょ。欲しかったんだけど行き損なってたんだ! いいなあ」
「今日からいくらでも使って宜しくってよ」
私はおーほほほと高飛車に笑ってみせた。FQⅢに全く興味のない友達に、頼み込んでようやく予約できたカフェで買う事ができた限定品なのだ。
「あー、オレのキャラの真似してるし」
文句を言う駆。駆のFQⅢのキャラ・ランはいつもこんな喋り方をしているのだ。リアルな駆を知ってしまうと、そういうキャラを演じていたのも駆なりのストレス発散だったのかもしれないと感じてしまう。
 明日駆の荷物が届くことになっているがそれまでは実質何もできないので、コーヒーを飲みながらしばらく雑談をしていたのだが、ゲーム仲間たちに合流できたことを報告していなかったことを今更ながらに思い出した。
「ああ、LIMEでみんなに無事ランちゃんを回収できたこと伝えておかないと」
スマホをかばんから取り出したところ、駆も慌てて自分のスマホを胸ポケットから取り出しLIMEに書き込み始める。
ラン 『お陰様で無事アルファさんの御宅に身を寄せることができました。お騒がせして本当にすみませんでした!』
私  『ランちゃんは今日からうちの専属シェフです♪』
すると直後から皆からメッセージが入り始めた。良かったねというスタンプと共に
むーむー『ランちゃん、アルファちゃんに迷惑かけちゃダメだよ』
タッキー『今日から二人は同棲か、羨ましいぞ』
ひゅーひゅーというスタンプ付けてきた。
事務猫『タッキーさん、同棲じゃないですよ』
タッキー『似たようなもんじゃね?』
ラン 『オレ、ただの居候ですし』
私  『ランちゃんのパソコン届いたらFQⅢ再開すると思うけど、約束で私達一緒にログインすることになったので皆さんもその旨よろしくお願いします!』
むーむー・タッキー・事務猫『『『りょーかい』』』
 皆も駆がレイドバトルに参加した事がきっかけで単位を落としたことを気にしていたはずだ。節度を持ってプレイすると決めた方が、安心して楽しくプレイできるというものだ。