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第二百八十四話

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 まず透が提示したのは、前提条件の間違いであった。
「俺ら英雄(ヒーロー)はよ、基本的に誰かに手を差し伸べ、力一杯日の元へ連れ出す存在だ。だが……それを良しとしない存在は往々にして存在する。何かしらの事情があって出られない(チビ)だったり、そもそも日の元が嫌いな奴だって存在する。礼安とか究極の太陽人間だし、俺の義弟妹であるチビたちもそこまで抵抗のない存在だったから……そこがまず間違っていたんだ」
 あの二人は、そんなテンプレートな展開(すくい)を望むような存在ではない。そこが二人の間違いその一であった。
 なぜなら、多くの可能性を秘めたこのゲームを舞台にしている中で、ずっと一つの家に引きこもり、何をするわけでもなくただそこに居続けるだけである。このゲームのゲームマスターだから、あらゆる場所に行ってしまってはいざという時の報告が出来なくなる、という考えの元動いていたのだが……実際は違っていた。
 あの双子は、そもそもそういった解法を望んでいなかった。だからこそ、歩み寄るような選択をした二人が点数を引かれたのだ。
 次に透が提示したのは、手段(プラン)の間違いであった。
「俺らはあくまで子供として接していたからこそ、ああして不満になったのも……どうも分かっちまった。子供は基本的に子供として接するよりも、対等な人間として接した方が有効な(グッド)コミュニケーションになることもある。昨今の自意識向上の結果、それぞれを尊重してやる方が喜ぶパターンが存在する。都合のいい状況で子供になり切る存在は……あの山梨にいたけれどよ」
 個人の尊重を重視した考え。甘やかすことはせず、対等な存在として認識、接することが重要であった。今回に関してはそれが解法(せいかい)だと考えたのだ。
 ただ、そこからが問題であった。院にとって、これからの行動が分からなくなったのだ。透が示した内容が本当に正しいのなら、この何でもできるような世界で何をするのが正しいのか。
「決まってんだろ。本来なら終わりのない世界だが……既に決まったラスボス倒せば一区切り、そこが一端の終わりとするプレイヤーも多い。双子の認識があの家同様このゲーム内に現れているのなら、『おしまい』は存在するはずだぜ」

 二人はそのゲーム内の順路を辿るように、水入りバケツを用意したり、謎のゲートで別世界に飛びフライドポテトに似た黄色の(ロッド)を入手したり、妙な緑色の真珠(パール)を入手したり。至極真っ当なプレイ順序(ルート)を辿って行った。その間も変身は出来ない上に、ゲーム内の死がどういった判定なのか、そんな実験的行為を自分の身を用いて行えるほど、心臓に毛が生えた存在ではないために、互いに協力しながら収集していった。
 その間も双子からの邪魔は一切入らないために、「この世界を抜け出されることに関するデメリットはないのか」と疑問に思いながらも、実際の体で粛々とこなしていくのだった。
 そして、地上に戻った後二人は最後の世界に入るためのお決まりである、『おしまい』のためにも要塞座標の特定を行うことにした。
 だが、ここで予想だにしない邪魔が入った。これまでいたって普通のゲーム世界であったのだが、突如として道中がノイズ混じりの欠陥状態となっていたのだ。
 これには流石に、内に秘めた疑問を発露するしかなかった。
「――おい、どういうことだこれ? 今まで何ともなかったテクスチャが……バグってんのか?」
「いえ、それはちょっとおかしいのではないのでして? この世界はあくまで双子が生み出した世界であって、本当のゲーム世界ではありませんわ。実際、過去にゲーム世界に張り込んだ私が証明します」
「えっそんなことあったのかよ」
 思い返すは、入学前のゲーム内での修行。丙良主導で行われた死にゲーでのやけくそじみた特訓であったが、確かな知識と力、経験を得ることが出来た。礼安が経験したバグに関しては、教会神奈川支部の介入が原因となったために、確定事項として明言することはできないが、明確に殺す気で来ていない現状において、この異常は双子によるものではないと言いたいのだ。
「第一、これまでの中で本気で殺しに来るのなら、点数ゼロ(ゲージアウト)による即死を狙った方が確実なんです。何せ、私達変身できない状況で、ましてや右も左も分からない状況で殺すことなんて容易そのもの。ゲームマスターとして有効な殺す手段である点数ゼロがある限り、私たちは圧倒的に不利的状況のまま。でもそれをしないのには……何かしらの理由があると思うんです」
 だが、現時点で二人の中での正解は出ず。そのテクスチャの異常(エラー)はとりあえず見逃すことにしたのだ。
 それでも、特定途中の道中に増え続けるのは、まるで現実世界を見せるようなものの数々。怒っている誰かの姿や、来栖善吉の姿など。しかし、不思議なことに来栖善吉にまつわる映像が圧倒的に多かったのだ。それが、二人の中で答えを導き出す材料になりうるものだった。
 長い距離を歩き、やがて奇妙な緑色の目を投擲した結果地面に潜り込み、地下に要塞があることを確認した二人は、協力して地面を掘っていく。
 要塞に到着したか、と思いきやそこは……二人には見覚えが多少なりあるものに変わった。それは……何と五斂子社山梨本社のビル内であった。
 二人が救出に来た時そのままの、倒壊後のビルであるためにあらゆるものが取っ散らかったまま。だが、ここに辿り着いたということは――二人の仮定が正解なのだという確信が持てた。
 何も語らず、奇妙な目をはめ込み異世界へのゲートを開けるべく、ポータルを探し始める。ただ、ポータルの居場所も何となく在り処は分かっていた。その出どころは……二人の予想だと『社長室』にあると踏んでいた。



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 まず透が提示したのは、前提条件の間違いであった。
「俺ら|英雄《ヒーロー》はよ、基本的に誰かに手を差し伸べ、力一杯日の元へ連れ出す存在だ。だが……それを良しとしない存在は往々にして存在する。何かしらの事情があって出られない|奴《チビ》だったり、そもそも日の元が嫌いな奴だって存在する。礼安とか究極の太陽人間だし、俺の義弟妹であるチビたちもそこまで抵抗のない存在だったから……そこがまず間違っていたんだ」
 あの二人は、そんなテンプレートな|展開《すくい》を望むような存在ではない。そこが二人の間違いその一であった。
 なぜなら、多くの可能性を秘めたこのゲームを舞台にしている中で、ずっと一つの家に引きこもり、何をするわけでもなくただそこに居続けるだけである。このゲームのゲームマスターだから、あらゆる場所に行ってしまってはいざという時の報告が出来なくなる、という考えの元動いていたのだが……実際は違っていた。
 あの双子は、そもそもそういった解法を望んでいなかった。だからこそ、歩み寄るような選択をした二人が点数を引かれたのだ。
 次に透が提示したのは、|手段《プラン》の間違いであった。
「俺らはあくまで子供として接していたからこそ、ああして不満になったのも……どうも分かっちまった。子供は基本的に子供として接するよりも、対等な人間として接した方が|有効な《グッド》コミュニケーションになることもある。昨今の自意識向上の結果、それぞれを尊重してやる方が喜ぶパターンが存在する。都合のいい状況で子供になり切る存在は……あの山梨にいたけれどよ」
 個人の尊重を重視した考え。甘やかすことはせず、対等な存在として認識、接することが重要であった。今回に関してはそれが|解法《せいかい》だと考えたのだ。
 ただ、そこからが問題であった。院にとって、これからの行動が分からなくなったのだ。透が示した内容が本当に正しいのなら、この何でもできるような世界で何をするのが正しいのか。
「決まってんだろ。本来なら終わりのない世界だが……既に決まったラスボス倒せば一区切り、そこが一端の終わりとするプレイヤーも多い。双子の認識があの家同様このゲーム内に現れているのなら、『おしまい』は存在するはずだぜ」
 二人はそのゲーム内の順路を辿るように、水入りバケツを用意したり、謎のゲートで別世界に飛びフライドポテトに似た黄色の|棒《ロッド》を入手したり、妙な緑色の|真珠《パール》を入手したり。至極真っ当なプレイ|順序《ルート》を辿って行った。その間も変身は出来ない上に、ゲーム内の死がどういった判定なのか、そんな実験的行為を自分の身を用いて行えるほど、心臓に毛が生えた存在ではないために、互いに協力しながら収集していった。
 その間も双子からの邪魔は一切入らないために、「この世界を抜け出されることに関するデメリットはないのか」と疑問に思いながらも、実際の体で粛々とこなしていくのだった。
 そして、地上に戻った後二人は最後の世界に入るためのお決まりである、『おしまい』のためにも要塞座標の特定を行うことにした。
 だが、ここで予想だにしない邪魔が入った。これまでいたって普通のゲーム世界であったのだが、突如として道中がノイズ混じりの欠陥状態となっていたのだ。
 これには流石に、内に秘めた疑問を発露するしかなかった。
「――おい、どういうことだこれ? 今まで何ともなかったテクスチャが……バグってんのか?」
「いえ、それはちょっとおかしいのではないのでして? この世界はあくまで双子が生み出した世界であって、本当のゲーム世界ではありませんわ。実際、過去にゲーム世界に張り込んだ私が証明します」
「えっそんなことあったのかよ」
 思い返すは、入学前のゲーム内での修行。丙良主導で行われた死にゲーでのやけくそじみた特訓であったが、確かな知識と力、経験を得ることが出来た。礼安が経験したバグに関しては、教会神奈川支部の介入が原因となったために、確定事項として明言することはできないが、明確に殺す気で来ていない現状において、この異常は双子によるものではないと言いたいのだ。
「第一、これまでの中で本気で殺しに来るのなら、|点数ゼロ《ゲージアウト》による即死を狙った方が確実なんです。何せ、私達変身できない状況で、ましてや右も左も分からない状況で殺すことなんて容易そのもの。ゲームマスターとして有効な殺す手段である点数ゼロがある限り、私たちは圧倒的に不利的状況のまま。でもそれをしないのには……何かしらの理由があると思うんです」
 だが、現時点で二人の中での正解は出ず。そのテクスチャの|異常《エラー》はとりあえず見逃すことにしたのだ。
 それでも、特定途中の道中に増え続けるのは、まるで現実世界を見せるようなものの数々。怒っている誰かの姿や、来栖善吉の姿など。しかし、不思議なことに来栖善吉にまつわる映像が圧倒的に多かったのだ。それが、二人の中で答えを導き出す材料になりうるものだった。
 長い距離を歩き、やがて奇妙な緑色の目を投擲した結果地面に潜り込み、地下に要塞があることを確認した二人は、協力して地面を掘っていく。
 要塞に到着したか、と思いきやそこは……二人には見覚えが多少なりあるものに変わった。それは……何と五斂子社山梨本社のビル内であった。
 二人が救出に来た時そのままの、倒壊後のビルであるためにあらゆるものが取っ散らかったまま。だが、ここに辿り着いたということは――二人の仮定が正解なのだという確信が持てた。
 何も語らず、奇妙な目をはめ込み異世界へのゲートを開けるべく、ポータルを探し始める。ただ、ポータルの居場所も何となく在り処は分かっていた。その出どころは……二人の予想だと『社長室』にあると踏んでいた。