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謎の線

ー/ー



 私が小学校高学年の時、ド田舎に引っ越して砂防ダムの近くの古い教員住宅に住む事になった。押し入れに穴が空いてて土が見えるような酷く古い家。新築から移り住んだ私はとにかく嫌で仕方なかった。

 押し入れの穴から黒と黄色の縞模様がクッキリ目立つ、蜘蛛とバッタを合わせたような見たこともない大きめの虫がビョン!と飛び出て私に向かってきた時は柄にもなく叫んでしまったし、庭に面した窓に夜20cm以上あるんじゃないかという大の苦手の蛾が張り付いていたのは恐怖の記憶としてずっと忘れられない。

 築数十年のその家は1つ新しい部屋が増築されてて、私は初め両親と3人で新しい部屋を寝室にしてた。

 同じ時期に転校してきた子と親友になったんだけど、その子のお母さんがちょっと変わった人で、うちに来るなり「塩を置け」とか言ったらしい。信心深い母はそれから玄関に塩を置くようになった。

 寝室にしてた増築部屋の入り口は開き戸と(ふすま)があって、襖は兄の部屋と繋がっていた。ある日夜中に目を覚ますと、真っ暗な部屋の天井に蛍光色の黄緑のような細く真っ直ぐな線が光って伸びていた。
 襖の端から伸びてたから最初は兄の部屋から光が漏れてるのかと思ったけど、線はどこまでも横幅が変わらず細く真っ直ぐで、ボヤけたりもしない。1.5mくらいの長さだったかな。
 私は両親を起こして天井を見せた。そしたら両親も同じように見えたらしく、次の日からアレは何だったのかとしばらく話題になったけど2度と同じ線は見えなかったし何の痕跡もなかった。

 それから月日が流れて、増築部屋はピアノの練習部屋兼、祖母が遊びに来た時に泊める部屋になっていた。
 そうしたら祖母が2人とも違う日に違う場所で蛍光色の線を見たって言うんだよ。1回ずつ。
 1回は楽譜を入れる低い棚の端が光って見えたんだったかな。もう1回は天井の、私が見たのとは別の位置だった。
 位置的に兄の部屋からの光漏れ説は完全に否定されて、謎が深まった。
 蓄光で光るシールとかあるけど、兄はそんな悪戯をするようなタイプじゃない。もちろん両親も。

 結局、兄以外の5人が1回ずつ蛍光色の謎の線を見て、不思議だねと時々話題には上るけれどそれだけだった。


 その家には結局3年住んだ。中1の終わりに引っ越して出て行く時、近所の人たちがたくさん手伝いに来てくれた。
 作業も終わってガランとした居間で皆んなで車座みたいになって話をしていたら、なんだか気まずい感じで誰かオジサンが話し始めた。

「実はこの家は幽霊屋敷って呼ばれてるんだ」

 その家は教頭用の教員住宅だったんだけど、2人続けて教頭が首を吊ったらしい。みんな少しの間だけ申し訳なさそうにしていたけど、すぐに言ってスッキリしたみたいになってた気がする。ずっと言いたくて仕方なかったんだろうね。
 皆んなよく3年も隠しておけたよね。子供たちには言ってなかったのかな?

 私も含めて家族みんな霊感のカケラもなかったから、あの線が幽霊の精一杯だったのかもしれない。
 あ、でもあの家に住んでる時はいい思い出が一つもないや。もしかしたら霊障かな?閉鎖的な田舎だからそのせいだと思ってたけど、そんな事もあるかもしれない。


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 私が小学校高学年の時、ド田舎に引っ越して砂防ダムの近くの古い教員住宅に住む事になった。押し入れに穴が空いてて土が見えるような酷く古い家。新築から移り住んだ私はとにかく嫌で仕方なかった。
 押し入れの穴から黒と黄色の縞模様がクッキリ目立つ、蜘蛛とバッタを合わせたような見たこともない大きめの虫がビョン!と飛び出て私に向かってきた時は柄にもなく叫んでしまったし、庭に面した窓に夜20cm以上あるんじゃないかという大の苦手の蛾が張り付いていたのは恐怖の記憶としてずっと忘れられない。
 築数十年のその家は1つ新しい部屋が増築されてて、私は初め両親と3人で新しい部屋を寝室にしてた。
 同じ時期に転校してきた子と親友になったんだけど、その子のお母さんがちょっと変わった人で、うちに来るなり「塩を置け」とか言ったらしい。信心深い母はそれから玄関に塩を置くようになった。
 寝室にしてた増築部屋の入り口は開き戸と|襖《ふすま》があって、襖は兄の部屋と繋がっていた。ある日夜中に目を覚ますと、真っ暗な部屋の天井に蛍光色の黄緑のような細く真っ直ぐな線が光って伸びていた。
 襖の端から伸びてたから最初は兄の部屋から光が漏れてるのかと思ったけど、線はどこまでも横幅が変わらず細く真っ直ぐで、ボヤけたりもしない。1.5mくらいの長さだったかな。
 私は両親を起こして天井を見せた。そしたら両親も同じように見えたらしく、次の日からアレは何だったのかとしばらく話題になったけど2度と同じ線は見えなかったし何の痕跡もなかった。
 それから月日が流れて、増築部屋はピアノの練習部屋兼、祖母が遊びに来た時に泊める部屋になっていた。
 そうしたら祖母が2人とも違う日に違う場所で蛍光色の線を見たって言うんだよ。1回ずつ。
 1回は楽譜を入れる低い棚の端が光って見えたんだったかな。もう1回は天井の、私が見たのとは別の位置だった。
 位置的に兄の部屋からの光漏れ説は完全に否定されて、謎が深まった。
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 結局、兄以外の5人が1回ずつ蛍光色の謎の線を見て、不思議だねと時々話題には上るけれどそれだけだった。
 その家には結局3年住んだ。中1の終わりに引っ越して出て行く時、近所の人たちがたくさん手伝いに来てくれた。
 作業も終わってガランとした居間で皆んなで車座みたいになって話をしていたら、なんだか気まずい感じで誰かオジサンが話し始めた。
「実はこの家は幽霊屋敷って呼ばれてるんだ」
 その家は教頭用の教員住宅だったんだけど、2人続けて教頭が首を吊ったらしい。みんな少しの間だけ申し訳なさそうにしていたけど、すぐに言ってスッキリしたみたいになってた気がする。ずっと言いたくて仕方なかったんだろうね。
 皆んなよく3年も隠しておけたよね。子供たちには言ってなかったのかな?
 私も含めて家族みんな霊感のカケラもなかったから、あの線が幽霊の精一杯だったのかもしれない。
 あ、でもあの家に住んでる時はいい思い出が一つもないや。もしかしたら霊障かな?閉鎖的な田舎だからそのせいだと思ってたけど、そんな事もあるかもしれない。