第33話 鈍感勇者と、新たな旅の始まり(最終話)
ー/ー 長く、険しい道のりだった。
だが、一行はついに、魔王城の前に立っていた。その巨大な扉は、これまでの旅のすべてを物語るかのように、威圧的なオーラを放っている。
「ついに来たな…」
レオンが、感慨深げにつぶやいた。システィナもまた、いつもの余裕を失い、真剣な表情でその扉を見つめている。ルナ、セレナ、フィリアは、緊張しながらも、固い決意の眼差しをカイに向けていた。
カイは、三人のヒロインたちの視線を受け、そしてレオンとシスティナへと向き直る。彼の顔には、もう迷いや混乱の色はなかった。
「みんな…」
カイは、全員をまっすぐに見据え、強く、はっきりとした声で宣言した。
「俺は、みんなと魔王を倒したい。そして…みんなと、この旅を続けたい!」
その言葉に、ルナ、セレナ、フィリアは安堵と喜びに満ちた表情を浮かべた。彼が誰か一人を選ぶのではなく、全員との「絆」を選んだことを理解したのだ。
「まったく、本当に困った勇者だわ」
システィナは呆れたように微笑む。
「それでも、俺たちの旅は終わらない。勇者カイ…いや、俺たちのリーダー…!さあ、行こう!」
レオンは、カイの背中を力強く押した。
「うん!」
カイは、大きく頷くと、ルナとセレナ、フィリア、レオン、システィナ、そして彼自身、6人全員で魔王城の扉へと手をかけた。
ギィ…という重々しい音を立てて、扉が開く。そこには、魔王の待つ、最後の戦いの舞台が広がっていた。
◇◆◇◆◇
魔王討伐後、世界に平和が戻った。
レオンは王宮に戻り、システィナとの関係を「普通の恋人」として進めたいと願う。彼は王宮の庭園で、読書をしていたシスティナを見つけ、意を決して近づいた。
「システィナ…」
「はっは〜ん、どうしたのレオン。まさか、お尻が見たくなったのかしら?」
「違う!…あの、真面目な話なんだ」
レオンは、少し顔を赤らめながら、真剣なまなざしでシスティナを見つめた。
「もう…『尻』で僕をからかうのは、やめてくれないか。僕たち、これからは普通の恋人として…普通の関係を築いていきたいんだ」
システィナは、一瞬、驚いた顔をする。しかし、すぐにいつものように余裕の笑みを浮かべた。
「わかってるわよ、仕方ないわね。あなたの真剣な顔を見たら、私も少しは真面目に考えないと…」
レオンは喜び、システィナにキスをする。
システィナは彼のキスを受け入れながらも、心の中で「でも、たまにはからかってあげないと、つまらないわよね」と密かに企んでいるのだった。
「じゃぁ、この足で式場を見に行こう!!!」
「ちょ、ちょっと、それは、心の準備がーーーーーーーー!!!」
自称、ラブコメ演出家システィナ。彼女は自分自身のラブコメは、全くコントロールできていなかった。
一方、カイはルナ、セレナ、フィリアと共に旅を続けていた。
新たな旅の目的は、世界各地に点在する「伝説の食材」を探すことだった。
その日の夕食後、満天の星空の下、フィリアが焚き火のそばに座るカイの隣にちょこんと腰を下ろした。
「ねぇ、カイ。そろそろ、式のこととかも考えてよ」
「え? 式?」
カイは、食べていた焼き芋を落としそうになった。フィリアの言葉は、彼の想像を遥かに超えたものだった。
「だって、私たち、結婚するんでしょ? 伝説の食材探しもいいけど、お嫁さんたちを待たせるわけにはいかないよ」
フィリアの無邪気な言葉に、ルナとセレナも身を乗り出してきた。
「ちょっとフィリア! 勝手に話を進めないでよ! まだカイから何も聞いてないんだから!」
ルナが不機嫌そうに言うと、セレナもそれに続いた。
「そうですわ、フィリア。いくらなんでも、早すぎます」
カイは、二人の言葉に安堵したのも束の間、フィリアが放った言葉に再び凍り付いた。
「でも、カイは三人の中から一人なんて選べないでしょ? 大丈夫だよ、この世界は一夫多妻制なんだから! 勇者なんだから、何人もお嫁さんがいていいんだよ!」
「え…!? 一夫多妻制!?」
カイは、耳慣れない言葉に目を丸くした。
「そうよ!その中で、第一婦人は私ですわ!」
セレナは、聖女の威厳をかなぐり捨てて、ルナを睨みつけた。
「ふざけないで!どう考えても、私でしょ!私はあんたより、先にカイと出会ったのよ!」
ルナもまた、獣人の本能をむき出しにして、セレナに食ってかかる。
「ふふふ…二人とも、何を言っているんですか? この世界では、一番最初に結婚を申し込んだ人が、第一婦人になるんですよ!」
フィリアがそう言って、カイの腕に抱き着くと、ルナとセレナは顔面蒼白になった。
「え…っ、いつの間に!?」
「カイ!早く私のこと、お嫁さんにして!」
フィリアの無邪気な一言に、カイはまたしても混乱の渦に叩き込まれる。
「えぇ!? なんでそんな話になってるんだ…!?」
カイは、彼女たちの罵り合いに口を挟むこともできず、ただただ戸惑うばかりだった。彼の叫び声が、平和になった世界に響き渡る。
魔王を倒した勇者たちの旅は、これからもずっと続く。
世界ではいつしか、彼のことをこう呼ぶようになっていた。
――『鈍感勇者』、と。
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
長く、険しい道のりだった。
だが、一行はついに、魔王城の前に立っていた。その巨大な扉は、これまでの旅のすべてを物語るかのように、威圧的なオーラを放っている。
「ついに来たな…」
レオンが、感慨深げにつぶやいた。システィナもまた、いつもの余裕を失い、真剣な表情でその扉を見つめている。ルナ、セレナ、フィリアは、緊張しながらも、固い決意の眼差しをカイに向けていた。
カイは、三人のヒロインたちの視線を受け、そしてレオンとシスティナへと向き直る。彼の顔には、もう迷いや混乱の色はなかった。
「みんな…」
カイは、全員をまっすぐに見据え、強く、はっきりとした声で宣言した。
「俺は、みんなと魔王を倒したい。そして…みんなと、この旅を続けたい!」
その言葉に、ルナ、セレナ、フィリアは安堵と喜びに満ちた表情を浮かべた。彼が誰か一人を選ぶのではなく、全員との「絆」を選んだことを理解したのだ。
「まったく、本当に困った勇者だわ」
システィナは呆れたように微笑む。
「それでも、俺たちの旅は終わらない。勇者カイ…いや、俺たちのリーダー…!さあ、行こう!」
レオンは、カイの背中を力強く押した。
「うん!」
カイは、大きく頷くと、ルナとセレナ、フィリア、レオン、システィナ、そして彼自身、6人全員で魔王城の扉へと手をかけた。
ギィ…という重々しい音を立てて、扉が開く。そこには、魔王の待つ、最後の戦いの舞台が広がっていた。
◇◆◇◆◇
魔王討伐後、世界に平和が戻った。
レオンは王宮に戻り、システィナとの関係を「普通の恋人」として進めたいと願う。彼は王宮の庭園で、読書をしていたシスティナを見つけ、意を決して近づいた。
「システィナ…」
「はっは〜ん、どうしたのレオン。まさか、お尻が見たくなったのかしら?」
「違う!…あの、真面目な話なんだ」
レオンは、少し顔を赤らめながら、真剣なまなざしでシスティナを見つめた。
「もう…『尻』で僕をからかうのは、やめてくれないか。僕たち、これからは普通の恋人として…普通の関係を築いていきたいんだ」
システィナは、一瞬、驚いた顔をする。しかし、すぐにいつものように余裕の笑みを浮かべた。
「わかってるわよ、仕方ないわね。あなたの真剣な顔を見たら、私も少しは真面目に考えないと…」
レオンは喜び、システィナにキスをする。
システィナは彼のキスを受け入れながらも、心の中で「でも、たまにはからかってあげないと、つまらないわよね」と密かに企んでいるのだった。
「じゃぁ、この足で式場を見に行こう!!!」
「ちょ、ちょっと、それは、心の準備がーーーーーーーー!!!」
自称、ラブコメ演出家システィナ。彼女は自分自身のラブコメは、全くコントロールできていなかった。
一方、カイはルナ、セレナ、フィリアと共に旅を続けていた。
新たな旅の目的は、世界各地に点在する「伝説の食材」を探すことだった。
その日の夕食後、満天の星空の下、フィリアが焚き火のそばに座るカイの隣にちょこんと腰を下ろした。
「ねぇ、カイ。そろそろ、式のこととかも考えてよ」
「え? 式?」
カイは、食べていた焼き芋を落としそうになった。フィリアの言葉は、彼の想像を遥かに超えたものだった。
「だって、私たち、結婚するんでしょ? 伝説の食材探しもいいけど、お嫁さんたちを待たせるわけにはいかないよ」
フィリアの無邪気な言葉に、ルナとセレナも身を乗り出してきた。
「ちょっとフィリア! 勝手に話を進めないでよ! まだカイから何も聞いてないんだから!」
ルナが不機嫌そうに言うと、セレナもそれに続いた。
「そうですわ、フィリア。いくらなんでも、早すぎます」
カイは、二人の言葉に安堵したのも束の間、フィリアが放った言葉に再び凍り付いた。
「でも、カイは三人の中から一人なんて選べないでしょ? 大丈夫だよ、この世界は一夫多妻制なんだから! 勇者なんだから、何人もお嫁さんがいていいんだよ!」
「え…!? 一夫多妻制!?」
カイは、耳慣れない言葉に目を丸くした。
「そうよ!その中で、第一婦人は私ですわ!」
セレナは、聖女の威厳をかなぐり捨てて、ルナを睨みつけた。
「ふざけないで!どう考えても、私でしょ!私はあんたより、先にカイと出会ったのよ!」
ルナもまた、獣人の本能をむき出しにして、セレナに食ってかかる。
「ふふふ…二人とも、何を言っているんですか? この世界では、一番最初に結婚を申し込んだ人が、第一婦人になるんですよ!」
フィリアがそう言って、カイの腕に抱き着くと、ルナとセレナは顔面蒼白になった。
「え…っ、いつの間に!?」
「カイ!早く私のこと、お嫁さんにして!」
フィリアの無邪気な一言に、カイはまたしても混乱の渦に叩き込まれる。
「えぇ!? なんでそんな話になってるんだ…!?」
カイは、彼女たちの罵り合いに口を挟むこともできず、ただただ戸惑うばかりだった。彼の叫び声が、平和になった世界に響き渡る。
魔王を倒した勇者たちの旅は、これからもずっと続く。
世界ではいつしか、彼のことをこう呼ぶようになっていた。
――『鈍感勇者』、と。