キーホールが話し出すまではガヤガヤと騒いでいた男たちも、いつのまにかうっとりとした表情で彼の夢の話に耳を傾けていた。
みんな、ここではない別の世界に想いを馳せているようだった。
太陽の光が射した、寒さの無い世界。
この世界に生きる者なら誰もが一度は憧れる夢だ。
「どうだい、ジョン。これが俺の夢さ」
キーホールは僕の方を向き、自慢げにそう言った。
「うん。とても素敵だと思うよ」
「だろ? じゃあ次はお前の番だ。お前の夢を聞かせてくれ」
「僕の夢?」
「そうだよ。何でもいい。お前の思い浮かべる、最高な風景を教えてくれよ」
みんなの視線が、一斉に僕の方を向いた。
瞳に期待が込められている。
この人間は、どんな夢を抱いているのだろう。
どんな希望があるのだろう。
彼らはそんな興味でもって、僕を見つめていた。
そうやって僕という人間の価値を、はかろうとしているみたいだった。
僕はそれをなんとか話しだそうとした。
けれど、喉から出ていくのは乾いた呼吸の音だけだった。
何もない。何もないのだ。
僕には、みんなに話せるような夢がない。
沈黙が長くなるにつれて、テントの中に失望がじんわりと広がっていくのがわかった。
「……いきなりは話せねぇよな。悪かったよ、ジョン。もし何か思いついたら、その時に教えてくれよ」
キーホールはそう言ってくれたが、その夜、僕が言葉を発する事はもうなかった。オーガニック・ティーを腹に流し込みながら、みんなの夢の話を聞いた。どうしてか、誰の話も魅力的には思えなかった。