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044

ー/ー



 おお、そういえば!

 長尾伊都は自室で少々素っ頓狂な声を上げた。

 話の切れ間で慣用的に発したのではなく、本当に『そういえば』何かを忘却の淵から引き揚げたのであろう。

 ここはヨネプロビル内にある長尾伊都の自室である。

 その部屋はオフィスエリアにあり、『戦略的マネジメント担当部局統括部長』としての拠点であった。

 今はグループセレクタリーではなく、個人秘書としての立場の兵藤千里とタレントとしての仕事の打ち合わせをしているところだった。

 伊都にとっては気軽に外部を遮断出来る場所なのである。

「そういえば、アレだな。SNOWの後任を探さないとな」
「え? ええー、なるほど」

 千里はぎこちなく表情筋を緩ませながら、有耶無耶なことを言う。

「? いや、どっちみち情報部は必要だぞ? ……ああ、いや、別にずっとというわけでもない。しかし、あいつらがバビレコ新レーベルをやっている間くらいは一時的にでも代替メンバーは必要だろう? どれくらいの期間になるかはわからんが」

「まあ、なんといいますか」

「いや、言いたいことはわかるぞ? 引き継ぎも厄介だし、そもそも信のおける人材を探すのも難しい。ただ、あいつらみたいなガチ情報部でなくともだな、とりあえずオープンソースの情報をまとめるだけでも専門の部署が欲しいところだ」

「はあ、まあ、その」

「ああ、そうか。広報を拡充する手もあるか。現実的にはそういう路線かな。しかしその、なんだな、それだと私の手足のように、というわけにはいかないからな……。少し塩梅が。な?」

「伊都様の仰っておられることはよくわかるのですが」

「いや、わかる。わかるぞ。お前の言いたいことは。正直私も、あいつらを良いように使ってきた面はある。それに対しては充分反省はしているのだ。なかなかそうは見えんかもしれんが」

 伊都はシリアスな面持ちを作り、咳払いした。

「そこは私も板挟みだ。あいつらにアイドルとして成功して欲しいという気持ちは勿論あるし、かといって情報部としての仕事を続けて欲しいという気持ちも正直かなりある。あまり言いたくはないが、かなり使える方だからな。時々言う事をきかんという欠点はあるものの」

「お、お優しいのですね」
「いやいやいや……はっはっは」 

 照れ隠しなのか、大仰に手を振って呵々大笑する。伊都は黒い革張りの椅子に座り直した。机の上に飾ってある地球儀を手すさびに軽く回す。

「しかし現在、現実問題として、なんだったかな? そうそう〝情報資料室〟の行っていた業務に穴が空いているのは事実だろう? それに、あの四季真希の事件も調べていたはず。アレもなかなか興味深いケースだが、中途で凍結させるならそれなりの処置は必要だろうよ。お前一人ではキツいのではないか?」

「その……まだ続けてます」
「なんて?」

 雨後の滝のように滔々と流れていた伊都の弁舌が止まった。

「まだ続けてらっしゃいますよ、SNOWのみなさん。……通常業務もL⇆Right! の調査も」


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 おお、そういえば!
 長尾伊都は自室で少々素っ頓狂な声を上げた。
 話の切れ間で慣用的に発したのではなく、本当に『そういえば』何かを忘却の淵から引き揚げたのであろう。
 ここはヨネプロビル内にある長尾伊都の自室である。
 その部屋はオフィスエリアにあり、『戦略的マネジメント担当部局統括部長』としての拠点であった。
 今はグループセレクタリーではなく、個人秘書としての立場の兵藤千里とタレントとしての仕事の打ち合わせをしているところだった。
 伊都にとっては気軽に外部を遮断出来る場所なのである。
「そういえば、アレだな。SNOWの後任を探さないとな」
「え? ええー、なるほど」
 千里はぎこちなく表情筋を緩ませながら、有耶無耶なことを言う。
「? いや、どっちみち情報部は必要だぞ? ……ああ、いや、別にずっとというわけでもない。しかし、あいつらがバビレコ新レーベルをやっている間くらいは一時的にでも代替メンバーは必要だろう? どれくらいの期間になるかはわからんが」
「まあ、なんといいますか」
「いや、言いたいことはわかるぞ? 引き継ぎも厄介だし、そもそも信のおける人材を探すのも難しい。ただ、あいつらみたいなガチ情報部でなくともだな、とりあえずオープンソースの情報をまとめるだけでも専門の部署が欲しいところだ」
「はあ、まあ、その」
「ああ、そうか。広報を拡充する手もあるか。現実的にはそういう路線かな。しかしその、なんだな、それだと私の手足のように、というわけにはいかないからな……。少し塩梅が。な?」
「伊都様の仰っておられることはよくわかるのですが」
「いや、わかる。わかるぞ。お前の言いたいことは。正直私も、あいつらを良いように使ってきた面はある。それに対しては充分反省はしているのだ。なかなかそうは見えんかもしれんが」
 伊都はシリアスな面持ちを作り、咳払いした。
「そこは私も板挟みだ。あいつらにアイドルとして成功して欲しいという気持ちは勿論あるし、かといって情報部としての仕事を続けて欲しいという気持ちも正直かなりある。あまり言いたくはないが、かなり使える方だからな。時々言う事をきかんという欠点はあるものの」
「お、お優しいのですね」
「いやいやいや……はっはっは」 
 照れ隠しなのか、大仰に手を振って呵々大笑する。伊都は黒い革張りの椅子に座り直した。机の上に飾ってある地球儀を手すさびに軽く回す。
「しかし現在、現実問題として、なんだったかな? そうそう〝情報資料室〟の行っていた業務に穴が空いているのは事実だろう? それに、あの四季真希の事件も調べていたはず。アレもなかなか興味深いケースだが、中途で凍結させるならそれなりの処置は必要だろうよ。お前一人ではキツいのではないか?」
「その……まだ続けてます」
「なんて?」
 雨後の滝のように滔々と流れていた伊都の弁舌が止まった。
「まだ続けてらっしゃいますよ、SNOWのみなさん。……通常業務もL⇆Right! の調査も」