第54話 信頼への一歩 -3

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共闘訓練を終え、親密そうに言葉を交わすユウキとヴァルキリーの姿を、リアは遠くから見つめていた。

その瞳には、ユウキとヴァルキリーの間に生まれた、自分には入り込めない絆に対する、かすかな不安が宿っている。

「…ユウキ」

リアは、小さく、しかし悲しみを込めた声で呟いた。ユウキが自分以外の誰かと、あれほど親しげに話しているのを見たのは、初めてだった。

彼の故郷の悲劇を共有し、共感し合うヴァルキリーは、リアにとって、ユウキの心を奪ってしまう存在に思えた。







その様子を見たザラは、静かにリアの隣に立った。
彼女もまた、ユウキの成長と、ヴァルキリーとの間に生まれた絆を、複雑な感情で見つめていた。

「リア、心配するな」

ザラは、そう告げると、リアの肩にそっと手を置いた。

「ユウキが、ヴァルキリーに絆されたって、そんなことで負けるな。お前は、この世界で、ユウキを支える、ただ一人の存在だ。あいつは、お前のことを、誰よりも信じている。だから…」

ザラは、そう告げると、リアを力強く抱きしめた。

「お前の存在は、誰にも代えられない。ユウキは、リアがいないと力を発揮できないんだぞ」

ザラの言葉に、リアの心に、再び、強い光が宿った。彼女は、ザラの温かい言葉と手に、自分にしかできないことがあるのだと、改めて実感した。

「うん…ザラ。ありがとう」

リアは、そう呟くと、ザラに微笑んだ。その瞳には、不安だけでなく、ユウキを信じ、共に戦い続けるという、強い決意が宿っていた。

「それにしても…」

リアは、ふと、ザラの顔を見上げた。

「ザラ。ユウキのこと、見方が変わったんじゃない?」

リアの言葉に、ザラは一瞬、言葉に詰まった。彼女は、照れくさそうに顔を背け、小さく、しかしはっきりとした声で答えた。

「フン…。別に変わってねぇよ。ただ…谷を襲った魔竜の群れから、お前を守るために必死になってたあいつの姿を、私はずっと見てきた。それに、ジェイのことも…あいつは、俺たちと同じくらい、辛い思いをしている。だから…」

ザラは、そう告げると、言葉を濁した。彼女の顔は、ほんのりと赤くなっている。

「だから、少しは…認めてやってるんだよ。あいつが、お前を守るに足る存在だってことくらいはな」

ザラの言葉に、リアは、嬉しそうに微笑んだ。彼女は、ザラがユウキを少しずつ受け入れていることに、心から安堵していた。





◇◆◇◆◇



訓練を終えたルナは、ソフィアと共に訓練場の片隅に座っていた。

ルナの瞳はまだ赤く、ジェイの形見であるドッグタグを握りしめている。ソフィアは、そんなルナに温かい飲み物を差し出した。

「ルナ。無理はしなくていいわ。ジェイの死は、私たちにとって、あまりにも大きすぎる…」

ソフィアの声は、冷たく、しかし、その瞳には、ルナを案じる色が混じっていた。

「ソフィア…」

「ジェイは、私たちに何も言わずに逝った。それは、彼が、私たちを悲しませたくなかったからだと思う。彼が私たちに託したものは、ドッグタグだけじゃない。彼が命をかけて守ろうとした、この世界の未来なんだよ」

ソフィアの言葉に、ルナはハッとした。彼女は、ジェイの死を悲しむばかりで、彼が残した「未来」について、何も考えていなかった。

「ソフィア…。私…ジェイ先輩の最期の言葉を、まだ受け止めきれない…」

ルナは、そう呟くと、ドッグタグを強く握りしめた。ソフィアは、ルナの手を優しく握った。

「ルナ。ジェイは、あなたを愛していた。本人が鈍感すぎて全然気が付いてなかったみたいだけどね…」

「ソフィア、あなた気が付いてたの?」

「バカね、親友をなめんじゃないわよ。それとあんたの気持ちもわかってたからさ、わざと距離を取ってた」

「…もう、バレバレか…」

「ふふ、彼の最期の言葉は、あなたへの愛の告白だった。彼の想いを、無駄にしちゃダメ。ジェイが守りたかったこの世界を、今度は私たちが守るんだ」

ソフィアの言葉に、ルナの瞳から、再び大粒の涙が溢れ出した。
だが、その涙は、悲しみだけでなく、ジェイへの感謝と、そして、彼への深い愛情が混じっていた。

「ソフィア…ありがとう」

ルナは、そう呟くと、ソフィアに抱きついた。ソフィアは、ルナの背中を優しくさすり、静かに続けた。

「私たちは、ジェイの遺志を継ぐ。そして、アビスという闇の勢力を打倒する。それが、ジェイへの、私たちなりの弔いなのよ」

ルナは、ソフィアの言葉に、力強く頷いた。彼女は、ジェイの死を乗り越え、ソフィアと共に、再び戦場に立つことを決意した。





そして、その日の夕方、ルナはソフィアと共に、訓練場へとやってきた。彼女の瞳には、まだ悲しみが宿っていたが、その奥に、新たな決意の光が灯っていた。

「ジェイ…見てて。私たち、絶対に負けないから!」

ルナは、そう呟くと、ソフィアと共に、ゲイルのコクピットに乗り込んだ。


彼女たちの心に、ジェイの最期の言葉が、力強く響いていた。





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共闘訓練を終え、親密そうに言葉を交わすユウキとヴァルキリーの姿を、リアは遠くから見つめていた。
その瞳には、ユウキとヴァルキリーの間に生まれた、自分には入り込めない絆に対する、かすかな不安が宿っている。
「…ユウキ」
リアは、小さく、しかし悲しみを込めた声で呟いた。ユウキが自分以外の誰かと、あれほど親しげに話しているのを見たのは、初めてだった。
彼の故郷の悲劇を共有し、共感し合うヴァルキリーは、リアにとって、ユウキの心を奪ってしまう存在に思えた。
その様子を見たザラは、静かにリアの隣に立った。
彼女もまた、ユウキの成長と、ヴァルキリーとの間に生まれた絆を、複雑な感情で見つめていた。
「リア、心配するな」
ザラは、そう告げると、リアの肩にそっと手を置いた。
「ユウキが、ヴァルキリーに絆されたって、そんなことで負けるな。お前は、この世界で、ユウキを支える、ただ一人の存在だ。あいつは、お前のことを、誰よりも信じている。だから…」
ザラは、そう告げると、リアを力強く抱きしめた。
「お前の存在は、誰にも代えられない。ユウキは、リアがいないと力を発揮できないんだぞ」
ザラの言葉に、リアの心に、再び、強い光が宿った。彼女は、ザラの温かい言葉と手に、自分にしかできないことがあるのだと、改めて実感した。
「うん…ザラ。ありがとう」
リアは、そう呟くと、ザラに微笑んだ。その瞳には、不安だけでなく、ユウキを信じ、共に戦い続けるという、強い決意が宿っていた。
「それにしても…」
リアは、ふと、ザラの顔を見上げた。
「ザラ。ユウキのこと、見方が変わったんじゃない?」
リアの言葉に、ザラは一瞬、言葉に詰まった。彼女は、照れくさそうに顔を背け、小さく、しかしはっきりとした声で答えた。
「フン…。別に変わってねぇよ。ただ…谷を襲った魔竜の群れから、お前を守るために必死になってたあいつの姿を、私はずっと見てきた。それに、ジェイのことも…あいつは、俺たちと同じくらい、辛い思いをしている。だから…」
ザラは、そう告げると、言葉を濁した。彼女の顔は、ほんのりと赤くなっている。
「だから、少しは…認めてやってるんだよ。あいつが、お前を守るに足る存在だってことくらいはな」
ザラの言葉に、リアは、嬉しそうに微笑んだ。彼女は、ザラがユウキを少しずつ受け入れていることに、心から安堵していた。
◇◆◇◆◇
訓練を終えたルナは、ソフィアと共に訓練場の片隅に座っていた。
ルナの瞳はまだ赤く、ジェイの形見であるドッグタグを握りしめている。ソフィアは、そんなルナに温かい飲み物を差し出した。
「ルナ。無理はしなくていいわ。ジェイの死は、私たちにとって、あまりにも大きすぎる…」
ソフィアの声は、冷たく、しかし、その瞳には、ルナを案じる色が混じっていた。
「ソフィア…」
「ジェイは、私たちに何も言わずに逝った。それは、彼が、私たちを悲しませたくなかったからだと思う。彼が私たちに託したものは、ドッグタグだけじゃない。彼が命をかけて守ろうとした、この世界の未来なんだよ」
ソフィアの言葉に、ルナはハッとした。彼女は、ジェイの死を悲しむばかりで、彼が残した「未来」について、何も考えていなかった。
「ソフィア…。私…ジェイ先輩の最期の言葉を、まだ受け止めきれない…」
ルナは、そう呟くと、ドッグタグを強く握りしめた。ソフィアは、ルナの手を優しく握った。
「ルナ。ジェイは、あなたを愛していた。本人が鈍感すぎて全然気が付いてなかったみたいだけどね…」
「ソフィア、あなた気が付いてたの?」
「バカね、親友をなめんじゃないわよ。それとあんたの気持ちもわかってたからさ、わざと距離を取ってた」
「…もう、バレバレか…」
「ふふ、彼の最期の言葉は、あなたへの愛の告白だった。彼の想いを、無駄にしちゃダメ。ジェイが守りたかったこの世界を、今度は私たちが守るんだ」
ソフィアの言葉に、ルナの瞳から、再び大粒の涙が溢れ出した。
だが、その涙は、悲しみだけでなく、ジェイへの感謝と、そして、彼への深い愛情が混じっていた。
「ソフィア…ありがとう」
ルナは、そう呟くと、ソフィアに抱きついた。ソフィアは、ルナの背中を優しくさすり、静かに続けた。
「私たちは、ジェイの遺志を継ぐ。そして、アビスという闇の勢力を打倒する。それが、ジェイへの、私たちなりの弔いなのよ」
ルナは、ソフィアの言葉に、力強く頷いた。彼女は、ジェイの死を乗り越え、ソフィアと共に、再び戦場に立つことを決意した。
そして、その日の夕方、ルナはソフィアと共に、訓練場へとやってきた。彼女の瞳には、まだ悲しみが宿っていたが、その奥に、新たな決意の光が灯っていた。
「ジェイ…見てて。私たち、絶対に負けないから!」
ルナは、そう呟くと、ソフィアと共に、ゲイルのコクピットに乗り込んだ。
彼女たちの心に、ジェイの最期の言葉が、力強く響いていた。