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第50話 伝説機、新たなる仲間 -2

ー/ー



その日の夜、ユウキはアークライトの格納庫に、鹵獲されたヴァルハラが置かれているのを確認した。ヴァルキリーが語った真実と、ヴァルハラの存在が、彼の心を支配していた。

「ヴァルハラ…この機体も、アビスが狙っているのか…」

ユウキは、そう呟くと、ヴァルハラの傍らに立つヴァルキリーに視線を向けた。

彼女の表情は相変わらず冷徹だが、その瞳の奥には、故郷を失った悲しみが宿っているのが見えた。

その時、リアがユウキの隣に立った。

「ユウキ…ヴァルキリーさんが、僕たちに語ってくれた真実。アビスが狙っている伝説機は、アストレイアとヴァルハラだけじゃないわ。アクエリアス公国のオケアノス、竜骨山脈の部族連合のバハムート。そして…自由同盟に封印されている伝説機アルテミス…」

リアは、静かにそう告げた。

「アルテミス…?自由同盟にも、伝説機が…?」

ユウキは、驚きを隠せない。彼は、ヴァルキリーが語った真実が、すべて一つの線で繋がっていくのを感じた。

「ええ。アルテミスは、幻影の森の奥深くに封印されていると、祖母から聞かされた。でも、その封印を解く方法は、誰にも分からない。アビスは、その封印を解くための鍵を探しているのかもしれない」

リアの言葉に、ユウキの心に、新たな使命が芽生えた。

「…アルテミス…僕たちが、その鍵を探さなければならないのか…」

ユウキは、そう呟くと、ヴァルキリーに視線を向けた。彼女の瞳には、冷徹さだけでなく、故郷を失った悲しみと、強い決意が宿っているのが見えた。

「ヴァルキリー…君は、この世界の運命を変える存在だ。そして、私も、この世界の運命を変える存在だ。君と私は、故郷を失った悲劇を背負っている。だが、その悲しみを乗り越え、この世界で新たな希望を見出そう」

ユウキは、心の中で、ヴァルキリーに語りかけた。

彼の瞳には、怒りや悲しみだけでなく、故郷を失った悲劇を乗り越え、この世界で新たな希望を見出そうとする、強い光が宿っていた。







◇◆◇◆◇




翌日、ヴァルキリーは厳重な警備のもと、アークライトの訓練場に姿を現した。彼女の姿を遠巻きに見つめる竜騎士中隊の面々の中には、敵意を隠せない者もいた。

ジェイを死に追いやった張本人である彼女を、仲間として受け入れることには、大きな抵抗があった。

しかし、マリア少佐の命令は絶対であり、彼らは複雑な心境で彼女の動向を見守った。

「ヴァルキリー少佐、今日から貴方は、我々竜騎士中隊と共に訓練を行います。幻晶機ヴァルハラは、現在技術部で解析中です。代わりにこのゲイルを貴方に貸与します」

ディオンが淡々と告げる。ヴァルキリーは、無言で頷くと、訓練用の幻晶機ゲイルのコクピットに乗り込んだ。その機体は、カイトが普段搭乗しているものと同じ旧式機だ。

訓練場の観客席には、竜騎士中隊のメンバーだけでなく、自由同盟のエースであるカイト、そしてアクエリアス公国から来たマーリンもその様子を見守っていた。

「ヴァルキリー少佐。まずは、操縦技術の確認からだ。俺と一戦交えてもらいましょうか」

カイトが、自身のゲイルに乗り込み、ヴァルキリーの前に立つ。カイトは、ヴァルキリーの圧倒的な魔力と操縦技術は、伝説機アストレイアを駆るユウキに匹敵する、と聞いていた。だが、カイトは、彼女を本当に信用できるのか、自身の目で確かめたかった。

「フン。貴様の腕前、見せてもらおうか、自由同盟のエース」

ヴァルキリーは、挑発的な笑みを浮かべ、ゲイルの操縦桿を握りしめた。

二機のゲイルが、訓練場を疾走する。カイトの操るゲイルは、まるで舞うように優雅な動きでヴァルキリーのゲイルを翻弄する。

けれども、ヴァルキリーは、その動きを冷静に見抜き、最小限の動きでカイトの攻撃を回避していく。その動きは、無駄な動きが一切ない。まるで機械のように正確で、完璧な動きだった。

「…素晴らしい。やはり貴様の腕は、噂以上だ」

カイトがそう呟くと、ヴァルキリーは静かに答える。

「貴様もな。その旧式機で、伝説機を相手にするとは…大した度胸だ」

二人の戦闘は、互いの実力を測るためのものであり、互いに本気を出してはいなかった。しかし、その動きは、見る者を圧倒するほど洗練されていた。


ユウキは、訓練場の片隅で、ヴァルキリーの戦いぶりを静かに見つめていた。

彼女の操縦は、無駄な動きが一切ない。
だが、ユウキは、その完璧さの中に、どこか寂しさを感じた。彼女は、何のために戦っているのだろうか?





訓練が終わり、カイトとヴァルキリーは、互いの健闘を称え合った。
カイトは、ヴァルキリーの強さを認めると同時に、彼女の心の奥に潜む孤独を感じ取っていた。

「ヴァルキリー。君は、なぜ戦うんだ?俺は、この世界の平和と、大切な仲間を守るために戦っている。君は…何のために?」

カイトの問いに、ヴァルキリーは静かに答える。

「私は、故郷を救うために戦う。その目的のためなら、どのような犠牲も厭わない。それが、私と貴様との違いだ」

ヴァルキリーはそう言うと、ユウキに視線を向けた。

「…貴様は、私と同じ『召喚者』。故郷を失った悲しみを、貴様も知っているはずだ。なぜ、貴様は、この世界の人間をそこまで信じられる?」

ユウキの純粋な言葉に、ヴァルキリーの冷徹な表情に、わずかな動揺が走る。彼女は、ユウキの言葉に、故郷を失った悲しみだけでなく、それでもなお前を向く、強い意志を感じ取った。

「…愚かな人間。だが、その愚かさが、貴様の強さなのかもしれんな」

ヴァルキリーはそう呟くと、ユウキから視線を逸らした。彼女は、ユウキの言葉によって、自分の「正義」が、本当に正しいのか、自問自答し始めていた。

訓練を見守っていたルナは、ソフィアに呟いた。

「すごい…彼女の動きは、まるで幻晶機と一体になっているみたいだわ。あの人が敵でなくて、本当に…本当に良かった」

ソフィアもまた、ヴァルキリーの圧倒的な実力に舌を巻いていた。

「ええ。彼女は、幻晶機をただの道具としてではなく、自分の手足のように操る。それが、彼女の強さの秘密よ。あの人が敵に回れば、この世界は…」

ソフィアは、言葉を詰まらせた。彼女は、元帝国兵として、ヴァルキリーの恐ろしさを誰よりも知っていた。





そんな二人の様子を、マーリンが静かに見つめていた。

「…ふむ。ヴァルキリー…やはり、彼女は、この世界の運命を変える存在だ。そして、ユウキ殿。彼の持つ純粋な信念が、彼女の心を揺さぶっている。…伝説機は、コアの力によって動く。だが、その力を引き出すのは、パイロットの心だ。彼らは…互いに、互いの欠けた部分を補い合う存在なのかもしれないな」


マーリンは、そう呟くと、優雅な笑みを浮かべた。





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その日の夜、ユウキはアークライトの格納庫に、鹵獲されたヴァルハラが置かれているのを確認した。ヴァルキリーが語った真実と、ヴァルハラの存在が、彼の心を支配していた。
「ヴァルハラ…この機体も、アビスが狙っているのか…」
ユウキは、そう呟くと、ヴァルハラの傍らに立つヴァルキリーに視線を向けた。
彼女の表情は相変わらず冷徹だが、その瞳の奥には、故郷を失った悲しみが宿っているのが見えた。
その時、リアがユウキの隣に立った。
「ユウキ…ヴァルキリーさんが、僕たちに語ってくれた真実。アビスが狙っている伝説機は、アストレイアとヴァルハラだけじゃないわ。アクエリアス公国のオケアノス、竜骨山脈の部族連合のバハムート。そして…自由同盟に封印されている伝説機アルテミス…」
リアは、静かにそう告げた。
「アルテミス…?自由同盟にも、伝説機が…?」
ユウキは、驚きを隠せない。彼は、ヴァルキリーが語った真実が、すべて一つの線で繋がっていくのを感じた。
「ええ。アルテミスは、幻影の森の奥深くに封印されていると、祖母から聞かされた。でも、その封印を解く方法は、誰にも分からない。アビスは、その封印を解くための鍵を探しているのかもしれない」
リアの言葉に、ユウキの心に、新たな使命が芽生えた。
「…アルテミス…僕たちが、その鍵を探さなければならないのか…」
ユウキは、そう呟くと、ヴァルキリーに視線を向けた。彼女の瞳には、冷徹さだけでなく、故郷を失った悲しみと、強い決意が宿っているのが見えた。
「ヴァルキリー…君は、この世界の運命を変える存在だ。そして、私も、この世界の運命を変える存在だ。君と私は、故郷を失った悲劇を背負っている。だが、その悲しみを乗り越え、この世界で新たな希望を見出そう」
ユウキは、心の中で、ヴァルキリーに語りかけた。
彼の瞳には、怒りや悲しみだけでなく、故郷を失った悲劇を乗り越え、この世界で新たな希望を見出そうとする、強い光が宿っていた。
◇◆◇◆◇
翌日、ヴァルキリーは厳重な警備のもと、アークライトの訓練場に姿を現した。彼女の姿を遠巻きに見つめる竜騎士中隊の面々の中には、敵意を隠せない者もいた。
ジェイを死に追いやった張本人である彼女を、仲間として受け入れることには、大きな抵抗があった。
しかし、マリア少佐の命令は絶対であり、彼らは複雑な心境で彼女の動向を見守った。
「ヴァルキリー少佐、今日から貴方は、我々竜騎士中隊と共に訓練を行います。幻晶機ヴァルハラは、現在技術部で解析中です。代わりにこのゲイルを貴方に貸与します」
ディオンが淡々と告げる。ヴァルキリーは、無言で頷くと、訓練用の幻晶機ゲイルのコクピットに乗り込んだ。その機体は、カイトが普段搭乗しているものと同じ旧式機だ。
訓練場の観客席には、竜騎士中隊のメンバーだけでなく、自由同盟のエースであるカイト、そしてアクエリアス公国から来たマーリンもその様子を見守っていた。
「ヴァルキリー少佐。まずは、操縦技術の確認からだ。俺と一戦交えてもらいましょうか」
カイトが、自身のゲイルに乗り込み、ヴァルキリーの前に立つ。カイトは、ヴァルキリーの圧倒的な魔力と操縦技術は、伝説機アストレイアを駆るユウキに匹敵する、と聞いていた。だが、カイトは、彼女を本当に信用できるのか、自身の目で確かめたかった。
「フン。貴様の腕前、見せてもらおうか、自由同盟のエース」
ヴァルキリーは、挑発的な笑みを浮かべ、ゲイルの操縦桿を握りしめた。
二機のゲイルが、訓練場を疾走する。カイトの操るゲイルは、まるで舞うように優雅な動きでヴァルキリーのゲイルを翻弄する。
けれども、ヴァルキリーは、その動きを冷静に見抜き、最小限の動きでカイトの攻撃を回避していく。その動きは、無駄な動きが一切ない。まるで機械のように正確で、完璧な動きだった。
「…素晴らしい。やはり貴様の腕は、噂以上だ」
カイトがそう呟くと、ヴァルキリーは静かに答える。
「貴様もな。その旧式機で、伝説機を相手にするとは…大した度胸だ」
二人の戦闘は、互いの実力を測るためのものであり、互いに本気を出してはいなかった。しかし、その動きは、見る者を圧倒するほど洗練されていた。
ユウキは、訓練場の片隅で、ヴァルキリーの戦いぶりを静かに見つめていた。
彼女の操縦は、無駄な動きが一切ない。
だが、ユウキは、その完璧さの中に、どこか寂しさを感じた。彼女は、何のために戦っているのだろうか?
訓練が終わり、カイトとヴァルキリーは、互いの健闘を称え合った。
カイトは、ヴァルキリーの強さを認めると同時に、彼女の心の奥に潜む孤独を感じ取っていた。
「ヴァルキリー。君は、なぜ戦うんだ?俺は、この世界の平和と、大切な仲間を守るために戦っている。君は…何のために?」
カイトの問いに、ヴァルキリーは静かに答える。
「私は、故郷を救うために戦う。その目的のためなら、どのような犠牲も厭わない。それが、私と貴様との違いだ」
ヴァルキリーはそう言うと、ユウキに視線を向けた。
「…貴様は、私と同じ『召喚者』。故郷を失った悲しみを、貴様も知っているはずだ。なぜ、貴様は、この世界の人間をそこまで信じられる?」
ユウキの純粋な言葉に、ヴァルキリーの冷徹な表情に、わずかな動揺が走る。彼女は、ユウキの言葉に、故郷を失った悲しみだけでなく、それでもなお前を向く、強い意志を感じ取った。
「…愚かな人間。だが、その愚かさが、貴様の強さなのかもしれんな」
ヴァルキリーはそう呟くと、ユウキから視線を逸らした。彼女は、ユウキの言葉によって、自分の「正義」が、本当に正しいのか、自問自答し始めていた。
訓練を見守っていたルナは、ソフィアに呟いた。
「すごい…彼女の動きは、まるで幻晶機と一体になっているみたいだわ。あの人が敵でなくて、本当に…本当に良かった」
ソフィアもまた、ヴァルキリーの圧倒的な実力に舌を巻いていた。
「ええ。彼女は、幻晶機をただの道具としてではなく、自分の手足のように操る。それが、彼女の強さの秘密よ。あの人が敵に回れば、この世界は…」
ソフィアは、言葉を詰まらせた。彼女は、元帝国兵として、ヴァルキリーの恐ろしさを誰よりも知っていた。
そんな二人の様子を、マーリンが静かに見つめていた。
「…ふむ。ヴァルキリー…やはり、彼女は、この世界の運命を変える存在だ。そして、ユウキ殿。彼の持つ純粋な信念が、彼女の心を揺さぶっている。…伝説機は、コアの力によって動く。だが、その力を引き出すのは、パイロットの心だ。彼らは…互いに、互いの欠けた部分を補い合う存在なのかもしれないな」
マーリンは、そう呟くと、優雅な笑みを浮かべた。