第48話 静かなる対話 -3

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独房での対話を終えたユウキたちは、重い足取りで中隊の食堂へと向かっていた。

彼らの心には、ヴァルキリーが語った真実と、ジェイの死が重くのしかかっていた。

食堂は、静けさに包まれていた。ジェイがいつも座っていた席は空席のままだ。
誰もが口数少なく、それぞれの胸中で、今回の戦いを反芻していた。



その時、ルナが一人、ジェイの空席を見つめ、涙を流しているのが見えた。
彼女の瞳は腫れ上がり、その頬には涙の跡が残っていた。

「…馬鹿…!馬鹿だよ、ジェイ…!私のことなんて…何で…何で…!」

ルナは、声を殺して泣いていた。
彼の最期の言葉が、今も耳から離れない。

「…ルナ…幸せになれよ…!」

ジェイは、軽薄な態度とは裏腹に、彼女のことを深く想ってくれていた。

その想いに、彼女は何も応えられなかった。彼がソフィアにアプローチしていることを知っていたからだ。そのことが、ルナの心を、深く抉っていた。

そんなルナの姿を見て、ユウキは唇を噛み締め、ディオンに視線を向けた。

「ディオンさん…ルナは…」

ディオンは、静かに首を振った。

「ジェイは、彼女にとって、特別な存在だった。彼の死は、彼女にとって、あまりにも大きすぎる」

ディオンは、そう言うと、ルナの隣に座り、そっと肩を抱いた。

「…ルナ。泣くな。ジェイは、お前のことをいつも、自慢していた」

ルナは、ディオンの言葉に、ハッと顔を上げた。

「…え?何を…」

「『ルナの索敵能力は、俺の操縦を何倍にも引き上げてくれる』。いつもそう言っていた。そして、お前がジェイの無茶な突撃を止めようと必死に叫んでいた時、ジェイは…」

ディオンは、言葉を詰まらせた。

「…ジェイは、お前の言葉に、感謝していた。彼は、お前の言葉に、何度も救われていたんだ」

ルナの瞳から、再び大粒の涙が溢れ出した。
だが、その涙は、悲しみだけでなく、ジェイへの感謝と、そして、彼への深い愛情が混じっていた。

「…馬鹿…!馬鹿だよ…ジェイ…!そんなこと、一言も言ってくれなかったじゃない…!」

ルナは、そう呟くと、ディオンの胸に顔をうずめ、声を上げて泣き続けた。

ソフィアは、そんなルナの姿を、ただ静かに見つめていた。彼女の心にも、ジェイの死が深く刻まれている。彼からの好意を受け入れられなかった後悔が、彼女の心を締め付けていた。

「…ジェイ…私は…あなたに何も返せなかった…」

ソフィアは、そう呟くと、自分の感情を押し殺すように、目を閉じた。

彼女は、悲しみを乗り越え、ジェイの死を無駄にしないために、より強くならなければならないと、心に誓っていた。



その時、エラが食堂に入ってきた。彼女の顔は、疲労で青ざめていたが、その瞳には強い意志が宿っているのが見えた。

「皆さん、ご無沙汰しております。タクトの整備、完了しました。いつでも出撃できます」

エラは、そう言うと、一同に敬礼した。彼女の心の中には、ジェイを失った悲しみが深く刻まれている。けれども、彼女は、悲しみを乗り越え、すでに残された者たちを支えるために、自分にできることをしようと決意していた。

「エラ…無理をするな。まだ、休んでいていいんだぞ」

フィンが、エラの隣に立ち、静かに言った。

「フィンさん…私は大丈夫です。ジェイ先輩は…ジェイ先輩は、私たちのために、命をかけてくれました。だから、私は…ジェイ先輩の死を無駄にしないために、私ができることをしたいんです」

エラの瞳から、一筋の涙が流れ落ちた。
だが、彼女は、その涙を拭うと、再び敬礼した。

「皆さん…私は、オペレーターとして、ジェイ先輩の遺志を継ぎます。ジェイ先輩が守ってくれた命を、今度は、私が守ります。それが…ジェイ先輩への、私なりの弔いです」

エラの言葉に、一同は静かに頷いた。彼女の言葉は、ジェイの死に打ちひしがれていた中隊のメンバーに、新たな希望の光を灯した。

ユウキは、ヴァルキリーが語った真実と、仲間たちの悲しみを見て、心に強い決意を固めた。

「…ディオンさん。僕は、もっと強くなります。ジェイさんの死を無駄にしないためにも、ヴァルキリーが語った真実を突き止めるためにも、アビスという闇の勢力を打倒するためにも…僕は、このアストレイアと共に、戦います」

ユウキはそう言うと、立ち上がり、食堂の出口へと向かっていった。

「ユウキ、どこへ行くんだ?」

ディオンが尋ねると、ユウキは、静かに答えた。

「ヴァルキリーが語った真実…アビスが、この戦争を仕組んでいるという真実を、マリア少佐に報告してきます。そして、ヴァルキリーを、僕たちの仲間に迎え入れる。それが…ジェイさんの死を無駄にしない、唯一の方法だと、僕には思えます」

ユウキの瞳には、怒りや悲しみだけでなく、故郷を失った悲劇を乗り越え、この世界で新たな希望を見出そうとする、強い光が宿っていた。




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独房での対話を終えたユウキたちは、重い足取りで中隊の食堂へと向かっていた。
彼らの心には、ヴァルキリーが語った真実と、ジェイの死が重くのしかかっていた。
食堂は、静けさに包まれていた。ジェイがいつも座っていた席は空席のままだ。
誰もが口数少なく、それぞれの胸中で、今回の戦いを反芻していた。
その時、ルナが一人、ジェイの空席を見つめ、涙を流しているのが見えた。
彼女の瞳は腫れ上がり、その頬には涙の跡が残っていた。
「…馬鹿…!馬鹿だよ、ジェイ…!私のことなんて…何で…何で…!」
ルナは、声を殺して泣いていた。
彼の最期の言葉が、今も耳から離れない。
「…ルナ…幸せになれよ…!」
ジェイは、軽薄な態度とは裏腹に、彼女のことを深く想ってくれていた。
その想いに、彼女は何も応えられなかった。彼がソフィアにアプローチしていることを知っていたからだ。そのことが、ルナの心を、深く抉っていた。
そんなルナの姿を見て、ユウキは唇を噛み締め、ディオンに視線を向けた。
「ディオンさん…ルナは…」
ディオンは、静かに首を振った。
「ジェイは、彼女にとって、特別な存在だった。彼の死は、彼女にとって、あまりにも大きすぎる」
ディオンは、そう言うと、ルナの隣に座り、そっと肩を抱いた。
「…ルナ。泣くな。ジェイは、お前のことをいつも、自慢していた」
ルナは、ディオンの言葉に、ハッと顔を上げた。
「…え?何を…」
「『ルナの索敵能力は、俺の操縦を何倍にも引き上げてくれる』。いつもそう言っていた。そして、お前がジェイの無茶な突撃を止めようと必死に叫んでいた時、ジェイは…」
ディオンは、言葉を詰まらせた。
「…ジェイは、お前の言葉に、感謝していた。彼は、お前の言葉に、何度も救われていたんだ」
ルナの瞳から、再び大粒の涙が溢れ出した。
だが、その涙は、悲しみだけでなく、ジェイへの感謝と、そして、彼への深い愛情が混じっていた。
「…馬鹿…!馬鹿だよ…ジェイ…!そんなこと、一言も言ってくれなかったじゃない…!」
ルナは、そう呟くと、ディオンの胸に顔をうずめ、声を上げて泣き続けた。
ソフィアは、そんなルナの姿を、ただ静かに見つめていた。彼女の心にも、ジェイの死が深く刻まれている。彼からの好意を受け入れられなかった後悔が、彼女の心を締め付けていた。
「…ジェイ…私は…あなたに何も返せなかった…」
ソフィアは、そう呟くと、自分の感情を押し殺すように、目を閉じた。
彼女は、悲しみを乗り越え、ジェイの死を無駄にしないために、より強くならなければならないと、心に誓っていた。
その時、エラが食堂に入ってきた。彼女の顔は、疲労で青ざめていたが、その瞳には強い意志が宿っているのが見えた。
「皆さん、ご無沙汰しております。タクトの整備、完了しました。いつでも出撃できます」
エラは、そう言うと、一同に敬礼した。彼女の心の中には、ジェイを失った悲しみが深く刻まれている。けれども、彼女は、悲しみを乗り越え、すでに残された者たちを支えるために、自分にできることをしようと決意していた。
「エラ…無理をするな。まだ、休んでいていいんだぞ」
フィンが、エラの隣に立ち、静かに言った。
「フィンさん…私は大丈夫です。ジェイ先輩は…ジェイ先輩は、私たちのために、命をかけてくれました。だから、私は…ジェイ先輩の死を無駄にしないために、私ができることをしたいんです」
エラの瞳から、一筋の涙が流れ落ちた。
だが、彼女は、その涙を拭うと、再び敬礼した。
「皆さん…私は、オペレーターとして、ジェイ先輩の遺志を継ぎます。ジェイ先輩が守ってくれた命を、今度は、私が守ります。それが…ジェイ先輩への、私なりの弔いです」
エラの言葉に、一同は静かに頷いた。彼女の言葉は、ジェイの死に打ちひしがれていた中隊のメンバーに、新たな希望の光を灯した。
ユウキは、ヴァルキリーが語った真実と、仲間たちの悲しみを見て、心に強い決意を固めた。
「…ディオンさん。僕は、もっと強くなります。ジェイさんの死を無駄にしないためにも、ヴァルキリーが語った真実を突き止めるためにも、アビスという闇の勢力を打倒するためにも…僕は、このアストレイアと共に、戦います」
ユウキはそう言うと、立ち上がり、食堂の出口へと向かっていった。
「ユウキ、どこへ行くんだ?」
ディオンが尋ねると、ユウキは、静かに答えた。
「ヴァルキリーが語った真実…アビスが、この戦争を仕組んでいるという真実を、マリア少佐に報告してきます。そして、ヴァルキリーを、僕たちの仲間に迎え入れる。それが…ジェイさんの死を無駄にしない、唯一の方法だと、僕には思えます」
ユウキの瞳には、怒りや悲しみだけでなく、故郷を失った悲劇を乗り越え、この世界で新たな希望を見出そうとする、強い光が宿っていた。