第45話 谷底での真実 -3

ー/ー



ユウキとヴァルキリーの激突、そしてジェイの自爆によって戦場の中心部が一時的に無力化されたことで、この大規模会戦は唐突に終結した。

帝国軍は、伝説の機竜ヴァルハラが自由同盟に鹵獲され、指揮官も投降したことで指揮系統に大きな混乱が生じた。さらにクロノス・タイプXの群れも、アストレイアとヴァルハラの激突に巻き込まれ、壊滅的な打撃を受けていた。

「ヴァルキリー少佐…一体、何があったのだ…!」

帝国軍の指揮官は、困惑と怒りに満ちた声で撤退命令を下す。

「全機、一時撤退!ヴァルハラは…!…くそっ、ヴァルハラは諦めろ!今は、体勢を立て直すことが先決だ!」

帝国軍の幻晶機は、無残な残骸を後に、ぞろぞろと戦場から離脱していく。




一方、自由同盟軍もまた、壊滅的な被害を受けていた。

ジェイの死、そしてクロノス・タイプXの猛攻によって、多くの兵士と幻晶機を失った。しかし、ヴァルキリーの投降という予想外の事態は、彼らにとって、この戦争の真実を突き止めるための、唯一の希望となった。

マリア少佐は、司令室のモニターに映し出された戦況図を睨みつけ、重い口調で命令を下した。

「全幻晶機部隊に、撤退命令。残存兵力は、負傷兵の救助と、撤退の援護に回れ!竜騎士中隊は、ヴァルキリーを捕獲し、アストレイアと共にアークライトへ帰還せよ!今回の戦いで、我々は多くのものを失った…だが、それ以上に、大きな『真実』を手に入れたのだ…!」

マリアの声には、悲しみと、そして、未来への強い決意が滲んでいた。










後方でタクトを操縦し、負傷兵の救助と物資輸送を続けていたエラとフィンにも、悲報が届いた。

「…隊長…!ジェイ先輩の…通信が…!」

エラは、震える声で、マリア少佐に報告した。タクトのメインモニターには、ジェイのリベラ・タイプ1の通信が、途絶えたままの状態を映し出している。

「…ジェイ…彼は…」

マリアは、言葉を詰まらせた。彼女の顔には、深い悲しみが浮かんでいた。

フィンは、無言で操縦桿を強く握りしめた。彼は、ジェイと訓練を共にした日々を思い出していた。軽口を叩きながらも、誰よりも仲間思いだった彼の姿が、脳裏に焼き付いている。

「…ジェイ…」

フィンは、そう呟くと、静かに、しかし力強く、タクトのエンジンを吹かした。彼は、残された者たちを、無事にアークライトへ帰還させることを、心に誓っていた。

エラは、モニターに映るジェイの通信ログを、涙で滲んだ瞳で見つめていた。彼女は、ジェイが自分をからかうように言ってくれた、数々の言葉を思い出していた。

「…ジェイ先輩…!嘘…でしょう…!」

エラは、悲痛な叫びを上げ、崩れ落ちた。

ノアは、そんなエラとフィンの様子を、遠くから静かに見つめていた。彼女は、彼らの悲しみを、自分のことのように感じていた。
そして、カオスが語った「愚かな存在」という言葉が、どれほどの間違いであるか、改めて痛感していた。



その後、ユウキたちの救助が完了し、谷底から引き上げられたアストレイアとヴァルハラは、大型キャリアに載せられ、アークライトへと輸送されることになった。
ヴァルキリーは、無抵抗のまま自由同盟軍に投降した。彼女は、あくまで冷静で、感情を露わにすることはない。

アークライトへの帰還の道中、ユウキは、ヴァルキリーの言葉を反芻していた。
ジェイの死。アビスの存在。そして、彼らがこの戦争の裏で操られているという事実。

ユウキの心は、絶望と怒り、そして、ヴァルキリーが投げかけた「真の召喚者」という言葉への戸惑いで満ちていた。

「…俺は…このまま、何も知らずに、戦わされてるだけなのか…?」

ユウキは、自分の無力さを痛感した。
リアは、そんなユウキの隣で、そっと手を握っていた。

彼女もまた、ヴァルキリーの言葉に、深い衝撃を受けていた。
しかし、彼女は、ユウキの隣で、彼を支え続けることを決意していた。

「ユウキ…大丈夫。一人じゃない。みんなで、この真実を突き止めましょう。そして、この戦争を、本当に終わらせるのよ」

リアの優しい言葉に、ユウキは、少しだけ顔を上げた。
彼の瞳には、まだ迷いと、そして悲しみが宿っていたが、その奥に、新たな決意の光が灯り始めていた。

「…ああ…リア。俺は…俺は、もう二度と、大切な仲間を、失いたくない…」

ユウキは、リアの手を強く握りしめた。
彼の心に、ヴァルキリーが語った「召喚者としての使命」が、新たな意味を持って響き始める。

この戦争の真実を突き止め、アビスという闇の存在を打ち倒す。
それが、ジェイの死を無駄にしない、唯一の方法だと、ユウキは悟った。

アークライトでの物語は、まだまだ続く。

彼らの心に刻まれた深い傷は、決して消えることはないだろう。
しかし、その傷は、彼らを強くする。

そして、彼らは、新たな仲間と共に、世界の運命を変えるための、最初の一歩を踏み出していくのだった。



スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 第46話 静かなる対話 -1


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



ユウキとヴァルキリーの激突、そしてジェイの自爆によって戦場の中心部が一時的に無力化されたことで、この大規模会戦は唐突に終結した。
帝国軍は、伝説の機竜ヴァルハラが自由同盟に鹵獲され、指揮官も投降したことで指揮系統に大きな混乱が生じた。さらにクロノス・タイプXの群れも、アストレイアとヴァルハラの激突に巻き込まれ、壊滅的な打撃を受けていた。
「ヴァルキリー少佐…一体、何があったのだ…!」
帝国軍の指揮官は、困惑と怒りに満ちた声で撤退命令を下す。
「全機、一時撤退!ヴァルハラは…!…くそっ、ヴァルハラは諦めろ!今は、体勢を立て直すことが先決だ!」
帝国軍の幻晶機は、無残な残骸を後に、ぞろぞろと戦場から離脱していく。
一方、自由同盟軍もまた、壊滅的な被害を受けていた。
ジェイの死、そしてクロノス・タイプXの猛攻によって、多くの兵士と幻晶機を失った。しかし、ヴァルキリーの投降という予想外の事態は、彼らにとって、この戦争の真実を突き止めるための、唯一の希望となった。
マリア少佐は、司令室のモニターに映し出された戦況図を睨みつけ、重い口調で命令を下した。
「全幻晶機部隊に、撤退命令。残存兵力は、負傷兵の救助と、撤退の援護に回れ!竜騎士中隊は、ヴァルキリーを捕獲し、アストレイアと共にアークライトへ帰還せよ!今回の戦いで、我々は多くのものを失った…だが、それ以上に、大きな『真実』を手に入れたのだ…!」
マリアの声には、悲しみと、そして、未来への強い決意が滲んでいた。
後方でタクトを操縦し、負傷兵の救助と物資輸送を続けていたエラとフィンにも、悲報が届いた。
「…隊長…!ジェイ先輩の…通信が…!」
エラは、震える声で、マリア少佐に報告した。タクトのメインモニターには、ジェイのリベラ・タイプ1の通信が、途絶えたままの状態を映し出している。
「…ジェイ…彼は…」
マリアは、言葉を詰まらせた。彼女の顔には、深い悲しみが浮かんでいた。
フィンは、無言で操縦桿を強く握りしめた。彼は、ジェイと訓練を共にした日々を思い出していた。軽口を叩きながらも、誰よりも仲間思いだった彼の姿が、脳裏に焼き付いている。
「…ジェイ…」
フィンは、そう呟くと、静かに、しかし力強く、タクトのエンジンを吹かした。彼は、残された者たちを、無事にアークライトへ帰還させることを、心に誓っていた。
エラは、モニターに映るジェイの通信ログを、涙で滲んだ瞳で見つめていた。彼女は、ジェイが自分をからかうように言ってくれた、数々の言葉を思い出していた。
「…ジェイ先輩…!嘘…でしょう…!」
エラは、悲痛な叫びを上げ、崩れ落ちた。
ノアは、そんなエラとフィンの様子を、遠くから静かに見つめていた。彼女は、彼らの悲しみを、自分のことのように感じていた。
そして、カオスが語った「愚かな存在」という言葉が、どれほどの間違いであるか、改めて痛感していた。
その後、ユウキたちの救助が完了し、谷底から引き上げられたアストレイアとヴァルハラは、大型キャリアに載せられ、アークライトへと輸送されることになった。
ヴァルキリーは、無抵抗のまま自由同盟軍に投降した。彼女は、あくまで冷静で、感情を露わにすることはない。
アークライトへの帰還の道中、ユウキは、ヴァルキリーの言葉を反芻していた。
ジェイの死。アビスの存在。そして、彼らがこの戦争の裏で操られているという事実。
ユウキの心は、絶望と怒り、そして、ヴァルキリーが投げかけた「真の召喚者」という言葉への戸惑いで満ちていた。
「…俺は…このまま、何も知らずに、戦わされてるだけなのか…?」
ユウキは、自分の無力さを痛感した。
リアは、そんなユウキの隣で、そっと手を握っていた。
彼女もまた、ヴァルキリーの言葉に、深い衝撃を受けていた。
しかし、彼女は、ユウキの隣で、彼を支え続けることを決意していた。
「ユウキ…大丈夫。一人じゃない。みんなで、この真実を突き止めましょう。そして、この戦争を、本当に終わらせるのよ」
リアの優しい言葉に、ユウキは、少しだけ顔を上げた。
彼の瞳には、まだ迷いと、そして悲しみが宿っていたが、その奥に、新たな決意の光が灯り始めていた。
「…ああ…リア。俺は…俺は、もう二度と、大切な仲間を、失いたくない…」
ユウキは、リアの手を強く握りしめた。
彼の心に、ヴァルキリーが語った「召喚者としての使命」が、新たな意味を持って響き始める。
この戦争の真実を突き止め、アビスという闇の存在を打ち倒す。
それが、ジェイの死を無駄にしない、唯一の方法だと、ユウキは悟った。
アークライトでの物語は、まだまだ続く。
彼らの心に刻まれた深い傷は、決して消えることはないだろう。
しかし、その傷は、彼らを強くする。
そして、彼らは、新たな仲間と共に、世界の運命を変えるための、最初の一歩を踏み出していくのだった。