第28話 激化する戦線とジェイの苦悩 -2
ー/ー帝国軍もまた、無傷ではなかった。
彼らのシリウス・シリーズやレギオン・シリーズの機体も、自由同盟の反撃や、突如現れた黒い幻晶機の無差別な攻撃によって、次々と大破していく。真紅の装甲が剥がれ落ち、内部の駆動系が剥き出しになった機体が、悲鳴を上げて地面に叩きつけられる。パイロットの脱出ポッドが射出されるが、その多くは、戦場の嵐の中に飲み込まれていく。
「隊長!敵の増援を確認!見慣れない黒い幻晶機、複数機!」
ソフィアの冷静な声が響くが、その声にはわずかな焦りが混じっていた。それらの黒い幻晶機は、帝国軍の機体にも容赦なく攻撃を仕掛け、戦場の混沌をさらに深めている。
「やはり、奴らか……!」
エリナが歯噛みする。
彼女の脳裏には、グレイ・シャドーの言葉が蘇る。この戦場は、もはや帝国と自由同盟だけの戦いではない。見えない敵が、両者を消耗させようとしているのだ。
指揮官たちの葛藤とジェイの苦悩の深化
戦場の混乱の中、エリナとマリア少佐の通信が繋がった。
「エリナ!そちらの状況は!?」
マリアの声には、緊迫感が滲んでいた。
「総指揮官!自由同盟北方第三小隊は壊滅!敵の物量が多すぎます!さらに、あの黒い幻晶機の投入を確認!このままでは、我々も危うい!」
エリナは歯を食いしばるように報告した。
マリアは、司令室のモニターに映し出された戦況図を睨みつけていた。
赤い点が、次々と消えていく。それは、失われていく命の数を示していた。
「くそっ……!これ以上の損害は避けたい。エリナ、無理はするな。状況によっては、撤退も視野に入れろ!」
「しかし……!まだ、防衛ラインは……!」
エリナは反論しようとするが、マリアの言葉がそれを遮った。
「竜騎士中隊を失うわけにはいかない!お前たちの命は、この自由同盟にとって、かけがえのないものだ!冷静に判断しろ、エリナ!」
マリアの声には、多くの兵士の命を預かる指揮官としての重圧と、非情な決断を下さなければならない苦渋が滲んでいた。エリナは唇を噛み締め、悔しそうに頷いた。
その様子を、ジェイは自身のコックピットで聞いていた。友軍の壊滅、そして撤退命令。終わりの見えない戦いに、彼の心は深く苦悩していた。
「くそっ……!また、見捨てるのか……!」
ジェイは操縦桿を強く握りしめた。
彼の脳裏には、瓦礫の下敷きになった谷の幻晶機、そして無力に散っていった住民たちの姿が焼き付いていた。守りきれなかった悔しさが、彼を突き動かしていた。
「この戦いを終わらせるには……俺が、もっと……!」
ジェイの戦闘スタイルは、以前にも増して無謀なものになりつつあった。
彼は、敵機に対して、より危険な突撃を試みようとする。
ルナがジェイの動きを察知し、焦った声で無線を飛ばした。
「ジェイ!無茶はしないで!その動きは危険よ!」
ソフィアも冷静な声で警告を重ねる。
「ジェイ!機体各部の損傷率が70%を超えています!魔導エネルギー残量も15%を切りました!これ以上の戦闘は無謀です!」
エラもまた、タクトのモニター越しにジェイの機体データ(損傷度、エネルギー残量、パイロットの心拍数など)を監視し、警告を発する。
「ジェイ先輩!危険です!機体エネルギーが危険域です!パイロットの心拍数も180を超えています!各部損傷率も限界を超えています!これ以上は無理です!」
しかし、ジェイの耳には、ルナやソフィア、エラの声は届いていないようだった。
彼の瞳には、戦場で生き抜くための割り切りと、仲間を守りたいという強い思いが複雑に絡み合っていた。彼は、この戦いを終わらせるため、そして残された仲間たちを守るために、自分に何ができるかを深く考え始めていた。
エリナは、ジェイの無謀な動きに気づき、厳しい声で指示を出す。
「ジェイ!統制を乱すな!命令に従え!今すぐ撤退しろ!」
ジェイは一瞬、言葉を失った。
無線越しに聞こえるエリナの、普段からは想像もできないほど感情のこもった、しかし揺るぎない命令。彼の脳裏に、ルナやエラの必死な警告が蘇る。そして、何よりも、これ以上無茶をすれば、本当に仲間を守れなくなるという現実。
「……くそっ!」
ジェイは悔しそうに舌打ちをすると、操縦桿を強く引き、リベラ・タイプ1を急旋回させた。
彼の機体は、満身創痍のまま、戦場から離脱していく。
その背中には、友軍を見捨てたという苦い感情と、それでも生き残らなければならないという、新たな決意が宿っていた。
ディオンは、ジェイの迷いと苦悩を見抜き、多くを語らずとも、その表情で彼を諭そうとしていた。
ジェイが撤退していくのを見届け、ディオンは静かに頷いた。後で、彼に何を言うべきか、ディオンの頭の中ではすでに言葉が組み立てられ始めていた。
ユウキは、目の前で繰り広げられる戦争の非情さと、指揮官たちの葛藤、そしてジェイの苦悩を目の当たりにし、戦争が個人の感情だけでは動かせない大きな流れであることを感じ取っていた。
彼らは、それぞれの「正義」や「守るべきもの」のために戦っていることを、ユウキは少しずつ理解し始めていた。
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
帝国軍もまた、無傷ではなかった。
彼らのシリウス・シリーズやレギオン・シリーズの機体も、自由同盟の反撃や、突如現れた黒い幻晶機の無差別な攻撃によって、次々と大破していく。真紅の装甲が剥がれ落ち、内部の駆動系が剥き出しになった機体が、悲鳴を上げて地面に叩きつけられる。パイロットの脱出ポッドが射出されるが、その多くは、戦場の嵐の中に飲み込まれていく。
「隊長!敵の増援を確認!見慣れない黒い幻晶機、複数機!」
ソフィアの冷静な声が響くが、その声にはわずかな焦りが混じっていた。それらの黒い幻晶機は、帝国軍の機体にも容赦なく攻撃を仕掛け、戦場の混沌をさらに深めている。
「やはり、奴らか……!」
エリナが歯噛みする。
彼女の脳裏には、グレイ・シャドーの言葉が蘇る。この戦場は、もはや帝国と自由同盟だけの戦いではない。見えない敵が、両者を消耗させようとしているのだ。
指揮官たちの葛藤とジェイの苦悩の深化
戦場の混乱の中、エリナとマリア少佐の通信が繋がった。
「エリナ!そちらの状況は!?」
マリアの声には、緊迫感が滲んでいた。
「総指揮官!自由同盟北方第三小隊は壊滅!敵の物量が多すぎます!さらに、あの黒い幻晶機の投入を確認!このままでは、我々も危うい!」
エリナは歯を食いしばるように報告した。
マリアは、司令室のモニターに映し出された戦況図を睨みつけていた。
赤い点が、次々と消えていく。それは、失われていく命の数を示していた。
「くそっ……!これ以上の損害は避けたい。エリナ、無理はするな。状況によっては、撤退も視野に入れろ!」
「しかし……!まだ、防衛ラインは……!」
エリナは反論しようとするが、マリアの言葉がそれを遮った。
「竜騎士中隊を失うわけにはいかない!お前たちの命は、この自由同盟にとって、かけがえのないものだ!冷静に判断しろ、エリナ!」
マリアの声には、多くの兵士の命を預かる指揮官としての重圧と、非情な決断を下さなければならない苦渋が滲んでいた。エリナは唇を噛み締め、悔しそうに頷いた。
その様子を、ジェイは自身のコックピットで聞いていた。友軍の壊滅、そして撤退命令。終わりの見えない戦いに、彼の心は深く苦悩していた。
「くそっ……!また、見捨てるのか……!」
ジェイは操縦桿を強く握りしめた。
彼の脳裏には、瓦礫の下敷きになった谷の幻晶機、そして無力に散っていった住民たちの姿が焼き付いていた。守りきれなかった悔しさが、彼を突き動かしていた。
「この戦いを終わらせるには……俺が、もっと……!」
ジェイの戦闘スタイルは、以前にも増して無謀なものになりつつあった。
彼は、敵機に対して、より危険な突撃を試みようとする。
ルナがジェイの動きを察知し、焦った声で無線を飛ばした。
「ジェイ!無茶はしないで!その動きは危険よ!」
ソフィアも冷静な声で警告を重ねる。
「ジェイ!機体各部の損傷率が70%を超えています!魔導エネルギー残量も15%を切りました!これ以上の戦闘は無謀です!」
エラもまた、タクトのモニター越しにジェイの機体データ(損傷度、エネルギー残量、パイロットの心拍数など)を監視し、警告を発する。
「ジェイ先輩!危険です!機体エネルギーが危険域です!パイロットの心拍数も180を超えています!各部損傷率も限界を超えています!これ以上は無理です!」
しかし、ジェイの耳には、ルナやソフィア、エラの声は届いていないようだった。
彼の瞳には、戦場で生き抜くための割り切りと、仲間を守りたいという強い思いが複雑に絡み合っていた。彼は、この戦いを終わらせるため、そして残された仲間たちを守るために、自分に何ができるかを深く考え始めていた。
エリナは、ジェイの無謀な動きに気づき、厳しい声で指示を出す。
「ジェイ!統制を乱すな!命令に従え!今すぐ撤退しろ!」
ジェイは一瞬、言葉を失った。
無線越しに聞こえるエリナの、普段からは想像もできないほど感情のこもった、しかし揺るぎない命令。彼の脳裏に、ルナやエラの必死な警告が蘇る。そして、何よりも、これ以上無茶をすれば、本当に仲間を守れなくなるという現実。
「……くそっ!」
ジェイは悔しそうに舌打ちをすると、操縦桿を強く引き、リベラ・タイプ1を急旋回させた。
彼の機体は、満身創痍のまま、戦場から離脱していく。
その背中には、友軍を見捨てたという苦い感情と、それでも生き残らなければならないという、新たな決意が宿っていた。
ディオンは、ジェイの迷いと苦悩を見抜き、多くを語らずとも、その表情で彼を諭そうとしていた。
ジェイが撤退していくのを見届け、ディオンは静かに頷いた。後で、彼に何を言うべきか、ディオンの頭の中ではすでに言葉が組み立てられ始めていた。
ユウキは、目の前で繰り広げられる戦争の非情さと、指揮官たちの葛藤、そしてジェイの苦悩を目の当たりにし、戦争が個人の感情だけでは動かせない大きな流れであることを感じ取っていた。
彼らは、それぞれの「正義」や「守るべきもの」のために戦っていることを、ユウキは少しずつ理解し始めていた。