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第27話 激化する戦線とジェイの苦悩 -1

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アークライトでの訓練と日常が数週間続いた後、自由同盟とヴァルキリー帝国間の戦線は、予測された通り、急速に拡大していった。

それは、見えない影の策略によって巧妙に煽られた、避けられない衝突だった。特定の資源地帯や戦略的要衝を巡る戦闘は激化し、両勢力は消耗戦を強いられていた。

この戦場は、これまでの小競り合いとは一線を画していた。数百機に及ぶ幻晶機が両軍から投入され、空には飛空艇が編隊を組み、地上には無数の歩兵部隊や魔導砲部隊、そして輸送部隊が展開していた。

ヴァルキリー帝国は約2500機の幻晶機を保有し、自由同盟は約800機という戦力差の中、両者ともその多くをこの戦線に投入している。まさに、ルネア全土を巻き込む総力戦の様相を呈していた。

当初、竜騎士中隊はアークライトでの訓練とアストレイアの修理を優先し、後方待機する予定だった。

しかし、前線の壊滅的な状況を受け、急遽、救援任務のため前線への投入が決定されたのだ。

竜騎士中隊は、友軍の救援任務のために、とある前線へと急行していた。
無線からは、すでに絶望的な状況が伝えられている。

「こちら自由同盟北方第三小隊!敵の物量が多すぎる!防衛ラインが……くそっ、もう持たねぇ!」
「自由同盟中央第十一小隊、応答せよ!応答しろ!……通信途絶!まさか……」

ルナのコックピットから響く報告は、どれも悲痛なものばかりだった。エリナのゲイルが先頭を切り、ジェイのリベラ、ソフィアの支援機、ディオンの砲撃機が続く。

ユウキとリアが乗るアストレイアは、まだ修理が完了していないため、今回は予備機であるゲイル・タイプ1に搭乗していた。

「くそっ、間に合うのか!?」

ジェイが焦れたように叫んだ。彼の機体も、度重なる出撃で疲弊しているのが見て取れる。

「急げ!だが、無茶はするな!」

エリナの声が飛ぶ。

やがて、彼らの視界に、戦場の光景が飛び込んできた。

それは、地獄絵図としか言いようのないものだった。瓦礫と化した大地に、無数の幻晶機の残骸が転がっている。

自由同盟のライトブルーの機体も、帝国の真紅の機体も、等しく破壊され、黒煙を上げていた。あちこちで、まだ燃え盛る機体から火花が散り、金属の焼け焦げた匂いが鼻腔を刺激する。

「うそだろ……」

ユウキは、目の前に広がる光景に、思わず息を呑んだ。ゲームの画面では決して伝わることのない、生々しい破壊と死の匂いが、彼の五感を刺激する。

「自由同盟北方第三小隊……全滅か……」

ルナがモニターに映し出されたデータを見て、絶望的な声で呟いた。

その場には、幻晶機だけでなく、歩兵部隊や魔導砲部隊の兵士たちの遺体も散乱していた。彼らは幻晶機を持たず、生身でこの戦場に放り込まれ、無力に散っていったのだ。

「隊長!敵の増援を確認!見慣れない黒い幻晶機、複数機!」

ソフィアの冷静な声が響くが、その声にはわずかな焦りが混じっていた。

「やはり、奴らか……!」

エリナが歯噛みする。彼女の脳裏には、グレイ・シャドーの言葉が蘇る。

ユウキは、目の前で繰り広げられる戦争の非情さと、無力に散っていった命の重さを改めて痛感し、心的動揺が激しくなる。

彼の「殺さずに無力化する」という戦い方も、この圧倒的な暴力の前では無意味に思えてくる。

「くそっ……!俺は……俺は、何のために……!」

ユウキは操縦桿を握る手が震えるのを感じた。メインモニターには、友軍のゲイル・タイプ1が、帝国軍のシリウス・タイプAに組み付かれ、その巨大な腕で胴体をねじり潰される光景が映し出されていた。

内部から飛び散る火花と、金属の断末魔が、ユウキの鼓膜を激しく揺さぶる。パイロットの悲鳴が通信に響き渡り、やがて途絶える。

「うそだろ……」

ユウキの隣では、リアが顔を青ざめ、震える手で口元を覆っていた。ザラもまた、その光景に目を背けるように、唇を固く結んでいる。

ゲームのように、敵のHPをゼロにすれば終わるわけではない。目の前の敵も、味方も、生身の人間なのだ。その事実が、彼の心を深く、深く沈ませていく。

遠くでは、自由同盟の飛空艇が、帝国軍の対空砲火を浴びて炎上し、黒煙を上げながら墜落していく。その破片が、地上で交戦中の幻晶機や歩兵部隊に降り注ぎ、さらなる混乱と犠牲を生み出していた。









みんなのリアクション

アークライトでの訓練と日常が数週間続いた後、自由同盟とヴァルキリー帝国間の戦線は、予測された通り、急速に拡大していった。
それは、見えない影の策略によって巧妙に煽られた、避けられない衝突だった。特定の資源地帯や戦略的要衝を巡る戦闘は激化し、両勢力は消耗戦を強いられていた。
この戦場は、これまでの小競り合いとは一線を画していた。数百機に及ぶ幻晶機が両軍から投入され、空には飛空艇が編隊を組み、地上には無数の歩兵部隊や魔導砲部隊、そして輸送部隊が展開していた。
ヴァルキリー帝国は約2500機の幻晶機を保有し、自由同盟は約800機という戦力差の中、両者ともその多くをこの戦線に投入している。まさに、ルネア全土を巻き込む総力戦の様相を呈していた。
当初、竜騎士中隊はアークライトでの訓練とアストレイアの修理を優先し、後方待機する予定だった。
しかし、前線の壊滅的な状況を受け、急遽、救援任務のため前線への投入が決定されたのだ。
竜騎士中隊は、友軍の救援任務のために、とある前線へと急行していた。
無線からは、すでに絶望的な状況が伝えられている。
「こちら自由同盟北方第三小隊!敵の物量が多すぎる!防衛ラインが……くそっ、もう持たねぇ!」
「自由同盟中央第十一小隊、応答せよ!応答しろ!……通信途絶!まさか……」
ルナのコックピットから響く報告は、どれも悲痛なものばかりだった。エリナのゲイルが先頭を切り、ジェイのリベラ、ソフィアの支援機、ディオンの砲撃機が続く。
ユウキとリアが乗るアストレイアは、まだ修理が完了していないため、今回は予備機であるゲイル・タイプ1に搭乗していた。
「くそっ、間に合うのか!?」
ジェイが焦れたように叫んだ。彼の機体も、度重なる出撃で疲弊しているのが見て取れる。
「急げ!だが、無茶はするな!」
エリナの声が飛ぶ。
やがて、彼らの視界に、戦場の光景が飛び込んできた。
それは、地獄絵図としか言いようのないものだった。瓦礫と化した大地に、無数の幻晶機の残骸が転がっている。
自由同盟のライトブルーの機体も、帝国の真紅の機体も、等しく破壊され、黒煙を上げていた。あちこちで、まだ燃え盛る機体から火花が散り、金属の焼け焦げた匂いが鼻腔を刺激する。
「うそだろ……」
ユウキは、目の前に広がる光景に、思わず息を呑んだ。ゲームの画面では決して伝わることのない、生々しい破壊と死の匂いが、彼の五感を刺激する。
「自由同盟北方第三小隊……全滅か……」
ルナがモニターに映し出されたデータを見て、絶望的な声で呟いた。
その場には、幻晶機だけでなく、歩兵部隊や魔導砲部隊の兵士たちの遺体も散乱していた。彼らは幻晶機を持たず、生身でこの戦場に放り込まれ、無力に散っていったのだ。
「隊長!敵の増援を確認!見慣れない黒い幻晶機、複数機!」
ソフィアの冷静な声が響くが、その声にはわずかな焦りが混じっていた。
「やはり、奴らか……!」
エリナが歯噛みする。彼女の脳裏には、グレイ・シャドーの言葉が蘇る。
ユウキは、目の前で繰り広げられる戦争の非情さと、無力に散っていった命の重さを改めて痛感し、心的動揺が激しくなる。
彼の「殺さずに無力化する」という戦い方も、この圧倒的な暴力の前では無意味に思えてくる。
「くそっ……!俺は……俺は、何のために……!」
ユウキは操縦桿を握る手が震えるのを感じた。メインモニターには、友軍のゲイル・タイプ1が、帝国軍のシリウス・タイプAに組み付かれ、その巨大な腕で胴体をねじり潰される光景が映し出されていた。
内部から飛び散る火花と、金属の断末魔が、ユウキの鼓膜を激しく揺さぶる。パイロットの悲鳴が通信に響き渡り、やがて途絶える。
「うそだろ……」
ユウキの隣では、リアが顔を青ざめ、震える手で口元を覆っていた。ザラもまた、その光景に目を背けるように、唇を固く結んでいる。
ゲームのように、敵のHPをゼロにすれば終わるわけではない。目の前の敵も、味方も、生身の人間なのだ。その事実が、彼の心を深く、深く沈ませていく。
遠くでは、自由同盟の飛空艇が、帝国軍の対空砲火を浴びて炎上し、黒煙を上げながら墜落していく。その破片が、地上で交戦中の幻晶機や歩兵部隊に降り注ぎ、さらなる混乱と犠牲を生み出していた。