第25話 アークライトへの到着と中隊の再集結 -2
ー/ーアークライトでの生活が始まって数日。アストレイアの本格的な修理が進められる中、ユウキはディオンとの本格的な訓練に打ち込むことになった。
前線基地での簡易的な訓練とは異なり、アークライトの訓練施設は広大で、最新の模擬戦闘システムが導入されている。
ディオンは、模擬コックピットの中でユウキに厳しく指導した。彼の顔には、長年の実戦で培われた精悍さが刻まれている。
「いいか、ひよっこ。ここでは、お前のゲーム感覚だけじゃ通用しない。戦場は、常に変化し続ける。その変化に対応し、常に最適な判断を下す。それが、幻晶機乗りに求められる真の力だ」
ディオンの声は低いが、その言葉には揺るぎない重みがあった。ユウキのゲーム感覚による予測不能な操縦と、ディオンの長年の経験に基づく堅実な指導は、時に衝突しつつも、互いの実力を認め合い、信頼関係を深めていく。
模擬戦の開始音が鳴り響き、メインモニターに仮想敵機が表示される。ユウキは操縦桿を握り、反射的に敵機へと意識を集中させた。
しかし、ディオンはすぐに彼の動きを制止する。
「待て!何がしたい?お前の動きは、まるでゲームのキャラクターを動かしているようだ。幻晶機は、お前の手足の延長だ。敵の動きを『見る』だけでは不十分だ。その機体の意図を『読め』」
ディオンは、模擬敵機の動きを一時停止させ、画面に軌道予測を表示させた。
「この敵機は、今、お前の右側に回り込もうとしている。だが、その動きには僅かな癖がある。この癖を読み取れば、次の攻撃を予測できる。お前のゲームでの『パターン読み』と似ているが、現実の敵はもっと複雑だ。感情、疲労、機体の損傷……全てが動きに影響する」
「感情……ですか?」
ユウキは驚いた。ゲームの敵には、そんな要素はなかった。
「ああ。だからこそ、お前自身の身体のように機体を動かせ。無駄な動きが多い。もっと最短距離で、敵の死角を突け。幻晶機は、ただ動かせばいいってもんじゃない。機体の特性を理解し、お前自身の身体のように動かせ」
ディオンは、ユウキの操縦桿を直接掴み、正しい軌道を示すように動かした。
ユウキは、ディオンの指先から伝わる、長年の経験に裏打ちされた『感覚』に、ゾクリとした。
「幻晶機の駆動系は、お前の筋肉だと思え。マナの流れは、お前の血流だ。呼吸するように、意識せずとも機体を動かせるようになれ」
ディオンの指導は厳しかったが、ユウキは必死に食らいついた。彼の脳内では、ディオンの言葉が、これまでのゲームの攻略法と結びつき、新たな操縦理論が構築されていく。
模擬戦が再開される。
ユウキはディオンの言葉を反芻し、敵機の動きを『読む』ことに集中した。
最初はぎこちなかった動きが、徐々に滑らかになっていく。敵機のわずかな挙動の変化、マナの揺らぎ……それらが、ユウキの脳内でデータとして処理され、最適な回避と反撃のルートが瞬時に導き出される。
「ほう……悪くない」
ディオンが、初めてわずかな笑みを浮かべた。
訓練が終わり、ユウキは模擬コックピットから降りた。
全身から汗が噴き出し、疲労困憊だった。
ディオンの指導は想像以上に厳しく、頭も体も限界まで酷使された感覚だ。
「お疲れ様、ユウキ!」
リアが、冷たいタオルを持って駆け寄ってきた。ユウキはそれを受け取り、顔を拭う。
「ありがとう、リア……。はぁ、はぁ……ディオンさんの訓練、想像以上にキツいな……。もう、頭がパンクしそうだ」
リアはユウキの隣に座り、その背中を優しくさすった。
「でも、ユウキ、すごいわ。ディオンさんの厳しい指導にも、ちゃんと食らいついてる。私、見てたけど、ユウキの動き、どんどん変わっていってるもの」
「そうかな……?自分では、まだまだって感じだけど……」
ユウキは自信なさげに呟いた。
「ううん、本当にすごいわ。ディオンさんも、滅多に褒めないのに、最後に『悪くない』って言ってたじゃない。あれは、ユウキが頑張った証拠よ」
リアはユウキの顔を覗き込み、にこやかに言った。
リアの言葉に、ユウキの疲れた顔に、少しだけ笑みが浮かんだ。
「そっか……そう言われると、ちょっと嬉しいな。リアがそう言ってくれると、頑張れる気がするよ」
「もちろんだわ。ユウキは、この世界に来て、たくさんのことを乗り越えてきた。きっと、ディオンさんの訓練も、乗り越えられるわ。私が、いつもそばで支えているから」
リアはユウキの手をそっと握りしめた。
その温かい手の感触が、ユウキの心にじんわりと染み渡る。ディオンの厳しい指導で凝り固まった心が、リアの優しさで少しずつ解きほぐされていくようだった。
訓練を終え、宿舎に戻る途中、ジェイがユウキの隣に並び、こっそりと耳打ちしてきた。
「なあユウキ、ちょっと相談があるんだけどよ」
「相談?何ですか、ジェイさん?」
ユウキは首を傾げた。
ジェイは周囲をちらりと伺い、声を潜めた。
「実はな……ソフィアのことなんだよ」
ユウキは目を見開いた。ジェイがソフィアにアプローチしているのは知っていたが、まさか自分に相談してくるとは思わなかった。
「ソフィアさん、ですか?」
「ああ。俺、あいつのこと、本気なんだよ。でも、全然振り向いてくれなくてさ。どうしたら、ソフィアを振り向かせられると思う?」
ジェイの顔は真剣そのものだった。いつもの軽薄な態度は鳴りを潜め、純粋な悩みが滲み出ている。ユウキは困惑した。恋愛経験ゼロの自分に、どうアドバイスすればいいのか。
「え、えっと……その、俺、そういうの、あんまり詳しくないっていうか……」
「馬鹿野郎!お前、リアちゃんのこと、どう思ってんだよ?お前なら、何かヒント掴んでるだろ?」
ジェイがユウキの肩を揺する。
ユウキは顔を赤らめ、しどろもどろになる。
「り、リアは……その、大切な仲間で……」
「だからダメなんだよ!もっと男らしくいけって!ゲームだって、ボスを倒すには、弱点を見つけて、徹底的に攻めるだろ?恋愛も一緒なんだよ!」
ジェイは熱弁を振るう。ユウキの脳内では、ジェイの言葉がゲームの攻略法と結びつき、ソフィアの「弱点」を探るシミュレーションが始まった。
(ソフィアさんの弱点……?うーん、冷静で、真面目な……過去を気にしてるって言ってたっけ……)
「ソフィアさんは、元帝国兵だって言ってましたよね。もしかしたら、その過去を気にしてるのかもしれません。だから、ジェイさんが、ソフィアさんの過去を理解して、受け入れる姿勢を見せるのがいいんじゃないでしょうか?」
ユウキは、リアの優しさを思い出しながら、それとなくアドバイスした。
ジェイは腕を組み、唸った。
「過去を理解する、か……。なるほど、それは盲点だったぜ! よし、ユウキ!お前の助言、試してみるぜ! さすが召喚者! ゲーム攻略のプロは、恋愛攻略もプロだな!」
ジェイはユウキの肩を力強く叩き、意気揚々と去っていった。
ユウキは、自分のアドバイスが本当に役に立つのか、不安に思いながら、首を傾げるしかなかった。
みんなのリアクション
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アークライトでの生活が始まって数日。アストレイアの本格的な修理が進められる中、ユウキはディオンとの本格的な訓練に打ち込むことになった。
前線基地での簡易的な訓練とは異なり、アークライトの訓練施設は広大で、最新の模擬戦闘システムが導入されている。
ディオンは、模擬コックピットの中でユウキに厳しく指導した。彼の顔には、長年の実戦で培われた精悍さが刻まれている。
「いいか、ひよっこ。ここでは、お前のゲーム感覚だけじゃ通用しない。戦場は、常に変化し続ける。その変化に対応し、常に最適な判断を下す。それが、幻晶機乗りに求められる真の力だ」
ディオンの声は低いが、その言葉には揺るぎない重みがあった。ユウキのゲーム感覚による予測不能な操縦と、ディオンの長年の経験に基づく堅実な指導は、時に衝突しつつも、互いの実力を認め合い、信頼関係を深めていく。
模擬戦の開始音が鳴り響き、メインモニターに仮想敵機が表示される。ユウキは操縦桿を握り、反射的に敵機へと意識を集中させた。
しかし、ディオンはすぐに彼の動きを制止する。
「待て!何がしたい?お前の動きは、まるでゲームのキャラクターを動かしているようだ。幻晶機は、お前の手足の延長だ。敵の動きを『見る』だけでは不十分だ。その機体の意図を『読め』」
ディオンは、模擬敵機の動きを一時停止させ、画面に軌道予測を表示させた。
「この敵機は、今、お前の右側に回り込もうとしている。だが、その動きには僅かな癖がある。この癖を読み取れば、次の攻撃を予測できる。お前のゲームでの『パターン読み』と似ているが、現実の敵はもっと複雑だ。感情、疲労、機体の損傷……全てが動きに影響する」
「感情……ですか?」
ユウキは驚いた。ゲームの敵には、そんな要素はなかった。
「ああ。だからこそ、お前自身の身体のように機体を動かせ。無駄な動きが多い。もっと最短距離で、敵の死角を突け。幻晶機は、ただ動かせばいいってもんじゃない。機体の特性を理解し、お前自身の身体のように動かせ」
ディオンは、ユウキの操縦桿を直接掴み、正しい軌道を示すように動かした。
ユウキは、ディオンの指先から伝わる、長年の経験に裏打ちされた『感覚』に、ゾクリとした。
「幻晶機の駆動系は、お前の筋肉だと思え。マナの流れは、お前の血流だ。呼吸するように、意識せずとも機体を動かせるようになれ」
ディオンの指導は厳しかったが、ユウキは必死に食らいついた。彼の脳内では、ディオンの言葉が、これまでのゲームの攻略法と結びつき、新たな操縦理論が構築されていく。
模擬戦が再開される。
ユウキはディオンの言葉を反芻し、敵機の動きを『読む』ことに集中した。
最初はぎこちなかった動きが、徐々に滑らかになっていく。敵機のわずかな挙動の変化、マナの揺らぎ……それらが、ユウキの脳内でデータとして処理され、最適な回避と反撃のルートが瞬時に導き出される。
「ほう……悪くない」
ディオンが、初めてわずかな笑みを浮かべた。
訓練が終わり、ユウキは模擬コックピットから降りた。
全身から汗が噴き出し、疲労困憊だった。
ディオンの指導は想像以上に厳しく、頭も体も限界まで酷使された感覚だ。
「お疲れ様、ユウキ!」
リアが、冷たいタオルを持って駆け寄ってきた。ユウキはそれを受け取り、顔を拭う。
「ありがとう、リア……。はぁ、はぁ……ディオンさんの訓練、想像以上にキツいな……。もう、頭がパンクしそうだ」
リアはユウキの隣に座り、その背中を優しくさすった。
「でも、ユウキ、すごいわ。ディオンさんの厳しい指導にも、ちゃんと食らいついてる。私、見てたけど、ユウキの動き、どんどん変わっていってるもの」
「そうかな……?自分では、まだまだって感じだけど……」
ユウキは自信なさげに呟いた。
「ううん、本当にすごいわ。ディオンさんも、滅多に褒めないのに、最後に『悪くない』って言ってたじゃない。あれは、ユウキが頑張った証拠よ」
リアはユウキの顔を覗き込み、にこやかに言った。
リアの言葉に、ユウキの疲れた顔に、少しだけ笑みが浮かんだ。
「そっか……そう言われると、ちょっと嬉しいな。リアがそう言ってくれると、頑張れる気がするよ」
「もちろんだわ。ユウキは、この世界に来て、たくさんのことを乗り越えてきた。きっと、ディオンさんの訓練も、乗り越えられるわ。私が、いつもそばで支えているから」
リアはユウキの手をそっと握りしめた。
その温かい手の感触が、ユウキの心にじんわりと染み渡る。ディオンの厳しい指導で凝り固まった心が、リアの優しさで少しずつ解きほぐされていくようだった。
訓練を終え、宿舎に戻る途中、ジェイがユウキの隣に並び、こっそりと耳打ちしてきた。
「なあユウキ、ちょっと相談があるんだけどよ」
「相談?何ですか、ジェイさん?」
ユウキは首を傾げた。
ジェイは周囲をちらりと伺い、声を潜めた。
「実はな……ソフィアのことなんだよ」
ユウキは目を見開いた。ジェイがソフィアにアプローチしているのは知っていたが、まさか自分に相談してくるとは思わなかった。
「ソフィアさん、ですか?」
「ああ。俺、あいつのこと、本気なんだよ。でも、全然振り向いてくれなくてさ。どうしたら、ソフィアを振り向かせられると思う?」
ジェイの顔は真剣そのものだった。いつもの軽薄な態度は鳴りを潜め、純粋な悩みが滲み出ている。ユウキは困惑した。恋愛経験ゼロの自分に、どうアドバイスすればいいのか。
「え、えっと……その、俺、そういうの、あんまり詳しくないっていうか……」
「馬鹿野郎!お前、リアちゃんのこと、どう思ってんだよ?お前なら、何かヒント掴んでるだろ?」
ジェイがユウキの肩を揺する。
ユウキは顔を赤らめ、しどろもどろになる。
「り、リアは……その、大切な仲間で……」
「だからダメなんだよ!もっと男らしくいけって!ゲームだって、ボスを倒すには、弱点を見つけて、徹底的に攻めるだろ?恋愛も一緒なんだよ!」
ジェイは熱弁を振るう。ユウキの脳内では、ジェイの言葉がゲームの攻略法と結びつき、ソフィアの「弱点」を探るシミュレーションが始まった。
(ソフィアさんの弱点……?うーん、冷静で、真面目な……過去を気にしてるって言ってたっけ……)
「ソフィアさんは、元帝国兵だって言ってましたよね。もしかしたら、その過去を気にしてるのかもしれません。だから、ジェイさんが、ソフィアさんの過去を理解して、受け入れる姿勢を見せるのがいいんじゃないでしょうか?」
ユウキは、リアの優しさを思い出しながら、それとなくアドバイスした。
ジェイは腕を組み、唸った。
「過去を理解する、か……。なるほど、それは盲点だったぜ! よし、ユウキ!お前の助言、試してみるぜ! さすが召喚者! ゲーム攻略のプロは、恋愛攻略もプロだな!」
ジェイはユウキの肩を力強く叩き、意気揚々と去っていった。
ユウキは、自分のアドバイスが本当に役に立つのか、不安に思いながら、首を傾げるしかなかった。