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第19話 アストレイア、旅立ちの時 -2

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いよいよ出発の時が来た。夜の闇が帳のように降り、星々が瞬き始めている。格納庫の巨大な扉がゆっくりと開かれ、冷たい夜風が吹き込んできた。

「皆さん、準備はいいか?」

エリナが低い声で問いかける。その声には、任務への覚悟と、隊員たちへの信頼が込められていた。

ジェイが、エリナとルナ、そしてエラに笑顔を向けた。

「俺も、護衛、ばっちりキメていくぜ!特に、ルナちゃんとエラちゃんの安全は、この俺が絶対保証するからな!アークライトに着いたら、俺と二人で、うまいもの食べに行こうぜ!」

ルナは眉一つ動かさず、手元のタブレットに視線を落としたまま、冷たく言い放った。

「ジェイ、私には隊長の護衛という重要な任務があります。それに、あなたのような軽薄な男と食事に行く暇はありません。データを確認しなさい。敵の残党がいるかもしれないわ」

エラも、フィンの方を見向きもせず、無表情で付け加えた。

「ジェイ先輩、先輩の護衛能力は数値で表されます。今のところ、可もなく不可もなく。任務中は個人的な発言を控えて、オペレーターの指示に従ってください。くれぐれも、単独行動は慎むように」
「くっ……お、お前たち、なんでそんなに冷たいんだよ……!」

ジェイは肩を落とし、がっくりと首を垂れる。ルナとエラはちらりとジェイの様子を伺ったが、すぐに何事もなかったかのように視線を外した。ルナがそんなジェイの横顔を、心配そうに見つめていた。

フィンはタクトの運転席に乗り込み、エンジンを始動させる。重厚な唸り声が、夜の静寂を破った。アストレイアを乗せた大型キャリアも、ゆっくりと動き始める。

遠くで、マリア、ソフィア、ディオンが見送っているのが見えた。マリアは腕を組み、静かに頷いている。ソフィアはかすかに微笑み、ディオンは無言のまま、彼らの旅立ちを見守っていた。

「ソフィア!アークライトでまた会おうな!今度こそ、俺の男らしいところを見せてやるぜ!」

ジェイが大声でソフィアに叫んだ。

ソフィアは一瞬、ジェイの方に視線を向けたものの、すぐに前を向き、何も言わずに歩き出した。その背中からは、彼への一切の感情が読み取れなかった。

ジェイは肩を落とし、がっくりと首を垂れる。ルナがそんなジェイの横顔を、心配そうに見つめていた。

ユウキはリアの隣に立ち、夜空を見上げた。アークライトの方向には、無数の星が瞬いている。それは、希望の光のようにも、あるいは未だ見ぬ脅威の暗闇のようにも見えた。

「リア、俺たち……大丈夫かな?」

ユウキが不安を滲ませて尋ねると、リアはそっとユウキの手を握った。その小さな手は、温かくて柔らかい。

「大丈夫よ、ユウキ。だって、アストレイアは私たちと一緒だし、それに……」

リアはユウキの顔を見上げ、まっすぐな瞳で微笑んだ。

「ユウキがいてくれるから。きっと、どんな困難も乗り越えられるわ」

その言葉に、ユウキの胸に温かいものが広がる。リアの純粋な信頼が、彼の不安をそっと溶かしていくようだった。

故郷への帰還という個人的な願いと、この世界で得た仲間たち、そしてリアを守りたいという思いが、彼の心の中で交錯する。

彼は、この新たな場所での生活と、そこで待つであろうさらなる訓練に、期待と不安が入り混じった複雑な思いを抱いていた。

ユウキは、彼らの視線を感じながら、強く心に誓った。

この世界で「生き残る」ため、そして大切な仲間たちを守るために、自分はもっと強くなる。彼の瞳は、夜空の星々のように、遥かアークライトの方向を静かに見つめていた。物語は、新たな局面へと進む。




◇◆◇◆◇



アークライトへの長旅が始まった。大型キャリアに牽引されたアストレイアと、その後方を護衛するタクト、そしてエリナとルナのゲイル、ジェイのリベラ。

夜闇の中、彼らの機体が大地を滑るように進んでいく。ユウキとリア、ザラはタクトの内部に乗り込み、フィンとエラと共に旅を続けていた。

タクトの内部は、意外にも快適だった。小さな居住スペースと、簡易的な通信・モニタリング設備が備えられている。

ユウキは窓の外に広がる、見慣れないルネアの風景を眺めていた。

夜空には、地球では見慣れない色とりどりの星々が瞬き、遠くからは魔獣の鳴き声が聞こえてくる。

「すごいな、リア。この星の多さ、谷でも見たことないよ。まるで、空に宝石箱をひっくり返したみたいだ」

ユウキが感嘆の声を漏らすと、リアが隣で静かに頷いた。

「ええ。アークライトに近づくにつれて、マナの流れも澄んでいくのを感じるわ。ユウキの故郷の夜空は、どんなふうだった?」

ユウキは窓の外から視線を戻し、リアを見た。彼の目は、遠い記憶を辿るように瞬いた。

「俺の故郷の夜空は、こんなに星が見えなかったな。街の明かりが強すぎて、空はいつもオレンジ色に霞んでた。賑やかで、便利だったけど、こんな雄大な景色を見ることは、ほとんどなかったな」

故郷の両親や妹、友人たちの顔が脳裏に浮かぶ。

みんな、今頃どうしているだろう。そんなユウキの心中を察したように、リアがそっと彼の手に触れた。

そして、その指が、不安に強張ったユウキの指をゆっくりと絡め取る。温かい、小さな手が、まるで彼の恐怖を吸い取るかのように強く握りしめられた。

「寂しい?」

リアが、小さな声で尋ねた。
ユウキの目を、まっすぐに見つめている。

ユウキは一瞬言葉に詰まった。故郷への想いはもちろんある。

けれど、この世界で得たものも、決して小さくなかった。特に、隣にいるリアの存在は、何よりも大きかった。

「寂しくないって言ったら、嘘になるかな。でも、リアがいてくれるから……。俺、頑張れるよ」

ユウキが素直な気持ちを口にすると、リアはふわりと微笑んだ。

「私も、ユウキがいてくれるから、こうして旅を続けられる。谷を離れるのは、少しだけ寂しいけれど、ユウキと一緒なら、どんな困難も乗り越えられるって、そう信じられるの」

リアの瞳は、星の光を宿したように輝いていた。彼女の純粋な信頼が、ユウキの胸の奥深くに、じんわりと温かいものを広げていく。故郷への帰還という個人的な願いと、この世界で得た仲間たち、そしてリアを守りたいという思いが、彼の心の中で深く交錯する。

「ありがとう、リア……」

ユウキは握られた手にそっと力を込めた。リアが隣にいてくれることが、彼にとって何よりの支えだった。

その頃、タクトの荷台の隅で、ザラは膝を抱えて座っていた。ユウキとリアの親密な会話が、嫌でも耳に入ってくる。

(ったく……リアはあんな奴に絆されちゃって。私じゃ、ダメなので、ちやほやされやがって……!)

ザラは内心で毒づきながらも、窓の外の景色を睨みつけていた。
リアが幸せそうなのは嬉しい。

だが、その隣にいるのがユウキであることに、やはり複雑な感情が渦巻く。
彼女はちらりとユウキの方に視線を向ける。ユウキがリアに頬を緩めているのを見て、ザラの眉間に深い皺が寄った。

「リアに何かあったら、ただじゃおかないからね!」

ザラは誰に聞かせるでもなく、小声で呟いた。

その声には、リアへの深い愛情と、ユウキへの変わらない牽制が込められていた。




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みんなのリアクション

いよいよ出発の時が来た。夜の闇が帳のように降り、星々が瞬き始めている。格納庫の巨大な扉がゆっくりと開かれ、冷たい夜風が吹き込んできた。
「皆さん、準備はいいか?」
エリナが低い声で問いかける。その声には、任務への覚悟と、隊員たちへの信頼が込められていた。
ジェイが、エリナとルナ、そしてエラに笑顔を向けた。
「俺も、護衛、ばっちりキメていくぜ!特に、ルナちゃんとエラちゃんの安全は、この俺が絶対保証するからな!アークライトに着いたら、俺と二人で、うまいもの食べに行こうぜ!」
ルナは眉一つ動かさず、手元のタブレットに視線を落としたまま、冷たく言い放った。
「ジェイ、私には隊長の護衛という重要な任務があります。それに、あなたのような軽薄な男と食事に行く暇はありません。データを確認しなさい。敵の残党がいるかもしれないわ」
エラも、フィンの方を見向きもせず、無表情で付け加えた。
「ジェイ先輩、先輩の護衛能力は数値で表されます。今のところ、可もなく不可もなく。任務中は個人的な発言を控えて、オペレーターの指示に従ってください。くれぐれも、単独行動は慎むように」
「くっ……お、お前たち、なんでそんなに冷たいんだよ……!」
ジェイは肩を落とし、がっくりと首を垂れる。ルナとエラはちらりとジェイの様子を伺ったが、すぐに何事もなかったかのように視線を外した。ルナがそんなジェイの横顔を、心配そうに見つめていた。
フィンはタクトの運転席に乗り込み、エンジンを始動させる。重厚な唸り声が、夜の静寂を破った。アストレイアを乗せた大型キャリアも、ゆっくりと動き始める。
遠くで、マリア、ソフィア、ディオンが見送っているのが見えた。マリアは腕を組み、静かに頷いている。ソフィアはかすかに微笑み、ディオンは無言のまま、彼らの旅立ちを見守っていた。
「ソフィア!アークライトでまた会おうな!今度こそ、俺の男らしいところを見せてやるぜ!」
ジェイが大声でソフィアに叫んだ。
ソフィアは一瞬、ジェイの方に視線を向けたものの、すぐに前を向き、何も言わずに歩き出した。その背中からは、彼への一切の感情が読み取れなかった。
ジェイは肩を落とし、がっくりと首を垂れる。ルナがそんなジェイの横顔を、心配そうに見つめていた。
ユウキはリアの隣に立ち、夜空を見上げた。アークライトの方向には、無数の星が瞬いている。それは、希望の光のようにも、あるいは未だ見ぬ脅威の暗闇のようにも見えた。
「リア、俺たち……大丈夫かな?」
ユウキが不安を滲ませて尋ねると、リアはそっとユウキの手を握った。その小さな手は、温かくて柔らかい。
「大丈夫よ、ユウキ。だって、アストレイアは私たちと一緒だし、それに……」
リアはユウキの顔を見上げ、まっすぐな瞳で微笑んだ。
「ユウキがいてくれるから。きっと、どんな困難も乗り越えられるわ」
その言葉に、ユウキの胸に温かいものが広がる。リアの純粋な信頼が、彼の不安をそっと溶かしていくようだった。
故郷への帰還という個人的な願いと、この世界で得た仲間たち、そしてリアを守りたいという思いが、彼の心の中で交錯する。
彼は、この新たな場所での生活と、そこで待つであろうさらなる訓練に、期待と不安が入り混じった複雑な思いを抱いていた。
ユウキは、彼らの視線を感じながら、強く心に誓った。
この世界で「生き残る」ため、そして大切な仲間たちを守るために、自分はもっと強くなる。彼の瞳は、夜空の星々のように、遥かアークライトの方向を静かに見つめていた。物語は、新たな局面へと進む。
◇◆◇◆◇
アークライトへの長旅が始まった。大型キャリアに牽引されたアストレイアと、その後方を護衛するタクト、そしてエリナとルナのゲイル、ジェイのリベラ。
夜闇の中、彼らの機体が大地を滑るように進んでいく。ユウキとリア、ザラはタクトの内部に乗り込み、フィンとエラと共に旅を続けていた。
タクトの内部は、意外にも快適だった。小さな居住スペースと、簡易的な通信・モニタリング設備が備えられている。
ユウキは窓の外に広がる、見慣れないルネアの風景を眺めていた。
夜空には、地球では見慣れない色とりどりの星々が瞬き、遠くからは魔獣の鳴き声が聞こえてくる。
「すごいな、リア。この星の多さ、谷でも見たことないよ。まるで、空に宝石箱をひっくり返したみたいだ」
ユウキが感嘆の声を漏らすと、リアが隣で静かに頷いた。
「ええ。アークライトに近づくにつれて、マナの流れも澄んでいくのを感じるわ。ユウキの故郷の夜空は、どんなふうだった?」
ユウキは窓の外から視線を戻し、リアを見た。彼の目は、遠い記憶を辿るように瞬いた。
「俺の故郷の夜空は、こんなに星が見えなかったな。街の明かりが強すぎて、空はいつもオレンジ色に霞んでた。賑やかで、便利だったけど、こんな雄大な景色を見ることは、ほとんどなかったな」
故郷の両親や妹、友人たちの顔が脳裏に浮かぶ。
みんな、今頃どうしているだろう。そんなユウキの心中を察したように、リアがそっと彼の手に触れた。
そして、その指が、不安に強張ったユウキの指をゆっくりと絡め取る。温かい、小さな手が、まるで彼の恐怖を吸い取るかのように強く握りしめられた。
「寂しい?」
リアが、小さな声で尋ねた。
ユウキの目を、まっすぐに見つめている。
ユウキは一瞬言葉に詰まった。故郷への想いはもちろんある。
けれど、この世界で得たものも、決して小さくなかった。特に、隣にいるリアの存在は、何よりも大きかった。
「寂しくないって言ったら、嘘になるかな。でも、リアがいてくれるから……。俺、頑張れるよ」
ユウキが素直な気持ちを口にすると、リアはふわりと微笑んだ。
「私も、ユウキがいてくれるから、こうして旅を続けられる。谷を離れるのは、少しだけ寂しいけれど、ユウキと一緒なら、どんな困難も乗り越えられるって、そう信じられるの」
リアの瞳は、星の光を宿したように輝いていた。彼女の純粋な信頼が、ユウキの胸の奥深くに、じんわりと温かいものを広げていく。故郷への帰還という個人的な願いと、この世界で得た仲間たち、そしてリアを守りたいという思いが、彼の心の中で深く交錯する。
「ありがとう、リア……」
ユウキは握られた手にそっと力を込めた。リアが隣にいてくれることが、彼にとって何よりの支えだった。
その頃、タクトの荷台の隅で、ザラは膝を抱えて座っていた。ユウキとリアの親密な会話が、嫌でも耳に入ってくる。
(ったく……リアはあんな奴に絆されちゃって。私じゃ、ダメなので、ちやほやされやがって……!)
ザラは内心で毒づきながらも、窓の外の景色を睨みつけていた。
リアが幸せそうなのは嬉しい。
だが、その隣にいるのがユウキであることに、やはり複雑な感情が渦巻く。
彼女はちらりとユウキの方に視線を向ける。ユウキがリアに頬を緩めているのを見て、ザラの眉間に深い皺が寄った。
「リアに何かあったら、ただじゃおかないからね!」
ザラは誰に聞かせるでもなく、小声で呟いた。
その声には、リアへの深い愛情と、ユウキへの変わらない牽制が込められていた。