第20話 アストレイア、旅立ちの時 -3
ー/ー一方、タクトの操縦席では、ジェイがフィンに話しかけていた。
「おいフィン、アークライトまであとどれくらいだ?俺はもう腹ペコで死にそうだぜ。ま、エラちゃんが作った飯なら、いくらでも食えるけどな!」
フィンはちらりとジェイに視線を向けたが、何も言わず操縦に集中している。エラはモニターから顔を上げ、冷たい視線でジェイを一瞥した。
「ジェイ先輩、任務中にそのような発言は控えてください。それに、私が作った食事は、作戦行動中の栄養補給のためです。娯楽ではありません」
「ひでぇな、エラちゃん!そんなこと言うなよ!俺の愛が足りねぇのか!?」
ジェイがわざとらしく嘆くと、エラはため息をついた。
「先輩の行動データを見る限り、今のところ恋愛における成功率は極めて低いです。無駄な労力は避けて、幻晶機の操縦技術向上に専念することをお勧めします」
「ぐっ……お、お前までそんなこと言うのかよ、エラちゃん!」
ジェイは再びがっくりと肩を落とし、顔を覆った。フィンがそんな二人をちらりと見て、微かに口元を緩めたように見えたが、すぐに真顔に戻り、再び黙々とタクトを操縦し続けた。
道中、ユウキはジェイから幻晶機の操縦技術や戦場での立ち回りについて、実践的なアドバイスを受けることが増えた。
「ユウキ、いいか?幻晶機ってのは、ただの鉄の塊じゃねぇぞ。マナって生命エネルギーで動いてるんだ。だから、お前がマナを感じて、機体と心を同調させなきゃ、本当の力は引き出せない。アストレイアは特にそうだろ?」
ジェイはそう言うと、持っていた水筒の水を一口飲んだ。
「はい、リアも同じことを言ってました」
ユウキは頷いた。
「だろ?で、このマナを機体の中でどう使うかが重要なんだ。幻晶機には魔力結晶ってのが埋め込まれてるだろ?あれがマナを蓄えるバッテリーみたいなもんだ。攻撃したり、高速で動いたりすれば、どんどん減っていく。だから、エネルギー残量には常に気を配らなきゃいけねぇ。ガス欠じゃ話にならねぇからな」
ジェイは空になった水筒を軽く振ってみせた。
「なるほど、ゲームでいうMPとかエネルギーゲージみたいなものですね」
ユウキは自分の世界での知識と照らし合わせ、理解を深める。
「そうそう、そんな感じだ。で、魔法もそうだ。一口に魔法って言っても色々あんだろ?初級魔法は消費マナも少なくてすぐ使えるけど、威力は低い。上級魔法はとんでもねぇ威力を出すけど、詠唱に時間がかかる上に、マナの消費もバカにならねぇ。お前のアストレイアの『風神の矢』みたいなのは、中級以上ってところか?」
「ええ、あれは結構マナを消費します……」
ユウキはヴァルキリーとの戦いを思い出す。
「だろ?だから、状況に合わせて使い分けなきゃいけねぇ。ゲームと違って、マナ回復アイテムなんてそうそう落ちてねぇからな。それから、生身の人間が乗ってるんだ。敵も味方もな。だから、無駄な動きは命取りになる。特に、回避機動は最小限の動きで最大効果を狙え。慣れれば、敵の攻撃がスローモーションに見えるようになるぜ」
ジェイは厳しくも、兄貴分としてユウキを指導する。
そこへ、ルナがひょいと顔を覗かせた。
「へえ、ジェイがユウキくんにレクチャーしてるなんて珍しいね。ま、口だけ番長には負けないでね、ユウキくん?」
「おいルナ!俺は一丁前に指導してんだよ!」
ジェイが不満げに抗議する。
ルナはクスッと笑って、ジェイを無視してユウキに真面目な顔で言った。
「ジェイの言う通り、マナの管理は本当に重要よ。特に緊急時は、タクトから幻晶機に魔導エネルギーを直接供給することもあるの。もちろん、あくまで応急処置だけどね。戦場でマナが尽きたら、それこそただの的にされちゃうから。そういう時は、遠慮なくエラに言ってちょうだいね」
エラも端末の画面を見ながら、冷静に付け加える。
「タクトからの緊急マナ供給は、幻晶機の魔導回路に瞬間的に大きな負荷をかけることになります。最悪の場合、オーバーロードの危険性も考慮する必要があるため、最終手段と位置付けてください。正確な判断はオペレーターである私が行います」
「お、おいお前ら、俺の指導の邪魔すんじゃねぇよ!?」
ジェイが再び叫ぶが、ルナとエラはまたしても視線を交わし、フンと鼻を鳴らした。
「はい、ジェイさん。ルナさん、エラさん。意識してみます……」
ユウキは真剣な表情で頷いた。ジェイの言葉には、ヴァルキリーとの戦いで痛感した「現実」の重みが込められている。
「それからな、おいユウキ。リアちゃんにアピールするなら、もっと男らしくいかないとダメだぜ?例えば、あの時みたいに『リア、俺はリアを守る!』って、ストレートに言ってみるとか!」
ジェイがユウキに耳打ちする。ユウキは困惑した表情でジェイを見る。
「え、あ、あんな状況で!?そ、それはちょっと……」
「馬鹿野郎!チャンスは逃すもんじゃねぇんだよ!もっと攻めろ、攻めろ!」
ジェイはにやりと笑い、ユウキの背中をポンと叩いた。ユウキは、恋愛オンチゆえに戸惑うばかりで、顔を真っ赤にしていた。
その時、ルナがジェイの隣に立つユウキに、こっそりと近づいてきた。
「ねえねえ、ユウキくん。ジェイの言ってることは、半分くらいは正しいんだけどね?」
ルナはいたずらっぽく笑いながら、ちらりとジェイの様子を伺う。ジェイはまだ、ルナとエラに無視されたことに不貞腐れているようだった。
「ジェイは恋愛に関してはちょっとズレてるから、真に受けちゃダメよ~? でもね、ユウキくんはそういうの、ちょっと奥手すぎるんじゃない?」
ルナは、ユウキの肩を軽く叩いた。その視線は、リアの方へと向けられている。
すると、エラも端末を操作しながら、冷徹な表情のまま、しかしどこか含みのある声でユウキに言った。
「データ分析によると、恋愛において『待つ』という選択肢は、成功率が著しく低い傾向にあります。リアさんのような希少な存在においては、特に。積極的なアプローチは、現状のユウキさんの『恋愛スキルパラメータ』を向上させる上で、有効な手段となり得ます」
「そ、そうなんですか!?」
ユウキは二人の言葉に驚き、目を丸くした。
ルナはにこやかに頷く。
「そうよ!リアちゃんも、ユウキくんがもっと男らしいところを見せてくれたら、きっと喜ぶと思うな~?」
エラも、無表情ながら頷いた。
「恋愛は、時として戦場よりも複雑な状況判断を要求されます。しかし、目標を明確にし、適切な戦略を立てれば、成功率は飛躍的に向上します。つまり、『攻め』の姿勢が重要です」
「くっ……お、お前たち、俺の恋愛アドバイスを馬鹿にしやがって……!」
ジェイが再び割り込もうとするが、ルナとエラはまるで彼がそこにいないかのように、ユウキに視線を固定していた。
ユウキは、ルナとエラの言葉に戸惑いつつも、彼らの言う「男らしく」とか「攻め」という言葉が、妙に腑に落ちる気がした。
恋愛オンチゆえに、どうしていいかわからなかった彼の心に、二人の(ジェイとは違う意味で)「悪知恵」が、少しずつ染み込んでいく。
顔を真っ赤にしながらも、彼の脳内では、新たな「恋愛攻略法」のシミュレーションが始まったのだった。
◇◆◇◆◇
アークライトへの道のりは、決して平穏ではなかった。時折、遠くから聞こえる砲声や、上空を横切るヴァルキリー帝国軍の小規模な偵察部隊が、この世界が戦争の渦中にあることを否応なく実感させた。
ある日、休憩のために立ち寄った開けた平原で、彼らは遠くの空に黒煙が立ち上るのを目にした。硝煙の匂いが、風に乗って微かに鼻腔を刺激する。
「あれは……」
ルナが索敵モニターを確認し、顔を曇らせた。
「隊長、あの方向から魔力反応多数!しかも、かなりの大規模です。おそらく、帝国軍と自由同盟の部隊が交戦している模様……!」
エリナは険しい表情で空を見上げた。その瞳には、戦場の厳しさを知る者特有の、諦めにも似た覚悟が宿っていた。
「規模は?我々が介入できる範囲か?」
ルナは歯を食いしばるように言った。
「いえ、かなり広範囲に及んでいます。救援は……無理です。こちらの戦力では、戦局を覆すどころか、自らも危険に晒すだけです」
エリナは静かに目を閉じ、深く息を吐いた。
脳裏には、過去に多くの仲間を失った戦場の光景が蘇る。あの時の、無力な自分を繰り返してはならない。
彼女の使命は、この中隊を、そして何よりアストレイアを、安全にアークライトへ届けることだ。それが、今の自由同盟にとって、最も重要な任務だった。
「……了解だ。通信班、周辺部隊に、接触を避けて迂回するよう指示。我々は、このままアークライトを目指す。くれぐれも、交戦は避けるように」
エリナの声は冷静だが、その決断の重みが、ユウキたちの心に突き刺さる。
ジェイが不満げに口を開きかけたが、エリナの鋭い視線に、言葉を飲み込んだ。
ユウキは、窓から見える黒煙の方向をじっと見つめていた。
その煙の向こうで、今も多くの命が散っているのだろう。
戦争の非情さ。そして、自分たちがその中に身を置いているという現実。
彼は、この世界から逃れられないことを痛感しつつも、「生き残るため」という目的を再確認し、訓練に打ち込む決意を新たにするのだった。
アークライトへの道はまだ続く。彼らの旅は、希望と危険、そして新たな出会いに満ちたものになるだろう。
________
第20話を読んでいただきありがとうございました。
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一方、タクトの操縦席では、ジェイがフィンに話しかけていた。
「おいフィン、アークライトまであとどれくらいだ?俺はもう腹ペコで死にそうだぜ。ま、エラちゃんが作った飯なら、いくらでも食えるけどな!」
フィンはちらりとジェイに視線を向けたが、何も言わず操縦に集中している。エラはモニターから顔を上げ、冷たい視線でジェイを一瞥した。
「ジェイ先輩、任務中にそのような発言は控えてください。それに、私が作った食事は、作戦行動中の栄養補給のためです。娯楽ではありません」
「ひでぇな、エラちゃん!そんなこと言うなよ!俺の愛が足りねぇのか!?」
ジェイがわざとらしく嘆くと、エラはため息をついた。
「先輩の行動データを見る限り、今のところ恋愛における成功率は極めて低いです。無駄な労力は避けて、幻晶機の操縦技術向上に専念することをお勧めします」
「ぐっ……お、お前までそんなこと言うのかよ、エラちゃん!」
ジェイは再びがっくりと肩を落とし、顔を覆った。フィンがそんな二人をちらりと見て、微かに口元を緩めたように見えたが、すぐに真顔に戻り、再び黙々とタクトを操縦し続けた。
道中、ユウキはジェイから幻晶機の操縦技術や戦場での立ち回りについて、実践的なアドバイスを受けることが増えた。
「ユウキ、いいか?幻晶機ってのは、ただの鉄の塊じゃねぇぞ。マナって生命エネルギーで動いてるんだ。だから、お前がマナを感じて、機体と心を同調させなきゃ、本当の力は引き出せない。アストレイアは特にそうだろ?」
ジェイはそう言うと、持っていた水筒の水を一口飲んだ。
「はい、リアも同じことを言ってました」
ユウキは頷いた。
「だろ?で、このマナを機体の中でどう使うかが重要なんだ。幻晶機には魔力結晶ってのが埋め込まれてるだろ?あれがマナを蓄えるバッテリーみたいなもんだ。攻撃したり、高速で動いたりすれば、どんどん減っていく。だから、エネルギー残量には常に気を配らなきゃいけねぇ。ガス欠じゃ話にならねぇからな」
ジェイは空になった水筒を軽く振ってみせた。
「なるほど、ゲームでいうMPとかエネルギーゲージみたいなものですね」
ユウキは自分の世界での知識と照らし合わせ、理解を深める。
「そうそう、そんな感じだ。で、魔法もそうだ。一口に魔法って言っても色々あんだろ?初級魔法は消費マナも少なくてすぐ使えるけど、威力は低い。上級魔法はとんでもねぇ威力を出すけど、詠唱に時間がかかる上に、マナの消費もバカにならねぇ。お前のアストレイアの『風神の矢』みたいなのは、中級以上ってところか?」
「ええ、あれは結構マナを消費します……」
ユウキはヴァルキリーとの戦いを思い出す。
「だろ?だから、状況に合わせて使い分けなきゃいけねぇ。ゲームと違って、マナ回復アイテムなんてそうそう落ちてねぇからな。それから、生身の人間が乗ってるんだ。敵も味方もな。だから、無駄な動きは命取りになる。特に、回避機動は最小限の動きで最大効果を狙え。慣れれば、敵の攻撃がスローモーションに見えるようになるぜ」
ジェイは厳しくも、兄貴分としてユウキを指導する。
そこへ、ルナがひょいと顔を覗かせた。
「へえ、ジェイがユウキくんにレクチャーしてるなんて珍しいね。ま、口だけ番長には負けないでね、ユウキくん?」
「おいルナ!俺は一丁前に指導してんだよ!」
ジェイが不満げに抗議する。
ルナはクスッと笑って、ジェイを無視してユウキに真面目な顔で言った。
「ジェイの言う通り、マナの管理は本当に重要よ。特に緊急時は、タクトから幻晶機に魔導エネルギーを直接供給することもあるの。もちろん、あくまで応急処置だけどね。戦場でマナが尽きたら、それこそただの的にされちゃうから。そういう時は、遠慮なくエラに言ってちょうだいね」
エラも端末の画面を見ながら、冷静に付け加える。
「タクトからの緊急マナ供給は、幻晶機の魔導回路に瞬間的に大きな負荷をかけることになります。最悪の場合、オーバーロードの危険性も考慮する必要があるため、最終手段と位置付けてください。正確な判断はオペレーターである私が行います」
「お、おいお前ら、俺の指導の邪魔すんじゃねぇよ!?」
ジェイが再び叫ぶが、ルナとエラはまたしても視線を交わし、フンと鼻を鳴らした。
「はい、ジェイさん。ルナさん、エラさん。意識してみます……」
ユウキは真剣な表情で頷いた。ジェイの言葉には、ヴァルキリーとの戦いで痛感した「現実」の重みが込められている。
「それからな、おいユウキ。リアちゃんにアピールするなら、もっと男らしくいかないとダメだぜ?例えば、あの時みたいに『リア、俺はリアを守る!』って、ストレートに言ってみるとか!」
ジェイがユウキに耳打ちする。ユウキは困惑した表情でジェイを見る。
「え、あ、あんな状況で!?そ、それはちょっと……」
「馬鹿野郎!チャンスは逃すもんじゃねぇんだよ!もっと攻めろ、攻めろ!」
ジェイはにやりと笑い、ユウキの背中をポンと叩いた。ユウキは、恋愛オンチゆえに戸惑うばかりで、顔を真っ赤にしていた。
その時、ルナがジェイの隣に立つユウキに、こっそりと近づいてきた。
「ねえねえ、ユウキくん。ジェイの言ってることは、半分くらいは正しいんだけどね?」
ルナはいたずらっぽく笑いながら、ちらりとジェイの様子を伺う。ジェイはまだ、ルナとエラに無視されたことに不貞腐れているようだった。
「ジェイは恋愛に関してはちょっとズレてるから、真に受けちゃダメよ~? でもね、ユウキくんはそういうの、ちょっと奥手すぎるんじゃない?」
ルナは、ユウキの肩を軽く叩いた。その視線は、リアの方へと向けられている。
すると、エラも端末を操作しながら、冷徹な表情のまま、しかしどこか含みのある声でユウキに言った。
「データ分析によると、恋愛において『待つ』という選択肢は、成功率が著しく低い傾向にあります。リアさんのような希少な存在においては、特に。積極的なアプローチは、現状のユウキさんの『恋愛スキルパラメータ』を向上させる上で、有効な手段となり得ます」
「そ、そうなんですか!?」
ユウキは二人の言葉に驚き、目を丸くした。
ルナはにこやかに頷く。
「そうよ!リアちゃんも、ユウキくんがもっと男らしいところを見せてくれたら、きっと喜ぶと思うな~?」
エラも、無表情ながら頷いた。
「恋愛は、時として戦場よりも複雑な状況判断を要求されます。しかし、目標を明確にし、適切な戦略を立てれば、成功率は飛躍的に向上します。つまり、『攻め』の姿勢が重要です」
「くっ……お、お前たち、俺の恋愛アドバイスを馬鹿にしやがって……!」
ジェイが再び割り込もうとするが、ルナとエラはまるで彼がそこにいないかのように、ユウキに視線を固定していた。
ユウキは、ルナとエラの言葉に戸惑いつつも、彼らの言う「男らしく」とか「攻め」という言葉が、妙に腑に落ちる気がした。
恋愛オンチゆえに、どうしていいかわからなかった彼の心に、二人の(ジェイとは違う意味で)「悪知恵」が、少しずつ染み込んでいく。
顔を真っ赤にしながらも、彼の脳内では、新たな「恋愛攻略法」のシミュレーションが始まったのだった。
◇◆◇◆◇
アークライトへの道のりは、決して平穏ではなかった。時折、遠くから聞こえる砲声や、上空を横切るヴァルキリー帝国軍の小規模な偵察部隊が、この世界が戦争の渦中にあることを否応なく実感させた。
ある日、休憩のために立ち寄った開けた平原で、彼らは遠くの空に黒煙が立ち上るのを目にした。硝煙の匂いが、風に乗って微かに鼻腔を刺激する。
「あれは……」
ルナが索敵モニターを確認し、顔を曇らせた。
「隊長、あの方向から魔力反応多数!しかも、かなりの大規模です。おそらく、帝国軍と自由同盟の部隊が交戦している模様……!」
エリナは険しい表情で空を見上げた。その瞳には、戦場の厳しさを知る者特有の、諦めにも似た覚悟が宿っていた。
「規模は?我々が介入できる範囲か?」
ルナは歯を食いしばるように言った。
「いえ、かなり広範囲に及んでいます。救援は……無理です。こちらの戦力では、戦局を覆すどころか、自らも危険に晒すだけです」
エリナは静かに目を閉じ、深く息を吐いた。
脳裏には、過去に多くの仲間を失った戦場の光景が蘇る。あの時の、無力な自分を繰り返してはならない。
彼女の使命は、この中隊を、そして何よりアストレイアを、安全にアークライトへ届けることだ。それが、今の自由同盟にとって、最も重要な任務だった。
「……了解だ。通信班、周辺部隊に、接触を避けて迂回するよう指示。我々は、このままアークライトを目指す。くれぐれも、交戦は避けるように」
エリナの声は冷静だが、その決断の重みが、ユウキたちの心に突き刺さる。
ジェイが不満げに口を開きかけたが、エリナの鋭い視線に、言葉を飲み込んだ。
ユウキは、窓から見える黒煙の方向をじっと見つめていた。
その煙の向こうで、今も多くの命が散っているのだろう。
戦争の非情さ。そして、自分たちがその中に身を置いているという現実。
彼は、この世界から逃れられないことを痛感しつつも、「生き残るため」という目的を再確認し、訓練に打ち込む決意を新たにするのだった。
アークライトへの道はまだ続く。彼らの旅は、希望と危険、そして新たな出会いに満ちたものになるだろう。
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第20話を読んでいただきありがとうございました。
これにて第1章完結、次回から第2章に突入です!
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