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第17話 ヴァルキリーとの対峙 -4

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ユウキが、緊張した面持ちで口を開いた。

「ヴァルキリーは…俺に直接、通信で言ってきました。『自由同盟が度重なる国境侵犯と挑発行為を繰り返している』と。今回の行動は、それに対する正当な報復だと…」

その言葉に、司令室の空気が一瞬で張り詰める。

「何だと!?我々が挑発など…馬鹿な!そんな事実はない!」

ジェイが憤慨し声を上げた。彼の顔には、怒りと困惑が入り混じっている。

ルナが冷静な声で、しかし興奮を隠しきれない様子で補足した。

「私も、ヴァルキリーの言葉には違和感を覚えました。それに、彼女の索敵データや、敵の行動パターンも、通常の帝国軍とは異なる不自然な点がありました。まるで、何者かに誘導されているかのように…データが、そう示しています!」

ソフィアが静かに頷いた。
彼女の瞳には、深い洞察の色が宿っている。

元帝国兵として自由同盟に亡命してきたソフィアにとって、ヴァルキリー帝国の戦術は熟知しているはずだった。
しかし、今回の動きは…何かがおかしい。

「私も同感です。そして、ヴァルキリーが『使命』という言葉を口にしたことにも引っかかります。彼女のような立場の者が、個人的な感情で動くとは考えにくい」

ディオンは腕を組み、難しい顔で黙って聞いていたが、ソフィアの言葉にわずかに顎を引いた。彼の表情は、多くを語らずとも、この異常な状況に対する警戒を示していた。

マリアは、全員の報告を聞き終えると、深く息を吐いた。その表情には、重い決意が滲んでいた。

「やはり…今回の戦いは、ヴァルキリー帝国との単純な国境紛争ではなかった。あの異質な機体、そして聖神連合の無差別な介入…これまでの不審な情報が全て繋がり、我々はより巨大な、そして見えない敵の存在を認識せざるを得ない」

マリアの言葉に、ユウキはハッとした。彼女の言う「見えない敵」とは、まさか、リアが谷で言っていた「歪んだマナ」のことだろうか。

ユウキは、人との戦いにおける自身の「殺さずに無力化する」という戦い方と、ヴァルキリーの容赦ない攻撃のギャップに苦悩していた。
彼は、自分が幻晶機を動かすことに慣れてきても、人の命を奪うことへの抵抗感が消えないことに苛立ちを覚えていた。





リアはそんなユウキの葛藤を敏感に察していた。

デブリーフィング中も、彼の隣でそっと手を握り、彼の選択が間違いではないことを優しく語りかけた。

「ユウキの戦い方は、この世界に新しい光をもたらすはずよ。あなたは、あなたの信じる道を貫けばいい」

ザラは、リアがユウキを心配する様子を見て、内心で複雑な感情を抱きつつも、ユウキがリアを傷つけないよう、無言のプレッシャーをかけ続ける。彼女自身も、リアを守るためならどんな犠牲も厭わないという強い覚悟を胸に秘めている。

ジェイは、ユウキの葛藤を理解しつつも、軽く肩を叩いた。

「ここはゲームじゃない、生きて帰るためにはやるしかないんだ。だが、お前のやり方で生き残れるなら、それも『アリ』だぜ。俺たちも、お前を守る」

彼の言葉には、戦場で生き抜くための割り切りと、仲間を守りたいという強い思いが込められている。

ディオンはユウキの迷いを見抜き、多くを語らずとも重い言葉でユウキの心に問いかけた。

「戦場では、迷いが命取りになる。だが、その迷いこそがお前を人間たらしめる。…その葛藤を乗り越えろ。それが、お前の力になる」

彼の言葉には、戦争で多くのものを見てきたベテランとしての深みがあった。


エリナは中隊長として、マリアは総指揮官として、多くの兵士の命を預かる立場から、時に非情な決断を下さなければならない重圧を背負っている。

彼らの表情や言動から、ユウキは戦争が個人の感情だけでは動かせない大きな流れであることを感じ取る。彼らは、それぞれの「正義」や「守るべきもの」のために戦っていることを、ユウキは少しずつ理解し始める。

ルナは副パイロットとして、戦場の状況を冷静に分析し、時には非情な判断を伝える役割を担う。彼女はユウキの葛藤を間近で見ており、その中で自分たちが何をすべきかを模索していた。





デブリーフィング後、ラルフとロイドがアストレイアの損傷状況を診断した。

「こりゃあ、ひどいな。伝説の機竜とはいえ、ヴァルキリーの雷撃は伊達じゃねぇ。機体各所の魔力回路が焼損してる。応急処置はしたが、この前線基地の設備じゃ、本格的な修理は無理だ」

ラルフが頭を掻きながら言った。ロイドも無言で頷いている。

「より大規模な設備を持つ、自由都市アークライトの工房へ移動させる必要がある」

ラルフの報告を受け、マリアは決断を下した。

「アストレイアの本格的な修理は急務だ。エリナ、竜騎士中隊はアストレイアと共に自由都市アークライトへ移動しなさい。ユウキ君とリアさんには、そこでより専門的な訓練を受けてもらう。そして、今後の戦略会議にも参加してもらうわ」

マリアの言葉に、ユウキは改めて身が引き締まる思いだった。




マリアの命令を受け、竜騎士中隊のメンバーはアークライトへの移動準備を開始した。ユウキは、ジェイの死を乗り越え、ヴァルキリーという新たな仲間を得て、世界の命運をかけた戦いへと覚悟を新たにする。

「アークライトか…」

ユウキは、リアと共にアストレイアの格納庫で、修理中の機体を見上げていた。

「新しい場所で、もっと強くなれるかな…」
「きっと、なれるわ。ユウキなら」

リアが優しく微笑む。

ユウキは、この戦争が単なる国家間の争いではない、より大きな脅威が潜んでいることを予感していた。
そして、その脅威に立ち向かうためには、自分自身がもっと強くならなければならないと、強く心に誓った。



こうして、竜騎士中隊は、アストレイアと共に自由都市アークライトへの長距離移動を開始するのだった。





次のエピソードへ進む 第18話 アストレイア、旅立ちの時 -1


みんなのリアクション

ユウキが、緊張した面持ちで口を開いた。
「ヴァルキリーは…俺に直接、通信で言ってきました。『自由同盟が度重なる国境侵犯と挑発行為を繰り返している』と。今回の行動は、それに対する正当な報復だと…」
その言葉に、司令室の空気が一瞬で張り詰める。
「何だと!?我々が挑発など…馬鹿な!そんな事実はない!」
ジェイが憤慨し声を上げた。彼の顔には、怒りと困惑が入り混じっている。
ルナが冷静な声で、しかし興奮を隠しきれない様子で補足した。
「私も、ヴァルキリーの言葉には違和感を覚えました。それに、彼女の索敵データや、敵の行動パターンも、通常の帝国軍とは異なる不自然な点がありました。まるで、何者かに誘導されているかのように…データが、そう示しています!」
ソフィアが静かに頷いた。
彼女の瞳には、深い洞察の色が宿っている。
元帝国兵として自由同盟に亡命してきたソフィアにとって、ヴァルキリー帝国の戦術は熟知しているはずだった。
しかし、今回の動きは…何かがおかしい。
「私も同感です。そして、ヴァルキリーが『使命』という言葉を口にしたことにも引っかかります。彼女のような立場の者が、個人的な感情で動くとは考えにくい」
ディオンは腕を組み、難しい顔で黙って聞いていたが、ソフィアの言葉にわずかに顎を引いた。彼の表情は、多くを語らずとも、この異常な状況に対する警戒を示していた。
マリアは、全員の報告を聞き終えると、深く息を吐いた。その表情には、重い決意が滲んでいた。
「やはり…今回の戦いは、ヴァルキリー帝国との単純な国境紛争ではなかった。あの異質な機体、そして聖神連合の無差別な介入…これまでの不審な情報が全て繋がり、我々はより巨大な、そして見えない敵の存在を認識せざるを得ない」
マリアの言葉に、ユウキはハッとした。彼女の言う「見えない敵」とは、まさか、リアが谷で言っていた「歪んだマナ」のことだろうか。
ユウキは、人との戦いにおける自身の「殺さずに無力化する」という戦い方と、ヴァルキリーの容赦ない攻撃のギャップに苦悩していた。
彼は、自分が幻晶機を動かすことに慣れてきても、人の命を奪うことへの抵抗感が消えないことに苛立ちを覚えていた。
リアはそんなユウキの葛藤を敏感に察していた。
デブリーフィング中も、彼の隣でそっと手を握り、彼の選択が間違いではないことを優しく語りかけた。
「ユウキの戦い方は、この世界に新しい光をもたらすはずよ。あなたは、あなたの信じる道を貫けばいい」
ザラは、リアがユウキを心配する様子を見て、内心で複雑な感情を抱きつつも、ユウキがリアを傷つけないよう、無言のプレッシャーをかけ続ける。彼女自身も、リアを守るためならどんな犠牲も厭わないという強い覚悟を胸に秘めている。
ジェイは、ユウキの葛藤を理解しつつも、軽く肩を叩いた。
「ここはゲームじゃない、生きて帰るためにはやるしかないんだ。だが、お前のやり方で生き残れるなら、それも『アリ』だぜ。俺たちも、お前を守る」
彼の言葉には、戦場で生き抜くための割り切りと、仲間を守りたいという強い思いが込められている。
ディオンはユウキの迷いを見抜き、多くを語らずとも重い言葉でユウキの心に問いかけた。
「戦場では、迷いが命取りになる。だが、その迷いこそがお前を人間たらしめる。…その葛藤を乗り越えろ。それが、お前の力になる」
彼の言葉には、戦争で多くのものを見てきたベテランとしての深みがあった。
エリナは中隊長として、マリアは総指揮官として、多くの兵士の命を預かる立場から、時に非情な決断を下さなければならない重圧を背負っている。
彼らの表情や言動から、ユウキは戦争が個人の感情だけでは動かせない大きな流れであることを感じ取る。彼らは、それぞれの「正義」や「守るべきもの」のために戦っていることを、ユウキは少しずつ理解し始める。
ルナは副パイロットとして、戦場の状況を冷静に分析し、時には非情な判断を伝える役割を担う。彼女はユウキの葛藤を間近で見ており、その中で自分たちが何をすべきかを模索していた。
デブリーフィング後、ラルフとロイドがアストレイアの損傷状況を診断した。
「こりゃあ、ひどいな。伝説の機竜とはいえ、ヴァルキリーの雷撃は伊達じゃねぇ。機体各所の魔力回路が焼損してる。応急処置はしたが、この前線基地の設備じゃ、本格的な修理は無理だ」
ラルフが頭を掻きながら言った。ロイドも無言で頷いている。
「より大規模な設備を持つ、自由都市アークライトの工房へ移動させる必要がある」
ラルフの報告を受け、マリアは決断を下した。
「アストレイアの本格的な修理は急務だ。エリナ、竜騎士中隊はアストレイアと共に自由都市アークライトへ移動しなさい。ユウキ君とリアさんには、そこでより専門的な訓練を受けてもらう。そして、今後の戦略会議にも参加してもらうわ」
マリアの言葉に、ユウキは改めて身が引き締まる思いだった。
マリアの命令を受け、竜騎士中隊のメンバーはアークライトへの移動準備を開始した。ユウキは、ジェイの死を乗り越え、ヴァルキリーという新たな仲間を得て、世界の命運をかけた戦いへと覚悟を新たにする。
「アークライトか…」
ユウキは、リアと共にアストレイアの格納庫で、修理中の機体を見上げていた。
「新しい場所で、もっと強くなれるかな…」
「きっと、なれるわ。ユウキなら」
リアが優しく微笑む。
ユウキは、この戦争が単なる国家間の争いではない、より大きな脅威が潜んでいることを予感していた。
そして、その脅威に立ち向かうためには、自分自身がもっと強くならなければならないと、強く心に誓った。
こうして、竜騎士中隊は、アストレイアと共に自由都市アークライトへの長距離移動を開始するのだった。