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第11話 自由同盟の前線基地 -1

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数日後、一行は自由同盟の最前線に位置する、小規模な軍事拠点に到着した。

巨大な都市とは異なり、無骨なコンクリートと鉄骨でできた防御壁が印象的な場所だ。駐屯している幻晶機も多くはないが、兵士たちの顔つきは皆精悍で、緊張感が漂っている。


拠点の中枢司令室は、簡素ながらも機能的に整えられていた。

壁には戦況を示す地図が貼られ、複数のモニターが情報を行き交わせている。
エリナとルナが、その中央に立つユウキ、リア、ザラを静かに見つめていた。

「ユウキ殿、リア殿、ザラ殿。改めて、竜騎士中隊へようこそ」

エリナが静かに告げた。その声には、形式的な響きだけでなく、確かな期待が込められている。

「皆さんの、特にアストレイアの力は、今回の魔竜との戦いで計り知れないものであると確認できました。自由同盟としては、ぜひともその力を、我々の仲間に迎え入れたい。この世界を守るために、その力が必要なのです」

ルナが補足するように、ユウキの目を真っ直ぐ見て語りかけた。

「ユウキさんの、あの魔竜との戦いでの『常軌を逸した反応速度と状況判断力』は、幻晶機乗りとして非常に高い潜在能力を秘めていることを確信させてくれました。リアさんのサポート能力も相まって、アストレイアという伝説機を最大限に活かせる存在です」

ユウキは、彼らの真剣な眼差しに、改めて自身の立場を理解した。内心では、まだ「人」との戦いへの抵抗感が燻っている。ゲームのように「倒す」ことに慣れていても、それはあくまで仮想の敵だった。

しかし、リアや谷の住民を守るという使命感、そして谷を襲ったのが帝国だという(誤った)認識が、彼の背中を押していた。

「…生き残るために、そしてリアたちを守るためなら。俺は…戦います」

ユウキはそう答え、固く拳を握りしめた。その瞳には、まだ迷いの影が残るものの、決意の光が宿り始めていた。

「はい、ユウキならきっとできるわ!私も、アストレイアと共に、あなたを支えるから!」

リアはユウキの隣で、力強く頷いた。

ザラは、その言葉を冷たい、きつい視線で無言で見つめていた。




◇◆◇◆◇

その数日後、前線拠点に新たな幻晶機部隊が到着した。

大型輸送機が轟音を立てて着陸し、その腹部から見慣れない幻晶機と、精悍な顔つきのパイロットたちが次々と降りてくる。

その中には、竜騎士中隊の総指揮官であるマリア・シュヴァルツ、支援機パイロットのソフィア・リヒター、そして砲撃専任のベテランパイロット、ディオン・ハワードの姿があった。

マリアは、知的な印象の眼鏡の奥で、ユウキたちを穏やかな眼差しで見つめた。

「あなたがユウキ・サカモト君ね。エリナから話は聞いているわ。竜騎士中隊へようこそ」

マリアはユウキに歩み寄り、その手を差し出した。ユウキは少し戸惑いながらも、その手を握り返す。マリアの手は、見た目よりもずっと温かく、ユウキの緊張をわずかに和らげた。

「マリア少佐…お初にお目にかかります。坂本ユウキです」

「ええ、知っているわ。あなたのことはエリナから詳しく聞いている。魔竜との戦い、そしてアストレイアの覚醒。素晴らしい働きだったと」

マリアはユウキの隣に立つリアにも視線を向けた。

「そして、あなたがリア・アルティスさんね。アストレイアの管制士として、ユウキ君を支えていると。あなたたちの力は、この自由同盟にとって大きな希望となるでしょう」

リアは少し緊張しながらも、深々と頭を下げた。

「はい、マリア少佐。リア・アルティスです。ユウキと共に、精一杯努めます」

その間、ソフィアがユウキとリア、そしてザラに近づいてきた。
赤い髪をポニーテールにした小柄な女性だが、その瞳には強い意志が宿っていた。

「ソフィア・リヒターです。支援機パイロットを務めています。改めて、よろしく。」

ソフィアはユウキに軽く会釈をし、次にリアの顔をじっと見つめた。

「アストレイアの管制士…あなたの魔力感知能力は、並外れていると聞いているわ。私も索敵や情報解析を担当するから、いつか連携できると嬉しい」

リアはソフィアの言葉に、少し驚いたように目を瞬かせた。

「はい!私でよければ、いつでも!」

ザラはソフィアの言葉に、わずかに警戒の視線を向けた。ソフィアが元帝国兵であるという情報は、まだこの時点では共有されていないが、ザラは本能的に何かを感じ取っているようだった。

ディオンは、短く刈り込んだ黒髪に無精髭を蓄えた精悍な男だ。
無口でぶっきらぼうな印象だが、ユウキの顔をじっと見つめ、その潜在能力を測るかのような視線を送った。

「ディオン・ハワードだ。砲撃専任のベテランだ。お前がアストレイアのパイロットか。…噂通りのひよっこだな」

ディオンの直接的な物言いに、ユウキは思わずたじろいだ。その威圧感に、彼の口は上手く言葉を紡げない。

「あ、あの…」

リアがユウキの隣で、そっと彼の腕に触れた。

「ディオンさん、ユウキはまだ、この世界の戦いに慣れていないんです。でも、彼はとても真面目で、すぐに順応します!」

リアが庇うように言うと、ディオンはリアを一瞥し、フン、と鼻を鳴らした。

「ほう。管制士がパイロットを庇うか。まあいい。戦場で生き残りたければ、俺の言うことをよく聞くことだ。特に、お前のようなひよっこはな」

ユウキは、ディオンの言葉の重みに圧倒され、ただ頭を下げることしかできなかった。

「あ、ありがとうございます…!」



その様子を見ていたジェイが、ソフィアに駆け寄った。

「ソフィア!また一緒の任務か!相変わらずお綺麗で!俺、ジェイ・カーティスだぜ!養成学校で首席を争った同期の!」

ジェイは満面の笑みで話しかけるが、ソフィアは一瞥しただけで、表情を変えずに答えた。

「ええ、覚えているわ。ジェイ・カーティス。養成学校での成績は優秀だった。それがどうしたの?もう一年も同じ部隊で顔を合わせているでしょう。」

ソフィアの素っ気ない返答に、ジェイは一瞬たじろぐ。

「いや、その…俺もこの竜騎士中隊に配属されて、ソフィアとまた一緒に戦えるなんて、光栄だなと思って!」
「そう。私は任務でここに来ただけ。個人的な感情は持ち込まないで」

ソフィアはそう言い放ち、ジェイの隣をすり抜けて、マリアの元へと向かった。
ジェイはその後ろ姿を呆然と見送るしかなかった。


ジェイはすぐに気を取り直し、ディオンに駆け寄った。

「ディオンさん!養成学校の時以来ですね!俺、ジェイ・カーティスです!」
ジェイは満面の笑みで話しかけるが、ディオンは一瞥しただけで、無言で頷く。

「相変わらずだな、ジェイ。お前も無茶ばかりするなよ。養成学校時代から、その血気盛んなところは変わってないようだが、戦場は遊び場じゃない」

ディオンの言葉はぶっきらぼうだが、そこにはかつての教え子への気遣いが感じられた。

エリナもマリアに近づき、軽く敬礼を交わした。

「マリア少佐、ご無事で何よりです。こちらの部隊は、おかげさまで大きな損害もなく」
「ご苦労様、エリナ。あなたもルナも、よくやってくれたわ。ユウキ君とリアさんの活躍も、エリナの報告でよく分かったわ」

ルナはエリナの隣で、マリアに笑顔を向けた。






次のエピソードへ進む 第12話 自由同盟の前線基地 -2


みんなのリアクション

数日後、一行は自由同盟の最前線に位置する、小規模な軍事拠点に到着した。
巨大な都市とは異なり、無骨なコンクリートと鉄骨でできた防御壁が印象的な場所だ。駐屯している幻晶機も多くはないが、兵士たちの顔つきは皆精悍で、緊張感が漂っている。
拠点の中枢司令室は、簡素ながらも機能的に整えられていた。
壁には戦況を示す地図が貼られ、複数のモニターが情報を行き交わせている。
エリナとルナが、その中央に立つユウキ、リア、ザラを静かに見つめていた。
「ユウキ殿、リア殿、ザラ殿。改めて、竜騎士中隊へようこそ」
エリナが静かに告げた。その声には、形式的な響きだけでなく、確かな期待が込められている。
「皆さんの、特にアストレイアの力は、今回の魔竜との戦いで計り知れないものであると確認できました。自由同盟としては、ぜひともその力を、我々の仲間に迎え入れたい。この世界を守るために、その力が必要なのです」
ルナが補足するように、ユウキの目を真っ直ぐ見て語りかけた。
「ユウキさんの、あの魔竜との戦いでの『常軌を逸した反応速度と状況判断力』は、幻晶機乗りとして非常に高い潜在能力を秘めていることを確信させてくれました。リアさんのサポート能力も相まって、アストレイアという伝説機を最大限に活かせる存在です」
ユウキは、彼らの真剣な眼差しに、改めて自身の立場を理解した。内心では、まだ「人」との戦いへの抵抗感が燻っている。ゲームのように「倒す」ことに慣れていても、それはあくまで仮想の敵だった。
しかし、リアや谷の住民を守るという使命感、そして谷を襲ったのが帝国だという(誤った)認識が、彼の背中を押していた。
「…生き残るために、そしてリアたちを守るためなら。俺は…戦います」
ユウキはそう答え、固く拳を握りしめた。その瞳には、まだ迷いの影が残るものの、決意の光が宿り始めていた。
「はい、ユウキならきっとできるわ!私も、アストレイアと共に、あなたを支えるから!」
リアはユウキの隣で、力強く頷いた。
ザラは、その言葉を冷たい、きつい視線で無言で見つめていた。
◇◆◇◆◇
その数日後、前線拠点に新たな幻晶機部隊が到着した。
大型輸送機が轟音を立てて着陸し、その腹部から見慣れない幻晶機と、精悍な顔つきのパイロットたちが次々と降りてくる。
その中には、竜騎士中隊の総指揮官であるマリア・シュヴァルツ、支援機パイロットのソフィア・リヒター、そして砲撃専任のベテランパイロット、ディオン・ハワードの姿があった。
マリアは、知的な印象の眼鏡の奥で、ユウキたちを穏やかな眼差しで見つめた。
「あなたがユウキ・サカモト君ね。エリナから話は聞いているわ。竜騎士中隊へようこそ」
マリアはユウキに歩み寄り、その手を差し出した。ユウキは少し戸惑いながらも、その手を握り返す。マリアの手は、見た目よりもずっと温かく、ユウキの緊張をわずかに和らげた。
「マリア少佐…お初にお目にかかります。坂本ユウキです」
「ええ、知っているわ。あなたのことはエリナから詳しく聞いている。魔竜との戦い、そしてアストレイアの覚醒。素晴らしい働きだったと」
マリアはユウキの隣に立つリアにも視線を向けた。
「そして、あなたがリア・アルティスさんね。アストレイアの管制士として、ユウキ君を支えていると。あなたたちの力は、この自由同盟にとって大きな希望となるでしょう」
リアは少し緊張しながらも、深々と頭を下げた。
「はい、マリア少佐。リア・アルティスです。ユウキと共に、精一杯努めます」
その間、ソフィアがユウキとリア、そしてザラに近づいてきた。
赤い髪をポニーテールにした小柄な女性だが、その瞳には強い意志が宿っていた。
「ソフィア・リヒターです。支援機パイロットを務めています。改めて、よろしく。」
ソフィアはユウキに軽く会釈をし、次にリアの顔をじっと見つめた。
「アストレイアの管制士…あなたの魔力感知能力は、並外れていると聞いているわ。私も索敵や情報解析を担当するから、いつか連携できると嬉しい」
リアはソフィアの言葉に、少し驚いたように目を瞬かせた。
「はい!私でよければ、いつでも!」
ザラはソフィアの言葉に、わずかに警戒の視線を向けた。ソフィアが元帝国兵であるという情報は、まだこの時点では共有されていないが、ザラは本能的に何かを感じ取っているようだった。
ディオンは、短く刈り込んだ黒髪に無精髭を蓄えた精悍な男だ。
無口でぶっきらぼうな印象だが、ユウキの顔をじっと見つめ、その潜在能力を測るかのような視線を送った。
「ディオン・ハワードだ。砲撃専任のベテランだ。お前がアストレイアのパイロットか。…噂通りのひよっこだな」
ディオンの直接的な物言いに、ユウキは思わずたじろいだ。その威圧感に、彼の口は上手く言葉を紡げない。
「あ、あの…」
リアがユウキの隣で、そっと彼の腕に触れた。
「ディオンさん、ユウキはまだ、この世界の戦いに慣れていないんです。でも、彼はとても真面目で、すぐに順応します!」
リアが庇うように言うと、ディオンはリアを一瞥し、フン、と鼻を鳴らした。
「ほう。管制士がパイロットを庇うか。まあいい。戦場で生き残りたければ、俺の言うことをよく聞くことだ。特に、お前のようなひよっこはな」
ユウキは、ディオンの言葉の重みに圧倒され、ただ頭を下げることしかできなかった。
「あ、ありがとうございます…!」
その様子を見ていたジェイが、ソフィアに駆け寄った。
「ソフィア!また一緒の任務か!相変わらずお綺麗で!俺、ジェイ・カーティスだぜ!養成学校で首席を争った同期の!」
ジェイは満面の笑みで話しかけるが、ソフィアは一瞥しただけで、表情を変えずに答えた。
「ええ、覚えているわ。ジェイ・カーティス。養成学校での成績は優秀だった。それがどうしたの?もう一年も同じ部隊で顔を合わせているでしょう。」
ソフィアの素っ気ない返答に、ジェイは一瞬たじろぐ。
「いや、その…俺もこの竜騎士中隊に配属されて、ソフィアとまた一緒に戦えるなんて、光栄だなと思って!」
「そう。私は任務でここに来ただけ。個人的な感情は持ち込まないで」
ソフィアはそう言い放ち、ジェイの隣をすり抜けて、マリアの元へと向かった。
ジェイはその後ろ姿を呆然と見送るしかなかった。
ジェイはすぐに気を取り直し、ディオンに駆け寄った。
「ディオンさん!養成学校の時以来ですね!俺、ジェイ・カーティスです!」
ジェイは満面の笑みで話しかけるが、ディオンは一瞥しただけで、無言で頷く。
「相変わらずだな、ジェイ。お前も無茶ばかりするなよ。養成学校時代から、その血気盛んなところは変わってないようだが、戦場は遊び場じゃない」
ディオンの言葉はぶっきらぼうだが、そこにはかつての教え子への気遣いが感じられた。
エリナもマリアに近づき、軽く敬礼を交わした。
「マリア少佐、ご無事で何よりです。こちらの部隊は、おかげさまで大きな損害もなく」
「ご苦労様、エリナ。あなたもルナも、よくやってくれたわ。ユウキ君とリアさんの活躍も、エリナの報告でよく分かったわ」
ルナはエリナの隣で、マリアに笑顔を向けた。