第10話 伝説機、魔竜を討つ -4
ー/ーその夜、ユウキはリアと焚き火を囲んで座っていた。
満天の星空が広がり、谷では見ることのできなかった無数の星々が瞬いている。遠くからは、名も知らぬ夜の魔獣の鳴き声が聞こえてくる。
「ユウキの故郷の夜空も、こんなに綺麗だった?」
リアがそっと尋ねた。
「いや…俺の故郷は、こんなに星が見えなかったな。街の明かりが強すぎて。こんなにたくさんの星を見るのは、初めてかもしれない」
ユウキは夜空を見上げながら、遠い故郷を思った。両親や妹、友人たちの顔が脳裏に浮かぶ。
「みんな、どうしてるかな…」
リアはユウキの寂しげな横顔に気づき、そっと手を握った。
「きっと、みんな元気よ。ユウキがここにいるように、みんなもそれぞれの場所で、きっと頑張ってる」
その温かい手の感触に、ユウキの心が少しだけ軽くなる。
「リアは…この谷を離れるのは、寂しくないのか?」
「寂しくない、と言ったら嘘になるわ。でも、長老が言ったように、アストレイアの力は、この谷だけのものではない。この世界全体に必要なんだって、私、そう思うの。それに…ユウキと一緒なら、どんな場所でも、きっと大丈夫」
リアの言葉に、ユウキの胸が熱くなる。彼女の純粋な信頼が、彼の心に新たな決意の炎を灯した。
「俺も…リアがいてくれるから、頑張れる。この世界に来て、正直、不安でいっぱいだったけど…リアがいてくれて、本当に良かった」
ユウキはリアの瞳を見つめ、初めてこの世界で抱いた、彼女への特別な感情が、確かな恋心へと変わっていくのを感じていた。
道中、小さな魔獣の群れに遭遇することがあった。それは、谷で見た魔竜ほど巨大ではないが、獰猛な牙と爪を持つ、狼のような姿をした魔獣だった。
「警戒!魔獣の群れだ!」
エリナの声が響き、一行は瞬時に戦闘態勢に入る。エリナとジェイ、ルナは携行武装を構え、ザラは素早く弓を引いた。
「ユウキ、無理はしなくていい!ここは私たちに任せて!」
エリナが叫ぶ。幻晶機に乗るまでもなく、彼らの持つ携行武装や、ザラの卓越した弓の腕で事態を収拾した。
ジェイが素早く魔獣の懐に飛び込み、チェーンソードを振るう。
ルナは魔導銃で援護射撃を行い、エリナは冷静に指示を飛ばしながら、魔獣の動きを封じる。ザラの放つ矢は、正確に魔獣の急所を貫き、次々と魔獣を仕留めていく。
ユウキも剣を振るうが、その一撃は魔獣の硬い皮膚に弾かれ、逆に魔獣の鋭い爪が彼の腕を掠めた。
「くそっ…!」
ゲームの中では、敵のHPをゼロにすれば終わりだった。だが、目の前の魔獣は、傷を負ってもなお、獰猛な殺意を剥き出しにして襲いかかってくる。
その生々しい殺意に、ユウキは背筋が凍る思いだった。
この世界の戦いは、ゲームとは違い、常に命の危険と隣り合わせであることを痛感する。彼は、幻晶機に乗っていなければ、自分はこんなにも無力なのかと思い知らされた。
その時、一匹の魔獣がユウキの死角から襲いかかった。
ユウキは反応が遅れ、鋭い爪が彼の喉元に迫る。
「ユウキ!」
間一髪、ザラの放った矢が魔獣の頭部を正確に貫き、魔獣は絶叫と共に倒れ伏した。ユウキは地面に尻餅をつき、息を呑む。
「…ザラ、ありがとう…助かった」
ユウキが感謝の言葉を口にすると、ザラは鋭い視線で彼を睨みつけた。その瞳には、安堵とは異なる、苛立ちと失望の色が宿っていた。
「ったく…何やってんだ、お前は!リアの護衛が、こんなザマでどうするんだ!この軟弱者!」
ザラの声は、普段の冷たい口調よりもさらに突き刺さるようだった。彼女は弓を構えたまま、ユウキに詰め寄る。
「リアを守るって言ったくせに、自分の命すら守れねぇのか!?そんなんで、どうやってリアを護るんだよ!お前みたいな半端者が、リアの隣にいる資格なんてねぇんだ!」
ザラの言葉は、ユウキの胸に鉛のように重くのしかかった。魔獣の生々しい殺意に直面し、自分の無力さを痛感したばかりのユウキにとって、その言葉は深く、そして鋭く心を抉った。
「俺は…」
ユウキは言葉を失い、俯いた。ザラの言葉は、彼が抱いていた「ゲーム感覚」との乖離を、残酷なまでに突きつけた。
この世界は、彼の知るゲームのように、やり直しが効く場所ではない。
そして、自分はまだ、リアを守れるほどの力も覚悟も持っていない。その現実が、ユウキの心を深く、深く沈ませた。
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
その夜、ユウキはリアと焚き火を囲んで座っていた。
満天の星空が広がり、谷では見ることのできなかった無数の星々が瞬いている。遠くからは、名も知らぬ夜の魔獣の鳴き声が聞こえてくる。
「ユウキの故郷の夜空も、こんなに綺麗だった?」
リアがそっと尋ねた。
「いや…俺の故郷は、こんなに星が見えなかったな。街の明かりが強すぎて。こんなにたくさんの星を見るのは、初めてかもしれない」
ユウキは夜空を見上げながら、遠い故郷を思った。両親や妹、友人たちの顔が脳裏に浮かぶ。
「みんな、どうしてるかな…」
リアはユウキの寂しげな横顔に気づき、そっと手を握った。
「きっと、みんな元気よ。ユウキがここにいるように、みんなもそれぞれの場所で、きっと頑張ってる」
その温かい手の感触に、ユウキの心が少しだけ軽くなる。
「リアは…この谷を離れるのは、寂しくないのか?」
「寂しくない、と言ったら嘘になるわ。でも、長老が言ったように、アストレイアの力は、この谷だけのものではない。この世界全体に必要なんだって、私、そう思うの。それに…ユウキと一緒なら、どんな場所でも、きっと大丈夫」
リアの言葉に、ユウキの胸が熱くなる。彼女の純粋な信頼が、彼の心に新たな決意の炎を灯した。
「俺も…リアがいてくれるから、頑張れる。この世界に来て、正直、不安でいっぱいだったけど…リアがいてくれて、本当に良かった」
ユウキはリアの瞳を見つめ、初めてこの世界で抱いた、彼女への特別な感情が、確かな恋心へと変わっていくのを感じていた。
道中、小さな魔獣の群れに遭遇することがあった。それは、谷で見た魔竜ほど巨大ではないが、獰猛な牙と爪を持つ、狼のような姿をした魔獣だった。
「警戒!魔獣の群れだ!」
エリナの声が響き、一行は瞬時に戦闘態勢に入る。エリナとジェイ、ルナは携行武装を構え、ザラは素早く弓を引いた。
「ユウキ、無理はしなくていい!ここは私たちに任せて!」
エリナが叫ぶ。幻晶機に乗るまでもなく、彼らの持つ携行武装や、ザラの卓越した弓の腕で事態を収拾した。
ジェイが素早く魔獣の懐に飛び込み、チェーンソードを振るう。
ルナは魔導銃で援護射撃を行い、エリナは冷静に指示を飛ばしながら、魔獣の動きを封じる。ザラの放つ矢は、正確に魔獣の急所を貫き、次々と魔獣を仕留めていく。
ユウキも剣を振るうが、その一撃は魔獣の硬い皮膚に弾かれ、逆に魔獣の鋭い爪が彼の腕を掠めた。
「くそっ…!」
ゲームの中では、敵のHPをゼロにすれば終わりだった。だが、目の前の魔獣は、傷を負ってもなお、獰猛な殺意を剥き出しにして襲いかかってくる。
その生々しい殺意に、ユウキは背筋が凍る思いだった。
この世界の戦いは、ゲームとは違い、常に命の危険と隣り合わせであることを痛感する。彼は、幻晶機に乗っていなければ、自分はこんなにも無力なのかと思い知らされた。
その時、一匹の魔獣がユウキの死角から襲いかかった。
ユウキは反応が遅れ、鋭い爪が彼の喉元に迫る。
「ユウキ!」
間一髪、ザラの放った矢が魔獣の頭部を正確に貫き、魔獣は絶叫と共に倒れ伏した。ユウキは地面に尻餅をつき、息を呑む。
「…ザラ、ありがとう…助かった」
ユウキが感謝の言葉を口にすると、ザラは鋭い視線で彼を睨みつけた。その瞳には、安堵とは異なる、苛立ちと失望の色が宿っていた。
「ったく…何やってんだ、お前は!リアの護衛が、こんなザマでどうするんだ!この軟弱者!」
ザラの声は、普段の冷たい口調よりもさらに突き刺さるようだった。彼女は弓を構えたまま、ユウキに詰め寄る。
「リアを守るって言ったくせに、自分の命すら守れねぇのか!?そんなんで、どうやってリアを護るんだよ!お前みたいな半端者が、リアの隣にいる資格なんてねぇんだ!」
ザラの言葉は、ユウキの胸に鉛のように重くのしかかった。魔獣の生々しい殺意に直面し、自分の無力さを痛感したばかりのユウキにとって、その言葉は深く、そして鋭く心を抉った。
「俺は…」
ユウキは言葉を失い、俯いた。ザラの言葉は、彼が抱いていた「ゲーム感覚」との乖離を、残酷なまでに突きつけた。
この世界は、彼の知るゲームのように、やり直しが効く場所ではない。
そして、自分はまだ、リアを守れるほどの力も覚悟も持っていない。その現実が、ユウキの心を深く、深く沈ませた。