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第2話 異世界での邂逅と迫り来る影 -2

ー/ー



「ここは、ルネア…竜の谷よ。あなたは、幻晶のコアによって、この世界に召喚されたの」

リアが、ゆっくりとした口調で説明してくれた。

ジーナ長老が、静かに頷いた。

「そう。あなたは『召喚者』。伝説の機竜アストレイアを起動するための『コア』として、選ばれし者。」
「召喚者…コア…?それに、この言葉は一体…」

聞き慣れない言葉の羅列と、目の前の現実離れした光景に、ユウキは戸惑いを隠せない。

まるでファンタジーゲームの世界に放り込まれたような感覚だったが、これはゲームのようにリセットできない、逃げ出せない現実のようだ。

頭の中では警報が鳴り響いているのに、なぜか思考の片隅で「この状況をどう攻略するか」と冷静に分析しようとしている自分がいる。


ユウキは、目の前のリアから目が離せなかった。

小柄な体躯に、芯の強さを感じさせる顔立ち。そして、彼の混乱を気遣う優しい言葉。この異様な状況の中で、リアの存在だけが、彼の心を掴んで離さない。

恋愛に疎かったユウキにとって、リアはまるで暗闇の中で見つけた一筋の光のようだった。生まれて初めて抱く、特別な感情。この異世界で、最初に触れた「希望」だった。


その時、一人の少女が、リアとジーナ長老の傍らに歩み寄ってきた。
リアと同じ民族衣装を身につけているが、彼女の瞳は鋭く、ユウキを射抜くような視線を向ける。

「リア、大丈夫かい?この得体の知れない奴のせいで、体に異変はないか?」

リアの幼馴染のザラ。

彼女は、腕組みをしたまま、その鋭い視線はまるで獲物を値踏みするかのようにユウキをじっと見つめていた。その表情には、どこか冷たい感情が読み取れた。

「大丈夫だよ、ザラ。ユウキは…私たちの仲間になる人だから」

リアが、ユウキを庇うように一歩前に出る。

「仲間…?いくら何でも、早すぎるだろう。それに、こいつ…まるで何も知らねぇような顔してるが、本当に大丈夫なのかい?」

ザラは納得いかない様子で、腕を組んだまま、かすかに眉をひそめた。


ユウキは、彼らの独特な言い回しや、これまで経験したことのない文化、常識の違いに、またも戸惑いを覚える。

「えっと、その…皆さん、何を言っているのか、いまいち…というより、なんで俺、皆さんの言葉がわかるんですか?」

ユウキが言葉に詰まると、リアは優しく微笑んでくれた。

「ユウキ、まだこの世界の言葉に慣れてないのね。大丈夫。私がゆっくり教えるから」

ジーナ長老も、

「焦ることはない。召喚者には、自然と言葉を理解する力が備わるものじゃ。まずはこの谷で、身体を休めるがよい」

と、含蓄のある言葉で諭す。

ザラはそんなユウキの反応を見て、呆れたような、あるいは面白がるような表情を浮かべた。

「へぇ、何も知らないのか。随分と都合のいい『召喚者』だね」

その皮肉にも、ユウキは反論できなかった。彼の思考は、急速にこの異世界の「ルール」を理解しようと動き始めていた。まずはこの世界に適応し、「生き残る」ことだけだ。それこそが、今の彼にとっての最優先事項だった。


◇◆◇◆◇


ユウキが谷での生活に少し慣れてきた頃、リアが彼をアストレイアが眠る洞窟へと誘った。

洞窟の奥深く、神殿のような広大な空間の中央に、アストレイアは静かに佇んでいた。

その姿は、巨大な彫刻のようで、白い装甲には淡い光が宿り、まるで生きているかのような神聖さを放っていた。

「これが…アストレイア」

ユウキは、目の前の巨体に圧倒される。

異世界に召喚されてから幾度となくゲームのような光景を目にしてきたが、この「幻晶機」という存在は、ゲームの中にすらこんな巨大で精巧な「ロボット」はなかったと、直感的に悟った。

彼は、自分が知るあらゆるロボットアニメやゲームの機体を脳内で走らせて比較したが、アストレイアはそのどれとも似ていなかった。

「ええ。アストレイアは、この世界に古くから伝わる伝説の機竜よ。あなたをこの世界に呼んだ、『幻晶のコア』の力を秘めているの」

リアが、アストレイアの白い脚部に触れながら説明を始める。その表情は、どこか誇らしげだった。

「機竜…幻晶機…って、一体なんなんだ? 俺の世界で言う、人型の、その、ロボット…みたいな?」

ユウキは、脳内で一番近い概念を引っ張り出した。
リアは、少し首を傾げた。その表情は「ロボット」という言葉に馴染みがないようだ。

「ロボット…?うーん、そうね、近いかもしれないわ。幻晶機はね、魔獣、特に凶暴な魔竜に対抗するために作られた、人型の兵器よ。体高はだいたい10メートルから12メートルくらいかな。人間が中に入って動かすの」

リアは、ユウキの顔色を窺いながら、彼の理解度に合わせて言葉を選んでいるようだった。

「昔は、魔力結晶を採ったり、魔獣を退治するのが主な目的だったんだけど…今は、人間同士の戦いにも使われるようになっちゃったの」

そういうとリアは少し寂しそうに笑った。

ユウキは、ゲームで操縦する「ロボット」とは少し違うニュアンスを感じた。

彼にとってはゲームに出てくる「ロボット」だが、リアにとっては「生きた」兵器、あるいは「神聖な存在」に近い認識なのだろう。言葉は通じるのに、根底にある概念が違う。その微妙な壁に、ユウキは少しだけ居心地の悪さを覚えた。

「中に…入って動かす、のか。じゃあ、その、動かす人っていうのは…俺の世界だとパイロットって言うんだけど…この世界ではなんて呼ぶんだ?」
「パイロット…?ええと、この世界では、『機竜乗り』とか、『動かす者』って呼ぶわね。幻晶機を動かす者、って意味よ」

リアは少し考え、そう答えた。

「操縦もね、大きく分けて二つの方法があるのよ。一人の『機竜乗り』が全部動かす『単座式』と、動かす者と、私みたいにセンサーや魔法を担当する『管制士』に分かれる『複座式』があるわ。アストレイアは、私たち二人で動かす『複座式』なの。だから、ユウキは『動かす者』で、私が『管制士』になるのよ」

リアは、まるで初めて触るコントローラーの説明をするように、丁寧に説明してくれた。ユウキは、自分とリアの役割が明確に分かれていることに、少しだけ緊張を覚える。

リアは、アストレイアの腕を指差す。

「幻晶機には、色々な武器があるの。この腕に持っているような、直接相手を切り裂く『物理武器』。あとは、大気中のマナっていう生命エネルギーを凝縮して放つ『魔法武器』ね。魔法は、ちょっと詠唱に時間がかかるんだけど、効果はすごく強力なの」

彼女の指が、アストレイアの白い装甲に埋め込まれた、青く輝く小さな結晶に触れる。

「この宝石みたいなのが、『魔力結晶』。マナを蓄えて、幻晶機を動かしたり、魔法を使ったりするエネルギーになるのよ」

「なるほど…魔力結晶…マナ…」

ユウキは、ゲームでいうMPやエネルギーゲージのようなものかと理解しようと努める。

「言われてみれば、ゲームにもエネルギーとかMPとか、消費する要素はあったな…」
「あとね、この世界は魔法と機械が融合した文明だから、科学的な武器もあるの。高機動スラスターとか、敵を感知する魔導センサーとか…これらは魔法みたいに詠唱の時間は要らないわ」

リアは、にこやかに説明を続ける。

「幻晶機は、魔導エネルギーの残量で動いているから、エネルギーがなくなると動けなくなっちゃうの。だから、戦い方によって『戦闘モード』と『省エネモード』を切り替えるのが大事なのよ」

ユウキは、リアのレクチャーを真剣に聞いていた。
しかし、初心者にはやや膨大な情報だった。

ゲームで培った分析能力が、この異世界の「システム」を理解しようとフル稼働している。まるで、新しいゲームのチュートリアルを受けているような感覚だった。

ただし、これは失敗してもゲームオーバーでは済まされない。
彼の脳内には、幻晶機のステータス画面が構築され始めていた。

「つまり、幻晶機ってのは、マナを動力源にした、魔法と科学のハイブリッド兵器で、人間が『機竜乗り』として乗って戦う、と。アストレイアは、その中でも『コア』の力を秘めた、とんでもない機体…ってことか」

ユウキがそうまとめるように言うと、リアは嬉しそうに頷いた。

「ええ、その通りよ!ユウキ、飲み込みが早わね!」

リアの笑顔が、ユウキの心に小さな安堵を灯した。

この異世界で「生き残る」ために、まずはこの「ルール」を理解すること。ユウキは、ゲームを攻略するかのように、この世界のことを吸収しようと決意を新たにした。






みんなのリアクション

「ここは、ルネア…竜の谷よ。あなたは、幻晶のコアによって、この世界に召喚されたの」
リアが、ゆっくりとした口調で説明してくれた。
ジーナ長老が、静かに頷いた。
「そう。あなたは『召喚者』。伝説の機竜アストレイアを起動するための『コア』として、選ばれし者。」
「召喚者…コア…?それに、この言葉は一体…」
聞き慣れない言葉の羅列と、目の前の現実離れした光景に、ユウキは戸惑いを隠せない。
まるでファンタジーゲームの世界に放り込まれたような感覚だったが、これはゲームのようにリセットできない、逃げ出せない現実のようだ。
頭の中では警報が鳴り響いているのに、なぜか思考の片隅で「この状況をどう攻略するか」と冷静に分析しようとしている自分がいる。
ユウキは、目の前のリアから目が離せなかった。
小柄な体躯に、芯の強さを感じさせる顔立ち。そして、彼の混乱を気遣う優しい言葉。この異様な状況の中で、リアの存在だけが、彼の心を掴んで離さない。
恋愛に疎かったユウキにとって、リアはまるで暗闇の中で見つけた一筋の光のようだった。生まれて初めて抱く、特別な感情。この異世界で、最初に触れた「希望」だった。
その時、一人の少女が、リアとジーナ長老の傍らに歩み寄ってきた。
リアと同じ民族衣装を身につけているが、彼女の瞳は鋭く、ユウキを射抜くような視線を向ける。
「リア、大丈夫かい?この得体の知れない奴のせいで、体に異変はないか?」
リアの幼馴染のザラ。
彼女は、腕組みをしたまま、その鋭い視線はまるで獲物を値踏みするかのようにユウキをじっと見つめていた。その表情には、どこか冷たい感情が読み取れた。
「大丈夫だよ、ザラ。ユウキは…私たちの仲間になる人だから」
リアが、ユウキを庇うように一歩前に出る。
「仲間…?いくら何でも、早すぎるだろう。それに、こいつ…まるで何も知らねぇような顔してるが、本当に大丈夫なのかい?」
ザラは納得いかない様子で、腕を組んだまま、かすかに眉をひそめた。
ユウキは、彼らの独特な言い回しや、これまで経験したことのない文化、常識の違いに、またも戸惑いを覚える。
「えっと、その…皆さん、何を言っているのか、いまいち…というより、なんで俺、皆さんの言葉がわかるんですか?」
ユウキが言葉に詰まると、リアは優しく微笑んでくれた。
「ユウキ、まだこの世界の言葉に慣れてないのね。大丈夫。私がゆっくり教えるから」
ジーナ長老も、
「焦ることはない。召喚者には、自然と言葉を理解する力が備わるものじゃ。まずはこの谷で、身体を休めるがよい」
と、含蓄のある言葉で諭す。
ザラはそんなユウキの反応を見て、呆れたような、あるいは面白がるような表情を浮かべた。
「へぇ、何も知らないのか。随分と都合のいい『召喚者』だね」
その皮肉にも、ユウキは反論できなかった。彼の思考は、急速にこの異世界の「ルール」を理解しようと動き始めていた。まずはこの世界に適応し、「生き残る」ことだけだ。それこそが、今の彼にとっての最優先事項だった。
◇◆◇◆◇
ユウキが谷での生活に少し慣れてきた頃、リアが彼をアストレイアが眠る洞窟へと誘った。
洞窟の奥深く、神殿のような広大な空間の中央に、アストレイアは静かに佇んでいた。
その姿は、巨大な彫刻のようで、白い装甲には淡い光が宿り、まるで生きているかのような神聖さを放っていた。
「これが…アストレイア」
ユウキは、目の前の巨体に圧倒される。
異世界に召喚されてから幾度となくゲームのような光景を目にしてきたが、この「幻晶機」という存在は、ゲームの中にすらこんな巨大で精巧な「ロボット」はなかったと、直感的に悟った。
彼は、自分が知るあらゆるロボットアニメやゲームの機体を脳内で走らせて比較したが、アストレイアはそのどれとも似ていなかった。
「ええ。アストレイアは、この世界に古くから伝わる伝説の機竜よ。あなたをこの世界に呼んだ、『幻晶のコア』の力を秘めているの」
リアが、アストレイアの白い脚部に触れながら説明を始める。その表情は、どこか誇らしげだった。
「機竜…幻晶機…って、一体なんなんだ? 俺の世界で言う、人型の、その、ロボット…みたいな?」
ユウキは、脳内で一番近い概念を引っ張り出した。
リアは、少し首を傾げた。その表情は「ロボット」という言葉に馴染みがないようだ。
「ロボット…?うーん、そうね、近いかもしれないわ。幻晶機はね、魔獣、特に凶暴な魔竜に対抗するために作られた、人型の兵器よ。体高はだいたい10メートルから12メートルくらいかな。人間が中に入って動かすの」
リアは、ユウキの顔色を窺いながら、彼の理解度に合わせて言葉を選んでいるようだった。
「昔は、魔力結晶を採ったり、魔獣を退治するのが主な目的だったんだけど…今は、人間同士の戦いにも使われるようになっちゃったの」
そういうとリアは少し寂しそうに笑った。
ユウキは、ゲームで操縦する「ロボット」とは少し違うニュアンスを感じた。
彼にとってはゲームに出てくる「ロボット」だが、リアにとっては「生きた」兵器、あるいは「神聖な存在」に近い認識なのだろう。言葉は通じるのに、根底にある概念が違う。その微妙な壁に、ユウキは少しだけ居心地の悪さを覚えた。
「中に…入って動かす、のか。じゃあ、その、動かす人っていうのは…俺の世界だとパイロットって言うんだけど…この世界ではなんて呼ぶんだ?」
「パイロット…?ええと、この世界では、『機竜乗り』とか、『動かす者』って呼ぶわね。幻晶機を動かす者、って意味よ」
リアは少し考え、そう答えた。
「操縦もね、大きく分けて二つの方法があるのよ。一人の『機竜乗り』が全部動かす『単座式』と、動かす者と、私みたいにセンサーや魔法を担当する『管制士』に分かれる『複座式』があるわ。アストレイアは、私たち二人で動かす『複座式』なの。だから、ユウキは『動かす者』で、私が『管制士』になるのよ」
リアは、まるで初めて触るコントローラーの説明をするように、丁寧に説明してくれた。ユウキは、自分とリアの役割が明確に分かれていることに、少しだけ緊張を覚える。
リアは、アストレイアの腕を指差す。
「幻晶機には、色々な武器があるの。この腕に持っているような、直接相手を切り裂く『物理武器』。あとは、大気中のマナっていう生命エネルギーを凝縮して放つ『魔法武器』ね。魔法は、ちょっと詠唱に時間がかかるんだけど、効果はすごく強力なの」
彼女の指が、アストレイアの白い装甲に埋め込まれた、青く輝く小さな結晶に触れる。
「この宝石みたいなのが、『魔力結晶』。マナを蓄えて、幻晶機を動かしたり、魔法を使ったりするエネルギーになるのよ」
「なるほど…魔力結晶…マナ…」
ユウキは、ゲームでいうMPやエネルギーゲージのようなものかと理解しようと努める。
「言われてみれば、ゲームにもエネルギーとかMPとか、消費する要素はあったな…」
「あとね、この世界は魔法と機械が融合した文明だから、科学的な武器もあるの。高機動スラスターとか、敵を感知する魔導センサーとか…これらは魔法みたいに詠唱の時間は要らないわ」
リアは、にこやかに説明を続ける。
「幻晶機は、魔導エネルギーの残量で動いているから、エネルギーがなくなると動けなくなっちゃうの。だから、戦い方によって『戦闘モード』と『省エネモード』を切り替えるのが大事なのよ」
ユウキは、リアのレクチャーを真剣に聞いていた。
しかし、初心者にはやや膨大な情報だった。
ゲームで培った分析能力が、この異世界の「システム」を理解しようとフル稼働している。まるで、新しいゲームのチュートリアルを受けているような感覚だった。
ただし、これは失敗してもゲームオーバーでは済まされない。
彼の脳内には、幻晶機のステータス画面が構築され始めていた。
「つまり、幻晶機ってのは、マナを動力源にした、魔法と科学のハイブリッド兵器で、人間が『機竜乗り』として乗って戦う、と。アストレイアは、その中でも『コア』の力を秘めた、とんでもない機体…ってことか」
ユウキがそうまとめるように言うと、リアは嬉しそうに頷いた。
「ええ、その通りよ!ユウキ、飲み込みが早わね!」
リアの笑顔が、ユウキの心に小さな安堵を灯した。
この異世界で「生き残る」ために、まずはこの「ルール」を理解すること。ユウキは、ゲームを攻略するかのように、この世界のことを吸収しようと決意を新たにした。